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環境中の濃度とヒトへの曝露量

建物(病院、事務所、養護ホーム)で採取された屋内空気試料からは、2-エトキシエタノー

ルが 18.3 μg/m3 以下の濃度で検出され、古い建物(事務所、養護ホーム、学校)では、検出

される濃度は新しい建物より低くなっている(最大でも4.15 μg/m3)(Sheldon et al., 1988)。

日本の汚染された河川から採取された水試料からは、2-エトキシエタノールが 250~1200 μg/Lの濃度で検出されている(Yasuhara et al., 1981)。

得られたデータからは、2-エトキシエタノールとその酢酸エステルは、世界の多くの地域 の消費者製品にはあまり含まれていないことが示唆される。カナダのオタワで購入された 窓ガラス用洗浄剤、多目的洗浄剤、塗料、マニキュア除光液、染毛剤など、13 品目の消費 者製品(入手可能な情報に基づき、グリコールエーテル類が含有されていることが報告さ れている製品群)由来の放出物からは、2-エトキシエタノールは検出されていない(Cao,

1999)。カナダで使用が登録されている化粧用製品のうち、1 品目のマニキュア液には、報

告区分で>0.3~1%の 2-エトキシエタノールが含まれ、アイメイク製品と皮膚保湿液には、

それぞれ報告区分で>30%と>1~3%の酢酸2-エトキシエチルが含まれていた(Health Canada,

2001)。2-エトキシエタノールは、カナダで使用が登録されている 26 種類の木材防腐剤の

成分の1つである(<1.25%)(Ballantine, 1997; Health Canada, 1998a)。

米国からの以前の情報では、硬質表面用洗浄剤、床磨き剤、フロントガラス洗浄液など、

様々な消費者製品から、最大 5%の濃度の 2-エトキシエタノールが検出される可能性が示 唆されていた(Flick, 1986)。しかし、近年における「先進的な」洗浄剤の配合成分の一覧 を見る限り、2-エトキシエタノールや酢酸 2-エトキシエチルが含まれている製品は 1 つも ない(Flick, 1994)。(なお、これらのデータは、非常に多くの企業や組織が自発的に提示し ているものであり、米国で入手可能な消費者製品の配合成分の総覧に相当していない可能 性があることに留意すべきである。)米国で試験が行われたいくつかの消費者製品につい て、2-エトキシエタノールとその酢酸エステルの放出に関する追加データをTable 2に示す

(ただし、試験が行われた製品の数についてのデータは、二次的報告書には示されていな い)。EU 内では、2-エトキシエタノールと酢酸 2-エトキシエチルについて、自主的プログ ラムを設け、消費者製品用途やその他の曝露の管理が不十分な適用用途に対して販売する ことを制限している。スウェーデンにおける製品登録制度(Products Register)によると、2-エトキシエタノールとその酢酸エステルは、2001 年および 2002 年に消費者製品の成分と して収載されている(SPIN; http://195.215.251.229/ DotNetNuke/default.aspx)。

2-エトキシエタノールの環境中濃度が、ChemCAN4 のモデル化によって推定されている

(DMER & AEL, 1996)。これは、カナダで、環境における化学物質の転帰を推定するため に開発された、レベル III のフガシティに基づく地域モデルである。1997 年以前にカナダ で報告された2-エトキシエタノールの放出量として最も高かった数値は、1995年にオンタ リ オ 州 南 部 の 1 施 設 か ら 大 気 中 に 放 出 さ れ た 、 年 間 8 ト ン で あ る(NPRI, 1998)。

ChemCAN4 モデル化の対象地域として、「オンタリオ-混合樹林帯(Ontario―Mixed Wood

Plain)」が選択されている。2-エトキシエタノールは、0.913 kg/時の速度で、すべて大気中 に放出されたものとした。入力した化学的数値は、分子量 90.1 g/mol、蒸気圧 710 Pa、水 溶解性300000 mg/L、log KOW -0.32、ヘンリー定数0.213 Pa·m3/mol、大気中半減期55時間、

水中半減期 550 時間、土壌中半減期 550 時間、底質中半減期 1700 時間であった。環境特 性に関しては、総表面積169000 km2、水で覆われた面積率43.8%、空気の平均高度2 km、

平均水深20 m、平均土壌深度10 cm、空中滞留時間1.71日、水中滞留時間618日、環境温

度7.4ºC とした。オンタリオ州南部のChemCAN モデル化による 2-エトキシエタノールの

環境中濃度は、大気中6.9 × 10-2ng/m3、水中2.2 × 10-5μg/L、土壌中4.15 × 10-4ng/g(乾燥重 量)、底質中1.05 × 10-5ng/g(乾燥重量)であった。ChemCAN4モデルでは、地域全体の平均 濃度を推定するため、放出源周辺の実際の濃度は、モデルを用いて推定した濃度より高く なると予想される。

2-エトキシエタノールを使用する産業活動では、職業曝露を受ける可能性がある。曝露量

は、個々の作業内容や使用時のリスク軽減措置によって異なる。EU の、2-エトキシエタノ ールの生産に関与していたある施設で、1998~2000 年に採取した試料 70 検体の 8 時間加 重平均(TWA)濃度は、0.01mg/m3未満~5.3 mg/m3(中央値 0.01 mg/m3、95パーセンタイル 値3.0 mg/m3)であった(BfR, 2003)。

塗料などの調製品や製品の配合に係わる作業場における測定データが、German Workers’

Compensation Funds(BGAA, 1999)、Söhnleinet al.(1993)、Vincentet al.(1996)によって報告さ れている(Table 3を参照)。BGAA(1999)で報告されているデータは、混和、撹拌、溶解、

デカントなどの作業中に測定されたデータである。最も高い測定値は、デカントおよび撹 拌時に記録されている。Söhnleinet al.(1993)は、ニスの製造工場で、曝露を受けない週末 の2日後に測定を行ったが、Vincentet al.(1996)は、塗料やニスの製造中に測定を行った。

ドイツのMonitoring Authorities of the Federal Statesが報告している追加データによると、印 刷板用コーティング剤を製造中の労働現場のモニタリングでは、労働現場の空気中の 2-エ トキシエタノール濃度は、1.8~14 mg/m3(n = 10、8時間TWA)であったことが明らかにさ れている。ドイツのMonitoring Authorities of the Federal Statesは労働現場における測定をさ らに行っており、ラッカーの製造(ローラーのコーティング、配合容器の清掃、混和、充 填、ドラム缶入れ)中の2-エトキシエタノールの濃度が、3~10 mg/m3(n = 4)であったこと を報告している。

2-エトキシエタノールや酢酸 2-エトキシエチルを含有する調製品を労働現場で使用してい

いる間にこれらの化合物に曝露された事例に関するデータも得られている。2-エトキシエ タノールを含有する製品は、工業的かつ熟練を要する多種多様な作業で使用されている可 能性がある。適用業務は、手作業(Table 4 を参照)、吹きつけ作業(Table 5 を参照)、印刷 などの自動工程(Table 6 を参照)、電子部品の製造(Table 7 を参照)に細分することができ る。手作業には、ぬぐい操作、ロール塗り、刷毛塗り、浸し塗り、流し込みによるコーテ ィングなどがある。BGAA(1999)に記載されている手作業コーティングは、建設業や金属

加工・機械工学分野で行われている。最も高い測定値は、ニスびきや浸漬などの作業中に 記録された。Vincent(1999)が報告している曝露データは、別のエリアで清掃作業中に測定 されたものである。

Spareret al.(1988)は、造船所の塗装工を対象に産業衛生調査を行い、2-エトキシエタノール への曝露状況について報告している。6 回の交代制勤務時間にわたって採取した試料(検体

数は102、うち使用可能な検体数は90)より、空気中2-エトキシエタノール曝露TWAにつ

いて、範囲を0~80.5 mg/m3、平均値を9.9 mg/m3、中央値を 4.4 mg/m3と算定している。

1985 年頃~1990 年のグリコールエーテル類への職業曝露に関して、米国国立労働安全衛 生研究所(NIOSH)、米国労働安全衛生局(OSHA)、米国環境保護庁(EPA)によって集めら れたすべてのデータから、OSHA(2003)は、2-エトキシエタノールまたは酢酸 2-エトキシ エチルについて、8 時間 TWA 曝露濃度の幾何平均の推定を行い、グリコールエーテル類 製造と化学中間体製造では 0.06~0.3 mg/m3(2-エトキシエタノールとして計算)、金属吹付 塗装では0.02~14 mg/m3、インクの配合と塗布では0.4~14 mg/m3、半導体製造とプリント 回路基板製造では0.04~0.5 mg/m3という値を算出している。Veulemanset al.(1987a)は、ベ

ルギーの 78 ヵ所の工場で試料を採取し、塗装作業における 2-エトキシエタノールへの平 均曝露濃度を9.5 mg/m3(範囲1.4~210.3 mg/m3)と算定している。

塗料の吹付け塗りは、自動車の製造・修理、金属や木材の処理・加工、家具産業など、工 業的かつ熟練を要する様々な分野で行われている。塗料やコーティング剤の吹付け塗りで は、吸入曝露や経皮曝露が起こる可能性がかなり高い。化学物質が気化することによって 起こる吸入曝露に加えて、液滴エアロゾルが曝露源になる可能性がある。BGAA(1999)に 記載されている吹付け塗りは、建設業や木工業の他、電子技術産業や金属加工業で見られ るものであった。Vincentet al.(1994)には、航空産業における塗装作業が網羅的に説明され ている。塗装作業には、塗装表面清掃、塗料の調製と希釈、吹き付け塗装、塗装器具清掃 など、いくつかの工程がある。吹き付け塗装は、30 分間~90 分間交代で行われ、作業員 は通常、手袋、長靴、エプロンを着用し、吹き付け塗装中はエアーマスクも着用した。測 定データは、酢酸 2-エトキシエチルについてのみ得られている。測定結果は、2-エトキシ エタノールが含まれている配合物の吹き付け塗装の場合と同程度である。

自動適用は、主に印刷産業(スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷など)で行わ れている。BGAA(1999)に記載されている機械コーティングは、様々な産業分野で行われ ている。最も高い測定値は、スクリーン印刷の作業中に記録された。印刷産業については、

Vincent(1999)が、いくつかの工程(スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷)にお いて測定を行っているが、Vincentet al.(1996)は、スクリーン印刷産業で行った測定結果に ついて報告している。Ahrens & Jöckel(1996)は、製紙産業で測定された曝露濃度について 報告している。紙の仕上げ処理や包装の現場で、1974~1993 年に、2-エトキシエタノール の測定が24回行われた。90パーセンタイル値は39 mg/m3、最大値は78 mg/m3であった。

測定方法や試料採取方法に関する情報はない。また、測定時の作業の種類(切り分け、印 刷、折りたたみ、包装など)が不明であり、労働現場に局所排気装置が設けられていたか どうかの情報も得られていない。

中国で労働者を対象に行われた調査では、3 つの感光板製造工場における 2-エトキシエタ ノールへの平均曝露濃度が18.7 mg/m3~203 mg/m3 (Gao et al. 1997)、印刷産業における 2-エトキシエタノールへの曝露濃度が3.1 mg/m3~159 mg/m3(n = 56)(Liu et al., 1999)と報告さ れている。

6.1.2 2-プロポキシエタノール

環境中の2-プロポキシエタノールの濃度に関するデータは得られなかった。