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環境予備調査

ドキュメント内 02_チュニジア_南部地域_本文_三.indd (ページ 85-102)

本プロジェクトは、2033年を目標年次としたチュニジア南部6県全体の開発戦略・計画を策 定することを目的とするものであり、本プロジェクトの開発戦略・計画がチュニジア政府におい て承認されるか、もしくは、今後策定される新たな国家経済開発計画等に組み込まれた後に具体 的なプロジェクトの検討が行われることを想定している。

また、本プロジェクトにおいて県ごとやセクターごとのマスタープランの作成や、特定のプロ ジェクトのF/Sの作成は行わないことから、本プロジェクトにおける直接的な環境影響は想定さ れない。

ここでは、チュニジアにおける一般的な環境影響評価(Environmental Impact Assessment:EIA) 及び用地取得の手続きについて、その概要を記述する。

3-1 環境社会配慮に係る法令 3-1-1 環境影響評価に係る法令

チュニジアの環境影響評価に係る主な法令については、以下のとおり。

(1)1998年8月2日付法律第88-91号(改正1992年11月30日付法律第92-115号)

環 境 保 護 庁(Agence Nationale de Protection de l’Environnement:ANPE) の 設 立 に 係 る 法 律であるとともに、環境破壊や環境汚染につながるすべてのセクターの事業に対するEIA の実施要領を定めたチュニジアの最初の法律である。

(2)1991年3月31日付政令第362-91号

EIA報告書の内容について、短期・中期・長期的な観点から事業が環境に与える影響に ついて評価、検討を行うために必要な調査項目を定めたもの。本政令の添付文書である

Annex 1 及び2にEIA報告書の作成・提出が義務づけられる事業がリストアップされてい

る。

(3)2005年7月11日付政令第2005-1991号

本政令は、上記の「1991年3月31日付政令第362-91号」を改正するものであり、チュ ニジアの環境影響評価上のカテゴリ分類(A/B)を規定している。

3-1-2 用地取得に係る法令

チュニジアの用地取得に係る主な法令については、以下のとおり。

(1)2003年4月14日付法律第2003-26号(改正1976年8月11日付法律第76-85号)

公共事業等にかかわる一連の用地取得に係る手続きを規定した法律。チュニジアでは、

公共事業の実施にあたって、強制的に法的土地収用を行うことが法律的に可能である。

3-1-3 環境基準

(1)排出基準(1989年Tunisian Standards NT 106.02)

工場等の施設から出る廃水を河川や海等の公共水域に排出する際に適用される水質基準 については、「1989年チュニジア基準106.02号」に規定されている。

本基準に規定された理化学的/生物学的試験項目及びそれぞれの基準値は表3-1のと おり。

表3-1 排出基準(理化学的/生物学的試験項目)

項 目 単 位 基準値

生物化学的酸素要求量 BOD mg/l < 30 化学的酸素要求量 COD mg/l < 90

浮遊物質 SS (Suspended Solids) mg/l < 30

アンモニア性窒素 Ammonia nitrogen mg/l < 15

全窒素 Total nitrogen mg/l < 50

亜硝酸塩 Nitrites mg/l < 5

硝酸塩 Nitrates mg/l < 30

全リン Total Phosphorus mg/l 3-5

糞便性大腸菌群 Fecal Coliform ppm/100 ml 5-20 10 4 糞便性連鎖球菌群 Fecal Streptococci ppm/100 ml 1 -20 10 4 出所:Tunisian Standard NT 106.02 1989年)

(2)騒音基準

チュニジアの騒音基準については、自治体ごとに定められており、恒常的な暗騒音の基 準値と工事中に適用される一時的に許容可能な騒音許容値(E dB (A):基準値に追加可能 なdB値)が定められている。

チュニス市の騒音基準の例については、表3-2のとおり。

表3-2 住宅地における騒音基準例

騒音基準(チュニス市) 工事中の騒音許容値 E dB (A) 規制地域

基準値(dB) 日中 6~7時、

20~22時 夜間 日中

7~22時

夜間 22~7時

交通量の少ない郊外住宅地 50 45 40 5 3

市街地域の住宅地 55 50 45

商業地域、交通量の多い地区の住宅地 60 55 50 出所:チュニス市資料

(3)振動基準

チュニジアでは、工事中の振動について定めた法律や基準は存在しないため、参考まで に下記に東京都の例を記載する。

環境社会配慮の観点から、実際の工事の際には、同様の基準値に従って工事を行う必要 がある、と考える。

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表3-3 東京都の工事中の振動基準例

工事種別 基準値

杭打ち工事 < 70 dB

掘削工事 < 70 dB

舗装工事 <70 dB

出所:東京都庁

3-1-4 国立公園・自然保護地域

事業対象地域であるチュニジアの南部地域には、以下の5カ所の国立公園と4カ所の自然保 護区が指定されており、エコツーリズム等、公園内での活動を制限するための規制区域等が設 定されているものもある。

表3-4 事業対象地域の国立公園

県 国立公園名 登録年 面積(ha)

GAFSA Jbel Orbata 2010 5,746

TOZEUR Dghoumes 2010 8,000

KEBILI Jebil 1994 150,000

MEDENINE Sidi Toui ― 6,315

TATAOUINE Sangher-Jabbes 2010 287,000

出所:チュニジア環境省資料

表3-5 事業対象地域の自然保護地域

県 自然保護区名 登録年 面積(ha)

GAFSA Djebel Bouramli 1993 50

Shelja 2009 675

GABES Bassin Oued Gabès 2010 522

TATAOUINE Oued Dkouk 2009 5,750

出所:チュニジア環境省資料

3-2 環境社会配慮に係る組織 3-2-1 環境管理に係る組織

(1)環境省(Ministry of Environment)

環境省は、持続的な環境管理に係る政策や環境基準を策定・実施する責任機関である。

チュニジアでは、2011年1月のチュニジアの政変以降、たびたび「環境省」の省庁再 編が行われており、「農業省」と統合されていた時期もあったものの、本詳細計画策定調 査が行われた2012年10月時点では、環境省(Ministry of Environment)が正式名称になっ ている。

(2)環境保護庁(National Agency for Environmental Protection:ANPE)

環境省の下部機関であり、「1998年8月2日付 法律第88-91号」に基づき、EIEに係る 一連の手続きの責任機関及び承認機関となっており、事業の実施機関がEIA報告書を作 成する際は、事業ごとにANPEが規定したTORに基づき評価を実施しなければならない。

また、ANPEは、持続的な開発に向けた環境管理に係る普及・啓蒙活動も実施している。

(3)廃棄物管理庁(National Agency for Waste Management:ANGed)

「2005年8月22日付政令第2005-2317号」に基づき、チュニジア全土の廃棄物管理を行

う実施機関であり、「全国廃棄物管理計画」等の廃棄物管理に係る政策や基準を策定・実 施する責任機関である。

3-2-2 用地取得に係る組織

(1)国土省(Ministry of State Properties and Land Affairs:MDEAF)

国土省は、土地及び不動産取引等にかかわる活動を監督する機関であるとともに、公共 事業等において、用地取得等が生じる場合、国土省が責任機関となって事業主が行う用地 取得の手続きを管理し、法的土地収用(Expropriation)が必要となった場合は、国土省の 監督の下、用地取得法「2003年4月14日付 法律第2003-26号」に基づく法的土地収用が 実施される。

(2)不動産鑑定調停委員会(Commission of Recognition and Conciliation:CRC)

法的土地収用(Expropriation)に係る一連の手続きを調整するため、各県に設置される 委員会。

用地取得対象となった土地の補償額の査定等を行うとともに、公共事業における事業主 と地権者との用地取得及び補償手続きに係る調整・調停を行う。

メンバーは、裁判所の判事を委員長として、県知事、県国土省用地課代表、県国土地理 院代表、市長、実施機関用地取得担当課代表他から構成される。

3-3 環境影響社会配慮に係る手続き 3-3-1 環境影響評価に係る手続き

チュニジアの環境影響評価に係る手続きについては、以下のとおり。

現状のチュニジアのEIAの手続きでは、EIAは、環境面の影響評価のみを対象とし、住民移 転等の社会面の影響評価は含まれておらず、環境面のEIAの手続きの過程においても被影響 住民等を対象とした住民協議やパブリックコンサルテーションは義務づけられていない。

(1)カテゴリ分類

チュニジアの環境影響評価に係る手続きにおいては、まず、「1991年3月31日付 政令

第362-91号」のAnnex 1及びAnnex 2に基づき、事業の特徴に応じての環境影響評価上の

カテゴリ分類のカテゴリA、もしくはカテゴリB に分類が行われる。

EIA報告書の作成、提出が義務づけられる事業は、以下のとおり。

1) カテゴリA

「1991年3月31日付政令第362-91号」のAnnex 1に記載された以下の事業については、

カテゴリA に分類され、EIA報告書の作成、提出が義務づけられる。

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・日当たり処分量が20 t以下の容量の家庭ゴミ処分場

・建設資材、ガラス、セラミック関連工場

・医薬品工場

・鉄以外の金属製造工場

・金属加工工場

・油田、天然ガス田の開発

・日当たり採掘量が300,000 t以下の砕石場(砂利、大理石、陶土等)

・製糖、イースト工場

・織物染色工場、ジーンズ加工工場

・敷地面積5 ha以下の工業地区の開発

・敷地面積5~20 haの宅地開発

・敷地面積10~30 haの観光地区の開発

・化学繊維工場

・食品加工工場

・屠殺場

・自動車製造工場

・造船所

・飛行機工場

・魚介類の養殖場

・工業地区もしくは観光地区内における脱塩プラント施設の建設

・タラソセラピー等の温浴施設

・ベッド数300床以上のホテル

・紙類加工場

・プラスチック、ゴム製品(有機過酸化物)工場 2) カテゴリB

「1991年3月31日付政令第362-91号」のAnnex 2に記載された以下の事業については、

カテゴリB に分類されEIA報告書の作成、提出が義務づけられる。

・日当たり石炭・タール換算量500 t以上の原油精製工場

・300 MW以上の発電所

・日当たり処分量が20 t以上の容量の家庭ゴミ処分場

・危険(産業)廃棄物処分場

・セメント、石灰、石膏工場

・劇物取扱工場に指定された化学製品工場(農薬、殺虫剤、塗料、ワックス、次亜塩素 酸漂白剤等)

・製鉄所

・日当たり採掘量が30万t以上の砕石場(砂利、大理石、陶土等)、鉱物精錬事業

・製紙、セルロース工場

・鉄道、高速道路、橋梁、インターチェンジ等の建設

・滑走路の延長が2,100mを超える空港の建設

・港の建設(商業港、漁港、レジャー用マリーナ等)

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