3 災害時要援護者支援指針 第3編
(2) 市町内部組織における名簿作成
市町内部で把握している災害時要援護者に関する情報等に基づき、避難行動要支援 者名簿を作成し、最新のものに更新しておく。
名簿作成に当たっては、居宅サービス計画(ケアプラン)やサービス等利用計画等 地域において作成された名簿や収集された情報などを加えることが望ましい。
避難勧告発令時等に、対象区域内の避難行動要支援者を迅速に特定・把握するため には、住所情報に加えて地図情報が不可欠であることから、市町内部で把握している 避難行動要支援者に関する情報を電子データ化、GIS 化をしておくことが望ましい。
※ 市町は保有する住民の個人情報を内部利用(目的外利用)できる。ただし避難行 動要支援者名簿の作成に限られる(災害対策基本法第49条の10第3項)。
【市町が有する災害時要援護者関係情報(例)】
担当部門 情 報 源 把握対象者
住民登録担当 住民基本台帳 高齢者・乳幼児・外国人
福祉担当
身体障害者更生指導台帳 要介護認定台帳
療育手帳交付台帳 精神障害者保健福祉手帳
身体障害者 要介護高齢者等 知的障害者 精神障害者
保健担当 妊娠届 妊産婦
【避難行動要支援者名簿に登載する情報(例)】
【避難行動要支援者名簿(例)】
番
号 氏名 性別
生年月日等
住所 電話番号
FAX 番号 避難先 同居者の 有無
避難支援 者の有無
利用中の医療・福 祉サービス
本人の 生年月日 年齢 状況
1 2
・
・
(3) 県健康福祉事務所における名簿作成
県は、健康福祉事務所(政令市、中核市を除く)で把握している難病患者等につい て、その身体の状況等を斟酌し、それらの情報を取り出せるよう整理するとともに、
最新のものに更新しておく。
※ 市町長は避難行動要支援者名簿の作成のために知事に対して情報提供を求めるこ とができる(災害対策基本法第49条の10第4項)。
・基本的な情報
対象者氏名、生年月日、性別、住所
・その他の情報 対象者住所・電話
同居家族の有無、同居家族名・続柄、利用している医療・介護サービス、かかりつけ医、
その他避難支援に必要な情報(身体の状況等) 等
【健康福祉事務所が有する災害時要援護者関係情報(例)】
担当部門 情 報 源 把握対象者
保健担当 要強力支援区分難病患者リスト 難病患者
(在宅人工呼吸器装着者)
(4) 地域内での名簿作成
自治会及び自主防災組織等の地域団体による見守り活動や声かけ運動、避難支援マ ップづくりなどの取り組みを支援し、個人情報の保護に配慮しながら地域内の災害時要 援護者を把握しておくよう働きかける。
その際、地域で活動する社会福祉協議会、NPO やボランティア、育児サークルとそ の支援者、障害者団体、外国人コミュニティ・支援団体などとの連携も図る。
なお、地域内に社会福祉施設等がある場合は、それらと連携を密にして、施設や入 所者の状況等を可能な限り把握する。
(5) 名簿の更新
住民の転入・転出、要介護認定、身体障害者手帳交付等の事務を通じて避難行動要 支援者名簿を定期的に更新し、最新情報を自治会等の避難支援等関係者に提供する。
また、地域においても災害時要援護者の動向の把握に努める。
2 避難行動要支援者名簿の共有 (1) 基本的な考え方
避難行動要支援者の安否確認や避難支援などを迅速に、漏れなく行うには、支援者 が避難行動要支援者の住所や身体の状況などの情報を事前に把握しておく必要がある。
災害に対しては住民みんなで対応する必要があるため、市町で把握した避難行動要支 援者名簿を平常時から自主防災組織等の地域団体に提供し、共有しておく。
避難行動要支援者の個人情報は、犯罪等に使われるおそれもあることから、共有に 当たっては情報管理を徹底する。
(2) 個人情報保護との関係 ① 個人情報の取り扱い
市町の保有する個人情報の取り扱いについては、市町の個人情報保護条例による ところとなっている。個人情報保護条例では、個人情報の目的外利用や第三者への 提供は原則禁止されている。
一方で、災害対策基本法の規定により、本人同意のある場合や、市町の条例に特 別の定めがある場合(「個人情報保護審議会の意見を聴き、公益上の必要があると認 めた時」といった個人情報保護条例上の例外規定を根拠とする場合を含む)は、平 常時であっても情報提供ができる。ひょうご防災減災推進条例の趣旨にも鑑み、各
西宮市では、「地域安心ネットワーク」の登録に当たり、高齢者については民生・児童委員 が随時受け付け、身体障害者については身体障害者手帳交付時に障害福祉課が直接受け付け ることとしている。
西脇市では、情報更新は地域で行うこととしている。
市町において条例の制定といった法制上の措置が行われることが望ましい。
② 適正な管理の方法
情報提供先には守秘義務が課されている(災害対策基本法第 49 条の 13)。どのよ うな情報管理措置を求めるかの具体的な内容は地域防災計画で定めることとなって いる(同第 49 条の 12)が、条例を制定する場合は、提供を受けた名簿情報の管理 方法(協定書の締結等)を併せて規定することも考えられる。また、個人情報の保 護に関する研修会を定期的に開催することが望ましい。
※ 個人情報保護法が改正され、自治会を含む全事業者に、個人情報収集時における 利用目的の明示や保管する個人情報の管理(漏洩防止のための適切な措置、誤りの 訂正手続き方法等の告知等)等が求められる。
【市町個人情報保護条例における例外規定の例と適用の考え方】
条文の例 考え方
本人の同意があるとき ○本人の同意の範囲内で利用・提供が可能である。
○郵送や訪問で本人の同意を得るのが一般的。包括的な同意を取 ることが望ましい。
○条例の定めや審議会で、積極的な拒否がない限り同意があった ものと推定する方式(逆手上げ方式)をとっている市町もある。
法令又は条例に定めがあ るとき
○法律又は別の条例、あるいは保護条例中の例外規定の追加によ る利用・提供することが定められた場合は可能である。
○本人の意に沿わない場合が起こりうることから、本人に対して 十分説明し、理解を得る必要がある。
個人の生命、身体又は財産 の保護のため緊急かつや むを得ないと認められる とき
○本人の同意がなくても(情報共有を拒否している場合でも)提 供が可能である。
○災害の直前・直後でないと提供できないため、避難支援には間 に合わないおそれがある。
○被災した災害時要援護者は震災等関連死の危険に直面している ことから、復旧期であっても福祉サービス事業者や市町域外か らの応援職員ならびに信頼できる支援団体等に積極的に情報を 提供し、安否確認と支援を実施するべきである。
明らかに本人の利益にな るとき
○災害時に命を守ることを目的としていることから、市町の判断 で利用・提供が可能である。
「相当の理由」「合理的な 理由」「公益上の理由」「特 別の理由」があるとき
「事務の執行に必要不可 欠」であるとき
○災害時の安否確認、避難支援等の支援を円滑かつ迅速に行うた め、平素から災害時要援護者情報を共有することは、「相当」、
「公益上」等の理由がある、あるいは、「事務の執行に必要不可 欠」であるといえ、市町の判断で、福祉部局の名簿を防災部局 で利用する等の目的外利用・提供が可能となる。
○利用・提供する個人情報の範囲、情報提供の相手方は、災害時 支援に必要な最小限とし、情報漏えい防止の徹底を図る必要が ある。
審議会の意見を聴いて、公 益上の必要その他相当の 理由があると実施機関が 認めるとき
○他の例外規定がない場合は、個人情報保護審議会の意見を聴い て利用・提供を決定する。
○災害時に命を守ることを目的としていることから、積極的に利 用するべきである。
避難行動要支援者に、名簿情報の共有に関する同意・不同意の確認を行うに当たり、
あらかじめ広報紙等で案内をしておき、情報共有の趣旨説明を兼ねて個別訪問を行う ほか、郵送(視覚障害者を対象とする場合は点字や SP コード等による対応、知的障害 者を対象とする場合はルビを付す等の配慮が必要)によって一斉に確認を取る等の方 法がある。どの方法を用いるにせよ、単に「同意」「不同意」の選択肢を設けるだけで はなく、不同意の場合はその理由も併せて確認することで、どのような点に不安を抱 いているのか、誤解をしているだけなのか等を把握することができる。
※ 個人情報保護審議会に諮問を行う場合は、公益性を立証するために、外部提供す ることの必要性や提供する範囲、提供する個人情報、管理方法(提供先との協定書 の締結等)等について、全体像を示すことで理解を得やすくなる。
[個人情報保護審議会に諮問して名簿の提供を図っている例(小田原市)]
[個別条例を制定している例①]
神戸市における災害時の要援護者への支援に関する条例
○主なポイント
①要援護者支援団体の規定 :団体からの申請により情報提供
②情報提供についての本人同意 :不同意の意思表示がないときは同意と推定 不同意者の情報についても緊急時には提供 ③守秘義務等 :団体と市との間の協定締結、名簿管理者の特定
[個別条例を制定している例②]
明石市避難行動要支援者名簿の提供に関する条例
○主なポイント
①情報提供についての本人同意:不要(情報提供を望まない場合は市に届出が必要)
②避難行動要支援者名簿 :小学校区コミュニティ・センターその他公共施設で保管