第 4 章 津波堆積物の処理における環境経済性評価
4.3 津波堆積物の環境経済性評価
災害で発生した津波堆積物の環境経済性評価に着目して,最適な処理方法ならびに広 域処理の是非を検討する。津波堆積物には,被災地由来の重金属といった有害物質や津 波による塩分が含まれているため様々な環境影響をもたらすと考えられる。本章では津 波堆積物の処理過程を通じて発生する環境経済性を評価対象とし,処理方法の違いに よって環境経済性がどのように変化するかを,時間軸を考慮して議論する。
4.3.1 環境経済性評価モデル
津波堆積物の処理における環境経済性評価を定量化する。具体的には,津波堆積物が 一次仮置き場を経て二次仮置き場に集積された状態からの処理を考え(図 -4.4 参照),一 連の処理過程を,仮置き場,中間処理,最終処分,再利用,および他県受入れに分類し,
項目別に定量化を行い,これらの総和を処理過程全体の環境影響度として評価を行う。
とを再認識し,東北の復興に向けて活動しなければならない。ここで,日本の地形的特 性から考えても,広域処理のネットワークを構築することは重要である。今後 30 年以内 の巨大地震の発生確率に関して,首都直下型地震および東南海地震ともに 70 %程度とい う数値が発表されている
4-6),4-8),4-9)。また,首都直下型地震が 4 年以内に発生する確率 が 70 %と試算した例もある。具体的な期間や確率はさておき,将来的に東日本大震災レ ベルの地震が起こり得ることは避けようのない事実である。さらに,首都圏で発生する 可能性を考慮すると今回の被害とは比較できないほどの経済損失ならびに物理的被害を もたらす。当然,膨大な量の災害廃棄物が発生すると考えられる。こうした状況で災害 廃棄物を計画的,且つ効率的に処理できるネットワークを構築することは非常に重要で ある。このような精神的,経済的,ならびに物理的背景を踏まえたうえ,より詳細な災 害廃棄物の処理状況を検討する。
4.2.3 処理における問題点
災害廃棄物(津波堆積物)の処理で広域処理がなぜ必要なのか,段階的に検討を試み る。まず,発生した災害廃棄物は被災場所から一次仮置き場へ運搬される。図 -4.3 に示 されるように,福島県を除いて一次仮置き場への搬入は進んでいる。つぎに,二次仮置 き場,さらには中間処理場へと運搬される。しかしながら,現状として被災地に処理施 設を建設する場所が不足しているのが問題となっている。災害廃棄物の処理が一次仮置 き場ならびに二次仮置き場でストップしている状況である。災害廃棄物を長期間放置す る際の問題点として,悪臭や飛散粉塵,有害物質による汚染,火災,ならびに倒壊等が 挙げられる
4-10)~4-12)。これらの環境影響は処理が長期化するほど,悪化すると考えられ る。また,仮置き場は集合住宅と競合して確保されているケースもあり,迅速な復興を 妨げるものである。つぎに,中間処理(焼却処理や脱水処理等)が施された災害廃棄物 は最終処分または再利用される。最終処分に関して,膨大な災害廃棄物量に対し被災地 の最終処分場が足りているとは言えない。これらの処分場は平時の廃棄物量に対して設 計されたもので,大量の廃棄物を投入するとリスクが発生する。廃棄物の安定化は時間 をかけて行われるものであるから,十分に有害物質等を分解できない可能性がある。ま た,最終処分場の力学的な安定性を低下させる可能性もあり,二次的な環境影響を発生 させてしまう恐れがある
4-12)。例えば,急激な荷重の増加で遮水工や排水設備が損傷し,
有害物質が流出し,地下水が汚染されるといったことが起こり得る。これらのリスクを
考慮すると,被災地において短いスパンで大量の災害廃棄物を最終処分することは,非
常に危険性が高いと考えられる。再利用に関して,これは最終処分容量を低減させる意
味でも非常に重要である。しかしながら,東日本大震災で発生した災害廃棄物は大半が
津波を被っており,通常より遥かに再利用を行うのが難しい。このように,一連の処理
過程において経験値が通用しない部分が多く,処理全体にリスクを含んでいると考えら
れる。
上記した様々な理由から広域処理の必要性が考えられるが,住民の反対もあり,思う ように処理が進んでいないのが現状である。主な理由として挙げられるのは,災害廃棄 物の受入れにおける安全性の問題である。すなわち,広域処理は処理のスピードを向上 し得るが,他の都道府県に環境負荷を拡散させてしまう可能性を含んでいることが問題 点として挙げられる。よって,広域処理を行う際の環境影響を適切に評価することが必 要である。
0 20 40 60 80 100
仮置 き 場への 搬入 割合 ( % )
岩手県 3県合計 宮城県 福島県
2 4 6 8
経過時間 (月)
図 -4.3 災害廃棄物の一次仮置き場への搬入割合
4.3 津波堆積物の環境経済性評価
災害で発生した津波堆積物の環境経済性評価に着目して,最適な処理方法ならびに広 域処理の是非を検討する。津波堆積物には,被災地由来の重金属といった有害物質や津 波による塩分が含まれているため様々な環境影響をもたらすと考えられる。本章では津 波堆積物の処理過程を通じて発生する環境経済性を評価対象とし,処理方法の違いに よって環境経済性がどのように変化するかを,時間軸を考慮して議論する。
4.3.1 環境経済性評価モデル
津波堆積物の処理における環境経済性評価を定量化する。具体的には,津波堆積物が 一次仮置き場を経て二次仮置き場に集積された状態からの処理を考え(図 -4.4 参照),一 連の処理過程を,仮置き場,中間処理,最終処分,再利用,および他県受入れに分類し,
項目別に定量化を行い,これらの総和を処理過程全体の環境影響度として評価を行う。
とを再認識し,東北の復興に向けて活動しなければならない。ここで,日本の地形的特 性から考えても,広域処理のネットワークを構築することは重要である。今後 30 年以内 の巨大地震の発生確率に関して,首都直下型地震および東南海地震ともに 70 %程度とい う数値が発表されている
4-6),4-8),4-9)。また,首都直下型地震が 4 年以内に発生する確率 が 70 %と試算した例もある。具体的な期間や確率はさておき,将来的に東日本大震災レ ベルの地震が起こり得ることは避けようのない事実である。さらに,首都圏で発生する 可能性を考慮すると今回の被害とは比較できないほどの経済損失ならびに物理的被害を もたらす。当然,膨大な量の災害廃棄物が発生すると考えられる。こうした状況で災害 廃棄物を計画的,且つ効率的に処理できるネットワークを構築することは非常に重要で ある。このような精神的,経済的,ならびに物理的背景を踏まえたうえ,より詳細な災 害廃棄物の処理状況を検討する。
4.2.3 処理における問題点
災害廃棄物(津波堆積物)の処理で広域処理がなぜ必要なのか,段階的に検討を試み る。まず,発生した災害廃棄物は被災場所から一次仮置き場へ運搬される。図 -4.3 に示 されるように,福島県を除いて一次仮置き場への搬入は進んでいる。つぎに,二次仮置 き場,さらには中間処理場へと運搬される。しかしながら,現状として被災地に処理施 設を建設する場所が不足しているのが問題となっている。災害廃棄物の処理が一次仮置 き場ならびに二次仮置き場でストップしている状況である。災害廃棄物を長期間放置す る際の問題点として,悪臭や飛散粉塵,有害物質による汚染,火災,ならびに倒壊等が 挙げられる
4-10)~4-12)。これらの環境影響は処理が長期化するほど,悪化すると考えられ る。また,仮置き場は集合住宅と競合して確保されているケースもあり,迅速な復興を 妨げるものである。つぎに,中間処理(焼却処理や脱水処理等)が施された災害廃棄物 は最終処分または再利用される。最終処分に関して,膨大な災害廃棄物量に対し被災地 の最終処分場が足りているとは言えない。これらの処分場は平時の廃棄物量に対して設 計されたもので,大量の廃棄物を投入するとリスクが発生する。廃棄物の安定化は時間 をかけて行われるものであるから,十分に有害物質等を分解できない可能性がある。ま た,最終処分場の力学的な安定性を低下させる可能性もあり,二次的な環境影響を発生 させてしまう恐れがある
4-12)。例えば,急激な荷重の増加で遮水工や排水設備が損傷し,
有害物質が流出し,地下水が汚染されるといったことが起こり得る。これらのリスクを
考慮すると,被災地において短いスパンで大量の災害廃棄物を最終処分することは,非
常に危険性が高いと考えられる。再利用に関して,これは最終処分容量を低減させる意
味でも非常に重要である。しかしながら,東日本大震災で発生した災害廃棄物は大半が
津波を被っており,通常より遥かに再利用を行うのが難しい。このように,一連の処理
過程において経験値が通用しない部分が多く,処理全体にリスクを含んでいると考えら
ドキュメント内
廃棄物の処理・再利用における環境経済性評価に関する研究
(ページ 74-78)