第 5 章 低アスペクト比ヘリコンプラズマ生成と制御に関する考察 55
5.2 入力パワーによるヘリコンプラズマの径方向分布変化
軸長と磁場強度を固定して,入力パワーに対するヘリコン波と電子密度 分布の変化について調べた.図5-2に,各入力rfパワーPrf におけるヘリ コン波の軸方向分布B˜z(z)/Iantを示す.終端板は,穴あき導体板[(a)-(c)], 導体板[(d),(e)],絶縁体板[(f)-(h)] を使用し,各終端板位置zEは 0.345 mとした.入力 rf パワー Prf ∼ 1 kW [(a),(f)],2 kW [(b),(d),(g)], 3 kW (h),4 kW [(c),(e)] とした.軸長を固定した時に入力 rf パワー を増加させると,軸方向波長モードが増加した.軸方向波長モードは,N
∼3/4 (a),5/4 (b),5/4 (c),5/4 (d),7/4 (e),1/2 (f),3/2 (g),2 (h) と見積られる.電子密度 (入力 rf パワー) の増加に伴い軸方向波長が短 くなり,軸方向波長モードが増加したと考えられ,この変化は分散関係 式と矛盾しない.短軸長ヘリコンプラズマ中のヘリコン波は,磁場及び 軸長を固定して電子密度を変化させても,軸方向境界条件に従う軸方向 波長モード N の定在波構造を持つ事が明らかになった.
更に詳しく電子密度と軸方向波長モードの関係を調べるため,図5-3に 異なる軸長,磁場配位,中性ガス圧力を用いた場合の,電子密度に対す る軸方向波長モードをまとめた.電子密度は z = zE/2 m,x = 0 m で 測定した値を用いた.電子密度の増加と共に軸方向波長モードが増加す る傾向が見られ,図5-2の結果と矛盾しないが,各電子密度で複数の軸方 向波長モードがある.この事より,電子密度の増減に影響を及ぼすパラ メータが,軸長,磁場強度,軸方向波長モードだけでない事が示唆され る.ヘリコン波の分散関係式によるとそれらは,径方向波数k⊥と励起周
波数であると予想される.以降では,本実験でヘリコン波の径方向波数 が変化した例について述べる.
0.00.10.20.3
-2
0
2
-2
0
2
-2
0
2 -10
1 -101 0.00.10.20.3
-1
0
1 0.00.10.20.3
-1
0
1
-1
0
1 (h)Prf
~3kW
(g)Prf
~2kW
(f)Prf
~1kW(a)Prf
~1kW (b)Prf
~2kW
~ B z
/ I an t
[ ar b.
u .]
(c)Prf
~4kW
Conductorwithholes (e)Prf
~4kW z[m]
InsluatorConductor (d)Prf
~2kW
図 5-2: 各入力rfパワーPinにおけるヘリコン波の軸方向分布B˜z(z)/Iant. 終端板位置zE = 0.345 m,穴あき導体板 [(a)-(c)],導体板 [(d),(e)],絶 縁体板[(f)-(h)] を使用した.入力rfパワーPrf ∼ 1 kW [(a),(f)],2 kW [(b),(d),(g)],3 kW (h),4 kW [(c),(e)].
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
0.1 1 10
Conductor w/ holes
Conductor
Insulator
n e
[10 18
m -3
]
N
図 5-3: 電子密度neと軸方向波長モード N の関係.3 種類の終端板を用 いて,様々な軸長,磁場配位,中性ガス圧力下の条件における実験値を プロットした.電子密度はz =zE/2 m,x= 0 m で測定した値を用いた.
入力パワーに対する電子密度とヘリコン波の径方向分布について考え る.図5-4に電子密度の径方向分布[(a),(d)],アンテナ電流と磁気プロー ブ信号の振幅比の径方向分布Bz(r)/Iant [(b),(e)],アンテナ電流と磁気 プローブ信号間の位相差の径方向分布φrel [(c),(f)] を示す.終端板には 絶縁体板を使用し,終端板位置zEは 0.345 mとして実験を行った.入力 rf パワー Prf ∼1 kW [(a)‐(c)],3 kW [(d)‐(f)] とし,測定位置は z = 0.25 m [(a)‐(c)],0.15 m [(d)‐(f)] で,定在波の腹の位置に対応する.a は 0.215 m (アンテナ半径) とした.図 (b),(e) 中の破線 (赤) は Bessel 関数の絶対値|J0(k⊥jx)|であり,j = 1 (b),2 (e)とした.
入力rfパワーPrf ∼1 kW時の径方向密度分布[図(a)]は,|x/a|<0.5 の領域でほぼ一定であり,入力パワーの増加とともに,密度とヘリコン 波の振幅の径方向分布が急峻化した.3 kW時の径方向密度分布 [図 (d)]
は,1 kW時の分布 [図(a)] に比べ急峻化し,3 kW時のヘリコン波の振 幅値の径方向分布[図(e)] は,1 kW時の分布 [図(b)]に比べ急峻化した.
また,図 (c) [(f)] の 1 kW [3 kW] 時 の位相差の径方向分布の |x/a|< 1 の領域では,位相差が180 [360] deg. まで増加した.
周方向モード数m= 0 のヘリコン波の径方向分布B˜z(r)は,Bessel関 数と同じ形状になり (式[2.30]参照),Bessel 関数のゼロ点及びプラズマ 半径に応じて径方向波数は離散値 (径方向モードと呼ぶ) を取る.図 (b) の実験値と|J0(k⊥1x)|が |x/a|<0.7で良く一致する事から,Prf ∼1 kW の場合は,主に j = 1 の径方向モード数のヘリコン波が励起されたと示 唆される.図 (e) の |x/a| <0.25の領域で,実験値と |J0(k⊥2x)| が似た 傾向を示し,図 (f) の位相差が 360 deg. まで増加した事から,Prf ∼ 3 kW 時には主に j = 2 の径方向モード数のヘリコン波が励起されたと考
えられる.
j ≥ 2の径方向モード数が支配的なヘリコン波の観測は,これまで数 例の報告に留まっている[50–52].今回,j ≥ 2 のヘリコン波が観測さ れた理由として,フラット型のアンテナを用いた事が影響したと考えら れる.フラットスパイラルアンテナを用いれば,巻き付け型のアンテナ と異なりプラズマ半径が真空容器で制限されにくく,さらには径方向に 真空層を介しているため,径方向波数が自由な値を取る事ができると考 えられる.j ≥2 の径方向モード数のヘリコン波の励起には,磁場配位 や密度分布形状が関係するとの報告[53, 54]があるが,本実験結果の解析 については,入力パワーによるプラズマ生成過程の変化,一様プラズマ 近似の適用,径方向の真空層の取扱いを含めて今後の課題である.また,
入力パワー Prf ∼ 3 kW 時における径方向密度分布の急峻化に関しては,
次節で述べるプラズマ平均密度が変化しない事から,文献[55]に見られ るような非線形拡散の効果を考える必要があると示唆される.
軸長及び磁場強度を固定し,入力パワーを変化させて電子密度及びヘ リコン波の測定を行なったところ,z 軸上において電子密度の増加と共に 軸方向波長モード N が増加した.ただし,同時に電子密度とヘリコン波 の振幅の径方向分布が共に急峻化し,径方向モード数 j の増加も観測さ れた.この結果より,非一様な径方向分布を得たい場合は,径方向高次 モードを励起する工夫が必要となる可能性がある.いずれの場合も,低 パワー(低密度) 時における径方向波数は,アンテナ径で決まるモード数 のヘリコン波を考えて大きな間違いはない.即ち,軸方向波長モード N が小さい時は,径方向波数はk⊥1 = 3.83/a として扱って良い.径方向高 次モードは,ヘリコンプラズマをさらに高密度化させたい場合に重要に
0.0 0.1 0.2 0.3
-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0
180 360 540 0 1 2 3 0.0
0.2 0.4 0.6 0.8
0 2 4 6 8
-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 0
180 360 540
(b)
|J 0
(k 1
x)|
P
rf ~ 1 kW
(f)
x / a (e)
|J 0
(k 2
x)|
Bz
/Iant
[arb.u.]
Bz
/Iant
[arb.u.]ne
[10
18 m
-3 ] (a) (d)
P
rf ~ 3 kW
ne
[10
18 m
-3 ]
(c)
rel
[deg.]
x / a
rel
[deg.]
図 5-4: 電子密度の径方向分布[(a),(d)],ヘリコン波の振幅比の径方向 分布 Bz(r)/Iant [(b),(e)],位相差の径方向分布 φrel(r) [(c),(f)] を示す.
アンテナ半径x = 0.215 m の時 x/a= 1 である.終端板には絶縁体板を 使用し,zE = 0.345 m とした.入力rfパワー Prf ∼ 1 kW [(a)‐(c)],3 kW [(d)‐(f)],破線 (赤) は a = 0.215 m とした |J0(k⊥jx)| を表し,j = 1 (b) ,2 (e) である.
なる.