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(1)

平成

18 年度

フロンティアプロジェクト

香川県高松市における

渇水リスクと水資源管理

Water Resources Management to Reduce the Risk of

Drought in Takamatsu City

1095506 亀 田 千 明

指導教員 村 上 雅 博

2007 年 2 月 9 日

(2)

香川県高松市における渇水リスクと水資源管理

亀 田 千 明

香川県の構造的・慢性的な水不足問題を解決するために,吉野川総合開発事業の一環とし て,1967 年に早明浦ダムと香川用水が計画され,1974 年に事業は完成した.早明浦ダムに よって,香川県高松市の頻発する深刻な渇水による水不足が解消したかに思われた.しかし, 香川用水(早明浦ダム)に水源の50%を依存している高松市の上水道は,1994 年・2005 年 に早明浦ダムの貯留率0%を記録するなど,取水制限がたびたび発生しており予想に反して水 供給が不安定になってきている.さらに,長期的(1900 年~現在までの約 100 年間)な傾向 として,日本列島の年間平均降雨量は減少傾向にある中で,近年の降雨変動幅が大きくなっ ており,今後においても高松周辺の少雨頻度が高くなくなると予測されている.よって,今 後の渇水時における高松市の水資源管理に対する抜本的な解決策の提示が必要になっている. 本論の目的は,高松市における1994 年・2005 年の代表的な渇水の実態と構造を明らかに し,渇水リスクに対応した流域の総合的な水資源管理モデルを提案することである. はじめに,1994 年・2005 年の高松市の上水の水源域における降雨とダム貯留量を調査し た結果,1994 年の渇水は自己流域内水源(高松),自己流域外水源(早明浦ダム)の両水源 に水資源が不足しており,2005 年は自己流域外水源(早明浦ダム)のみ水資源が不足してい た.次に,渇水リスクを軽減するための総合的水資源管理モデルとして,自己流域内の水資 源ポテンシャルを増大させる可能性が高い人工的な地下水涵養システムの適用に着目した. 本モデルは,高松平野の上中流域における非灌漑期の休耕田に水を張ることで,休耕田から の浸透を促進させ,増加した地下水を中下流において域渇水時などの緊急時に新しく設置す る深井戸から地下水流動のタイムラグを利用し取水する計画である.その結果,休耕田の面

(3)

積の40%を 3 ヶ月間涵養した場合、1994 年の渇水リスクをほぼ回避することができる水量が 地下水に涵養され,深井戸を 21 本施工した場合,115 リットル/日/人供給すると,高松市民 全員(約 39 万人)に供給可能となり,その場合の地下水源水道原価は 15 円/m3で,費用便 益比(B/C)は 6.2 と高く経済的にも有利であり,地下水・河川などの表流水を含む水循環の 一環として流域単位で総合的にシステム管理する流域の総合的水資源管理政策の視点から, 自己流域の水循環システムを保全・強化する持続的なオプションであることが示された. キーワード 渇水,リスク,水資源,水供給,地下水,涵養,管理政策

(4)

Abstract

Water Resources Management to Reduce the Risk of Drought

in Takamatsu City

KAMEDA, Chiaki

The purpose of this study is to identify the present situation and the causes of the droughts in Takamatsu city in 1994 and 2005, and to develop and propose the model of water resource management on the risk of drought.

First, precipitation in catchment of Naiba dam and Sameura dam, which is the major source of water source for water supply of Takamatsu city, and the charge in storage volume of dams in 1994 and 2005 are studied to identify the situation of the droughts and risks. As a result, it is evident that surface water was insufficient at both of the dam sites in 1994 and only at Sameura dam in 2005.

Next, the new model of water resource management to reduce the risk of drought in Ta-kamatsu city is proposed to integrate the artificial groundwater recharge option. The structure of this model is that the amount of infiltration of water from a fallow field is increased by watering a fallow field during the fallow period and the increased ground-water is pumped up from deep wells in case of emergency including drought.

According to water budget of this model, additional ground water in the tertiaryconfined aquifer, which will cover the risk of drought, is artificially recharged by watering 40% of paddy field during three months in the non-irrigation season, the artificially recharged ground water will be able to supply 115 litter/person/day of drinking water to all citizens in Takamatsu city(390 thousand people)by constructing 21 deep wells, at reasonable unit cost of 15 yen per m3 with B/C(Benefit/Cost) ratio of 6.2.

(5)

This integrated water resources management option will be viable and sustainable to sustain the water cycle system including the drought risk management policy.

Key words Drought,Risk,Water resource,Supply,Groundwater,Recharge,

(6)

目次

... 5 -目次 ... 7 -図目次 ... 9 -表目次 第1 章 はじめに... 10 -1.1 研究背景... 10 -1.2 研究目的... 12 -1.3 研究手順... 13 -第2 章 香川県高松市における水資源と渇水問題... 14 -2.1 吉野川総合開発と高松市の渇水問題... 14 -2.2 高松市及び早明浦ダム上流域の降雨特性... 16 -2.2.1 高松市の降雨特性... 16 -2.2.2 早明浦ダム上流域の降雨特性... 18 -第3 章 高松市の特徴的な渇水分析... 19 -3.1 1994・2005 年における渇水の実態 ... 19 -3.2 上水道の実績供給量の分析... 23 -第4 章 渇水リスクに対応した流域の総合的水資源管理モデルの検討... 27 -4.1 流域の総合的水資源管理モデルの検討... 27 -4.2 非灌漑期における休耕田の地下水人工涵養の事例(熊本県白川流域)... 28 -4.2.1 熊本県の地下水の現状... 28 -4.2.2 白川中流域における地下水人工涵養事業... 31 -4.3 高松平野の土地利用... 32 -4.4 高松平野の地質構造及び帯水層分布... 33

(7)

-4.6 非灌漑期における休耕田の地下水人工涵養による渇水リスクの軽減... 39 -4.6.1 休耕田の地下水人工涵養量の算出... 39 -4.6.2 休耕田の地下水人工涵養による渇水リスクの軽減... 41 -4.7 涵養地下水の揚水計画... 42 4.7.1 井戸影響半径Rの算出 ... 43 -4.7.2 井戸設置箇所の選定... 44 -4.7.3 地下水可能揚水量の算出... 45 -4.8 地下水人工涵養プロジェクトの経済性の評価... 46 -4.8.1 経済性評価の前提条件... 46 -4.8.2 費用... 46 -4.8.3 便益... 48 -4.8.4 ライフサイクルコストの評価... 49 -4.9 地震時の水供給の危機管理... 50 -第5 章 おわりに... 51 -5.1 まとめ... 51 -5.2 今後の課題... 53 ... 55 -謝辞 ... 56 -参考文献 参考WEB資料 ... 57 -添付A... 58 -添付B... 61 -添付C... 62 添付D ... 63

(8)

-図目次

図 1-1 日本の年間降雨量の経年変化 ...-11- 図 1-2 研究フロー ... -13- 図 2-1 吉野川水系早明浦ダム及び香川用水の位置図 ... -15- 図 2-2 2005 年の高松市における上水道の実績水供給量... -16- 図 2-3 高松市の月別平均降雨量及び気温 ... -16- 図 2-4 高松市の年間降雨量の経年変化... -17- 図 2-5 早明浦ダム上流域の年間降雨量の経年変化... -18- 図 3-1 高松市における月別降雨量... -20- 図 3-2 内場ダム上流域における月別降雨量 ... -21- 図 3-3 内場ダムの月別平均貯留量... -21- 図 3-4 早明浦ダム上流域における月別降雨量... -22- 図 3-5 早明浦ダムの月別平均貯留量 ... -22- 図 3-6 自己流域内水源(高松市)からの水供給量... -24- 図 3-7 自己流域外水源(吉野川水系早明浦ダム)からの水供給量 ... -24- 図 4-1 熊本市周辺地域の地下水の流れ... -29- 図 4-2 熊本地域周辺図... -29- 図 4-3 熊本市水前寺観測井の地下水位経年変化 ... -30- 図 4-4 熊本市水前寺・江津湖の湧水量の経年変化... -30- 図 4-5 高松平野の土地利用(1976・1997 年) ... -32- 図 4-6 高松平野の南北一断面の地質図... -33- 図 4-7 高松平野における通常時の地下水の水収支... -34- 図 4-8 非灌漑期における休耕田の地下水人工涵養の水収支 ... -39-

(9)

図 4-10 影響半径(R)を考慮した井戸の適切な配置 ... -43- 図 4-11 高松平野における井戸設置箇所... -44- 図 4-12 地下水人工涵養プロジェクトのライフサイクルコストの内訳... -46-

(10)

表目次

表 1-1 日本列島の年間降雨量の変化(1900~2005 年)...-11- 表 2-1 高松市の年間降雨量の変化(1900~2005 年)... -17- 表 2-2 早明浦ダム上流域の年間降雨量の変化(1900~2005 年)... -18- 表 3-1 高松市における 1994 年及び 2005 年の水源別水供給量 ... -25- 表 3-2 高松市における 1994・2005 年の渇水リスク指数 ... -26- 表 4-1 熊本県における用途別地下水採取量(2004 年)... -29- 表 4-2 高松平野の土地利用面積(1976・1997 年) ... -32- 表 4-3 高松平野における地質構造区分... -33- 表 4-4 灌漑期における水田からの浸透量 ... -36- 表 4-5 不圧帯水層 A から流出する地下水量... -37- 表 4-6 被圧帯水層 B から流出する地下水量... -38- 表 4-7 標高別地下水降下水量及び水田面積 ... -40- 表 4-8 非灌漑期における休耕田の人工涵養地下水量 ... -40- 表 4-9 地下水人工涵養による渇水リスクの軽減 ... -41- 表 4-10 深井戸施工費用の内訳 ... -47- 表 4-11 地下水揚水井の維持管理費の内訳 ... -47- 表 4-12 地下水人工涵養プロジェクトに対する協力農家への助成金 ... -48- 表 4-13 深井戸の廃棄費... -48- 表 4-14 地下水人工涵養プロジェクトの便益 ... -48- 表 4-15 地下水人工涵養プロジェクトのライフサイクルコストと費用便益比 ... -49-

(11)

1章

1.1

はじめに

研究背景

香川県は奈良時代末期に,すでに現在の水田面積の約7 割にも達する耕地が開かれ,日本 でも有数の農業県である.当地は,瀬戸内海気候に属して年間平均降雨量が1149mm(1900 ~2005 年)と全国的に見ても少ない.さらに,河川は短く急勾配であるため,雨が降っても すぐに海へ流出するなど,水利用に極めて不利な地理的条件にある.このため,有史以来た びたび深刻な水不足に悩まされており,生活用水や農業用水確保のために,先人たちは県内 各所に1 万 6 千余のため池を築いてきた. 香川県高松市の上水道の歴史は古く,先人たちの長い水との戦いの歴史が土台となってい る. 1644 年,初代藩主松平頼重公によって水道システムの原型が作られ,その概要は地下 水湧水を水源とした原水を木樋・竹樋または土管等により各井戸へ導水する施設で,近代水 道が開設されるまで使用されていた. 1899 年 2 月市制実施後,都市の発展のための一大要素となる上水道整備に関心が高まった. 特に海岸地帯の手掘りの浅井戸水は水質が悪く衛生上危険な状態にあったため,近代的な上 水道創設が急務だとする意見が起り,1921 年 9 月にようやく上水道が実現し給水を開始した. その後,人口増加に伴う拡張事業を重ねてきたが,降水量が少ないために高松市の構造的な 水不足は解消されなかった(1). そこで,深刻な水不足の抜本的な問題解決を図るために,1967 年に早明浦ダムを中心とし た「吉野川水系水資源開発基本計画」が決定され,早明浦ダム,香川用水の建設が本格的に 開始され,1974 年に高松市へ早明浦ダムの水が導水されるようになり,渇水による水不足問 題が解消したかに見えた.しかし,全国的に近年の降雨の変動幅が不規則に大きくなってき ており(2,再び渇水が頻発化している傾向にあり(図1-1,表 1-1 参照),高松市や早明浦ダ ム上流域でも同様の傾向が見られる.特に 1994 年,2005 年には,早明浦ダムの貯留率 0%

(12)

を記録し断水などの措置がとられ,高松市民の生活及び都市機能に大きな影響を与えた. このように,流域外である吉野川水系の早明浦ダムに 49.9%依存している高松市の上水道 は,吉野川水系の渇水による影響を直接的に受けるようになった.渇水リスクをより分散・ 軽減するために,自己水源比率をいかに向上するか,また安定した新規水源の開発が最大の 政策課題となっている. 年間降雨量 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 (年) (mm) 年間降雨量 トレンド 5年移動平均 ※気象庁 HP 掲載の統計データ(2006 年)より作成 図 1-1 日本列島の年間降雨量の経年変化 表 1-1 日本列島の年間降雨量の変化(1900~2005 年)

期間

下限~上限

標準偏差

1900年

約1,440mm

1900~1909年

-140~+176

110

2005年

約1,570mm

1996~2005年

-239~+347

185

降雨量(トレンド)

変動幅

※気象庁 HP 掲載の統計データ(2006 年)より作成

(13)

1.2 研究目的

本論では,香川県高松市の上水を対象として,渇水リスクを分散・軽減するため,自己流 域内での健全な水循環システムの再生と強化の可能性について検討する.表流水は,降雨に よって直接大きく影響を受けることから水供給が不安定化する.表流水に対して地下水は, 水質が良好で安定した水資源であるため,渇水時においても安定した水供給の水源として期 待されている.よって本論は,人工的に地下水涵養を促進させ,渇水時などの緊急時に地下 水を取水する「非灌漑期における休耕田を利用した人工的な地下水涵養プロジェクト」の妥 当性について検討する.具体的には,(1)1994 年及び 2005 年の渇水の実態・構造を分析し, (2)地下水涵養量の測定及び推定,(3)地下水涵養量の評価,(4)プロジェクトの費用・ 便益の算出により,地下水人工涵養プロジェクトの有効性の評価を行う.本論で提案する地 下水人工涵養プロジェクトは,降雨変動の影響を受けて増大する傾向にある渇水リスクに対 して,地下水・河川などの表流水を含む水循環の一環として流域単位で総合的にシステム管 理する流域の総合的な水資源管理の一つの解決策と考えられ、香川県高松市の渇水による水 不足問題の解決に貢献することが期待される.地下水人工涵養の測定概要及び結果は論文末 付録A に記載する.

(14)

1.3 研究手順

本論は,既往の文献や高松市の水源・土地利用から,高松市の渇水問題を解決するための 方法論を整理した.次に,近年の降雨変動や,実績供給量を調査した上で,1994・2005 年の 渇水分析を行い,渇水リスクに対応した流域全体の総合的な水資源管理モデルを提案した. 最後に提案プロジェクトの渇水リスクの軽減効果及び費用対効果から, 提案プロジェクトの 有効性についての評価を行った(図1-2 参照). 既往の文献・水源・土地利用調査 近年の降雨変動分析 実績供給量の調査 特徴的な渇水分析 提案プロジェクトの有効性の評価 まとめ・今後の課題 渇水リスクに対応した水資源管理モデルの検討 新規水源の開発計画の提案 提案プロジェクトによる渇水軽減効果 提案プロジェクトの費用対効果 既往の文献・水源・土地利用調査 近年の降雨変動分析 実績供給量の調査 特徴的な渇水分析 提案プロジェクトの有効性の評価 まとめ・今後の課題 渇水リスクに対応した水資源管理モデルの検討 新規水源の開発計画の提案 提案プロジェクトによる渇水軽減効果 提案プロジェクトの費用対効果 図 1-2 研究フロー

(15)

2章

2.1

香川県高松市における水資源と渇水

問題

吉野川総合開発と高松市の渇水問題

高松市の主な渇水は1939・1940・1942・1944・1950・1956・1960・1964・1967・1973 年に発生し,夏~秋の農業用水の需要期にかけて水利用が競合するため,上水道は時間断水 を実施し,市民生活や農業・工業に大きな影響を与えてきた.特に 1939 年には 100 日間, 1973 年には 60 日間の時間断水が続きかなり逼迫した状態になり大渇水であった(3). このような深刻な水不足の抜本的な問題解決を図るために、「吉野川総合開発」の一環とし て計画・施工されたのが早明浦ダム・香川用水である。 早明浦ダムは,吉野川上流の高知県長岡郡本山町に有効貯水量が2 億 8,900 万m3で西日本 一の規模を誇る多目的ダムとして,1967 年に着工され 1973 年に完成した. 早明浦ダムの新規用水は,年間8 億 6300 万m3で四国四県に配水されており,そのうち全 体の28.6%を占める年間2億 4,700 万m3を香川県に導水している. 香川県へは,池田ダム上流側の香川用水取水口より阿讃山脈を貫く導水トンネル(全長 8km)を経て,香川県を東西に横切る香川用水幹線水路(水路長約 90km)へと配水され, 香川県のほぼ全域を潤している(図2-1 参照).香川用水導水トンネル及び香川用水幹線水路 は,1968 年に着工され 1981 年に完成した.香川用水幹線水路の一部開通により,1974 年か ら高松市へ早明浦ダムの新規用水が導水されるようになった. 高松市の上水道における2005 年の水供給量は年間 4,267 万m3であり,49.9%が香川用水, 50.1%が香東川水系内場ダムや本津川・香東川・春日川・新川などの自己水源で供給されて いる(図2-2 参照).これらの水は,御殿浄水場、浅野浄水場、川添浄水場と、県営広域水道 (香川用水)からの受水施設である岡本配水池、御厩配水池、植田配水池から高松市民へ供

(16)

給されている. 早明浦ダムの運用開始によって香川県の構造的な水不足問題が解消したかに思われたが, 香川用水導水以降の1983・1984・1988・1990・1994・1995・1998・2001・2005 年にも引 き続いて予期しない渇水が発生しており(3,特に 1994・2005 年には早明浦ダムの貯留率 0% を記録するなど,深刻な渇水が起き問題となっている. 図 2-1 吉野川水系早明浦ダム及び香川用水の位置図

(17)

21,388,470 21,280,150 自己水源 香川用水

42,668,620m

3 m3 m3 ※高松市水道局より提供された上水月報データより作成 図 2-2 2005 年の高松市における上水道の実績水供給量

2.2

2.2.1

高松市及び早明浦ダム上流域の降雨特性

高松市の降雨特性

高松市は瀬戸内海気候に属し,比較的温暖で年間平均降水量は1,149mm(1900~2005 年 までの年間平均降雨量)と全国平均(約 1,700mm)の 2/3 程度と少なく,しかも降雨は 6 ~7 月の梅雨時期と 9 月の台風期に集中している(図 2-3 参照). 降雨 気温 0 50 100 150 00 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 ( 0 5 10 15 20 25 30 (℃) 2 mm) 降雨量 気温 ※気象庁 HP 掲載の統計データ(2006 年)より作成 図 2-3 高松市の月別平均降雨量及び気温

(18)

1900 年~2005 年までの年間降雨量のトレンドを見てみると,1900 年は約 1,170mm であ るのに対して,2005 年は約 1,120mm と年間降雨量がわずかながら減少傾向にある(図 2-4 参照).しかし,10 年間の降雨変動幅を見てみると,1996 年~2005 年の 10 年間は,約 100 年前の 1900 年~1909 年の 10 年間と比較して下限から上限の変動幅が大きなっているとと もに,その偏差も大きくなっている(表2-1 参照). 以上から,高松市では年間降雨量が多雨・少雨と極端な降雨傾向が近年顕著に現れて始め ている. 年間降雨量 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 (年) (mm) 年間降雨量 トレンド 5年移動平均 ※気象庁 HP 掲載の統計データ(2006 年)より作成 図 2-4 高松市の年間降雨量の経年変化 表 2-1 高松市の年間降雨量の変化(1900~2005 年)

期間

下限~上限

標準偏差

1900年

約1,170mm

1900~1909年

-244~+308

167

2005年

約1,120mm

1996~2005年

-320~+519

280

降雨量(トレンド)

変動幅

※気象庁 HP 掲載の統計データ(2006 年)より作成

(19)

2.2.2 早明浦ダム上流域の降雨特性

早明浦ダムにおける2004 年の年間降雨量は,平年値(1900~2005 年までの年間降雨量の 平均)より約2,500mm も多い 5,593mm であり,1994 年は 2,230mm,2005 年には 2,221mm と平年値より約900mm 程度と少ない.早明浦ダム上流域の 1900 年~2005 年までの年間降 雨量のトレンドは上昇傾向にあるが,1996 年~2005 年の 10 年間の降雨変動幅は,100 年前 と比較して非常に大きなっている(図2-5,表 2-2 参照).近年,早明浦ダムでは高松市と同 様に多雨・少雨と極端な降雨傾向が現れているため,今後も渇水による早明浦ダムの取水制 限が起こりうることが予測される. 年間降雨量 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000 5,500 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 (年) (mm) 年間降雨量 トレンド 5年移動平均 ※独立行政法人水資源機構より提供された資料より作成 図 2-5 早明浦ダム上流域の年間降雨量の経年変化 表 2-2 早明浦ダム上流域の年間降雨量の変化(1900~2005 年)

期間

下限~上限

標準偏差

1900年

約2,990mm

1900~1909年

-710~+1360

701

2005年

約3,190mm

1996~2005年

-1080~+2330

1114

降雨量(トレンド)

変動幅

※独立行政法人水資源機構より提供された資料より作成

(20)

3章

3.1

高松市の特徴的な渇水分析

1994・2005 年における渇水の実態

高松市の自己流域内の水源は,塩江町に位置する香東川水系の内場ダムや,香東川・春日 川・本津川・新川からの直接取水が挙げられる.前述のとおり,高松市の水源は,高松市を 流れる河川からの取水する自己流域内水源が50.1%と,高知県本山町に位置する早明浦ダム (自己流域外水源)が49.9%となっている.自己流域内の水源である 4 河川は,2 級河川で あるために流量観測が行われていない.そこで本節では1994 年・2005 年における渇水の実 態を,自己流域内水源については,高松市の降雨及び内場ダムの降雨及び貯留量から,また 自己流域外水源については,早明浦ダムの降雨及び貯留量から検討した. 1994 年,夏の気象状況は,全国的な猛暑・少雨により日本列島全域で渇水に見舞われた. 高松市(高松地方気象台)の6 月~8 月までの降雨量は,173.0mm で平年値の 43.3%と半分 であり,1/19 年確率降雨と降雨量が少ない年であった(図 3-1 参照). また内場ダムでも,6 月~8 月までの降雨量が平年値の 27.9%と少なく,6 月には 68.8% 確保されていた内場ダムの平均貯留量が,8 月には 31.9%まで減少した.1994 年の高松市の 降雨量は,1/12 年確率降雨と降雨量が非常に少ない気象状況であった(図 3-2,図 3-3 参照). 高松市における自己流域外の水源である早明浦ダム上流域での6 月~8 月までの降雨量は, 平年値の64.1%であり,早明浦ダムの平均貯留量は 6 月に 85.1%から 8 月には 53.4%と減少 が著しい.1994 年の早明浦ダムの降雨量は,1/30 年確率降雨と降雨が少ない気象状況であっ た(図3-4,図 3-5 参照). よって,1994 年は,高松市における流域内の水源(内場ダム及び 4 河川)と流域外の水源 (吉野川水系の早明浦ダム)の両水源とも水資源が不足していた(4). 2005 年は,高松市の 4 月~6 月にかけての降雨量は平年値の 22.2%と極端に少ない状態で あったが,7 月に梅雨末期の降雨に恵まれ平年値を大きく上回る 215.5mmを記録した(図 3-1

(21)

参照).また内場ダムにおいても,同様の気象傾向が見られ,高松市の流域内の水源は平年並 みに回復した(図3-2,図 3-3 参照).一方,早明浦ダム上流域の 4 月~8 月までの降雨量は, 1994 年をさらに下回る 882.5mmであり,1/19 年確率降雨と降雨量が少ない状態であった(図 3-4,図 3-5 参照).早明浦ダムの貯留率は 0%を 8 月と 9 月の 2 回も記録したが,その後の 台風14 号の影響により一夜にして貯留率 100%にまで回復した.2005 年は,流域外水源で ある早明浦ダムには,水資源が不足していた状態であったが,高松市の自己流域内水源には 比較的余裕があったために,深刻な給水制限や断水をせずに高松市水道局は危機を乗り切る ことができた.(3

0

100

200

300

400

500

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月 10月 11月 12月

(mm)

1994

2005

平年値

降雨量 ※気象庁 HP 掲載の統計データ(2006 年)より作成 図 3-1 高松市における月別降雨量

(22)

0

100

200

300

400

500

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月 10月 11月 12月

(mm)

1994

2005

平年値

降雨量 ※内場ダム管理事務所より提供されたデータより作成 図 3-2 内場ダム上流域における月別降雨量 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (m3) 1994 2005 平年値 貯留量 ※内場ダム管理事務所より提供されたデータより作成 図 3-3 内場ダムの月別平均貯留量

(23)

0

100

200

300

400

500

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月 10月 11月 12月

(mm)

1994

2005

平年値

降雨量 (761mm) ※(独)水資源機構より提供されたデータ及び国土交通省 HP 水文水質データベースに記載されたデータ(2006 年)により作成 図 3-4 早明浦ダム上流域における月別降雨量 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (m3) 1994 2005 平年値 貯留量 ※(独)水資源機構より提供されたデータ及び国土交通省 HP 水文水質データベースに記載されたデータ(2006 年)により作成 図 3-5 早明浦ダムの月別平均貯留量

(24)

3.2 上水道の実績供給量の分析

本節では,1994・2005 年の上水道における水源別の実績供給量から詳細な渇水の状況につ いて分析した. 1994 年と 2005 年における高松市の自己流域内水源からの水供給量を比較すると 1994 年 の供給量が少なく,特に1994 年における 8 月の供給量は,2005 年の 41.8%,9 月は 45.8% と半数以下の供給量であった.また,1994 年の自己流域内水源からの水供給量と平年値(1989 ~2005 年までの平均の水供給量)を比較すると,8~11 月を除く他の月では,ほぼ平年並み の水供給量であるが,特に8・9 月には平年の 50%程度の水供給量であった.同様に,2005 年の自己流域内水源からの水供給量と平年値を比較すると,平年より約20%近く上回る水供 給量であった(図3-6 参照). 自己流域外水源である吉野川水系の早明浦ダム(香川用水)からの水供給量は, 1994 年 が2005 年より多くの水が供給されている.また,1994 年の早明浦ダム(香川用水)からの 水供給量と平年値を比較すると,7 月以外の月では,平年値とほぼ同量の供給量であった. また,2005 年と平年値の水供給量を比較すると,8 月は平年値の 64.1%,他の月は平年値の 70%以上の水供給量であった(図 3-7 参照). 1994・2005 年における全体の水供給量(自己流域内水源と自己流域外水源からの水供給量 の合計)は,それぞれ平年値の 95%程度であり,また 1994 年と 2005 年の全体の水供給量 を比較すると,1994 年が 181,000m3水供給量が多かった(表3-1 参照).

(25)

水供給量 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (×1,000m3) 1994年 2005年 平年値 ※高松市水道局より提供された上水月報データより作成 図 3-6 自己流域内水源(高松市)からの水供給量 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 (×1,000m3) 1994年 2005年 平年値 水供給量 ※高松市水道局より提供された上水月報データより作成 図 3-7 自己流域外水源(吉野川水系の早明浦ダム)からの水供給

(26)

表 3-1 高松市における 1994 年及び 2005 年の水源別水供給量 値 1,463 1,338 1,446 1,465 1,517 1,527 94年 05年 1,646 1,559 1,644 1,753 1,750 1,819 1,805 1,683 1,830 1,704 1,885 1,815 1,888 1,835 1,786 1,536 2,291 2,258 1,627 1,741 1,753 1,838 1,889 1,741 1,900 1,771 1,979 2,405 2,560 2,422 2,280 2,291 2,522 2,548 2,232 1,811 1,865 2,053 811 1,099 1,141 1,537 1,351 1,386 1,367 795 1,419 1,273 1,460 1,371 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 自己流域内水源 (高松市) 自己流域外水源 (吉野川水系早明浦ダム) 自己流域内水源 (高松市) 自己流域外水源 (吉野川水系早明浦ダム) 自己流域内水源 (高松市) 自己流域外水源 (吉野川水系早明浦ダム) ※平年値は1989年~2005年までの平均水供給量を示す 2,218 2,146 2,228 44,791 2,205 2,041 2,230 2,122 2,253 2,274 2,369 2,398 2,209 1,526 1,566 1,471 1,574 42,850 42,669 単位:1,000m3 平年 19 20 ※高松市水道局より提供された上水月報データより作成 以上より,1994 年の渇水は自己流域内(高松市)及び自己流域外(吉野川水系の早明浦ダ ム)の両水源に水資源が不足しており,2005 年における渇水は,自己流域外の水源に水資源 が不足していた. 渇水とは,取水者が平常時と同様の取水を行うことができない状態を示している(国土交 通省).よって,取水制限が行われていない状態が,安定した水供給体制であり,逆に取水制 限が行われているときは,安定した水供給に対するリスクであると考えられる.本論では, 渇水リスク指数を式 3.1 のとおり定義した.渇水リスク指数 1.0 の場合は,取水制限を行っ ていないことを表す.1994・2005 年の渇水リスク指数の算出結果,それぞれ 0.6,0.8 とな り,とりわけ1994 年の渇水が厳しいことがわかる(表 3-2 参照).

=取水制限なし

   渇水リスク指数

  ・・・・<式

日-取水制限日数)

渇水リスク指数=

1.0

3.1

365

(365

(27)

表 3-2 高松市における 1994・2005 年の渇水リスク指数 取水制限日数 渇水リスク指数 1994 年 137 日 0.6 2005 年 73 日 0.8 ※渇水リスク指数1.0:取水制限なし 1994 年は,上水が不足していたと同様に,農業用水・工業用水(早明浦ダムの新規用水) も不足していた.しかし,上水確保のために農業用水や工業用水の協力により上水のカット 率を緩め,利水者間での配水調整を行ったが,それでも69 日間の断水をしたことにより,生 じた濁り水を放水した結果,節水した水量がほとんど無駄となった.この反省から,2005 年 は断水を避けるため,早めに自主減圧に取り組んだ結果,約22,000 m3を削減できた3)(4)(5) さらに,1994 年は農家の方々は干害応急工事や節水灌漑を行うことで渇水を乗り切った(6) .農業用水は,早明浦ダムに依存するほか,ため池や河川からの取水であるため,上水と競 合している.よって農業用水に頼らない安定した水供給が必要とされている. このように,上水の49.9%を早明浦ダムに依存している高松市は,渇水による早明浦ダム の取水制限がたびたび発生しており,水供給が不安定になっている.このため自己流域内で 安定した水資源を持続的に確保することが重要な政策課題の一つにクローズアップされてい る.

(28)

4章

4.1

渇水リスクに対応した流域の総合的

水資源管理モデルの検討

流域の総合的水資源管理モデルの検討

渇水リスクを軽減するための水資源管理として, 現在,香川県では水道専用調整池が施工 中である.この調整池の貯水容量は約 300 万m3であり,一日一人当たり 2~2.5 リットル使 用すると,香川県民約 100 万人が約 2 週間持ちこたえられる水量に相当する(5.しかし, 調整池は流域内外の降雨に直接の影響を受けるため,調整池からの水供給の不安定要因を抱 え込んでいる. これに対して,地下水は水質が良好で安定した水資源であり,渇水時にも安定した水供給 が期待できる.そこで,表流水の開発に加えて地下水を保全強化し、渇水時に有効利用する ことを着目した.地下水は,過去に過剰揚水の規制など部分的な法規制がかかっている.し かし,都市化の進展による地下水減少や地下水位の低下問題は,地下水盆単位にまで影響す ることから,その防止・保全のためには地下水を河川などの表流水を含む水循環システムの 一環として捉え,流域の総合的な水循環システムとして保全することが重要である(7). 一般に地下水は,森林や荒地や農用地や稲田などの土壌が露出した被覆面からの雨水浸透 が大部分を占めている.このうち稲田は,灌漑期には表面に水を張るため,その間の地下水 涵養量は大きいと考えられるが,その他の時期の地下水涵養量は降雨のみしか期待できない. よって,非灌漑期の休耕田に水を張ることで,休耕田からの浸透量をさらに促進させ,上 中流域で人工的に涵養することで,中下流で増加した地下水を渇水時などの緊急時に取水す る地下水人工涵養プロジェクトを提案する.

(29)

4.2

4.2.1

非灌漑期における休耕田の地下水人工涵養の事例(熊本県

白川流域)

熊本県の地下水の現状

熊本県熊本地域(熊本市・宇土市・宇城市・植木町・泗水町・西合志町・合志町・菊陽町・ 大津町・益城町・嘉島町・城南町・御船町・甲佐町・富合町・西原村の3 市 12 町 1 村)では, 阿蘇カルデラができる以前の地層を基盤として,その上部に分布する阿蘇山の噴火による火 砕流堆積物やスポンジ構造の砥川溶岩などが帯水層となって形成している地下構造となって いるため,豊かで清らかな地下水に恵まれ,水道水源の約 8 割を地下水に依存している(図 4-1,図 4-2 参照).特に,人口約 100 万人を有する熊本地域では,ほとんどすべての生活用 水を地下水に依存しており,地下水は県民の生活にとって欠かすことに出来ない貴重な資源 である(表4-1 参照). 熊本県では地下水の状況を把握するため,1978 年から現在まで熊本周辺地域,八代地域, 玉名・有明地域,天草地域の4 地域の 29 井戸で地下水位を観測している.その結果,熊本地 域を中心に地下水位の低下や,水前寺などの各地の湧水が減少傾向にあることが示された(図 4-3,図 4-4 参照).この原因として,生活用水をはじめとする様々な用途に大量に地下水を 利用する一方で,近年農地の宅地化や水田の水稲作付け面積が減少するなど,地下水涵養域 が減少していることを挙げている. 2004 年における熊本県の地下水の採取量は県全体で 2 億 8 千 3 百万m3であり,そのうち, 生活用水の閉める割合が約5 割である.また一日一人当たりの上水道使用量は 347 リットル (2003 年)となっており,若干の減少傾向にあるものの,九州平均より約 15 リットル,福 岡県に比べ約47 リットル多い現状にある. 熊本地域における農地や林地などの涵養域の機能を見てみると, 1992 年に比べ,2002 年 の涵養面積は約 17km2減少している.また 2004 年に行った熊本地域地下水保全対策調査に よると,2025 年には菊陽町辛川の地下水位は 2004 年に比べ約 1.7m低下すると予測されて いる.

(30)

今後も開発が進み地下水の涵養域がますます減少することが予測される一方,生活用水を 中心とした水需要は高い水準で推移すると考えられている.そのため地下水を保全するため には,涵養量の確保や地下水の適切な採取と節水による合理的な利用が重要課題とされてい る. 表 4-1 熊本県における用途別地下水採取量(2004 年) 農業 水産養殖 工業 建築物 水道 その他 計 採取量 34,416 10,258 25,384 17,452 102,546 4,861 194,917 井戸数 2,124 81 474 1,085 372 318 4,454 採取量 12,175 1,846 18,639 5,475 8,293 1,617 48,045 井戸数 1,831 11 119 326 80 43 2,410 採取量 6,052 1,203 4,503 1,721 16,394 361 30,234 井戸数 822 104 78 115 96 138 1,353 採取量 199 120 225 340 2,598 62 3,544 井戸数 24 7 5 26 35 3 100 採取量 52,843 13,428 48,750 24,988 129,831 6,901 276,741 井戸数 4,801 203 676 1,552 583 502 8,317 採取量 1,233 0 577 35 4,173 539 6,557 井戸数 5 0 6 3 7 5 26 採取量 54,076 13,428 49,327 25,023 13,400 7,440 283,298 井戸数 4,806 203 682 1,555 590 507 8,343 指 定 地 域 指定地域計 指定地域外 合計 単位:千m3/年(採取量),本(井戸数) 熊本周辺 八代 玉名・有明 天草 ※熊本県 HP に掲載されたデータ(2006 年)より作成 図 4-2 熊本地域周辺図 ※熊本県 HP に掲載されたデータ(2006 年)より作成 ※熊本県 HP に掲載されたデータ(2006 年)より作成 図 4-1 熊本市周辺地域の地下水の流れ

(31)

※熊本市の広報誌(2003 年)より引用

図 4-3 熊本市水前寺観測井の地下水位経年変化

※熊本市の広報誌(2003 年)より引用

(32)

4.2.2 白川中流域における地下水人工涵養事業

熊本市は環境基本条例により環境保全の大網を定め,その趣旨に基づき地下水に関する保 全条例を全国的にも早い時期(1977 年)に定めた.その条例に従って地下水の管理を行って きたが,2004 年 3 月に公表された熊本市地下水量保全プランでは,県の総合計画を受けた形 で以下のことを掲げた. (1) 地下水が不足した場合代替水源(表流水)への転換は困難であるため,現状の地下水 への依存は変わりなく,今後とも地下水を保全しなければならない. (2) 地下水盆を保全するために採取量を抑制し,涵養量を増やすこと. (3) 地下水抑制の主たる対象は生活用水である. (4) 地下水涵養の主たる対象地域は白川中流域である. (5) 行政,市民及び事業者が広域連携に取り組むこと. 市民や事業者・行政の具体的な役割としては,水利用においての無駄を省くとともに,新 たに水資源を創り出し,水源を大切にする施策が示された. このなかで地下水涵養事業は2004 年度から開始された.熊本地域では白川中流域の菊陽町, 大津町の休耕田面積 240ha を 1~2 ヶ月間借り受け,熊本市や民間企業が助成金を出し,地 元農家に協力を得ながら,休耕田に水を張ってもらい地下水涵養を行っている. 2005 年度には白川中流域における休耕田面積 284haを 1 ヶ月間涵養し,推計で約 853 万 m3の涵養がされた.涵養量の目標は年間 726 万m3であるが,今後は休耕田の涵養面積を増 加させ,最終的には年間3,000 万m3にする予定である. 熊本地域の取り組みは地下水位低下や湧水の減少及び上流域の水田の減少といった現況に 対する危機感から行われるようになった.同じ地下水盆に生活する地域住民や行政が貴重な 水資源を末永く健全に保全しながら利用してゆくという意識を共有し,それを具体化するた めに,条例を整え,科学的資料の裏づけをした上で,問題点を整理し,地方の実状に即した かたちで改善目標を掲げて運用している.熊本県が示した“地下水の生活用水優先”は地下

(33)

4.3 高松平野の土地利用

香東川流域は高松平野の西に位置している.香東川は岩崎付近を頂部として,北方に開い た広大な扇状地を形成している.扇頂付近の標高は約 110mであるが,扇央にあたる大野・ 川部付近で約50m,先端に近い高松市今里町・松縄町・下所・六条町付近では,標高 10m程 度である.このさらに北東の地域は三角州状になる.扇状地と三角州の間の比高はわずかで あるが明瞭な地形の変化がある(9.高松平野(流域)における流域の土地利用の変化は,国 土交通省国土数値情報 1/10 土地利用メッシュを用いて解析した.その結果,1976 年(昭和 51 年)と 1997 年(平成 9 年)と比較して,水田面積は,4.02km ,森林面積は 0.11 km2 2 荒地面積は0.12 km2,河川・湖沼の面積は0.35 km2減少しているのに対して,建物用地の面 積は 3.85km2,その他の用地の面積は 0.75km2と増加している.農用地はほぼ面積の増減が みられない.これらの土地利用変化には,時間の経過と共に,宅地開発や高松港周辺の埋め 立てなどの都市化が背景にあると考えられる(図4-5,表 4-2 参照). 1976 年 1997 年 図 4-5 高松平野(流域)の土地利用(1976・1997 年) 表 4-2 高松平野(流域)の土地利用面積(1976・1997 年) 1976 1997 1976 1997 1976 1997 1976 1997 1976 1997 1976 1997 1976 1997 0-10 10.38 8.13 0.02 0.01 0.02 0.04 0.09 0.02 11.00 14.04 1.76 1.59 4.37 3.80 10-20 14.71 14.16 0.05 0.07 0.19 0.12 0.02 0.00 5.27 5.38 0.93 0.89 0.36 0.91 20-30 12.23 11.66 0.18 0.18 0.13 0.17 0.01 0.00 4.32 4.59 0.46 0.42 0.45 0.77 30-40 6.86 6.49 0.18 0.19 0.14 0.11 0.01 0.02 1.87 2.11 0.23 0.15 0.10 0.35 40-50 3.68 3.50 0.15 0.15 0.09 0.07 0.01 0.01 1.07 1.12 0.09 0.19 0.02 0.07 50-60 1.57 1.46 0.02 0.03 0.07 0.04 0.00 0.00 0.35 0.39 0.06 0.08 0.01 0.09 60-70 0.95 1.02 0.00 0.00 0.08 0.04 0.03 0.00 0.17 0.18 0.11 0.05 0.00 0.06 70-80 0.32 0.33 0.00 0.00 0.01 0.02 0.00 0.00 0.01 0.02 0.10 0.07 0.00 0.00 80-90 0.65 0.63 0.01 0.00 0.01 0.01 0.00 0.00 0.10 0.14 0.05 0.04 0.01 0.02 90-100 0.47 0.44 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.10 0.14 0.02 0.01 0.00 0.00 100-110 0.01 0.00 0.00 0.00 0.00 0.01 0.01 0.01 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 110-120 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 標高(m) 建物用地 河川・湖沼 その他用地 単位:km2 水田 農用地 森林 荒れ地

(34)

4.4 高松平野の地質構造及び帯水層分布

高松平野の地質構造は,粘土,シルト,砂,礫が混在した透水性の良い未固結の地層の不 圧帯水層Aと,新第三紀の砂岩層からなる被圧帯水層B,粘性土層C及び基盤岩からなる(図 4-6,表 4-3 参照).不圧帯水層Aは,地表から深度 20m程度まで,被圧帯水層Bは深度 40~ 100m程度に分布している(9 一般的に,不圧帯水層A から地下水を取水する場合,沿岸部低地では地下水中に海水が浸 入しやすいため,塩水化障害が発生する可能性がある.そこで,本論では被圧帯水層B のみ から地下水を取水する. -150.0 50.0 -100.0 150.0 -50.0 0.0 100.0 標高(m) 瀬戸内海 讃岐山地 不圧帯水層A 被圧帯水層B 粘性土層C 基盤岩(花崗岩類) -150.0 50.0 -100.0 150.0 -50.0 0.0 100.0 標高(m) 瀬戸内海 讃岐山地 不圧帯水層A 被圧帯水層B 粘性土層C 基盤岩(花崗岩類) 地質区分 ※香川県地下水利用推進調査報告書(1999 年)を参考 図 4-6 高松平野の南北一断面の地質図 表 4-3 高松平野における地質構造区分 一般的層序 地質区分 透水性 沖積世 沖積層 被圧帯水層B 良(第二帯水層) 粘性土層C 不良(難透水層) 地質時代 三豊層群 鮮新世 良(第一帯水層) 第四紀 新第三紀 洪積世最末期沈水性 扇状地礫層 洪積世 不圧帯水層A 新生代

(35)

高松平野の通常時における地下水の水収支モデル

4.5

高松平野における通常時の地下水の水収支は,降雨が農用地・荒地・森林・水田から浸透 し,次に不圧帯水層Aへ浸透し,さらに被圧帯水層Bへ浸透する簡略的なモデルを仮定し(図 4-7 参照), 1 年間の被圧帯水層Bに貯留される地下水QBBを以下のように算定した. 図 4-7 高松平野における通常時の地下水の水収支 農用地からの浸透量(Qin1)は式 4.1,式 4.2 により算出した.その結果,Qin1 は 277,217m3/ 年となる. Qin1={(1-f1)×A1×R}-QE1 ・・・<式4.1> Q =E×AE1 1 ・・・<式4.2> ここに, f1 :農用地における流出率(0.1)(10) A1:高松平野における農用地面積(623,800m2) R :高松市(高松地方気象台)の年間平均降雨量(1,149mm/年) :農用地からの年間全蒸発量(mm/年) QE1 E :筑波大学実験圃場で計測された年間蒸発量(589.7mm/年)(11

(36)

2)は式 4.3,式 4.4 により算出した.その結果,Q 荒地からの浸透量(Qin in2 は 19,737m3/ 年となる. Qin2={(1-f2)×A2×R}-QE2 ・・・<式4.3> =E×A ・・・<式4.4> QE2 2 ここに, f2 :荒地における流出率(0.2)(10) A2:高松平野における荒地面積(59,900m2) R :高松市(高松地方気象台)の年間平均降雨量(1,149mm/年) Q :荒地からの年間全蒸発量(mm/年) E2 E :筑波大学実験圃場(野原・浅沼 2004 年)で計測された年間蒸発量 (589.7mm/年)(11) 次に,森林からの浸透量(Qin3)は村井・岩崎(1975 年)らによる計測結果を参考に,荒 地からの浸透量(Qin2)の 3 倍と仮定して算出した(12).その結果,59,211 m3/年と試算され た. 水田からの浸透量は,灌漑期(6 月中旬~9 月中旬)と,それ以外の時期である非灌漑期に 分けて算出した.6 月中旬~9 月中旬以外の水田に水を張っていない時期は,水田からの浸透 は降雨のみである.よって非灌漑期の9 ヶ月間における水田からの浸透量(Qin4’)は以下の ように算出した(式4.5,式 4.6,式 4.7 参照).河川流出は,水田からの浸透量から蒸発散を 除いた水量の1/3 が河川へ流出する定義した.その結果,Qin4’は 196,659m3となる. Qin4’={(1-f4)×A ×R}-Q - Q4 E4 out1’ ・・・<式4.5> =E QE4 4×A4 ・・・<式4.6> 1 Qout1’= [(1-f4)×A ×R}-Q ]4 E4 ・・・<式4.7>

(37)

ここに, 表 4-4 灌漑期における水田からの浸透量 A4 Qin4'' (m) (mm/3ヶ月間) (km2) (m3/3ヶ月間) 0-10 988 8.13 5,355,553 10-30 1,123 25.82 19,328,328 30-50 1,087 9.99 7,237,496 50-70 2,493 2.48 4,123,922 70-90 1,651 0.96 1,056,924 90-110 1,218 0.45 363,780 合計 47.83 37,466,003 水田面積 水田からの 浸透量 標高区分 平均 地下降下水量 f4 :水田における流出率(0.4)(10) A4:高松平野における水田面積(8,130,900m2) R :高松市(高松地方気象台)の灌漑期を除いた 9 ヶ月間の平均降雨量(634.3mm) Q :水田からの灌漑期を除いた 9 ヶ月間の全蒸発量(mm) E4 Qout1’: 灌漑期を除いた 9 ヶ月間の河川流出(m3) E4 :筑波大学実験圃場で計測された灌漑期を除いた 9 ヶ月間の蒸発量(344.3mm)(11) 次に6 月中旬~9 月中旬までの 3 ヶ月間の灌漑期における水田の浸透量は(Qin4’’)は,以 下のように算出した. 香川県農業試験場での実験及び中四国農政局四国土地改良調査管理事務所より提供された 減水深データから,蒸発散(6.3mm/日)及び河川流出(Qout1’’)を除いた地下降下水量を標 高別に平均して算出した(13.標高別の平均地下降下水量に標高別水田面積を乗じ,6 月中旬 ~9 月中旬までの灌漑期における水田のからの浸透量(Q 4’’)は 37,466,003min 3となった(表 4-4 参照). よって水田からの浸透量(Qin4)は 37,662,662m3/年となる(式 4.8 参照). Qin4= Qin4’+Qin4’’ ・・・<式4.8>

(38)

ここに, 表 4-5 不圧帯水層 A から流出する地下水量 透水係数 水位差 透水層の長さ 導水勾配 流速 地下水流出量 k ⊿h L i v Qout1 (m/s) (m) (m) (m/s) (m3/年) 1.07×10-4 2 3800 5.3×10-4 5.6×10-8 78,853 Qin4’:非灌漑期の 9 ヶ月間の水田からの浸透量(m3) Qin4’’:灌漑期の 3 ヶ月間の水田からの浸透量(m3) 以上から,不圧帯水層Aへ流入する浸透量(QA)は式 4.9 に示すとおり,農用地・森林・ 荒地・水田からの浸透量の和で表され,38,018,827 m3/年と試算された. QA= Qin1+Qin2+Qin3+Qin4 ・・・<式4.9> 次に不圧帯水層Aから海へ流出する地下水量(Qout2)は,ダルシーの法則を用いて算出し た.その結果,78,853 m3/年と算出された(式 4.10,式 4.11,式 4.12,表 4-5 参照). v= k×i ・・・<式4.10> ・・・<式4.11> i=⊿h/L ・・・<式4.12> Q=v×A ここに, v:流速(m/s) k:透水係数(m/s)(9) i:導水勾配 L:水位差⊿h を生ずる透水層の長さ(m) A:透水層の断面積(m2

(39)

帯水層Aから海へ流出する地下水量(Q 表 4-6 被圧帯水層 B から流出する地下水量 透水係数 水位差 透水層の長さ 導水勾配 流速 地下水流出量 k ⊿h L i v Qout2 (m/s) (m) (m) (m/s) (m3/年) 6.72×10-5 10 2550 3.9×10-3 2.6×10-7 1,785,006 out1)を差し引くことにより,37,939,974 m3/年と算 出された(式4.13 参照). Qin5= QA-Qout1 ・・・<式4.13> また被圧帯水層Bから海へ流出する地下水量(Qout2)も,帯水層Aから海へ流出する地下 水量(Qout1)と同様に算出した結果,1,785,006 m3/年となった(表 4-6 参照). よって高松平野における通常時の被圧帯水層Bへ貯留される地下水涵養ポテンシャル(QB) は,帯水層Aから海へ流出する地下水量(Q B out1)を差し引くことにより,36,154,968 m /年 と推定される(式4.14 参照). 3 QB = QB in5-Qout2 ・・・<式4.14>

(40)

4.6

4.6.1

非灌漑期における休耕田の地下水人工涵養による渇水リ

スクの軽減

休耕田の地下水人工涵養量の算出

非灌漑期における休耕田に水を張ることによる地下水人工涵養の水収支は,以下のモデル のように仮定した(図4-8 参照).非灌漑期の休耕田に水を張ることで,不圧帯水層Aを経由 して被圧帯水層Bに貯留される涵養地下水量は図 4-8 に示すQBであり,この涵養地下水量B QBB が渇水時の水供給ポテンシャルを表している. 図 4-8 非灌漑期における休耕田の地下水人工涵養の水収支 渇水時の水供給ポテンシャルである地下水涵養量QBは,以下のように前提条件を設定し, 香川県農業試験場での実験及び中四国農政局四国土地改良調査管理事務所より提供された減 水深データから,蒸発散(6.3mm/日)及び河川流(水田からの浸透量から蒸発散を除いた水 量の1/3)を除いた地下降下(浸透)水量を流域の標高ゾーン別に平均して算出し,標高ゾー ン別の平均地下降下(浸透)水量に標高ゾーン別水田面積を乗じて算出した . B (13

(41)

前提条件 (1) 非灌漑期の休耕田に水を張る期間は,10 月~12 月までの 3 ヶ月間とする. (2) 涵養対象地域は,高松平野の標高 10m~110m までの休耕田とする. 表 4-8 非灌漑期における休耕田の人工涵養地下水量 表 4-7 標高別地下水降下水量及び水田面積 A (m) (mm/3ヶ月間) (km2) 10-30 1,064 25.82 30-50 1,030 9.99 50-70 2,362 2.48 70-90 1,564 0.96 90-110 1,154 0.45 標高ゾーン区分 平均 地下降下水量 水田面積 休耕田 涵養地下水量 涵養面積率 (%) Qin1 Qout1 Qin2 Qout2 QB 100 30,420,426 23,332 30,397,094 457,744 29,939,350 75 22,815,320 22,360 22,792,960 453,343 22,339,617 50 15,167,134 21,388 15,145,746 448,941 14,696,805 40 12,168,171 20,999 12,147,172 447,181 11,699,991 30 9,126,128 20,318 9,105,810 444,100 8,661,710 25 7,615,107 20,415 7,584,691 444,540 7,140,151 20 6,084,085 20,221 6,063,864 443,660 5,620,205 10 7,605,107 20,415 7,584,691 444,540 7,140,151 単位:m3/年 休耕田から の浸透量 地下水流出量 不圧帯水層A からの浸透量 地下水流出量 (3) 灌漑期の水田の減水深実験値から(13,蒸発散(6.3mm/日)及び河川流出(Q out1) を除いた値を休耕田の地下降下水量(Qin2)とする. (4) 河川流出とは,水田からの浸透量から蒸発散を除いた水量の 1/3 が河川へ流出する. その結果,高松平野の標高 10m~110mの休耕田を対象に非灌漑期に涵養を行った場合, 被圧帯水層Bへ流入する地下水量QBは約 2,900 万m 増加すると試算された(表 4-7,表 4-8 参照) 3 B

(42)

休耕田の地下水人工涵養による渇水リスクの軽減

4.6.2

4.6.1 で算出した涵養地下水量QBが全量利用されると仮定し,高松市民の生活用水が何日創 出されるか算出した.さらに,高松市民の生活用水が創出される日数は取水制限を解除でき る日数として,その場合の渇水リスク指数を求め(式3.1 参照),どの程度渇水リスクが軽減 するか推定した(表4-9 参照).なお,高松市民の生活用水が創出される日数推定の際の根拠 である市民一人一日当たりの生活用水使用量は,1989~2005 年までの生活用水の平均使用量 である 364 リットル/日/人を適用した.この場合,高松市民 390,199 人(推計人口)の一日 の生活用水の使用量は,142,008m である. B 3 表 4-9 地下水人工涵養による渇水リスクの軽減 休耕田 涵養 生活用水 涵養面積率 地下水量 創出日数 (%) QB(m3/年) (日) 100 29,939,350 211 1.2 1.4 75 22,339,617 157 1.1 1.2 50 14,696,805 103 0.9 1.1 40 11,699,991 82 0.9 1.0 30 8,661,710 61 0.8 1.0 25 7,140,151 50 0.8 0.9 20 5,620,205 40 0.7 0.9 10 7,140,151 18 0.7 0.8 渇水リスク指数 1994 2005 ※渇水リスク指数1.0=取水制限なし その結果,高松平野における標高10m~110m までの休耕田面積を 75%涵養した場合,高 松市民の 157 日間の生活用水を創出できる水量に相当する地下水が涵養され,1994・2005 年の渇水リスクを回避することができる. しかし,本論で定義した渇水リスク指数は,断水日数を含む取水制限日数で議論している ため,渇水期間に不足していた水量ではない.実際には,1994 年に不足していた水量は,休 耕田75%涵養した場合の涵養地下水量より,かなり少ないと考えられる.また,現実的に高 松平野では,冬期に野菜栽培などの裏作を行っている農家が多数あるため,高松平野の休耕 田面積75%を涵養することは不可能と思われる(13

(43)

下水量が涵養されるが,1994 年の断水日数(69 日間)を確保することができない. 以上から,少なくとも高松平野における休耕田の面積 40%以上を涵養すると 1994 年と 2005 年の渇水リスクを回避することができる.

4.7 涵養地下水の揚水計画

被圧帯水層B(新第三紀)に貯留された地下水は,図 4-9 に示す深井戸を設置することによ り取水可能である.しかし深井戸を設計する場合,井戸間の相互関係による影響や得られる 効果や費用などを比較して,適切な規模のプロジェクトを想定する必要がある.そこで本論 では,高松平野における新第三紀被圧帯水層Bの平均的な水理地質条件(層厚や透水係数,揚 水降下水位低下量等)を考慮して,深井戸の設計・設置条件を(1)最大地下水位降下量(SW): 5m,(2)井戸半径(r):0.25m,(3)井戸設置箇所:病院・学校の公共施設とした地下水 の揚水計画を設定した(図4-9 参照).

(44)

井戸影響半径

R の算出

4.7.1

一般に井戸が狭い範囲に集中して分布しそれを一斉に井戸から地下水を揚水すると,相互 干渉という相乗効果を起こし,地下水位降下量(SW)が大きくなるため,地盤沈下や地下水 の塩水化などの地下水障害をまねくことになる.従って,井戸間の相互干渉の防止策として, 影響半径(R)を考慮して井戸間隔を適切にとることが必要である(図 4-10 参照)(14). 本論では,取水対象を水質汚染や海水浸入や地盤沈下の可能性がある沖積層(不圧帯水層 A)を完全にシールして,下部の新第三紀被圧帯水層 B のみとする. <干渉> 図 4-10 影響半径(R)を考慮した井戸の適切な配置 (9) 水理パラメーターは高松平野の平均的な透水係数と最大地下水位降下量を仮定し , Sichartの平衡式より影響半径(R)を算出した(式 4.15,式 4.16 参照)(15結果,影響半径 (R)は 214mである. >   ・・・<式        > ・・<式          ・ 4.16 4.15 2 b k T T S R w × = × × = ここに, R:影響半径(m) Sw:地下水位降下量(5m) T:透水量係数(m2/日)

(45)

b:被圧帯水層Bの平均厚さ(79m)(9

4.7.2 井戸設置箇所の選定

高松平野における代表的な公共施設である病院と学校は,26 箇所分布している.井戸設置 箇所は,影響半径(R)を考慮して井戸間隔をとった結果,このうち 21 の病院と学校に井戸 が適切に設置できる計算である(図4-11 参照). 図 4-11 高松平野における井戸設置箇所

(46)

地下水可能揚水量の算出

4.7.3

地下水可能揚水量(Q)は,4.7.1 節の影響半径の算出方法を組み入れて,式 4.17 に示す Thiemの平衡式より算出した(15).

( )

       ・・・<式4.17> ln 2 r R Sw T Q= ×

π

× ここに, Q:地下水可能揚水量(m3/日) T:透水量係数(459m2/日) Sw:地下水位降下量(5m) R:影響半径(214m) r:井戸半径(0.25m) その結果,検討地域内に分布している21 本の井戸からの一日当たりの地下水可能揚水量は, 総計44,788m3/日と計算された. なお,1994 年における断水時の応急給水は,7 月 14 日~8 月 16 日までの 34 日間続いて おり,そのときの水供給量は297 リットル/日/人であった(4.よって,一人一日当たり297 リ ットル供給した場合,一日当たり全井戸からの地下水可能揚水量(Q)は,高松市民(390,199 人)の38%に供給することができる.また,一人一日当たり 115 リットルの水使用量と限定 した場合,高松市民全員へ供給することが可能である. 国土交通省河川局が節水実験を行った結果,一人一日当たり100 リットルの水使用量でも, ある程度の生活は続けられることが示されており,高松市民の最低限の生活用水は確保され ることが示された.

(47)

4.8

4.8.1

4.8.2

地下水人工涵養プロジェクトの経済性の評価

高松平野における休耕田面積 40%を涵養し,涵養された地下水を 21 本の深井戸を設置し て取水する地下水人工涵養プロジェクトの経済性の評価を行う.

経済性評価の前提条件

前提条件は以下のように設定した. (1) 井戸耐用年数:25 年 (2) 井水設備耐用年数:13 年 (3) 社会的割引(利子)率:5% (4) 水田涵養の協力農家への助成金:22,000 円(1,000m2当たり) (5) 水中ポンプ電機動力:20kW (6) 電気料金:12 円/kWh (7) 水道料金:169.5 円/m3(高松市水道局)

費用

費用については,21 本の井戸を施工する初期投資費と,25 年間の水中ポンプ等の運転費 及び地下水を浄化するための薬品費と水中ポンプ等の13 年に1回の交換する維持管理費,休 耕田の涵養に協力しくれた農家への助成金と,将来に井戸を廃棄するための埋め立て費の 4 項目と設定した(図 4-12 参照).なお今回は,主要なコストの要素のみを対象とし人件費及 び用地費は考慮しないことにした.

(48)

深井戸を21 本施工する費用(初期投資費)は,浅井戸の施工費用(有限会社ヨシコー建設・ 2006 年)を参考に算出した(表 4-10 参照).その結果,初期投資費は約 2 億 4,000 万円とな った. 表 4-10 深井戸施工費用の内訳 ボーリング工事 218,295,000 井水設備工事 20,294,400 配管設備 849,000 電気工事 613,950 合計 240,052,350 単位:円 維持管理費については,井水設備(水中ポンプ)の運転費と井水設備の交換費,地下水浄 化の薬品費の主要な3 項目を算出した. 水中ポンプの運転は,水中ポンプの電機動力 20kW を 24 時間稼動させた場合(電気料金 12 円/kWh)の運転費を算出した結果,年間で約 4,400 万円となる. 井水設備一式を深井戸の運用開始から13 年目に取り替える費用(配管設備費及び電気工事 費も含む)は,約2,200 万円と計算される. 21 本の深井戸から揚水する地下水を浄化するための薬品費は,1m3当たり1.5 円と仮定し て算出した結果,年間で約2,500 万円となる. 以上より,年間の維持管理費は約 6,900 万円となる(表 4-11 参照).また別途,深井戸の 運用開始から13 年目に井水設備一式を交換する維持管理費として,約 2,200 万円が発生する. 表 4-11 地下水揚水井の維持管理費の内訳 水中ポンプ運転費 44,150,400 薬品費 24,521,262 合計 68,671,662 単位:円/年

(49)

3 ヶ月間,地下水人工涵養に協力する農家への助成金は,1,000m2当たり22,000 円と仮定 して算出した結果,年間で約3 億 5,000 万円となる(表 4-12 参照). 表 4-12 地下水人工涵養プロジェクトに対する協力農家への助成金 涵養面積 助成金単価 助成金 (m2) (円/1,000m2) (円/年) 15,876,760 22,000 349,288,720 将来(25 年後)の井戸の廃棄費として,21 本の深井戸を砂利で埋め立てる費用を算出した 結果,約130 万円となる(表 4-13 参照).ただし,井戸の掘削・施工や地下水水質などの条 件にもよるが,深井戸の寿命は50 年~100 年めでに及ぶ実例も多い. 表 4-13 深井戸の廃棄費 砂利単価 深井戸半径 平均掘削深度 深井戸容積 深井戸埋め立て費 (円/m3) (m) (m) (m3) (円/21本) 3,000 0.25 105 20.6 1,298,194

4.8.3 便益

便益については,渇水時における高松市民の水に対する欲求度は,現在の水道料金である と仮定して,年間21 本の深井戸から揚水する地下水量に,現在の高松市の水道料金を乗じて 算出した.その結果,年間に生じる主要な便益は事業収入に相当する約27 億 7,000 万円であ る(表4-14 参照). 表 4-14 地下水人工涵養プロジェクトの便益 深井戸21本からの 高松市の 地下水可能揚水量 水道料金 (m3/年) (円/m3) (円/年) 16,347,508 169.5 2,770,902,551 便益

(50)

ライフサイクルコストの評価

4.8.4

社会的割引(利子)率を5%,井戸の耐用年数を 25 年間として,費用便益比(B/C)によ る経済性の評価を行った.その結果,費用便益比(B/C)が 6.2 と高い値を示した(表 4-15 参照).また総費用を 25 年間で揚水する総地下水量で割り,1m3当たりの地下水源水道単価 を算出した結果,15 円/m3と試算された.なお,高松市における2005 年の原水単価(香川用 水1m 表 4-15 地下水人工涵養プロジェクトのライフサイクルコストと費用便益比 単位:千円 井水設備運転費 薬品費 井水施設交換費 B/C 425,808 622,253 345,601 11,538 4,922,856 383 6,328,439 39,053,215 6.2 便益(Benefit) 費用(Cost) 合計 費用便益比 維持管理費 助成金 初期投資費 廃棄費 3当たりの受水費)は供給単価(1m3当たりの水道料金)169 円/m3の約4 割程度である. よって、地下水源水道単価は,高松市の原水単価と比較して 1/4 と安価であり,コスト面か ら見ても優れている. 本論で提案する高松平野における非灌漑期の休耕田の面積40%を涵養し,深井戸を 21 本 設置して地下水を揚水する地下水人工涵養プロジェクトは,流域の健全な水循環システムを 持続的に保全・強化することができることだけでなく非常に経済的であり,また高松市の渇 水リスクを軽減するための流域全体の河川の表流水や地下水を含めた総合的な水資源管理に おける一つの有効な手段であることが示された.

(51)

4.9 地震時の水供給の危機管理

本論で提案したプロジェクトの副次的な効果として,震災などの緊急時の水供給にも対応 可能である点が挙げられる. 地震時には水道管が各所で破裂し,破裂箇所より先には水道が送水できなく,断水状態が 多発する.水道管と比較して,深井戸は地下深部に設置された鉛直の構造物であるため地震 に強いことから,本プロジェクトで検討した深井戸を公園や学校などの各所に設けることに より,周辺の地域住民へ水を緊急に供給することが可能となる. 特に病院などの,震災時にPCB(事業継続計画)を満足しなければならない施設で導入さ れており,東京都狛江市にある慈恵医大第三病院は,井戸から一日最大 480m3を取水可能で あるが,同病院で日常使用される一日200 m3を除いた280 m3を地域へ提供することを予定 している.このように深井戸は分散型地下水源水道となるため、震災時の水供給にも極めて 有効な手段となりうるものと考えられる.

表 3-1  高松市における 1994 年及び 2005 年の水源別水供給量  値 1,463 1,338 1,446 1,465 1,517 1,52794年05年 1,646 1,559 1,644 1,753 1,750 1,8191,805 1,683 1,8301,704 1,885 1,815 1,888 1,835 1,786 1,5362,291 2,2581,627 1,741 1,753 1,838 1,889 1,741 1,900 1,7711,979 2,405 2,560 2,4
図 4-3  熊本市水前寺観測井の地下水位経年変化
図 3  減水深測定風景 2

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