第60条関係(隣接土地に関する工事費の補償)
項 目 借地人に隣接地補償ができるか
【質疑の概要】
隣接地の占有者が借地人であるが、道路の工事によって、隣接地面が 低くなり隣接地補償を行う必要が生じた。しかし、土地所有者は隣接地 補償の要求をせず、借地人が要求を行ってきた、借地人に隣接地補償を 行ってよいか。
【対 応】
隣接地補償については 「通路、みぞ…その他の工作物の新築、改築、
…盛土…をする必要があると認められるときは、これらの工事を必要と する者に対して その者の請求により…補償するものとする (参照第、 」 93 条道路法第70条、用対連基準第60条等)と規定しているが 「これらの、 工事を必要とする者」とは一体だれかということについて、具体的な規
。 、 、
定をおいていない 普通の場合これらの工事の実施に当たっては 土地 建物等の形質変更が伴うので、土地、建物等について処分権を持ってい る者が請求できるということについては疑問の余地がない。しかし、設 問のように土地の形質変更の権限のない借地人が宅地の盛土を要求して きた場合にどうするかという疑問が生じてくる。これは認めないとする と現実に損失をこうむっている借地人に酷であるといわなければならな い(土地所有者が請求しなければ泣寝入りというのはあまりにも不合理 である ) そこで 借地人には土地所有者の債権者代位(民法第。 。 、 423条) としての地位を認めることとし、借地人と補償交渉をし、土地所有者の 代理人として借地人に補償金を支払うことはさしつかえないものと思わ れる。大方の学説もそのような解釈である。
なお、設問の内容では、借地人が営業を行っているか否かは不明であ るが、隣接地補償については 「工事に要する費用」と規定しているの、 で文理上隣接地の工事期間中の営業収益減(期待収益は補償の対象とな らないが、工事を行うために現実に出費する動産移転料、仮住居に要す る費用(仮営業所)等については補償を行わなければならない場合もある と思われる。
また、補償の方法としては、隣接補償の性格上着工払い又は工事の代 行とする方法が妥当であると思われる。
項 目 隣接工事補償の土地代について
【質疑の概要】
さん所有に係る隣接地(建付地)について、隣接地補償として通路の A
設置に要する費用を補償しようとする場合、通路を設置するためには B さん所有(更地)の残地について工事をしなければならない。A さんに対 して隣接地補償として B さん所有の土地を買うための費用を補償する ことができるか。
【対 応】
設問に対しては、隣接地補償に係る基準(要綱第44条、用対連基準第 条)の一般的な解釈について、若干のコメントを加えておく必要があ 60
ると思われる。
、 「 」 、
その1は 法第93条において 残地以外の土地について と規定し 道路法(昭和27年法律第180号)第70条において「道路に面する土地に ついて と規定し 河川法(昭和」 、 39年法律第167号)第21条において 河「 川に面する土地について」と規定する一方、要綱及び用対連基準におい ては「残地等以外の土地に関して」と規定しているため、規定上内容が 異なるかという疑問である。条文上「について」と「に関して」と規定 の仕方が異なったとしても、その内容において、要綱又は用対連基準が 土地収用法等よりも広い意味を持つものではなく、等しく「残地以外の 土地について(「のために」という意味も含まれる。)通路等を設置する
」 、 。 、
必要がある と認めるときは と解釈するのが合理的であること 即ち 通路等の工事が隣接地に直接行われなくともその工事が隣接地のための ものであれば、隣接地補償の対象となり得ると考えてよい。
その 2 は 「工事に要する費用」に、通路等を設置する際に必要とな、 る場合の土地の権原を取得するために要する費用も含むかという疑問で ある。
一般に 「工事に要する費用」という場合には、土地の「権原の取得、
」 、 。
のために要する費用 を含めることについては あながち疑問ではない 現に、建設省設置法(昭和23年法律第113号)第12条第1号において
「建設工事」に 「土地の権原の取得」を含めて解釈をしているし、道、 路法第 12 条に規定する「工事」にも「土地の権原の取得」を含むと解 釈されている。
以上の前提のもとに、本問については A さんの土地について直接通 路等の工事を行わず、B さんの土地に通路等の工事を行う場合であって もAさんに対する隣接地補償を行うことができることになる。
さきに 「工事に要する費用」には、土地の権原を取得するための費、 用を含むとしたが、そのこと自体が「土地の買収費」を補償してよいと いうことではない。
土地の買収費(所有権を与えることとなる。)を補償することにより、
隣接地の所有者に対し財産増をもたらすこととなるばかりでなく、Aさ んが B さんの土地を必らず取得するという法律上の担保もなく、A さ んは B さんに対し「土地を売れ」という強制力も持たない。だとすれ ば、A さんが B さんに対し、法律上主張しうるものをもって補償額の 最高限度とすべきであろう。即ち、本問においては、A さんは B さん に対して囲繞地通行権(民法(明治29年法律第89号)第210条)を有する こととなるので通行により B さんに支払わなければならない償金(民法 第 212 条)に相当する額を補償する必要がある。この場合において囲繞
、 、 、
地通行権は その内容は地役権と大差がないので 償金に相当する額は 地役権設定費用をもって補償するのが妥当であり、土地の取得費を補償 することは妥当でない。また、地役権の設定対価を補償することは、隣 接地の所有者(Aさん)に財産増をもたらすものではなく、囲繞地の従前 の機能を維持するための費用であるからである。
なお、A さんは地役権の設定について B さんが応じない場合には、
相隣関係の一般的な義務履行を B さんが行っていないことになるので さんとしては、民法第 条第 項の規定により、裁判をもって履行
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の強制を要求することも可能である。
【その他参考】
「月刊用地」1972年1月
項 目 隣接土地に関する工事費の補償について
【質疑の概要】
隣接土地に関する工事費の補償について基本的な考え方は、どうなっ ているか(用対連基準第60条)。
【対 応】
平成 10 年の用対連基準及び同細則の改正で残地工事費及び隣接地工 事費の補償対象や算定基準が明確化され、隣接土地に関する工事費の補
、 、
償については 建物の移転が生ずるときの通常生ずる損失項目を規定し また、高低差に係る工事費の補償額については損失補償基準細則第36-2 による「別記4残地工事費補償実施要領(ただし、同要領第7条第2項 を除く。)」に準ずることとなった。なお、損失補償基準第60条には、
『建設省の直轄の公共事業の施行に伴う損失補償基準第 60 条の運用に ついて(昭和 44 年 3 月 5 日地方建設局及び北海道開発局用地課長会議 申し合わせ 』が存することを考慮する必要がありここで解説する。)
その申し合わせについては次のとおりである。
1 同条の補償は、同条に規定する工事をすることを必要とす る者から、当該事業に係る工事の完了の日から 1年以内に請 求があった場合に限り、行うことができるものとする。
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同種の規定は、道路法第 条第 項、河川法第 条第 項、法第 条第 2 項に規定されているが、用対連基準第 60 条においては、特にこ のような規定はない。しかし、従来の運用は、道路法、河川法、土地収 用法と同様に当該事業に係る工事を完了した日から1年以内に請求があ ったものに限っていたので、これを明文化したものである。道路法、河 川法等の規定による請求権は、民法第 724 条(損害賠償請求権の消滅時 効)に規定する不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間より短期の 除斥期間を定めているが、これは損失を受けた者が道路工事や河川工事 の施行による損失の発生を認めることが容易であり、かつ、補償の範囲 及び方法等を明らかにして補償の迅速な実施を確保している以上、権利 関係をすみやかに確定することが適当であるという理由にあり、用対連 基準においても同様であると考えられる。
工事の完了の日はいつかという点については特に明文はないので、現 況主義によらざるを得ないが、通常の場合は隣接土地についての損失が 明らかになる程度に工事が完了することを要すると思われる。ただ、道 路の工事であって国土交通大臣の行うものについては、工事の全部又は
と思われる。
、 、
次に 工事をすることを必要とする者から請求のあることを要するが 具体的に「工事をすることを必要とする者」とは誰かということについ ては、道路法、河川法、土地収用法において同様であるけれども、例に よってすこぶる抽象的であって、その判断に当たって苦慮することの一 つである。例えば土地所有者と建物所有者とが同一人である場合は良い としても、借地人が建物を所有している場合や、さらに借家人がいるよ うな場合に、借地人や借家人が、このような請求ができるかどうかとい う問題がある。隣接地補償は、通常の場合には、土地の形質変更や、建 物の形質変更を伴うことが多いであろうから、土地や建物の処分権を持 っている者が請求することができる、というのが、建前になろうかと思 われるが、借地人が民法第423条の規定により、土地所有者の代位権者 として行使することも可能と考えられるし、借家人についても借家人の 保護という見地から、代位の代位をも認めても良いと思う。しかし、こ のような場合であっても、具体的な事務処理に当たっては、後のトラブ ルをなくすために、土地所有者、借地人等の連名で請求させることが望 ましい。
なお、この請求は、口頭でも文書でも良いことはもちろんであるが、
事務処理に当たっては文書により請求させることのほうが一般的である と思われる。
2 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地を道路の新設又 は改築の用に供することにより、当該土地、当該物件の存す る土地、当該権利の目的となっている土地及び当該土石砂れ きの属する土地並びに残地等以外の土地(以下「隣接土地」
という。)と道路との間に高低差が生ずるため、隣接土地又 は隣接土地の上にある建物等の従前の利用が著しく妨げられ ると認められる場合においては、原則として、次により補償 するものとする。
隣接地補償は、本来事業損失としての性格を有するものを損失補償の 分野に取り入れたものであるが、なお不法行為の理論のはいる余地があ り、したがって、その損失が受忍の範囲をこえているかどうかが隣接地 補償を行う場合の重要な認定の要素となる。以下にでてくる基準に該当 する場合であっても必ず補償を行うというものではなく、その損失を補 償しなければ隣接土地又は隣接土地の上にある建物等の従前の利用が著 しく妨げられると認められる場合であって、しかもその損失が受忍の範 囲をこえていると認められる場合においてのみ補償の必要があるという ことを注意する必要がある。この意味を本項に規定したものであって、
隣接地補償においては特にこれらの判断を適確に行うとともに過当補償 とならないように認定する必要がある。