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環境中の濃度とヒトの曝露量

ヒトの健康に対するリスク評価を行う際の根拠となった、環境中濃度に関するデータ〔ほ とんどは、この CICAD の基礎となった国内評価を作成した国(カナダ)からのデータ〕を以 下に示す。

6.1 環境中の濃度

環境中の 2-メトキシエタノールの濃度に関するデータとして確認されたものは、ごくわず

かしかない(USEPA, 1986; IPCS, 1990)。大気、地表水、および土壌に含まれる2-メトキシ エタノールの濃度に関するデータとして確認されたものはないが、ヒトが曝露される複数 の媒体(飲料水、屋内・屋外空気など)中の 2-メトキシエタノール濃度を測定するためにカ ナダで行われた調査が 1 件確認された。この調査では、オンタリオ州グレータートロント 地域から 35 名、ノバスコシア州クイーンズ地区から 6 名、アルバータ州エドモントンか ら9名が、参加者として無作為に選択された。50名の参加者各人から、飲料水、屋内空気、

屋外空気、個人周辺空気の試料が 24 時間にわたって採取された。食品および飲料の試料 の分析では、2-メトキシエタノールの測定は行われなかった。2-メトキシエタノール濃度 は、飲料水の全試料で測定法の検出限界(0.6 μg/L)以下であった。同様に、屋内空気、屋外 空気、個人周辺空気のいずれの試料についても、検出されなかった(検出限界 5 μg/m3 未 満)(Conor Pacific Environmental Technologies Inc., 1998)。

2-メトキシエタノールの環境中濃度が、ChemCAN バージョン 4 を用いたモデル化によっ

て推定されている(DMER & AEL, 1996)。これは、レベルIIIのフガシティに基づく地域モ デルであるであり、カナダで、環境における化学物質の転帰を推定するために開発された。

カナダのオンタリオ州南部における 2-メトキシエタノールの環境中濃度は、ChemCAN モ デル化によって、空気中が0.146 ng/m3、水中が4.8  10-5 μg/L、土壌中が9.4  10-4 ng/g

(乾燥重量)、堆積物中が2.34 × 10-5ng/g(乾燥重量)と予測されている。ChemCANモデルで は、地域全体の平均濃度を推定するため、放出源近くの実際の濃度は、このモデルを用い て推定した濃度より高くなると予想される。

屋内空気中の2-メトキシエタノール濃度に関するデータを示す試験が 2 件、確認されてい る。うち 1 件はドイツで行われた試験で、教室の木製の床を2-メトキシエタノール含有製

品で目張りした後、屋内空気の試料が採取された。目張り後 10、18、25、35、52、および 90日目に採取した試料中の2-メトキシエタノール濃度は、それぞれ、220、150、180、160、

59、および26 μg/m3であった(Schriever & Marutzky, 1990)。もう1件のイタリア北部で行 われた試験では、1983~1984年に家庭から屋内空気試料を6検体採取し、質量分析検出器 を用いたガスクロマトグラフィーにより、数種類の有機汚染物質の分析が行われた。2-メ トキシエタノール濃度は、1つの検体が70 μg/m3であったが、残りの5検体は検出限界(明 記されず)を下回った(De Bortoli et al., 1986)。

1977年 6 月~1980 年 11 月に米国の12 の都市で行われた調査では、分析した飲料水中の 汚染物質の一つとして、2-メトキシエタノールが挙げられている(Lucas, 1984)。2-メトキ シエタノールの濃度に関する詳細は示されていないが、1 μg/L 未満であると言われている。

食品中の2-メトキシエタノールの濃度に関するデータは、確認できなかった。

2-メトキシエタノールなどのグリコールエーテル類は、塗料、塗料用シンナー、洗浄剤な ど様々な消費者製品に溶剤として使用されている。米国では、多目的洗浄剤には最大 2%、

金属用洗浄剤には最大 6%、2-メトキシエタノールが含まれていると思われる(Flick, 1986,

1989)。Versar Inc.(1986)は、ニスには 2-メトキシエタノールが 1.1%含まれていることを

報告している。Clinical Toxicology of Commercial Productsデータベースでは、「コーティン グ剤/インク」カテゴリー(塗料、ニス、封水剤、その他のコーティング剤、マーカー、その 他の類似品)の 1 製品と、「コーティング用シンナー/剥離剤」カテゴリーの 2 製品から、2-メトキシエタノールが放出されていることが報告されている(Hodgson & Wooley, 1991)。

National Aeronautics and Space Administration(NASA)/McDonnell Douglas Materials Testingデ ータベースに収載されている物質からの 2-メトキシエタノールの放出に関する要約による と、接着剤5製品から製品1gあたり1.2~30 μg(中央値: 製品1gあたり2.1 μg)、織物 1 製品から製品1gあたり0.33 μg、「ペン/インク」のカテゴリーに含まれる7製品から製品1g あたり1.6~960 μg(1製品あたりの中央値: 製品1gあたり38 μg/g)の2-メトキシエタノー ルが放出されている(Hodgson & Wooley, 1991)。

イタリアで行われた家庭用製品に多く見られる揮発性有機化合物(VOC)の試験では、大理 石、セラミック、およびリノリウム用の液体ワックス 1 製品から、2-メトキシエタノール がVOCの微量成分として検出されている(Knöppel & Schauenburg, 1989)。

カナダのオタワで購入された窓ガラス用洗浄剤、多目的洗浄剤、塗料、マニキュア除光液、

染毛剤など、13 品目の消費者製品(入手可能な情報に基づき、グリコールエーテル類が含 有されていることが報告されている製品群)の放出物から、2-メトキシエタノールは検出さ れていない(Zhu et al., 2001)。カナダで使用が登録されている化粧用製品のうち、マニキュ ア除光液の 1 製品に 2-メトキシエタノールが 30~100%含有されていることが報告されて

いる(Health Canada, 1998c)。また、2-メトキシエタノールが、観賞用植物用の殺虫剤成分 としても使用されているようであるが、業務用か消費者用かについては情報が得られてい ない(Health Canada, 1998b)。

台湾では、半導体銅張積層回路基板の製造工場の労働者27名について、2-メトキシエタノ ールの曝露量が評価されている(Shih et al., 1999b)。月曜日~土曜日に通常任務作業員と特 殊任務作業員(混合、充填と取り出し、清掃と保守などの作業に関わる)から、8 時間加重 平均(TWA)を与える作業空間空気試料が合計 149 件採取された。通常任務作業員 18 名の 8時間TWA曝露濃度は、平均2.3(標準偏差2.3)~平均31(標準偏差14)mg/m3で、週平均

14(標準偏差 8.1)mg/m3であった。特殊任務作業員 9 名の曝露濃度は、週平均 260(標準偏

差 350)mg/m3 であった。原材料の混合中と、コーティング機械の清掃中のピーク曝露濃度

は、それぞれ、平均 2200(標準偏差 590)mg/m3、平均 490(標準偏差 49)mg/m3であった。

別の試験では、作業場の管理対策を導入中の 6 ヵ月間にわたって曝露濃度をモニタリング した。コーティング部門の作業員集団29名のベースラインの平均濃度は、110 mg/m3(範囲

2.4~1000 mg/m3 )であった。6ヵ月後の調査で、この集団の空気中曝露濃度は、1.7 mg/m3

(範囲0.3~11 mg/m3)に低下していた(Shih et al., 2003)。

Sparer et al.(1988)は、産業衛生調査を行い、米国における造船所の塗装工の 2-メトキシエ

タノール曝露の実態を検討した。試料は、6 交代制の全ての勤務時間で採取された(n =

102)。調査の結果、2-メトキシエタノールの空気中曝露濃度(TWA)は、範囲 0~17.7

mg/m3、平均値 2.6 mg/m3、中央値 1.6 mg/m3であった。試料採取が限定的であったこと以 前の測定値はわずかな例しかないことから、これらのデータは通常または以前の曝露濃度 を過小評価している可能性が示唆されている。Veulemans et al.(1987)は、ベルギーの78の 様々な施設から 2-メトキシエタノールを採取し、結果を報告している。塗装作業における 曝露濃度は、平均値31.3 mg/m3、範囲5.6~136.9 mg/m3であった。

6.2 ヒトの曝露量

2-メトキシエタノールでは、利用できるモニタリングデータが限られているため、一般集 団の標準的な曝露量について、信頼できる推定値が算出できない。その代わり、環境媒体 と消費者製品からの 2-メトキシエタノール曝露量について、最悪の場合の推定値または高 く見積もった推定値が算出され、これらの経路からの潜在的な曝露の特徴が調べられてい る。

適切なデータが利用できる消費者製品のほとんどは、主として成人が使用するものである ため、導き出されている推定曝露量は、この年齢層のものしかない。なお、利用できるデ

ータが限られているため、一つの年齢群に関してさえ信頼できる摂取量を推定することは できない(特定の媒体からの取り込み量が年齢層によって異なるのは、環境媒体の取り込 み量と体重が年齢によって異なるためであるが、いずれにせよ、様々な曝露源からの曝露 量の変動との関連においては、この差異は小さいものと考えられる)。カナダの成人にお ける様々な曝露源からの 2-メトキシエタノールの摂取量について、最悪の場合の推定値ま たは高目に見積もった推定値と、推定の根拠とした仮定を、Table 2に要約する。

環境媒体のうち、利用できるモニタリングデータを使って、大まかでも曝露量を推定でき たのは、空気と水だけであった。この大まかな推定値は、カナダにおける多媒体調査で得 られた空気と水道水の検出限界に基づいているが、この調査では、50 例の参加者について 分析した空気と水道水の試料はすべて、2-メトキシエタノール濃度が検出限界を下回った

(Conor Pacific Environmental Technologies Inc., 1998)。ただし、検出限界が比較的高い値で はあったが、2-メトキシエタノールがこの 2 つの媒体から検出されなかったことは、この 数年間、カナダで 2-メトキシエタノールの使用量と生産量が減少していることを考えれば、

驚くにはあたらない。

これらの推定値に基づいて、カナダの平均的な成人の場合、2-メトキシエタノールの空気 中曝露濃度は5 μg/m3より高くはなく、経口曝露量は0.013 μg/kg体重/日より多くはないと 予想されるが、これらの値は、実際の曝露量より高いであろうと認識されている。加えて、

近年報告された最高放出量に基づいて、フガシティモデル化により予測した大気中および 地表水中の 2-メトキシエタノールの濃度は、これらの検出限界値より数桁低い値である。

したがって、媒体からの取り込み量の、最悪の場合の推定値または高目に見積もった推定 値(空気の場合は0.0011 mg/kg 体重/日、水の場合は0.000013 mg/kg 体重/日)は、消費者製 品における最悪の場合の曝露量の推定値より、はるかに小さい。

モニタリングデータで利用できるものはないが、2-メトキシエタノールは、主として産業 活動と消費者製品から空気中に放出されているため(空気以外の媒体への放出は報告され ていない)、食品は、おそらく、ヒトにおける 2-メトキシエタノールの主要な曝露源では ない。2-メトキシエタノールは、揮発性が高く、log KOW が−0.77 と非常に低いため、空気 中から食品中に移行する可能性は低い(実際には、たとえ、食品からの摂取量の推定が、

フガシティモデル化の結果からの外挿に基づいて行われたとしても、この値は、多媒体調 査の検出限界に基づいて、空気および飲料水について最悪の場合を想定して計算された値 よりも、まだ数桁小さい)。

同様に、土壌中の 2-メトキシエタノールへの曝露は、その放出パターンと物理・化学的性 質、およびフガシティモデル化の結果に基づいて、空気中に比べて、おそらくは無視でき るほど少ないと思われる。