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第 3 章 気候変動による影響

③ 果樹

○ 現状

夏季の高温・少雨が果樹生産に及ぼす影響とし て、強い日射と高温による日焼け果の発生、高温 が続くことによる着色不良等が知られている。ぶ どう、りんご、かき、うんしゅうみかんでこのよ うな影響が報告されている(図

3.2.6)。

155)

また、ももでは、特に高温になりやすく降雨の 多い西日本のもも産地を中心に、外見からは区別 がつかず、果実内部に「水浸状果肉褐変症」及び

「赤肉症」と呼ばれる果肉障害が発生し、品質の 不安定化、生産者の収益の低下が懸念されている

(図

3.2.6

右下)。そのため、高温に伴う果実温度

の上昇及び水分を制御できる対策を中心に果肉 障害軽減技術の構築や熟期・着果を制御すること による軽減技術等が検討されている。156)

図 3.2.6 ぶどう(ピオーネ)の着色不良

(左上)、りんご(ふじ)の日焼け果(右上)

りんごの着色不良(左下)、 ももの水浸状果肉褐変症(右下)

出典:農林水産省(2016a)、農林水産省(2016b)、

農林水産省(2017)

りんごでは、過去

30~40

年にわたるりんごの 品質データの分析により、温暖化に伴ってりんご の食味が変化していることが明らかとなった。酸 含量が徐々に減る一方、糖含量はやや増加してお

り、その結果、りんごが甘く感じられるようにな ってきている(図

3.2.7)。これまで、温暖化が原

因で作物の収量や収穫日が変化していることは 知られていたが、青果物の味が変化している知見 が示されたのは世界で初めてのことである。この ような変化が起きた原因は、春先の温度上昇で発 芽や開花が早期化し、果実の生育期間が長くなる 傾向にあることと、果実の成熟期の温度が高くな り酸含量の減少が進みやすくなることにあると 考えられている。148)

図 3.2.7 りんご(ふじ)の酸含量と糖度 の変化(11 月 1 日時点、長野)

出典:農業・食品産業技術総合研究機構(2013)(原著 文献:Sugiura et al.(2013))

図 3.2.7 りんご(ふじ)の酸含量と糖度 の変化(11 月 1 日時点、長野)

出典:農業・食品産業技術総合研究機構(2013)(原著 文献:Sugiura et al.(2013))

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【コラム

20】

温暖化に対応した取組

農業の分野では、気温の上昇によって新たに栽培できるようになる亜熱帯・熱帯作物の導入や 転換、産地の形成等、温暖化に対応した取組が始まりつつある。

例えば、愛媛県では、県南予地域において平均気温の上昇によるうんしゅうみかんの高温障害 の多発を受けて、県みかん研究所、普及機関、JA、生産者、企業等の関係機関が連携して、夏場 の高温にも強いブラッドオレンジの一つである「タロッコ」を導入した。2008 年に栽培面積が

7.9ha、生産量が 2.1t

であったが、2013年には栽培面積が約

24ha、生産量は 140~150t

に拡大 し、市場で高い評価を受けている。今後も関係機関が一体となり、さらなる栽培・貯蔵・加工技 術の確立や販促活動に取り組むこととしている。

その他、愛媛県松山市の島しょ部や海岸部では、アボカドを導入している地域もある。

図 1 愛媛県におけるタロッコの導入(左)、アボカドの導入(右)

出典:農林水産省(2014b)、農林水産省(2016a)

○ 将来

うんしゅうみかんやぶどう等について、将来の 栽培適地の変化が予測されている。

うんしゅうみかんについて気候モデルを用い て温暖化による栽培適地の変化を予測した研究 によれば、うんしゅうみかんの栽培に有利な年平 均気温は

15~18℃であるが、 2060

年代には現在 の主力産地の多くが現在よりも栽培しにくい気 候となる可能性が示唆されるとともに、西南暖地

(九州南部等の比較的温暖な地域)の内陸部、日 本海及び南東北の沿岸部等、現在、栽培に不向き な地域で栽培が可能になることが予測されてい る(図

3.2.8

左)123)。一方、亜熱帯性柑橘である たんかんの栽培適地は北上し、現在のうんしゅう みかん産地のうちの沿岸部が

2050

年までにたん かん生産の適地になるとの予測も示されている

(図

3.2.8

右)218)

また、気候モデルを用い、北海道におけるワイ ン用ぶどう生産の適地の変化を予測した研究に よれば、全球の地上気温の平均が

1990

年代と比

較して

2℃上昇した場合、北海道の標高の低い地

域で栽培適地が広がる可能性があることが予測 されている(図

3.2.9)。

207)

図 3.2.8 うんしゅうみかん栽培適地の予測(左)、たんかん栽培適地の予測(右)

左:(a) 現在気候(1971~2000年)、(b) 2020年代、(c) 2040年代、(d) 2060年代、(e) (d)よりも1℃高いケース、(f) (d)よりも

1℃低いケース。MIROC3.2-HiResモデル、SRES A1Bシナリオを使用した予測。右:A現在気候(1981~2000年)、B 2011

~2030年、C 2031~2050年、D 2051~2070年。出典:(左)杉浦ら(2004)、(右)T. Sugiura et al.(2014)

図 3.2.9 ワイン用ぶどうの栽培適地(1990 年代と予測)

1990 年代の栽培適地は、夏季の気温と降水量の条件、及び冬季気温条件を満たした地域が青色と紫色で示されている。「将来

(2℃上昇)」とは、各全球気候モデル結果において、1990年代と比較して2 ℃上昇した時期の10年間を指す。RECCA(文部 科学省による「気候変動適応研究推進プログラム」)で作成されたデータセットを使用した9つの予測結果のうち、生産に適し ていないとされた予測結果の数を白~黄~赤の色で示している(生産に適していないとされた予測結果の数が白色は0、黄色は 1~3、赤色は4~9)。出典:M. Nemoto et al.(2016)

将来(2℃上昇)

ワイン用ぶどう生産に適していないと予測されたRECCA予測結果の数 1990年代