第 2 章 気候変動の観測結果と将来予測
④ 無降水日
2.6. 海水温
【コラム
12】全球海洋表層の貯熱量(Ocean Heat Content: OHC)
地球表面の
7
割を占める海洋は、大気に比べて熱容量が大きいため、わずかな水温の変化でも大 量の熱を大気とやり取りすることになり、気候に大きな影響を与える。IPCC AR5は、1971~2010 年の40
年間で気温の上昇や氷の融解等を含む地球上のエネルギー増加量の60%以上が海洋の表層
(ここでは海面~深さ
700m
までを指す)に、およそ30%は海洋の 700 m
よりも深いところに蓄 えられたと評価している。このように海洋が熱を蓄えると、海水が熱膨張して海面水位が上昇する 等の影響がある。Ishii and Kimoto(2009)の手法を用いて解析した海洋表層の全球貯熱量の経年変化を図 1
に示す。1950年以降、海洋表層の貯熱量は上昇と下降を繰り返しつつも増加しており、増加率は
10
年 あたり2.22×10
22J
である(信頼度水準99%で統計的に有意)
。近年では1990
年代中頃~2000年 代初めに顕著に増加した。2000
年代中頃からは世界の平均気温や平均海面水温と同様に一旦傾きが 緩やかになったものの海洋表層の貯熱量は引き続き増加している。この貯熱量の増加に対応して、海洋表層の水温は全球で
1950~2016
年の間に10
年あたり0.023℃上昇していた。IPCC AR5
は、1970
年代以降の海洋の表層水温上昇に、人間活動による寄与がかなりあった可能性が非常に高いと している。図 1 海洋表層(0~700m)の全球貯熱量の経年変化
出典:気象庁(2017e)
将来予測
(1) 世界
21
世紀の間、世界全体で海洋は昇温し続ける と予測されている。21 世紀末までの海面~水深100m
までにおける温度上昇の最良推定値は約0.6℃(RCP2.6
シナリオ)~約2.0℃(RCP8.5
シナリオ)と予測されている。194)また、2016~2035年の予測においても、世 界の海面水温は上昇すると予測されている(図
2.6.4)
。194)図 2.6.3 世界の海面水温の変化
CMIP5の複数モデル(12モデル)により、海面水温の世界
平均の年平均を各 RCP シナリオについて予測。陰影は予測
結果の90%が該当する範囲を示す。予測結果は、1986~2005
年平均に対する将来の海面水温の変化で示す。出典:IPCC
(2013a)Figure11.19を加筆、改変
(2) 日本
21
世紀末までの日本付近の海面水温は、RCP8.5
シナリオの場合、現在よりも上昇すると予測されている(図
2.6.5)。
図 2.6.5 海面水温の変化
等値線は1980~1999年平均の海面水温(3K)、陰影は1980
~1999年平均に対する2076~2095 年平均の海面水温の変 化(K)を示す。RCP8.5シナリオ に基づくCMIP5の複数 モデル(28モデル)による平均値。気象庁地球温暖化予測情 報第9巻(気象庁、2017)の作成に用いた予測値を計算する 際に、全球大気モデル(MRI-AGCM3.2S)の境界条件として 与えた海面水温の変化量の1つ。提供:気象庁
過 去 の 期 間 の モ デ ル 結 果
年
図 2.6.4 世界の海面水温の変化 1986~2005年平均に対する2016~2035年平均の海面水温 の変化。RCP4.5シナリオに基づくCMIP5の複数モデル(38 モデル)による予測の平均値。斜線部は、複数モデル平均の 変化量が自然起源の内部変動性に比べ小さい(つまり、20年 間の自然起源の内部変動性の1標準偏差未満)であることを 示す。また点描影は、自然起源の内部変動性に比べ大きく(つ まり、20年間の自然起源の内部変動性の2標準偏差以上)か つ少なくとも 90%のモデルが同じ符号の変化をしている領 域を示す。出典:IPCC(2013a)Figure 11.20を加筆、改変 .