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第 3 章 気候変動による影響

① 水稲

3.2.1 農業、森林・林業、水産業

気候変動が農業、森林・林業、水産業に及ぼす影響は、地域や品目によって様々である。気温の上 昇による作物の品質の低下、栽培適地の変化等が懸念されている一方で、新たな作物の導入に取り組 む動きも見られる。また、近年、異常な豪雨が頻繁に発生するようになり、森林の有する山地災害防 止機能の限界を超えて山腹崩壊等が発生する等、山地における災害発生リスクも高まっている。

最近の新たな知見として、現状については野菜の生育障害、果実の食味の変化、ノリ養殖の収穫量 の減少等が、予測についてはワイン用ぶどうの栽培適地の拡大、トウモロコシの二期作適地の拡大、

各種の病害虫の分布の拡大等が報告されている。また、水稲について、大気中の二酸化炭素濃度の上 昇が収量を高める一方、高温・高二酸化炭素濃度による品質低下の可能性が指摘されている。

(1) 農業

図 3.2.2 3 つの気候シナリオによる全国平均コメ収量と登熟期の高温リスクにより 区分された収量割合の変化予測

棒グラフは収量、ClassA-Cは品質に関して高温リスクを受けやすいコメの割合を表す。ClassA-Cは、出穂後20日間について、

日平均気温が26℃を超過した値を積算した暑熱指数(積算気温、℃・日)により区分されたカテゴリーで、それぞれA(20℃・

日以下)、B(同20~40℃・日)及びC(同40℃・日以上)である。Class Cになるほどリスクが高い。出典:Y. Ishigooka et al.

(2017)

図 3.2.3 登熟期の高温リスクが小さいコメ

(Class A)の収量の変化率分布

(適応策をとらない場合の 20 年平均)

全球気候モデル MIROC5 で比較的中庸な RCP4.5 シナリオ を使用し、1981~2000 年におけるコメ全収量の平均値を 100 とした場合の、当該期間におけるClass Aのコメ収量の平均値 の相対値。出典:Y. Ishigooka et al.(2017)

図 3.2.4 3 か年の FACE 実験における コシヒカリの整粒率

赤は高二酸化炭素区、青は対照区、図中の温度は出穂後 20日間の平均気温を示す。整粒率は高温であった2010 年の方が、比較的低温であった2011、2012年に比べて 低いこと、いずれの年次も高二酸化炭素区で低いが、対 照二酸化炭素区との差は高温年でより大きくなること がわかった。出典:Y. Usui et al.(2016)を改変(論 文 の 概 要 は 国 立研 究 開 発 法 人農 業 環 境 技術 研究 所

(2016)の平成27年度研究成果情報で紹介)

【コラム

19】農業分野の適応策

農業分野では、温暖化による影響を軽減するための適応策が、すでに多くの作物について実施 されている。

水稲については、高温適応技術として、高温登熟回避のための移植時期の繰り下げや水管理、肥 培管理の徹底等が多くの都道府県で継続的に進められており、白未熟粒の抑制等に一定の効果が上 がっている。さらに、これらの要素技術を、気象予測と組み合わせ、適切な栽培管理技術の判断を 行う「気象対応型栽培法」の取組が始まっている。図

1

は「気象対応型栽培法」の概要を示したも ので、農家は、ウェブ等で配信される気象予報とそれに対応した適切な栽培管理方法の情報をもと に、適切な稲作管理の判断を行う。例えば、猛暑が予測された場合は、その障害を軽減するために 追肥の量を増やし、水田の水を排水する中干しの期間を短縮する。逆に、日照不足が予測された場 合は、追肥の量を減らし、中干しの期間を長くする。このようなウェブでの情報配信による気象を 先取りした細かな対応により、異常天候による影響を軽減する対策は今後多くの農家に普及するこ とが期待されている。

図 1 「気象対応型栽培法」の概要 出典:日本学術会議農学委員会(2014)図4を改変

また、白未熟粒の多発を抑制するため、「きぬむすめ」、「つや姫」等の高温耐性品種の作付面積 が年々増加しており、2016年は約

9

1

千 ha(対前年比

105%、2010

年と比べて約

2.4

倍の水 準)であった(表

1)

表 1 水稲の高温耐性品種の作付状況

品種名 作付面積 (ha) 作付けの多い上位3県

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

きぬむすめ 4,866 5,545 6,957 9,534 11,808 13,909 14,980 島根県、鳥取県、岡山県

つや姫 2,537 3,648 8,560 9,831 10,227 12,007 13,980 山形県、宮城県、島根県

ふさこがね 7,368 8,154 7,986 8,280 8,280 8,280 8,336 千葉県

にこまる 2,303 2,934 4,084 5,489 7,105 7,901 6,958 長崎県、愛媛県、岡山県 ふさおとめ 6,140 6,584 6,357 6,493 7,043 7,043 6,821 千葉県

その他 14,513 19,168 21,842 26,448 33,011 38,250 40,310

計 37,700 46,000 55,800 66,100 77,500 87,400 91,400

出典:農林水産省(2017)を一部改変

出典:日本学術会議農学委員会(2014)、農林水産省(2017)