第 3 章 気候変動による影響
3.2. 気候変動の分野別影響(日本)
気候変動の影響は、日本でも既に現れ始めており、今後様々な分野で拡大すると見られている。ここ では、各分野における気候変動の影響の現状と将来予測についての知見を示す。
【コラム
17】政府適応計画の閣議決定
前節までで示されたように、気候変動の影響はすでに世界の様々な地域・分野で現れており、今 後、温暖化の程度が増大すると、深刻で広範囲にわたる不可逆的な影響が生じる可能性が高まるこ とが指摘されている。このため、気候変動の影響への対処として、温室効果ガスの排出の抑制等を 行う「緩和」だけでなく、すでに現れている影響や中長期的に避けられない影響に対して「適応」
を進めることが求められている。
我が国では、これまでに進められてきた気候変動とその影響に関する観測・監視や予測・評価、
調査研究等の科学的知見を活用し、中央環境審議会において、幅広い分野の専門家の参加の下、気 候変動の影響の評価が行われ、2015年
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月に「日本における気候変動による影響の評価に関する 報告と今後の課題について」として環境大臣に意見具申がなされた。意見具申では、我が国で、気温の上昇や大雨の頻度の増加等により、農作物の品質低下、動植物 の分布域の変化等、気候変動の影響がすでに顕在化していることが示された。また、将来は、さら なる気温の上昇や大雨の頻度の増加、海面水温の上昇に加え、台風の最大強度の増加、海面の上昇 等が生じ、農業、林業、水産業、水環境、水資源、自然生態系、自然災害、健康等の様々な面で多 様な影響が生じる可能性があることが明らかとなった。これらの影響は、7 つの分野、30 の大項 目、
56
の小項目に整理され、500
点を超える文献等を活用して、重大性(影響の程度、可能性等)、緊急性(影響の発現時期や適応の着手・重要な意思決定が必要な時期)及び確信度(情報の確から しさ)の観点から評価が行われた。
このような気候変動による様々な影響に対し、政府全体として整合のとれた取組を計画的かつ総 合的に推進するため、
2015
年11
月、政府として初の気候変動の影響への適応計画が閣議決定され た。適応計画では、目指すべき社会の姿等の基本的な方針、基本的な進め方、分野別施策の基本的方 向、基盤的・国際的施策等が示されている。例えば基本的な方針では、「政府施策への適応の組み 込み」「科学的知見の充実」「気候リスク情報等の共有と提供を通じた理解と協力の促進」「地域で の適応の推進」「国際協力・貢献の推進」の
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つの基本戦略が掲げられ、これらに基づき、現在、各種の具体的な取組が進められつつある。
出典:気候変動の影響への適応計画(平成27年11月27日閣議決定)
【コラム
18】
政府適応計画に基づく基盤的施策(1)気候変動適応情報プラットフォーム
政府は、適応計画に基づき、気候変動影響や適応に関する情報基盤である「気候変動適応情報プ ラットフォーム」を
2016
年に立ち上げ、国立環境研究所が運営している。同プラットフォームは、気候変動影響に関する様々な情報を集約し、わかりやすく提供することで、国、地方公共団体、民 間事業者、国民等による適応の取組を推進している。
図 1 気候変動適応情報プラットフォームのトップ画面
(2)地域適応コンソーシアム事業
環境省、農林水産省、国土交通省・気象庁、文部科学省は、2017年度より、連携・協力し、地域 適応コンソーシアム事業を開始している。本事業では、全国を
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ブロックに分割し、国の地方支分 部局、地方公共団体、大学等の研究機関が参加する地域協議会を設置し、それぞれの適応の取組を 共有するとともに、気候変動影響に関する調査を通して、科学的知見に基づく適応策について検討 している。図 2 地域適応コンソーシアム事業
(3)気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)
今後、「気候変動の影響への適応計画」の基本戦略の一つが「地域における適応の推進」である ことを背景に、地域がそれぞれ気候変動への適応策を講じることが本格化してくることが考えられ る。その際には、これまでの気候変動研究の蓄積を活かし、地域のニーズを踏まえた、地域の適応 策の策定に資する共通基盤的技術を整備することが求められる。これを実現するために、文部科学 省では、「気候変動適応研究推進プログラム(RECCA)」(2010~2014年度)から引き続き、「気候 変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)」を
2015
年より実施しており、気候変動研究の成果 を社会実装につなげる取組を行っている。提供:環境省・文部科学省
3.2.1 農業、森林・林業、水産業
気候変動が農業、森林・林業、水産業に及ぼす影響は、地域や品目によって様々である。気温の上 昇による作物の品質の低下、栽培適地の変化等が懸念されている一方で、新たな作物の導入に取り組 む動きも見られる。また、近年、異常な豪雨が頻繁に発生するようになり、森林の有する山地災害防 止機能の限界を超えて山腹崩壊等が発生する等、山地における災害発生リスクも高まっている。
最近の新たな知見として、現状については野菜の生育障害、果実の食味の変化、ノリ養殖の収穫量 の減少等が、予測についてはワイン用ぶどうの栽培適地の拡大、トウモロコシの二期作適地の拡大、
各種の病害虫の分布の拡大等が報告されている。また、水稲について、大気中の二酸化炭素濃度の上 昇が収量を高める一方、高温・高二酸化炭素濃度による品質低下の可能性が指摘されている。
(1) 農業