第 3 章 実験装置及び測定方法 30
3.2 測定方法
静電プローブ
軸方向,径方向から挿入した 4 本の静電プローブを用いてイオン飽和 電流Iis を測定し,電子密度を以下の式より求めた[40].
|Iis|= 0.61nee
√KTe mi
S [3.2]
ここでS はプローブの捕集面積である.本実験では,電子温度Te= 3 eV と仮定してイオン飽和電流Iisから電子密度neを求めた.静電プローブの 電極は,円柱型と平板型の2種類を用いた.各静電プローブの電極は,直
径0.8 mm,長さ 3 mmのタングステン棒と,直径 3 mmのタンタル円盤
を用いた.捕集面以外の電極部分は絶縁管(Al2O3)によってプラズマから 絶縁されている.軸方向より挿入されたプローブは,シャフトの先端部分 がL字型に曲げられており,先端部を回転させることで,磁力線に垂直な 方向の測定が可能である.径方向の測定範囲は,−0.35 m≤x≤0.35 m, 軸方向の測定範囲は,0.005 m ≤ z ≤ 0.8 m である.静電プローブの電
極は -90 V の電池と -70 V の直流電源でバイアスした.このバイアス電
圧は本実験中に得られたプラズマの浮遊電位よりも十分に低く,両バイ アス電圧において得られたイオン飽和電流が同程度である事を確認した.
イオン飽和電流は,電極と直列接続した抵抗(50 Ω,1 kΩ)間の電圧降下 を測定して決定した.
磁気プローブ
軸方向,径方向から挿入した 3 本の磁気プローブを用い,ヘリコン波 の振動磁場成分B˜ を測定した.磁気ループは楕円形状であり,長軸 13
mm,短軸 8 mmの 1 ターンで構成される.磁気ループ及び,プラズマ に直接接触する部分は,絶縁管及びアルミナセメントにより絶縁されて いる.波動計測で得られた各測定値はオシロスコープを用いて,サンプ リングレート 500 MS/s でデジタル化される.また高周波領域の信号を 測定するためには,同軸ケーブルの特性インピーダンスとインピーダン ス整合をとるような終端抵抗を直列に接続し,その両端の電圧降下を測 定する.
磁気ループ内の磁束が時間変化するとき,磁気プローブの巻線の電圧 差 VMP は,
VMP =−N SMP∂B
∂t cosψ [3.3]
となる[41].SMP は磁気ループの断面積,N は導線の巻数,B は磁場 強度である.ψ は磁気ループの面積ベクトルと磁場のなす角度である.
N SMPcosψが実効的な鎖交面積となり,磁気プローブの感度に相当する.
高周波領域の信号を計測する場合,同軸ケーブルの容量が静電容量と して働き,共振周波数 fr ∼ (2π√
LMPCMP)−1 で共振が生じる.LMP は 磁気ループ及び同軸ケーブルのインダクタンス,磁気プローブの静電容 量CMP は同軸ケーブルのみで決まるとすれば100 pF/m程度である.通 常,f < fr/2の条件を用いて磁気プローブ信号の計測周波数 f を決定す る.本実験の磁気プローブは,高周波帯(7 MHz) の振動磁場を計測する ために,断面積 SMP ∼92 mm2 で N = 1 ターンとしている.このとき,
LMP ∼5×10−8 H,CMP ∼100 pFとすれば,共振周波数fr はおよそ 70 MHzであることから,f < fr/2の周波数応答を満足する.また,磁気プ ローブの出力側に直流電圧のブロッキングのためにキャパシタを直列接 続した.実際に正確な合成リアクタンスを計算するのは難しく,高い周
波数領域までの応答と信号強度にはトレードオフの関係があるため,既 知の高周波磁場下で周波数特性を調べ,絶対値補正を行なう方が望まし い[42].
高周波励起磁場の計測のために,磁気プローブ信号 (高周波励起磁場の 軸方向成分 B˜z) と,励起アンテナに流れる高周波電流 I˜ant を測定する.
整合回路内に設置された電流プローブ (Pearson 6600)で測定したアンテ
ナ電流をz = 0 m における高周波励起磁場と見なし,参照信号として用
いる.磁気プローブ信号とアンテナ電流の振幅比 Bz/Iant 及び,位相差 φrel の軸方向分布を測定する事で,式[2.30]より高周波励起磁場の波動構 造を
B˜z(z)
Iant = Bz(z)
Iant sin[φrel(z)] [3.4]
と表すことができる.
装置長が伝搬波の 1/4 波長よりも短くなるような場合に,エバネッセ ント波と伝搬波の区別が困難になる時がある.そのような時には,励起 アンテナの誘導磁場 (エバネッセント波) を高周波励起磁場 (伝搬波) の 実部から差し引く事で,伝搬波の軸方向波数を求める事ができる.その 際,位相差 φrel(z) は,
φrel(z) = arctan
( B
z
Iantsinφrel
Bz
Iantcosφrel−BIantantcosφrel,ant )
[3.5]
と求める事ができる[32].ここで,Bant と φrel,ant は,それぞれアンテナ 誘導磁場の振幅と,磁気プローブ信号とアンテナ誘導磁場との位相差で ある.式[3.5]より2 点の軸方向位置のφrel の差を用ると,軸方向波数kz を求める事ができる.
実験に用いた静電プローブ及び磁気プローブの概略図を図3-4に示す.
本実験で測定した高周波励起磁場は軸方向成分のみだが,ループ断面を 径方向もしくは周方向磁場が鎖交するように配置すれば,多成分の同時 測定も可能となる[43].
Coaxial cable SUS304 pipe
(6 or 10 mm o.d.)
Insulation pipe (Al O ) (2 or 4 mm o.d.) Tungsten rod
(0.8 mm o.d. and 3 mm ) Tantalum plate
(3 mm and 5 mm o.d. )
(a)
(b)
ℓ
2 3
One turn loop
(10 mm × 8 mm : oval shape)
Driving direction (Axial direction)
Alumina cement
Rotational direction
Driving direction (Radial direction)
図 3-4: (a)軸方向静電プローブ (電極は円柱型),(b)径方向磁気プロー ブの概略図.