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環境中での移動・分布・変化

5.1 2-エトキシエタノール

2-エトキシエタノールは、塗装工業用の溶剤として生産・使用された場合、様々な廃棄経

路で環境に放出される可能性がある(HSDB, 2004)。

2-エトキシエタノールは、大気中でのヒドロキシラジカルとの反応による半減期が、約 5

時間~4日間と推定されている(USEPA, 1985; Howard et al., 1991)。Joshiet al.(1982)は、ス モッグチャンバを用い、2-エトキシエタノールと窒素酸化物の比率を 2:1 として照射試験 を行い、大気中半減期を9.8時間と決定している。

Howardet al.(1991)は、非馴化好気的生分解による2-エトキシエタノールの半減期について、

地表水が7~28日間、地下水が14~56日間と推定している。2-エトキシエタノールは、水 溶性が高く、log KOWが低いため、浮遊固形物や底質への物理的吸着は、あまり多くないと 考えられる(USEPA, 1985)。

2-エトキシエタノールの土壌吸着係数(KOC)は、Sabljic(1984)の方法によって、113 と算出

され、土壌中での 2-エトキシエタノールの移動性は中等度であることが示されている

(USEPA, 1985)。ニュージーランドおよびフィジーの21ヵ所の土壌で測定された2-エトキ シエタノールの保持値は 8~178 mg/g の範囲にあり、この値は、これらの土壌の陽イオン 交換容量や水分含量測定値の多くと良く相関している(Churchman & Burke, 1991)。

土壌中の 2-エトキシエタノールの生分解に関するデータは、ほとんど得られていない。

Howard et al.(1991)は、非馴化好気的生分解による2-エトキシエタノールの半減期を、7~

28日間と推定している。2-エトキシエタノールは、土壌細菌Alcaligenes MC11の炭素源と して利用されることにより生物的酸化を受けて、EAAになる(Harada & Nagashima, 1975)。

Pseudomonas sp. 4-5-3、Xanthobacter autotrophicus EC1-2-1、および「MC2-2-1株」とまでし か同定されていない細菌も、炭素源として 2-エトキシエタノールを利用して、好気的に増 殖できる(Kawai, 1995)。

2-エトキシエタノールのlog KOW値である-0.32と、Lymanet al.(1982)が提示したlog BCF = 0.76 log KOW - 0.23の式を用いて、2-エトキシエタノールの生物濃縮係数(BCF)は、0.3と推 定される。したがって、水生生物における 2-エトキシエタノールの生物蓄積性は高くない と予想される。

大気中、水中、土壌中に放出された 2-エトキシエタノールの環境中分布が、レベル III の フガシティモデルを用いて推定されている(DMER & AEL, 1996)。2-エトキシエタノールが 大気中に放出された場合、平衡基準(Equilibrium Criterion:EQC)レベルIIIのフガシティモ デル化(Mackay et al., 1996)によれば、約50%が大気中に、約25%が土壌中に、約25%が水 中に存在することになると予想される。2-エトキシエタノールが水中に放出された場合は、

99%以上が水中に存在することになると予想される。2-エトキシエタノールが土壌中に放

出された場合は、約 75%が土壌中に、約 25%が水中に存在することになると予想される

(DMER & AEL, 1996)。

5.2 2-プロポキシエタノール

2-プロポキシエタノールは、塗装工業用の溶剤として生産・使用された場合、様々な廃棄 経路で環境に放出される可能性がある(HSDB, 2004)。

土壌中に放出された 2-プロポキシエタノールは、移動性が非常に高いことが予想される。

ヘンリー定数が1.5 × 10-3Pa·m3/molと推定されることから、湿った土壌表面からの揮発の 影響は重要ではないと予想されるが、実験室的に測定された387 Paという蒸気圧に基づく と、乾燥した土壌表面からの揮発は生じ得る。同じアルコキシエタノール類の 2-ブトキシ エタノールを用いた生物分解試験に基づいて、2-プロポキシエタノールは、土壌中や水中 で速やかに生物分解されると考えられる(HSDB, 2004)。

水中に放出された 2-プロポキシエタノールは、浮遊固形物や底質に吸着しないと予想され、

水表面からの揮発は実質的に無いと予想される。2-プロポキシエタノールは、上述の Lymanet al.(1982)の式を用いて計算したBCF値の推定値が0.7であり、log KOWの推定値が 0.08であることから、水生生物における生物濃縮は起こらないと考えられる。

大気中に放出された 2-プロポキシエタノールは、蒸気として存在すると予想される。気相

の 2-プロポキシエタノールは、大気中では、光化学的に生成されたヒドロキシラジカルと

の反応によって分解される。この反応の速度定数は、25ºCでは2.2 × 10-11 cm3/分子/秒と推 定されている。この値は、ヒドロキシラジカルの大気中濃度が5 × 105個/cm3 の場合の、2-プロポキシエタノールの大気中半減期(約18時間)に相当する(HSDB, 2004)。

レベル III のフガシティモデルを適用して EPIWIN(環境中運命推定用プログラムインター フェース)から出力させたところ、2-プロポキシエタノールは、52.9%が水中、45.4%が土 壌中、1.58%が大気中、0.0891%が生物相に分布していると予想された。半減期は、大気中 が12時間、水中が15日間、土壌中が15日間、底質中が60日間と推定されている(OECD, 2004)。