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本文章は、JICA による要約である。オリジナルは右記参照。Commission on Human Security (2003) Final Report of the Commission on Human Security (日本語版

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第3章 JICAの協力の方向性

42 本文章は、JICA による要約である。オリジナルは右記参照。Commission on Human Security (2003) Final Report of the Commission on Human Security (日本語版

http://www.humansecurity-chs.org/finalreport/j-outline.pdf ) 緒方貞子(現 JICA 理事長)、アマル ティア・セン(現ハーバード大学教授)の 2 人を共同議長とする委員会。

43 外務省(2005)『政府開発援助に関する中期政策』

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/chuuki/pdfs/seisaku_050204.pdf

3-1-2 協力の重点分野

環境管理は、空間的・時間的な広がりが大きく、さまざまな協力が考えられるが、すべてを対象と することは困難である。

JICA

の協力では、開発途上国の現状とニーズに応じたキャパシティ・ディ ベロップメントを基本として、特に優先的対応が必要となる汚染問題や地域・水域などを把握した 上で、行政機関を対象とした、(1) 環境政策立案、法制度整備への支援、(2)実効性を確保する組 織・制度強化のための支援、(3)環境管理に対処するための環境科学・技術の向上に向けた支援、

(4)対策実施に必要となる資金の支援、の

つを重視していくものとする。なお、開発戦略目標の中 間目標は、あまりカバーされないものがあることにも留意する。

(1) 環境政策立案、法制度整備への支援

開発途上国の環境主管官庁は、設立から間もなく、人材・経験不足、関連官庁との所掌分担 が定まっていないなどの制約要因から政策立案能力が低く、法制度が整っていないことが多い。

このため、政策立案能力の強化と法制度整備を重視して協力を行う。政策制度については、新 たな課題への対応強化、個別の施策間の関係づけ、関係主体が施策に対する認識を高めるこ とに主眼を置き、例えば、環境モニタリングによって得られたデータが環境基準や対策などの政 策に反映される枠組みの構築をはかる。法制度整備については、環境保全の法律はすでに制 定されている場合が多いので、現状を踏まえて、法に基づく規則、規制基準や計画を、関係省 庁の参加により整備することにより、関係者が理解した上で、法の要求が具体的に示されるよう支 援する。

(2) 実効性を確保する組織・制度強化のための支援

開発途上国では、既存の環境管理政策や法律の実効性が確保されていないケースが多いこ とから、環境管理施策や法律が実践されるための組織・制度面の強化を行う。制度面では、法律 に基づく行政実務(例えば、企業からの報告のデータベース化、水質管理計画策定や工場への 立入検査)を実施するための作業内容を整備する。あわせて、環境法令の実効的な執行能力強 化を図るため、汚染源への指導、働きかけができるように、財政、人員を含め、執行体制、能力 の強化をはかる。他方、環境管理対策への取り組みには、環境主管省庁だけでなく、実際には 開発部門所管省庁や住民との接点が大きい地方自治体がきわめて大きな役割を担っている現 状に鑑み、これら関連省庁を調整する場の設定、地方自治体の環境管理能力の向上及び環境 情報の公開などを通じた社会的意識啓発を積極的に行う。

(3) 環境管理に対処するための環境科学・技術の向上に向けた支援

環境管理行政の発展期にある開発途上国においては、その基礎となる環境科学や環境管理 対策のための技術レベルの向上が不可欠である。モニタリング、分析、予測、研究、管理、対策、

啓発普及などの分野において、開発途上国の環境管理制度全体の中での位置づけを確認しつ つ、各国・各地域の実情に即した、具体的な環境管理プロセスの改善につながる技術の向上の

ための支援を行っていく。特に、汚染の現状を把握し、施策に反映するため、汚染物質のモニタ リングとその解析技術は重視される。

(4) 対策実施に必要となる資金の支援

汚染の排出削減を推進するために、大規模な投資を必要とする下水処理施設や大気汚染防 止施設などの汚染対策施設・機材の整備への有償を中心とした資金協力を行う。また、個別企 業、とりわけ中小企業が環境対策投資(汚染対策処理施設の設置やクリーナープロダクション導 入など)を増やしていくため、当該国の政策的な金融制度をベースとし、ツーステップローンを活 用して資金面および技術面で支援を行う。

3-1-3 協力実施上の留意点

(1) 長期的視点からの持続性の確保と予防原則の重視

大気や水に関わる環境管理は、対象地域の広さに加え、効果の発現まで長い時間がかか り、効果も目に見えにくいという特徴を有している。期間が限定されている援助だけで解 決できることには限りがあり、具体的な成果発現には、相手国の自立的な取り組みの継続 が不可欠である。本分野での協力を行う際には、長期的な視点からの当該協力の位置づけ、

カウンターパート機関の法的所掌、財政面・技術面での実施能力、将来の持続発展性を精 査した上で、相手国の自立発展的な環境管理対処能力向上を重視した案件の形成、実施を 行うことが必要である。

なお、環境管理においては、「予防原則」を踏まえた取り組みが重要であることから、

将来の環境影響を予測し、いかに悪影響を回避、軽減していくか、という視点から開発途 上国の対処能力強化をはかることが必要である。

[Box3-2 環境管理におけるジェンダーの視点]

ジェンダーと環境については、

1992

年の地球サミットで採択された行動計画「アジェンダ

21

」に おいて、第

24

章で女性の問題が取り上げられている。また、

2002

年に日本政府が発表した

EcoISD

44では、水分野の支援で「

NGO

・女性との連携強化」が挙げられている。

以前は、環境悪化の影響は性別を問わず誰にでも及び、環境問題とジェンダーは関係な いと想定されがちであった。しかし実際は、環境悪化の影響は性別によって異なり、また 環境問題解決のための意思決定への関与の機会は性別によって異なる場合が多くみられ る。

例えば、日本の公害経験においては、家事や育児を担っている女性が洗濯物につくススの 多さや、子どもが喘息で学校を休む率が高くなっていることに気付き、婦人会として公害 告発の運動を始めた事例がある。また、炊事・洗濯は多くの家庭排水を出すことから、環 境管理の担い手として女性の役割が期待されるという側面がある。ところが一方で、環境 問題の解決を

unpaid work

である家事での解決に頼りすぎることによって、家事を担うこ との多い女性にさらに負担がかかるという問題があることが指摘されている。

このように環境とジェンダーは密接な関わりがあるため、環境問題への取り組みにジェン ダーの視点をもち、意思決定の過程に男女双方が参画することが重要である*。

我が国は、

ODA

大綱の基本方針の一つとして「公平性の確保」を掲げ、男女共同参画の視点 と女性の地位の向上をうたっており、環境管理に係る協力においても①女性の参加を確保または 積極的に推進する取り組み、及び②社会的弱者となりがちな女性に対する積極的支援の視点を もつことが必要である。

*シリア国「全国環境モニタリング能力向上プロジェクト」(2005~2008)では、100

名を越えるカウンターパートのう

ち、過半数を女性が占めている。

(2) 具体的な効果の発現に向けた道筋の確認

前述のような長期的視点が重要である一方で、協力にあたっては具体的な効果の発現を 強く意識して案件を形成、実施する必要がある。本分野の協力においては、法制度の整備、

モニタリング体制の強化、下水道などの施設計画策定・整備、その後の維持管理や施設運 営の改善など、さまざまな協力が考えうるが、当該協力がどのような環境改善を目的とし て実施するものか、どのような道筋でそれが実現されるのか常に意識して協力を計画、実 施することが重要である。上位目標達成に向けて中心となる活動や注意すべき事項、外部 条件を明確にすることにより、具体的発現に向けてより効果的かつ効率的な協力が可能と なる。

また、資金協力による機材や施設整備は、その実施前後に関連機関の能力向上を技術協 力などによりはかることが望ましいが、特に施設の運営・維持管理にかかる関係機関の体 制、能力に関しては、必要に応じ有償資金協力事業のコンポーネントにコンサルティング サービスを含める、あるいは有償勘定技術支援などを通じて強化をはかる必要がある。

さらに、下水処理施設などの施設整備の際は、環境社会配慮が必要であることも確認事 項の一つである。

44 「第 1 章 1-5 我が国の援助動向」を参照のこと。

(3) 多様なアクターによる連携の確保

環境管理では社会の主要アクターである行政、市民、企業、大学等研究機関「

4

者」の 個々の課題対処能力を向上させ、連携をはかりながら社会全体で取り組むことが必要であ る。案件形成の際には、環境主管官庁による調整システムの構築など、他セクターとの連 携強化の仕組みを組み込むなど、社会全体の対処能力向上に資するように工夫する必要が ある。

なお、本分野はさまざまなドナーが活動しており、また

JICA

単独でできることは限ら れていることから、他ドナーとの効果的な連携を特に重視する必要がある。

(4) 環境問題の広域性に対する配慮

大気や水を媒体とする汚染は、排出源が局所的であっても、地域的広がりをもち、物質 の性質によっては世界的規模で影響を及ぼす場合もある。特に国土が小さく影響が隣国に 及びやすい場合や、排出源と隣国が接している場合、大気の流れや河川、海洋の潮流など により汚染が他国に及びやすい状況にある場合などは、情報の共有など近隣国との連携や 国際機関との協調をはかるなど、特に国境を越えた環境問題にも留意して協力を行う必要 がある。

なお、汚染対策に資する施設整備を行う場合でも、地域の環境や社会に負の影響を与え る可能性があり、これを回避または最小化するために適切な環境社会配慮を行う必要があ る。JICA は案件実施にかかる環境面・社会面への配慮を適切に行うとともに、途上国の 側における環境関連の手続きをより明確化すべく、各援助手法の特性を踏まえた環境社会 配慮ガイドラインの体系の一本化を進めている。

(5) 国際的・地域的イニシアティブとの連携

グローバルな影響のある環境問題の解決には、国際社会が歩調を合わせる必要がある。

国際条約や外交的なイニシアティブは、各国の連携をはかることで地域的、地球規模の問 題の解決につながるとともに、国内の環境対策の促進にも資する。一般に開発途上国は、

気候変動/地球温暖化などの国際条約、国際合意の履行、あるいは酸性雨、黄砂モニタリ ング、研究などの地域協力を効果的に実施するために必要な能力強化が必要である。開発 途上国の、①国際条約・イニシアティブへの理解促進、②国際条約・イニシアティブの遵 守・実行に必要な計画、制度、技術などの確立への支援、③国際的メカニズムや基金の活 用促進、をはかりつつ、こうした国際的イニシアティブと連携をとった案件の形成、実施 を進める必要がある。

3-1-4 案件の形成・実施のための具体的アプローチ

(1) 各種協力手段、手法の重層的組み合わせによるプログラム・アプローチ

環境管理の課題は長期的な取り組みを必要とし、関係する主体やセクターも広範であることか

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