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漁業権等の消滅又は制限により 通常生ずる損失の補償

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第50条関係(漁業廃止の補償)

項 目 漁業廃止補償の適用について

【質疑の概要】

漁業廃止の補償はどういう場合に適用するのか、又その内容はどのよ うなものであるか。

【対 応】

漁業権等の消滅補償及び制限補償が漁業権という権利(財産権)に対す る補償であるのに対して、漁業廃止補償は、漁業権等の消滅或いは制限 の結果から、その経営体に生ずる損失を補償するものとして位置付けら れる。

漁業廃止補償は、事業の施行による漁業権等の消滅又は制限に伴い、

当該権利に係る漁場の相当部分が失われ、かつ、代替漁場等を確保する ことが著しく困難となり、漁業の継続が、客観的にみて不可能となった 場合の漁業経営上生ずる損失について補償するものである。これは、営 業補償における営業廃止補償、農業補償における農業廃止補償に類する ものである。

漁業権等の一部のみが消滅した場合に、漁業廃止の補償を行うか、漁 業の経営規模縮少を行うかは、漁業経営体の専業・兼業の別、残存漁場 面積、漁業権等の種類、漁業の将来性、地域等によって個々に判断する ことになるが、通常は3分の 2以上が失われれば漁業を継続することが 不能と認めてもよいかと思われる。

漁業を廃止することに伴い漁業経営上生ずる損失については、次のよ うに大別することができる。

・資本に関する損失補償……漁船、漁網、養殖施設等については、現 在価額(新品価格から償却分を控除)から 売却価格を控除して得た額、船小屋、集 魚施設等については、その施設の償却不 能分

・労働に関する損失補償……解雇予告手当相当額及び帰郷旅費相当 額、転業のため従業員を継続雇用する場 合は転業期間中の休業手当相当額

・所得に関する補償 ……転業に通常必要とする期間中(4 年以内) の従前の所得相当額

【その他参考】

項 目 転業期間について

【質疑の概要】

転業に通常必要とする期間について。

【対応】

漁業権等の消滅又は制限に伴い通常漁業の継続が不能となると認めら れる場合、転業に通常必要とする期間(4 年以内)中の従前の所得相当額 を補償するものとされている。

転業期間については、漁業経営の特性から営業又は農業の場合に比較 して長くかかるものと考えられるので、漁業廃止の場合は4年以内で決 定することとしている。その決定にあたっては、漁業の種類、漁業依存 度、専業兼業の別、兼業の種類、年齢等を考慮することになる。特に、

専業の場合と兼業の場合とでは、職業転換の難易度について差があるた め十分な検討が必要となってくる。転業に通常必要とする期間の判定に 当たっては、一般的に漁業所得に対する生活依存度によりおおむね、下 表のとおり、区別することができる。

生活依存度 年 数

%以下 年以内

20 1

〃 年以内

40 2

〃 年以内

60 3

〃 年以内

80 4

項 目 漁具等の売却損の算定について

【質疑の概要】

資本に関する損失のうち漁具等の売却損の算定について

【対 応】

漁船等売却できるものにあっては、当該漁具等の現有価額(新品価額

−償却分)から売却価額を控除して得た額を損失として、網干場等売却 することができないものにあっては、漁業廃止となることにより当該施 設の償却が不可能となる費用(償却不能分)を損失として算定することに なるが、現有価額及び売却価額は、行政の水産担当課、専門家の意見を 徴して認定することが必要である。この場合において、漁業権等の消滅 又は制限に係る補償(漁業権等の対価補償)の算定時に用いた数字と同一 の資料により認定することが必要である。

なお、漁具等の現有価額は、市場価格により算定するが、取引価格を 把握することが困難な場合は、簡便な方法としては当該漁具等の新品価 格(再建費・再投下経費)に当該漁具等の残価率を乗じて求めることがで き、残価率は、当該漁具等の残存耐用年数を全耐用年数(効用持続年数) で除して求めることになる。この場合、全耐用年数、再投下経費及び効 用持続年数は、県水産担当課や専門家の意見を徴して決定する必要があ る。なお、この場合においても漁業権等の消滅又は制限に係る補償の場 合の漁業権等の対価補償算定時の数字と一致させる必要がある。

項 目 漁業補償の相手方について

【質疑の概要】

漁業補償契約の相手方は誰になるか。

【対 応】

漁業権等の権利に対する補償及び通損補償(漁業廃止の補償、漁業休 止の補償、漁業の経営規模縮少の補償)を行うにあたって、契約の相手 方は誰になるのかが問題となる。

、 、 、

まず 権利に対する補償であるが 漁業権の権利名義者(漁業権者)は 法人たる組合であるから組合を契約の相手方とするのは当然である。た だし、この場合、交渉並びに契約の前提手続きとして、漁業権の消滅又 は制限について、個々の組合員より委任状を徴し総会の決議を得ておく

。 、 、

場合がほとんどである なお 対価補償を受ける者は契約当事者である 法人たる組合であることは当然のことであるが、組合が漁業権総有の表 見名義者であるという実情から、最終的実質的に補償を受ける者は、所 属組合員全員である。しかし、補償金配分等の処理については、総会の 決議によるところになる。

次に、通損補償の相手方であるが、原則的にいえば、通損をこうむる 者(個々の経営体)を当事者として契約を締結すべきである。しかしなが ら、補償実務上は、組合管理漁業の団体主義的、総有的な性格、及び組 合員の行う漁業実績をもとにして算出される漁業の対価補償と組合員個 人に帰属する通損補償とは、表裏一体の関係にあること、また、多数の 組合員と個別交渉することが事実上、不可能であること等に鑑み、対価 補償と一括して組合を補償交渉並びに契約の相手方としているのが通例 である。

項 目 漁業補償における被補償者等について

【質疑の概要】

公共事業の施行に伴う漁業補償において、補償金を支払う場合、どの ような点に留意すればよいか。

【対 応】

公共事業等の施行に伴う漁業補償において、その損失補償額を誰に支 払えばよいのか、常に議論されることであり 「公共用地の取得に伴う、 損失補償基準要綱」の解説のなかでも、共同漁業権、特定区画漁業権の ような漁業協同組合が漁業権者である場合でも、漁業権の権利主体は漁 業協同組合なのか、組合を構成する個々の組合員(漁民)であるのかにつ いては問題があり、漁業法上の解釈が必ずしも明確でないとした上で、

漁業補償を支払う相手は、漁業被害の内容に応じて、

( ) 漁業協同組合には、権利に対する補償(権利対価補償)1

( ) 組合を構成する個々の組合員には、通常損失の補償(通損補償)を2 支払う 2通りの補償があるとしている。

しかし、実務上は、( )の権利対価補償にしても( )の通損補償にして1 2 も漁業協同組合に対して、一括補償契約を締結している事例が殆どであ る。その前提として、漁業補償交渉を行う漁業協同組合は、組合を構成 する個々の組合員から委任状を提出させている。

これら漁業補償に関する委任状については、漁業法上からも、水産業 協同組合法上からも何ら規定されてはいない。ただ、水産庁の行政指導 として、漁業補償の契約締結にあたっては、漁業協同組合は関係する組 合員全員の同意をとって臨むようにしているが、その手法については何 ら述べていない。なお、補償金の配分については、漁業補償金に関する 委員会等を設置し、明確な配分の基準を作成して、公平かつ適正な配分 を行うよう行政指導を行っている。

漁業補償においてトラブルの生じるのは、殆どの場合漁業協同組合が 権利を所有する共同漁業権であり、その原因となるのが補償金の配分に 関する紛争である。そのとき間題となるのが漁業法第8条の「漁業協同 組合又は漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会が有する漁業 権」と「組合員の漁業を営む権利」との関係である。

この問題について、平成元年度に内水面と海区の漁業権に関しての裁 判事例があり、いずれも権利者である漁業協同組合が勝訴している。特 に、これら 2 つの裁判では 「漁業権」と「漁業を営む権利」との関孫、 を法的解釈において明確に示したものであり、漁業補償を担当する者に

平成元年 6 月 29 日判決水資源開発公団の筑後大堰建設事業に伴う漁 業補償に関する損害補償請求事件。

○海面の共同漁業権に係わる事例

平成元年7月13日判決建設省の一般国道10号線拡幅工事に伴う漁業 補償に関する総会決議無効確認事件。

内水面漁業においては、組合員の漁業を営む権利と委任状とが主な争 点であり、海面漁業においては、同じく漁業を営む権利と補償金配分に 関する総会の特別決議について争われている。

内水面と海面の場合とでは、多少表現の違いはあるが両者とも、組合 員の「漁業を営む権利」は、漁業協同組合という団体の構成員としての 地位に基づき、組合の制定する漁業権行使規則の定めるところに従って 行使することのできる権利であると解するのが相当であるとしている。

即ち、組合員の漁業を営む権利は、漁業協同組合の有する共同漁業権 から派生的に生じている権利であって、内部的な社員的権利であるとし ている。このため、漁業協同組合がその有する共同漁業権を適法に消滅 ないしは変更させ、その対価として漁業補償金を取得した以上は、個々 の組合員が組合と別個に独立して漁業補償交渉をして補償額を決定する ことは出来ないとしている。

内水面の場合には委任状の件について、漁業補償交渉が組合の有する 共同漁業権を対象としているのであるから個別に組合員からの委任は必 要ないとしている。漁業権の消滅又は変更などに伴う損失について、組 合の臨時総会において交渉委員を選定して漁業補償交渉を行っているの であるから、個々の組合員からの委任がなくともそれ自体違法とはいえ ないとしている。

海面の場合、補償金の配分について、法律に明文の規定はないとしな がらも、漁業権の放棄について総会の特別決議を要するとする水産業協 同組合法の規定に照らして、補償金の配分も総会の特別決議によって行 うと解するのが相当であるとしている。

前記の裁判事例において、漁業協同組合及び漁業協同組合連合会にの み免許される共同漁業権や特定区画漁業権等を対象とした漁業補償の場

、 、 、

合 その権利主体が組合であるから 補償交渉の相手方は組合であるが その組合は水産業協同組合法に規定されている、組合の総会により組合 員の半数以上が出席して三分の二以上の議決による特別決議により、漁 業権の消滅又は制限に伴う補償協議を行うこと等の賛否を決定し、その 総会で選出された交渉委員が補償交渉を行い、補償額等について決定す ることになんら違法性がないことが一層明確にされたことになる。この 交渉委員の選出については、総会の特別決議事項としての法的規定はな いが、漁業補償交渉が漁業権の喪失又は変更となることを前提としてい るものであるから、組合員の半数以上が出席し三分の二以上の多数によ って決議されることが、水産業協同組合法の解釈と運用からみて妥当と

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