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涵養地下水の揚水計画

ドキュメント内 フロンティアプロジェクト (ページ 43-51)

被圧帯水層B(新第三紀)に貯留された地下水は,図4-9に示す深井戸を設置することによ り取水可能である.しかし深井戸を設計する場合,井戸間の相互関係による影響や得られる 効果や費用などを比較して,適切な規模のプロジェクトを想定する必要がある.そこで本論 では,高松平野における新第三紀被圧帯水層Bの平均的な水理地質条件(層厚や透水係数,揚 水降下水位低下量等)を考慮して,深井戸の設計・設置条件を(1)最大地下水位降下量(SW): 5m,(2)井戸半径(r):0.25m,(3)井戸設置箇所:病院・学校の公共施設とした地下水 の揚水計画を設定した(図4-9参照).

井戸影響半径Rの算出 4.7.1

一般に井戸が狭い範囲に集中して分布しそれを一斉に井戸から地下水を揚水すると,相互 干渉という相乗効果を起こし,地下水位降下量(SW)が大きくなるため,地盤沈下や地下水 の塩水化などの地下水障害をまねくことになる.従って,井戸間の相互干渉の防止策として,

影響半径(R)を考慮して井戸間隔を適切にとることが必要である(図4-10参照)14. 本論では,取水対象を水質汚染や海水浸入や地盤沈下の可能性がある沖積層(不圧帯水層 A)を完全にシールして,下部の新第三紀被圧帯水層Bのみとする.

<干渉>

図 4-10 影響半径(R)を考慮した井戸の適切な配置

9

水理パラメーターは高松平野の平均的な透水係数と最大地下水位降下量を仮定し ,

Sichartの平衡式より影響半径(R)を算出した(式4.15,式4.16参照)15結果,影響半径

(R)は214mである.

>   ・・・<式

      

・・<式          ・

4.16 4.15 2

b k T

T S

R w

×

=

×

×

=

ここに,

R:影響半径(m)

Sw:地下水位降下量(5m)

T:透水量係数(m2/日)

b:被圧帯水層Bの平均厚さ(79m)9

4.7.2 井戸設置箇所の選定

高松平野における代表的な公共施設である病院と学校は,26箇所分布している.井戸設置 箇所は,影響半径(R)を考慮して井戸間隔をとった結果,このうち21の病院と学校に井戸 が適切に設置できる計算である(図4-11参照).

図 4-11 高松平野における井戸設置箇所

地下水可能揚水量の算出 4.7.3

地下水可能揚水量(Q)は,4.7.1 節の影響半径の算出方法を組み入れて,式 4.17 に示す

Thiemの平衡式より算出した15

( )

       ・・・<式4.17

ln 2

r R

Sw Q T× ×

= π

ここに,

Q:地下水可能揚水量(m3/日)

T:透水量係数(459m2/日)

Sw:地下水位降下量(5m)

R:影響半径(214m) r:井戸半径(0.25m)

その結果,検討地域内に分布している21本の井戸からの一日当たりの地下水可能揚水量は,

総計44,788m3/日と計算された.

なお,1994年における断水時の応急給水は,7月14日~8月16日までの34日間続いて おり,そのときの水供給量は297リットル/日/人であった4.よって,一人一日当たり297 リ ットル供給した場合,一日当たり全井戸からの地下水可能揚水量(Q)は,高松市民(390,199 人)の38%に供給することができる.また,一人一日当たり115リットルの水使用量と限定 した場合,高松市民全員へ供給することが可能である.

国土交通省河川局が節水実験を行った結果,一人一日当たり100リットルの水使用量でも,

ある程度の生活は続けられることが示されており,高松市民の最低限の生活用水は確保され ることが示された.

4.8

4.8.1

4.8.2

地下水人工涵養プロジェクトの経済性の評価

高松平野における休耕田面積 40%を涵養し,涵養された地下水を21 本の深井戸を設置し て取水する地下水人工涵養プロジェクトの経済性の評価を行う.

経済性評価の前提条件

前提条件は以下のように設定した.

(1) 井戸耐用年数:25年

(2) 井水設備耐用年数:13年

(3) 社会的割引(利子)率:5%

(4) 水田涵養の協力農家への助成金:22,000円(1,000m2当たり)

(5) 水中ポンプ電機動力:20kW

(6) 電気料金:12円/kWh

(7) 水道料金:169.5円/m3(高松市水道局)

費用

費用については,21本の井戸を施工する初期投資費と,25年間の水中ポンプ等の運転費 及び地下水を浄化するための薬品費と水中ポンプ等の13年に1回の交換する維持管理費,休 耕田の涵養に協力しくれた農家への助成金と,将来に井戸を廃棄するための埋め立て費の 4 項目と設定した(図 4-12 参照).なお今回は,主要なコストの要素のみを対象とし人件費及 び用地費は考慮しないことにした.

深井戸を21本施工する費用(初期投資費)は,浅井戸の施工費用(有限会社ヨシコー建設・

2006年)を参考に算出した(表4-10参照).その結果,初期投資費は約2億4,000万円とな った.

表 4-10 深井戸施工費用の内訳

ボーリング工事 218,295,000 井水設備工事 20,294,400

配管設備 849,000

電気工事 613,950

合計 240,052,350 単位:円

維持管理費については,井水設備(水中ポンプ)の運転費と井水設備の交換費,地下水浄 化の薬品費の主要な3項目を算出した.

水中ポンプの運転は,水中ポンプの電機動力 20kW を 24 時間稼動させた場合(電気料金 12円/kWh)の運転費を算出した結果,年間で約4,400万円となる.

井水設備一式を深井戸の運用開始から13年目に取り替える費用(配管設備費及び電気工事 費も含む)は,約2,200万円と計算される.

21本の深井戸から揚水する地下水を浄化するための薬品費は,1m3当たり1.5円と仮定し て算出した結果,年間で約2,500万円となる.

以上より,年間の維持管理費は約 6,900万円となる(表 4-11 参照).また別途,深井戸の 運用開始から13年目に井水設備一式を交換する維持管理費として,約2,200万円が発生する.

表 4-11 地下水揚水井の維持管理費の内訳

水中ポンプ運転費 44,150,400 薬品費 24,521,262 合計 68,671,662 単位:円/年

3ヶ月間,地下水人工涵養に協力する農家への助成金は,1,000m2当たり22,000円と仮定 して算出した結果,年間で約3億5,000万円となる(表4-12参照).

表 4-12 地下水人工涵養プロジェクトに対する協力農家への助成金

涵養面積 助成金単価 助成金

(m2) (円/1,000m2) (円/年)

15,876,760 22,000 349,288,720

将来(25年後)の井戸の廃棄費として,21本の深井戸を砂利で埋め立てる費用を算出した 結果,約130万円となる(表4-13参照).ただし,井戸の掘削・施工や地下水水質などの条 件にもよるが,深井戸の寿命は50年~100年めでに及ぶ実例も多い.

表 4-13 深井戸の廃棄費

砂利単価 深井戸半径 平均掘削深度 深井戸容積 深井戸埋め立て費

(円/m3) (m) (m) (m3) (円/21本)

3,000 0.25 105 20.6 1,298,194

4.8.3 便益

便益については,渇水時における高松市民の水に対する欲求度は,現在の水道料金である と仮定して,年間21本の深井戸から揚水する地下水量に,現在の高松市の水道料金を乗じて 算出した.その結果,年間に生じる主要な便益は事業収入に相当する約27億7,000万円であ る(表4-14参照).

表 4-14 地下水人工涵養プロジェクトの便益 深井戸21本からの 高松市の

地下水可能揚水量 水道料金

(m3/年) (円/m3) (円/年)

16,347,508 169.5 2,770,902,551 便益

ライフサイクルコストの評価 4.8.4

社会的割引(利子)率を5%,井戸の耐用年数を25年間として,費用便益比(B/C)によ る経済性の評価を行った.その結果,費用便益比(B/C)が 6.2 と高い値を示した(表 4-15 参照).また総費用を 25 年間で揚水する総地下水量で割り,1m3当たりの地下水源水道単価 を算出した結果,15円/m3と試算された.なお,高松市における2005年の原水単価(香川用 水1m

表 4-15 地下水人工涵養プロジェクトのライフサイクルコストと費用便益比

単位:千円

井水設備運転費 薬品費 井水施設交換費 B/C

425,808 622,253 345,601 11,538 4,922,856 383 6,328,439 39,053,215 6.2 便益(Benefit)

費用(Cost)

合計

費用便益比 維持管理費

助成金

初期投資費 廃棄費

3当たりの受水費)は供給単価(1m3当たりの水道料金)169円/m3の約4割程度である.

よって、地下水源水道単価は,高松市の原水単価と比較して 1/4 と安価であり,コスト面か ら見ても優れている.

本論で提案する高松平野における非灌漑期の休耕田の面積40%を涵養し,深井戸を21 本 設置して地下水を揚水する地下水人工涵養プロジェクトは,流域の健全な水循環システムを 持続的に保全・強化することができることだけでなく非常に経済的であり,また高松市の渇 水リスクを軽減するための流域全体の河川の表流水や地下水を含めた総合的な水資源管理に おける一つの有効な手段であることが示された.

ドキュメント内 フロンティアプロジェクト (ページ 43-51)

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