• 検索結果がありません。

第 6 章 養豚業廃棄物処理における環境経済性評価

6.3 糞尿処理における環境経済性評価の検討

6.3.2 環境コスト

これまで畜産が郊外に追いやられた理由として,周囲の環境を悪化させてしまうこと が挙げられる。具体的には,糞尿による臭気や不衛生によって近隣住民の居住環境を悪 化させたと考えられる。今後,日本経済が世界経済の中で相対的に縮小していく中,畜 産業が生き残るためにはよりクリーンなシステム構築を進めていくことが必要になると 考えられる。しかしながら,環境保全のために莫大な直接コストをかけても割に合わな ければ意味がない。つまり,往々にしてトレードオフの関係とみなされるコスト負担と 環境保全の両者を進めていくことが求められる。そのためにも,環境負荷をコストに換 算することで,比較評価が容易となり,一般にも理解されやすくなる。環境負荷をコス トベースにするために環境影響評価手法が用いられるが,それを環境コストと定義す る

6-18)6-19)

ここで,環境コストの定義を簡単に説明する。図 -6.7 は財において完全競争市場に任 せた場合の均衡点( X , P )を示している。均衡点( X , P )は私的限界費用曲線と需要 曲線の交点である。これによって,財は市場における価格および生産量が求められる。

しかしながら,財を生産する際に環境に様々な影響を与えている。例えば,資源を投入 して製品が作られるが,その際に有害物質を排出するなどがあげられる。では,こういっ た環境への負荷が考えられておらず,社会全体に損失を与えていることが記されていな い。この環境への負荷を限界費用と名付けると社会的限界費用は私的限界費用に限界外 部費用を足し合わせたものと定義される(図 -6.8 の社会的限界費用曲線に相当する)。

この時,社会において適切な均衡点( X* , P* )は社会的限界費用曲線と需要曲線との交 点で表される

6-20)

F S T

I

C C C

C

C     たは糞尿分離方式に分かれ最終的に発酵槽にて発酵処理し,堆肥化される。尿は各自治

体の放流基準以下まで適正処理し放流,または養豚場内にて再利用されるのが一般であ る。糞尿混合処理方式とは,畜舎内から発生する糞と尿をピットと呼ばれる貯留槽に一 次的保管され,発酵槽へ輸送される。糞尿の水分が多いと発酵の促進が遅くなり電力消 費が嵩むため,糞尿混合処理方式が採用されるケースは減少傾向にある。一方,糞尿分 離方式とは,畜舎内から発生する糞尿を,傾斜を利用することで糞と尿に分離する方式 である。

以上のように,畜舎で発生した糞尿は養豚場内の処理施設に運搬し,堆肥化を行うと ともに汚水は曝気槽を使って浄化するなどの処理が行われるが,その間のいろいろな過 程で臭気が発生し,糞尿の処理方法によって周囲環境に与える影響度も変化する。この ため,今後,畜産業が生き残っていくために商品としての品質等は求められることはも ちろんであるが,それらに加えて周囲環境に摩擦の生じないような畜産経営が求められ ている。

そこで, 6.3 では養豚業全般について臭気などの問題を含めてどのように総合的にとら えるべきかをライフサイクルアセスメントや社会的費用などの考え方に準じて明らかに している。

6.3.1 糞尿処理における直接コスト

畜産における糞尿処理を行うためには,糞尿の輸送および糞尿の減容化,無害化処理 など様々なプロセスが必要となり,各プロセスにはコストを要する。本章では,実際に 企業が負担するコストを糞尿処理に関わる直接コストと定義する

6-18)6-19)

直接コストは,イニシャルコスト(初期投資)とランニングコストに大別できる。糞 尿処理に関わるイニシャルコストとは,糞尿処理に必要な機材等の購入費や建設費など 初期に必要な投資額と言える。一方,糞尿処理に関わるランニングコストとは,糞尿処 理を行っていくうえで支払い続けなければならないコストである。ランニングコストに は複数のコストが存在しうると考えられる。まず,輸送コストとは糞尿の輸送に要する コストを指す。畜産業における糞尿は家畜が収容されている畜舎にて排出されるため,

糞尿処理を行うための機材・施設に輸送するコストが必要となる。糞尿の処理コストは,

糞尿を減容化,また周囲環境に放出する際に糞尿が有する環境負荷の低減や無害化する ために必要なコストを指す。糞尿の処分コストとは,糞尿を堆肥化,または廃棄処分を 行うために必要なコストである。

糞尿処理に関わる直接コストは以下の算出式( 6-1 )で把握できる

6-18)6-19)

( 6-1 ) 𝐶𝐶

� ���

𝐶𝐶

� ��

𝐶𝐶

� ��

ここで, C :直接コスト(円), C

I

:イニシャルコスト(円), C

T

:輸送コスト(円),

C

S

:糞尿の処理コスト(円), C

F

:糞尿の処分コスト(円), W :糞尿の重量( t ), L : 糞尿の輸送距離( km ), T :輸送にかかる単価(円 /t-km ), S :糞尿の処理にかかる単価

(円 /t ), F :糞尿の処分にかかる単価(円 /t )である。

6.3.2 環境コスト

これまで畜産が郊外に追いやられた理由として,周囲の環境を悪化させてしまうこと が挙げられる。具体的には,糞尿による臭気や不衛生によって近隣住民の居住環境を悪 化させたと考えられる。今後,日本経済が世界経済の中で相対的に縮小していく中,畜 産業が生き残るためにはよりクリーンなシステム構築を進めていくことが必要になると 考えられる。しかしながら,環境保全のために莫大な直接コストをかけても割に合わな ければ意味がない。つまり,往々にしてトレードオフの関係とみなされるコスト負担と 環境保全の両者を進めていくことが求められる。そのためにも,環境負荷をコストに換 算することで,比較評価が容易となり,一般にも理解されやすくなる。環境負荷をコス トベースにするために環境影響評価手法が用いられるが,それを環境コストと定義す る

6-18)6-19)

ここで,環境コストの定義を簡単に説明する。図 -6.7 は財において完全競争市場に任 せた場合の均衡点( X , P )を示している。均衡点( X , P )は私的限界費用曲線と需要 曲線の交点である。これによって,財は市場における価格および生産量が求められる。

しかしながら,財を生産する際に環境に様々な影響を与えている。例えば,資源を投入 して製品が作られるが,その際に有害物質を排出するなどがあげられる。では,こういっ た環境への負荷が考えられておらず,社会全体に損失を与えていることが記されていな い。この環境への負荷を限界費用と名付けると社会的限界費用は私的限界費用に限界外 部費用を足し合わせたものと定義される(図 -6.8 の社会的限界費用曲線に相当する)。

この時,社会において適切な均衡点( X* , P* )は社会的限界費用曲線と需要曲線との交 点で表される

6-20)

F S T

I

C C C

C

C     たは糞尿分離方式に分かれ最終的に発酵槽にて発酵処理し,堆肥化される。尿は各自治

体の放流基準以下まで適正処理し放流,または養豚場内にて再利用されるのが一般であ る。糞尿混合処理方式とは,畜舎内から発生する糞と尿をピットと呼ばれる貯留槽に一 次的保管され,発酵槽へ輸送される。糞尿の水分が多いと発酵の促進が遅くなり電力消 費が嵩むため,糞尿混合処理方式が採用されるケースは減少傾向にある。一方,糞尿分 離方式とは,畜舎内から発生する糞尿を,傾斜を利用することで糞と尿に分離する方式 である。

以上のように,畜舎で発生した糞尿は養豚場内の処理施設に運搬し,堆肥化を行うと ともに汚水は曝気槽を使って浄化するなどの処理が行われるが,その間のいろいろな過 程で臭気が発生し,糞尿の処理方法によって周囲環境に与える影響度も変化する。この ため,今後,畜産業が生き残っていくために商品としての品質等は求められることはも ちろんであるが,それらに加えて周囲環境に摩擦の生じないような畜産経営が求められ ている。

そこで, 6.3 では養豚業全般について臭気などの問題を含めてどのように総合的にとら えるべきかをライフサイクルアセスメントや社会的費用などの考え方に準じて明らかに している。

6.3.1 糞尿処理における直接コスト

畜産における糞尿処理を行うためには,糞尿の輸送および糞尿の減容化,無害化処理 など様々なプロセスが必要となり,各プロセスにはコストを要する。本章では,実際に 企業が負担するコストを糞尿処理に関わる直接コストと定義する

6-18)6-19)

直接コストは,イニシャルコスト(初期投資)とランニングコストに大別できる。糞 尿処理に関わるイニシャルコストとは,糞尿処理に必要な機材等の購入費や建設費など 初期に必要な投資額と言える。一方,糞尿処理に関わるランニングコストとは,糞尿処 理を行っていくうえで支払い続けなければならないコストである。ランニングコストに は複数のコストが存在しうると考えられる。まず,輸送コストとは糞尿の輸送に要する コストを指す。畜産業における糞尿は家畜が収容されている畜舎にて排出されるため,

糞尿処理を行うための機材・施設に輸送するコストが必要となる。糞尿の処理コストは,

糞尿を減容化,また周囲環境に放出する際に糞尿が有する環境負荷の低減や無害化する ために必要なコストを指す。糞尿の処分コストとは,糞尿を堆肥化,または廃棄処分を 行うために必要なコストである。

糞尿処理に関わる直接コストは以下の算出式( 6-1 )で把握できる

6-18)6-19)