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悪臭防止のためのコストの算出

第 6 章 養豚業廃棄物処理における環境経済性評価

6.6 調査結果に基づく環境経済性評価および考察

6.6.3 悪臭防止のためのコストの算出

( a )割引率 3%

( b )割引率 6%

図 -6.17 B 牧場における直接コスト等の内訳( 1 )

( a )割引率 3%

( b )割引率 6%

図 -6.17 B 牧場における直接コスト等の内訳( 1 )

6.6.3 悪臭防止のためのコストの算出

( 1 ) 臭気防止コストの定量化

養豚業において糞尿に起因する臭気に関して簡便に利用できる環境影響評価手法はい まだ確立したものはないとみられる。悪臭問題を定量的に評価する難しさは,その発生 ポイントの多様さもあり,発生および伝播のプロセスを簡便な形で明確化する難しさと

0 1000000 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000 7000000 8000000 9000000

PQ導入前(min) PQ導入前(ave) PQ導入前(max) PQ導入後

維持費(含む保安費)

電力(CO2) 輸送(CO2) 電力費 輸送コスト 人件費 イニシャルコスト

0 1000000 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000 7000000 8000000

PQ導入前(min) PQ導入前(ave) PQ導入前(max) PQ導入後

維持費(含む保安費)

電力(CO2) 輸送(CO2) 電力費 輸送コスト 人件費

イニシャルコスト

B 牧場は糞尿が発生するエンドポイント数は A 牧場と同等であることから,人件費およ び維持費は A 牧場と同等の水準がかかるものとした。

表 -6.15 B 養豚場における直接コストの算出に必要な要素 単位 PQ 導入前 PQ 導入後 備考 肥育頭数 頭 5,000 5,000

イニシャルコスト 千円 2,000 3,500

PQ

導入前)スクリュー コンベヤ

+

ダンプ

+

ホイル ローダ

PQ

導入後)

PQ

本体

+

配管

人件費 千円 7 7

ヒアリング結果

労働時間 時間 2 0 8

時間×

0.25

輸送単価 円 /t/km 70 0

ヒアリング(運搬会社)

輸送距離 km 0.12 0.12 B

牧場実施設計図面

維持費 千円 / 年 0 120

ポンピングチューブ

+

ブーツ

電力費 円 /kWh 14 14

東北電力

電力 kWh/ 日 0 3.8 (輸送のみ) B

牧場実施設計書

CO

2

単価 円 /t-CO

2

2,890 2,890

国土交通省

CO

2

排出係数 t-CO

2

/kWh 0 0.000423

国土交通省

輸送排出係数 t-CO

2

/tkm 0.000178 0

国土交通省

おける PQ 導入前および導入後とみなす臭気濃度を表 -6.16 に示す。

表 -6.16 に示された PQ 導入によって低減される臭気濃度の最小値,平均値,最大値を 用いて,臭気による貨幣換算係数 𝛼𝛼

は表 -6.17 のように算出される。

表 -6.16 PQ 導入前および導入後の臭気濃度

最小値 平均値 最大値

A 牧場 PQ 導入前の臭気濃度 181 373.9 657 PQ 導入後の臭気濃度 12 53 108 B 牧場 PQ 導入前の臭気濃度 58 172.9 353

PQ 導入後の臭気濃度 11 31.6 71

このようにして得られた 𝛼𝛼

はいわゆる原単位にはいくつかの大きな問題が指摘され,

適用にはきわめて慎重でなければならない。

第 1 に,分子の直接コスト等であるが,これは臭気防止のためのコストである。しか し, PQ 装置は単に臭気を防止するという効果に使われる訳ではなく,糞尿を運搬する という効果も同時に生まれている。実際, A 牧場および B 牧場は, 6.6.3 でみたように,

臭気を抑制するために導入したのではなく,運搬・投入効率を上げるために導入したの であって,副次的な効果として臭気も減少していると計測されるということである。す なわち, PQ 導入は運搬・投入プロセスの合理化を含んだ複数の効果があり,この中か ら臭気防止のためのコストを分離することは一般には困難である。理論的にも固定費を 含んだコストを 2 つの効果に分けるには困難な問題がある。このように考えると,ここ での計算は PQ 装置を臭気防止のみを目的に導入したという解釈を行うこととなる。し たがって,直接コストに PQ 導入のすべてを入れる場合の 𝛼𝛼

を比較すると,実際 𝛼𝛼

の値 はより小さい可能性がある。

第 2 に分子の臭気濃度の値に関するもので, 1 つにはどの時点の臭気を用いるのかと いう選択の問題がある。コストとの関連から言えばある特定時点の臭気ではなく,その 積分値が望ましいかもしれない。 2 つには PQ 導入によってどの程度臭気が低減したの かだけでなく,予防アプローチの観点からは目標とされた臭気濃度のレベルが問題とな る。厳密に言えば,得られた 𝛼𝛼

は仮に意味のあるものとしても,計測された臭気範囲で のみ有効であり,たとえばそれ以上の低い臭気濃度の範囲に対して機械的にこの原単位 をかけて環境コストを求めるといったことは慎まなければならない。それはこの技術に よる低減幅を超えているからである。実際,両牧場でこれ以上,臭気を低減しようとす れば,ほかの技術との組み合わせを考えなければならない。

第 3 に, 𝛼𝛼

の原単位としての問題である。 1 つめは,本件で明らかになったように同 一牧場内でも複数の 𝛼𝛼

からどの 𝛼𝛼

を選択するかという選択の問題である。 2 つめは牧場 間の生産規模や施設配置・建物種類などの影響が 𝛼𝛼

にどの程度影響しているかという問 臭気によって明確な被害が得られないなど複数の要因が絡まっているものと考えられる。

近年,研究が進んでいる二酸化炭素の貨幣価値原単位は,二酸化炭素の増加に伴い進 行する温暖化によって生じると予測される被害額から算出を行っている。また, LIME において貨幣価値換算原単位を算出する際には,有害物質によるエンドポイントを人間 の健康,社会資産,生物多様性,一次生産として定めることで,各エンドポイントにお ける被害を算出,統合化を行っている

6-17)

。一方,臭気が発生することで人間は不快を 感じることはあるが,病気に進展する,また死亡するということは考えにくい。また,

臭気によって現存する資源が失われることもあり得ない。しかしながら,臭気は周囲環 境に影響を与えているのは間違いないとみられる。

そこで,本章では,糞尿に起因する臭気に関するコストの計算方法の1つとして,臭 気低減を目的に PQ を導入することを想定し,臭気低減のために事業者が支払うコスト と臭気低減の関係を調べることとした。そこで, PQ 導入前および導入後の臭気減少幅 とそれを達成するために要した直接コスト等の数値の関係をみることとする。

具体的には,臭気を減少させることを目的に PQ を導入すると仮定し,その効果を数 値的に観察することを考える。 6.3 で議論した防止アプローチを適用する訳である。こ の時,以下式( 6-9 )によって, 𝛼𝛼

を求める。

𝛼𝛼

��導入によって発生した直接コスト等

��導入によって低減した臭気濃度(あるいは臭気指数)

( 6-9 )

すると, 𝛼𝛼

は単位当たり臭気濃度(あるいは臭気指数)を抑制するために必要な直接 コスト等となる。分子の数値は何らかの事由で分母の数値を目標に臭気を減少しなけれ ばならないとして事業者が負担する費用である。

分母の PQ 導入によって低減した臭気濃度(臭気指数も同様である。以下,省略)を 計算する際には, PQ 導入前および導入後の臭気濃度が必要となる。しかしながら, PQ 導入前の臭気濃度は測定されていないこと,また臭気濃度は同じ地点でも測定時期や測 定時間によって変動幅が大きいため確実性が低い。そこで, PQ 導入後の時点では糞尿 が放置されている地点はコンポストのみであるため, PQ 導入後のコンポスト地点の臭 気濃度を PQ 導入前の臭気濃度と仮定する。 6.5 の結果から, A 牧場におけるコンポスト 地点の臭気濃度は 181 ~ 657 となっており,平均値は 373.9 である。つぎに, PQ 導入後 による臭気濃度を PQ 導入地点の臭気濃度と仮定する。 PQ を導入している 4 地点におけ る臭気濃度は 12 ~ 108 となっており,平均値は 53 である。

一方, B 牧場の PQ 導入前の臭気濃度は PQ 導入後に測定した既存浄化槽の値であると

仮定する。また, PQ 導入後の臭気濃度は PQ 設置地点の臭気濃度と仮定する。既存浄化

槽の臭気濃度は 58 ~ 353 となっており,平均値は 172.9 である。 PQ 設置地点の臭気濃度

は 11 ~ 71 となっており,平均値は 31.6 となっている。ここで, A 牧場および B 牧場に

おける PQ 導入前および導入後とみなす臭気濃度を表 -6.16 に示す。

表 -6.16 に示された PQ 導入によって低減される臭気濃度の最小値,平均値,最大値を 用いて,臭気による貨幣換算係数 𝛼𝛼

は表 -6.17 のように算出される。

表 -6.16 PQ 導入前および導入後の臭気濃度

最小値 平均値 最大値

A 牧場 PQ 導入前の臭気濃度 181 373.9 657 PQ 導入後の臭気濃度 12 53 108 B 牧場 PQ 導入前の臭気濃度 58 172.9 353

PQ 導入後の臭気濃度 11 31.6 71

このようにして得られた 𝛼𝛼

はいわゆる原単位にはいくつかの大きな問題が指摘され,

適用にはきわめて慎重でなければならない。

第 1 に,分子の直接コスト等であるが,これは臭気防止のためのコストである。しか し, PQ 装置は単に臭気を防止するという効果に使われる訳ではなく,糞尿を運搬する という効果も同時に生まれている。実際, A 牧場および B 牧場は, 6.6.3 でみたように,

臭気を抑制するために導入したのではなく,運搬・投入効率を上げるために導入したの であって,副次的な効果として臭気も減少していると計測されるということである。す なわち, PQ 導入は運搬・投入プロセスの合理化を含んだ複数の効果があり,この中か ら臭気防止のためのコストを分離することは一般には困難である。理論的にも固定費を 含んだコストを 2 つの効果に分けるには困難な問題がある。このように考えると,ここ での計算は PQ 装置を臭気防止のみを目的に導入したという解釈を行うこととなる。し たがって,直接コストに PQ 導入のすべてを入れる場合の 𝛼𝛼

を比較すると,実際 𝛼𝛼

の値 はより小さい可能性がある。

第 2 に分子の臭気濃度の値に関するもので, 1 つにはどの時点の臭気を用いるのかと いう選択の問題がある。コストとの関連から言えばある特定時点の臭気ではなく,その 積分値が望ましいかもしれない。 2 つには PQ 導入によってどの程度臭気が低減したの かだけでなく,予防アプローチの観点からは目標とされた臭気濃度のレベルが問題とな る。厳密に言えば,得られた 𝛼𝛼

は仮に意味のあるものとしても,計測された臭気範囲で のみ有効であり,たとえばそれ以上の低い臭気濃度の範囲に対して機械的にこの原単位 をかけて環境コストを求めるといったことは慎まなければならない。それはこの技術に よる低減幅を超えているからである。実際,両牧場でこれ以上,臭気を低減しようとす れば,ほかの技術との組み合わせを考えなければならない。

第 3 に, 𝛼𝛼

の原単位としての問題である。 1 つめは,本件で明らかになったように同 一牧場内でも複数の 𝛼𝛼

からどの 𝛼𝛼

を選択するかという選択の問題である。 2 つめは牧場 間の生産規模や施設配置・建物種類などの影響が 𝛼𝛼

にどの程度影響しているかという問 臭気によって明確な被害が得られないなど複数の要因が絡まっているものと考えられる。

近年,研究が進んでいる二酸化炭素の貨幣価値原単位は,二酸化炭素の増加に伴い進 行する温暖化によって生じると予測される被害額から算出を行っている。また, LIME において貨幣価値換算原単位を算出する際には,有害物質によるエンドポイントを人間 の健康,社会資産,生物多様性,一次生産として定めることで,各エンドポイントにお ける被害を算出,統合化を行っている

6-17)

。一方,臭気が発生することで人間は不快を 感じることはあるが,病気に進展する,また死亡するということは考えにくい。また,

臭気によって現存する資源が失われることもあり得ない。しかしながら,臭気は周囲環 境に影響を与えているのは間違いないとみられる。

そこで,本章では,糞尿に起因する臭気に関するコストの計算方法の1つとして,臭 気低減を目的に PQ を導入することを想定し,臭気低減のために事業者が支払うコスト と臭気低減の関係を調べることとした。そこで, PQ 導入前および導入後の臭気減少幅 とそれを達成するために要した直接コスト等の数値の関係をみることとする。

具体的には,臭気を減少させることを目的に PQ を導入すると仮定し,その効果を数 値的に観察することを考える。 6.3 で議論した防止アプローチを適用する訳である。こ の時,以下式( 6-9 )によって, 𝛼𝛼

を求める。

𝛼𝛼

��導入によって発生した直接コスト等

��導入によって低減した臭気濃度(あるいは臭気指数)

( 6-9 )

すると, 𝛼𝛼

は単位当たり臭気濃度(あるいは臭気指数)を抑制するために必要な直接 コスト等となる。分子の数値は何らかの事由で分母の数値を目標に臭気を減少しなけれ ばならないとして事業者が負担する費用である。

分母の PQ 導入によって低減した臭気濃度(臭気指数も同様である。以下,省略)を 計算する際には, PQ 導入前および導入後の臭気濃度が必要となる。しかしながら, PQ 導入前の臭気濃度は測定されていないこと,また臭気濃度は同じ地点でも測定時期や測 定時間によって変動幅が大きいため確実性が低い。そこで, PQ 導入後の時点では糞尿 が放置されている地点はコンポストのみであるため, PQ 導入後のコンポスト地点の臭 気濃度を PQ 導入前の臭気濃度と仮定する。 6.5 の結果から, A 牧場におけるコンポスト 地点の臭気濃度は 181 ~ 657 となっており,平均値は 373.9 である。つぎに, PQ 導入後 による臭気濃度を PQ 導入地点の臭気濃度と仮定する。 PQ を導入している 4 地点におけ る臭気濃度は 12 ~ 108 となっており,平均値は 53 である。

一方, B 牧場の PQ 導入前の臭気濃度は PQ 導入後に測定した既存浄化槽の値であると

仮定する。また, PQ 導入後の臭気濃度は PQ 設置地点の臭気濃度と仮定する。既存浄化

槽の臭気濃度は 58 ~ 353 となっており,平均値は 172.9 である。 PQ 設置地点の臭気濃度

は 11 ~ 71 となっており,平均値は 31.6 となっている。ここで, A 牧場および B 牧場に