• 検索結果がありません。

ヘリコンプラズマの生成効率

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 72-97)

第 5 章 低アスペクト比ヘリコンプラズマ生成と制御に関する考察 55

5.3 ヘリコンプラズマの生成効率

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.0

0.5 1.0

Insulator

p Ar

= 1.5 - 2.25 mTorr

n e

/P rf

[10

14 m

-3 W

-1 ]

z E

[m]

3.75 mTorr

CCP or ICP Conductor w/ holes

and Conductor

図 5-5: 終端板位置とプラズマ生成効率 ne/Prf の関係.穴あき導体板,

導体板,絶縁体板を使用し,入力rfパワーPrf = 1‐4 kW,アルゴンガ ス圧力pAr = 0.75‐3.75 mTorr.ただし zE = 0.055 mの場合のみ pAr 1.5 mTorr である.図中1013 m3/W にCCP,ICP放電で得られるプラ ズマ生成効率の上限値を示す.

5.4 ヘリコンプラズマ源の制御性に関する考察

5.4.1 高密度化に対する考察

式[5.1]は,左辺に電子密度,それ以外を右辺にまとめると,

ne =

(4π2N2 L2p

ωcec2 ω

0me e2

) [(3.83A πN

)2

+ 1 ]1/2

[5.2]

のように書き表すことができる.

式[5.2]のように,プラズマパラメータを左辺に,外部入力値及び装置

サイズに関係した量を右辺に分けると,電子密度を装置形状と外部入力 値で表現した事になる.実際に達成密度を考慮する際には,装置形状お よび外部入力値に加えて,壁損失等の効果を取り入れたモデルを考える 必要があるが,式[5.2]を用いてヘリコンプラズマ密度の外部パラメータ に対する特性を評価する事ができる.

また,A 1 の場合,式[5.2]右辺の大括弧内を 1 に近似できる.そ の場合,式[5.2]は ne N2Bz/(L2pf) と表せる.1/L2pfを固定して軸方 向波長モードN を増加させる事ができれば,低磁場領域で高密度放電の 維持が可能となり,これは5.1節の結果に相当する.径方向高次モードが 励起された場合,即ち径方向波数が増加した場合 (例えば k1 = 3.83/a から k2 = 7.01/a),Bz/(L2pf) が一定であれば,分散関係式より電子密 度は増加するが,径方向密度分布の急峻化を伴う場合があり,これは5.2 節の図5-4の例に相当する.N2Bz/f が変化しなければ,軸長Lp を短く することで電子密度が増加する.この場合,軸方向ロスの増加によりプ ラズマ生成効率が減少するために,より大きな入力パワーが必要になる (5.3節を参照).

対して,A1の場合は,右辺の大括弧内の第1項が支配的となるため,

アスペクト比Aが大きくなる事で電子密度が上昇する.その場合,実験室 においてkkz が成り立つため,分散関係式 [2.10]は kzk ∝f ne/Bz と簡単になるが,k を装置形状の関数として取り扱っても,kz はプラズ マ独自が決めるパラメータとして残る.

図5-6及び図5-7は,A = 0.1 の場合の f /Bz [MHz/T] 及びプラズマ 長 Lp [m] に対する電子密度 ne [1018 m3] の関係である.図5-6 (図5-7) は,それぞれ境界条件「絶縁体‐絶縁体」(「絶縁体‐導体」),軸方向波 長モード N = 1/2 (1/4)の場合の分散関係式を表す.図5-6,図5-7より,

A= 0.1 となる装置軸長 Lp を決めれば,励起周波数と磁場の比 (f /Bz) によりヘリコンプラズマ密度 ne を求める事ができる.例として図5-6よ り,Lp = 0.1 m,ne = 1018 m3 としたい場合は,f /Bz を 800 程度に すれば良い.この時,プラズマ生成効率及び電離度の範囲内で f /BzLp を変更する事で,ヘリコンプラズマを高密度化できる.この装置軸長 で,ne = 1019 m3 と高密度化したい場合は,f /Bz を 80 程度にすれば 良い.また Lp = 0.03 m と短軸長化しても,ne = 1019 m3 と高密度化 できる.実際は,短軸長化によるプラズマ生成効率の減少,アンテナイ ンダクタンスの変化による励起周波数の最適値,ヘリコン波の周波数領 域 (ωci ω ωce) を満たすような軸方向磁場強度 Bz を選択する必要 がある.また,軸方向磁場強度を変更する事で軸方向波長モードが変化 し,電子密度が変化する事も考慮する必要がある(5.1節を参照).

ne [1018m-3] (N = 1/2, A = 0.1) 100 10 1 0.1 0.01

100 101 102 103 104 105

f / Bz [MHz/ T]

0.01 0.1 1

Lp [m]

図 5-6: プラズマ実効長 Lp 及び f /Bz [MHz/T] に対する電子密度 ne [1018 m3] の関係 (N = 1/2).k1 = 3.83/a,A = 0.1を仮定して 計算した.

ne [1018m-3] (N = 1/4, A = 0.1) 100 10 1 0.1 0.01

100 101 102 103 104 105

f / Bz [MHz/ T]

0.01 0.1 1

Lp [m]

図 5-7: プラズマ実効長 Lp 及び f /Bz [MHz/T] に対する電子密度 ne [1018 m3] の関係 (N = 1/4).k1 = 3.83/a,A = 0.1を仮定して 計算した.

5.4.2 大口径化に関する考察

式[5.1]をアスペクト比A とそれ以外で辺々に分けると,

A= π 3.83

[( L2p2N

ωωpe2 ωcec2

)2

N2 ]1/2

[5.3]

となる.図5-8及び図5-9に,f ne/Bz [MHz 1018 m3/T]及びプラズマ長 Lp [m] に対するアスペクト比A の関係を示す.図5-8 (図5-9) は,それ ぞれ境界条件「絶縁体‐絶縁体」(「絶縁体‐導体」),軸方向波長モード N = 1/2 (1/4) の場合の分散関係式を表す.図5-8及び図5-9を用いれば,

装置サイズ(装置軸長,装置直径)と電子密度を決めた時の,励起周波数 と磁場の比(f /Bz)を求める事ができる.図5-8より,A= 0.1,Lp = 0.1 m,ne = 1018 m3 としたい場合は,f /Bz を200 程度にすれば良い.ヘ リコンプラズマ源の密度を維持したまま大口径化したい場合は,アスペ クト比A = 0.01 とし,f /Bz を20 程度にすれば良い.

具体例として,電気推進分野におけるプラズマ源の大口径化について 考察する.プラズマ源の断面S から流出する運動量流束から,推力F を 見積もると,F = (niu)(miu)S となる.ni はイオン密度,u は流速,mi はイオンの質量である.u = 1 km/s,ni = 1017 m3,アルゴンガス,直

径 0.5 m とすると,推力 F は約 1 mN となる.推力 1 mN 程度であれ

ば人工衛星の姿勢制御等に応用できる[56].図5-8より,軸長 0.1 mであ れば,f /Bz を 400 程度にすれば良く,商用周波数 13.56 MHz を用いる

と,0.0339 T の一様磁場強度が必要である.大口径化のために直径 1 m

(推力 F 5 mN) とすると,f /Bz を 200 程度にすれば良く,0.0678 T の一様磁場強度(励起周波数 13.56 MHz の場合) が必要である.

低アスペクト比ヘリコンプラズマの特性である軸方向波長モードで表

Aspect ratio, (N = 1/2) 100 10 1 0.1 0.01

100 101 102 103 104 105

f ne / Bz [MHz 1018m-3/ T]

0.01 0.1 1

Lp [m]

図 5-8: プラズマ実効長 Lp 及び f ne/Bz [MHz 1018m3/T] に対するア スペクト比 A の関係 (N = 1/2).k1 = 3.83/aを仮定して計算した.

される軸方向波長を持つ定在波構造のヘリコン波が励起されていれば,分 散関係中の波数を装置形状で表す事ができる.その時,装置形状と外部 入力値が決まれば電子密度が決まる.これは,低アスペクト比ヘリコン プラズマが,高アスペクト比の場合に比べて密度制御が容易である事を 意味している.

Aspect ratio (N = 1/4) 100 10 1 0.1 0.01

100 101 102 103 104 105

f ne / Bz [MHz 1018m-3/ T]

0.01 0.1 1

Lp [m]

図 5-9: プラズマ実効長 Lp 及び f ne/Bz [MHz 1018m3/T] に対するア スペクト比 A の関係 (N = 1/4).k1 = 3.83/aを仮定して計算した.

6 章 結論

大口径 (73.8 cm) の直線型ヘリコンプラズマ装置中に軸方向に可動な

終端板を設置し,低アスペクト比(アスペクト比 =装置軸長 /装置直径) ヘリコンプラズマの特性を調べた.本研究では,特に大口径化に有利な 構造を持つフラットスパイラルアンテナを用いたヘリコンプラズマ生成 を提案し,電子密度及び高周波励起磁場(ヘリコン波の磁場成分)の関係 からプラズマ特性を評価した.また,各種応用分野に対するヘリコンプ ラズマ源の適用を視野に入れ,穴あき導体板,導体板,絶縁体板の 3種 類について軸方向境界がヘリコンプラズマに与える影響についても調べ た.以下に,本研究で得られた結論を示す.

1. 短軸長ヘリコンプラズマにおける定在波構造の観測

短軸長化した際に現れる最も顕著な特徴として,軸方向波長が離散化 され,ヘリコン波が定在波構造を取る事が明らかになった.この事は,波 動の軸方向減衰長が装置長よりも十分長くなることで,ヘリコン波が,軸 方向境界条件により強い制約を受けるために起こる.短軸長ヘリコンプ ラズマ生成時にヘリコン波が定在波構造を示す事を明らかにした事によ り,定在波が励起されている限り高密度ヘリコンプラズマを生成する事

ができると結論できる.

ヘリコンプラズマは,軸方向波数,径方向波数,電子密度,励起周波 数,磁場強度の 5個のパラメータの選び方によって 1つの放電状態が決 定される.低アスペクト化されたヘリコンプラズマ中の定在波の軸方向 波長は,装置サイズで展開した軸方向波長モードを用いて表すことがで きるため,プラズマ自身が自由に決められるパラメータが存在せず,プ ラズマの密度は装置サイズ及び外部パラメータ (励起周波数,磁場強度) に依存する事になる.

本研究では,入力パワーを上昇させた時に電子密度が径方向に急峻化 し,同時に,径方向波数が増加する高次モードの励起が観測された.これ は本実験で用いた真空容器が,アンテナ径よりも十分に大きいため,径 方向に真空層を介している事が原因の一つとして考えられる.このよう な密度の不均一性は,外部チェンバーやリミター挿入による波動制御及 び,周方向モード数の制御により波動のパワー吸収分布を制御する事で 改善できる可能性があるが,今後の課題である.

2. 低アスペクト比ヘリコンプラズマ源の実現

本研究で得られたヘリコンプラズマの最も短い軸長は 55 mm であり,

この場合のアスペクト比は従来の装置よりも 2 桁程度小さな0.075 であ る.軸長を短くしても,従来の長軸の場合の密度と同程度となる 1017 -1018 m3 の電子密度を達成した.これにより低アスペクト比ヘリコンプ ラズマは,産業応用やプラズマ推進機応用に対して実用可能なレベルの高 密度プラズマ源になり得る事を示した.また,プラズマ生成効率はCCP

やICP 放電と比べても同程度か1 桁以上高く,ヘリコンプラズマは高密 度プラズマ源として従来の高周波プラズマ源よりも優れた生成効率を持 つ事を示した.磁場強度についても,1 mT の磁場強度までヘリコンプラ ズマ生成を確認し,量販されている永久磁石程度の磁場強度でも効率の 良いプラズマ生成が可能であることを示した.

本研究は,磁場や入力パワーについて広い領域にわたり高密度プラズ マを生成できるヘリコンプラズマが,非常に汎用性の高いプラズマ源と なり得る事を実証した.

付 録 A Trivelpiece Gould に漸近するモード

以下は,主に文献[36, 38]を参考にして述べる.

簡単の為に,一様密度・一様磁場及び,冷たいプラズマの近似を用いる.

ただし2.1節のように,電子の慣性項を無視しない.一様磁場 B0 =B0zˆ 中に励起される電場と磁場に関する方程式は,以下のマクスウェル方程 式により表される.

∇ ×E = −∂B

∂t [A.1]

∇ ×B = 1 c2

∂·E

∂t [A.2]

c は光速である.冷たいプラズマの誘電率テンソル は以下のように書 ける[57].

=



S −iD 0

iD S 0

0 0 P

 [A.3]

P 1

`

ω2p`

ω2 [A.4]

R 1

`

ω2p`

ω(ω+`ωc`) [A.5]

L 1

`

ω2p`

ω(ω−`ωc`) [A.6]

S = 1

2(R+L) [A.7]

D = 1

2(R−L) [A.8]

ωp`2 = n`q`2

m`0, ωc` = |q`|B0 m` ` = +1(`= i), 1(` = e)

下付きの` は粒子種を示し,iはイオン,eは電子である.ωp`, ωc` は各粒 子種におけるプラズマ角周波数及びサイクロトロン角周波数である.こ こで円柱プラズマを考え,以下のように電場及び磁場を仮定する.

E(r, θ, z, t) = E(r) expi(kzz+mθ−ωt) [A.9]

B(r, θ, z, t) = B(r) expi(kzz+mθ−ωt) [A.10]

z 軸とr−z 平面上の波数ベクトルがなす角を ψ と置いて,分散関係式 を導く.∂/∂θ im, ∂/∂z ikz, ∂/∂t → −iω と置き,Ez, Bz につい てまとめると,

(2+k2s)(2+k2f) (

Ez

Bz )

= 0 [A.11]

となる. ≡ ∇ −z∂/∂z であり,ks, kf は,以下の4次方程式の解 である.

SN4 + (Nz2(S+P)(RL+P S))N2 +P(Nz2−R)(Nz2−L) = 0 [A.12]

屈折率 Nz = ckz/ω, N = ck とする.アルゴンプラズマの場合に式

[A.12]を図示すると,図A-1となる.実験の典型的パラメータの f = 7

MHz,B = 0.005 T を用い,電子密度 ne = 1017,1018,1019 m−3 の 3 パ ターンの場合において計算を行った.図A-1より,kz を定めた際に,2 つの k を取る場合がある.位相速度の遅い (kが大きい) 波を遅波と 呼び,位相速度が速い(kが小さい)方の波が速波であり,ヘリコン波で ある.ヘリコン波は Nz2 =R で磁場に垂直伝搬方向に対してカットオフ (k= 0) となり,遅波は k の大きいところで Trivelpiece‐Gould (TG) モード[39]と呼ばれる静電波 (P Nz2+SN2 = 0) に漸近する(密度によっ て大きな変化はないため ne = 1018 m3 の場合の解曲線を示す).なお,

誘電率テンソルに対し,ωci ω ωce の条件を与えると,式[2.10]と 同様の結果が得られる.

式[A.12]を用いて,軸方向波数kz を固定し,電子密度 ne に対して径 方向の屈折率をみると,図A-2となる.実線が速波 (ヘリコン波),破線 が遅波である.実験の典型的パラメータのf = 7 MHz,B = 0.005 Tを 用い,アルゴンプラズマの場合において計算した.本実験で計測された 軸方向波数 kz = 10, 20, 30, 40, 50 m1 の領域における計算値を示す.

ω > ωLH では,速波と遅波が結合する.ωLH は低域混成角周波数であり,

次式で表される[58].

ω2LH = ωceωci2ci+ωpi2)

ωpi2 +ωciωce ∼ωceωci [A.13]

右辺の近似を行う際に,ωpi ωci を用いた.f = 7 MHz として計算す ると,およそ 0.068 T 以下で速波と遅波が結合する.図A-2より,遅波 は低密度領域で励起されるのに対し,速波 (ヘリコン波) は密度が高い領 域でしか励起されない.この結果から,プラズマが低密度時にはアンテ ナ近傍電場による電子の加速や,遅波による電子の加熱によりプラズマ が生成され,さらに密度が上昇していくと,ヘリコン波が励起され高密 度が維持されると考えられているが,ヘリコンプラズマの生成機構につ いては完全に明らかにはなっていない.

高密度ヘリコンプラズマの生成機構として,まず電子の衝突による電 離や,無衝突プラズマ中における波と共鳴粒子との相互作用によるラン ダウ減衰が考えられた.しかし衝突による電離のみでは電子の加熱機構 の説明が不可能であるという指摘がなされ[59],生成機構として不十分 であると考えられた.その後ランダウ減衰によるヘリコンプラズマ生成 の可能性が示唆された[37].後にランダウ減衰を否定する報告[60]がな されたが,現在でもランダウ減衰がプラズマ生成に寄与しているという 報告[35]があり,未だに議論が続いている.しかし近年になって,高効 率のプラズマ電離の説明にヘリコン波と遅波のモード変換によるシナリ オがShamrai らにより提唱された[61].文献[61]では,ヘリコン波と遅 波を考慮した計算モデルによるプラズマ抵抗の密度依存性の計算結果が,

アンテナ構成や磁場と圧力によらず,実験的に得られたものとよく一致 した.文献[62, 63]では,ヘリコンプラズマ中で遅波の存在が実験的に確 かめられたが,ヘリコン波と遅波のモード変換が高効率プラズマ生成機 構の直接の証拠である事は実験的に確認できていない.

これまでの研究でヘリコンプラズマの特性は明らかになっているが,未

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 72-97)

関連したドキュメント