第一節 黒豆紙による商業的利用の提案
黒豆はこれまでにも、実に多岐にわたって商品展開されてきた。兵 庫県篠山市にある、『篠山市地域活性化センター 黒豆の館』23では、
約100種類もの商品が販売されている24。これらの商品に新規参入と いう形での商品展開と、もう1っは紙という素材を活かした、パッケ ージングの展開を示したい。
■紙としての商品展開
紙製晶は、その主な用途を筆記具や印刷媒体として使用されている。
これは、紙の特性が、薄く、軽く、丈夫で、水分を良く吸い込み、染 まりやすいというものであると同時に、非常に安価であるということ から、上記の用途に非常に特化して我々の生活と密接に絡んでいると いえるだろう。
これに、篠山という黒豆を特産とした観光を立ち上げている地であ るという点を考慮すると、真っ先に浮かぶのは、やはりはがきや便箋 などのお土産としての利用であろう。現に、黒豆の館の館長である並 河氏と、この黒豆の紙の話をした際に、真っ先に利用ができそうなの はこのような便箋での利用ではないかとのことだった。
また、黒豆の館という地域振興の施設があるのだから、施設で使わ れる紙製品(パンフレットやポスター、壁紙やランプシェード等〉の代 替としての可能性も考えられるだろう。
黒豆紙は表皮を完全に取り去るのが難しいので、その風合いを活か す方向で考えた方がいいだろう。反面、均一な色や面を作るのは難し いので、その性質を活かした展開が考えられるだろう。
ランプシェードの例 はがき、便箋利用の例25
■パッケージング利用
黒豆製品として販売している商品のパッケージとして、黒豆紙を使 えないかという提案である。
まず、黒豆自体を販売している袋としての利用である。
黒豆のパッケージ例
これは、薬包紙の包装方法をモチーフとした 試作。図のように重ねて陳列することが可
能。
添え書きに、「100%黒豆製」ということを明 記してある。
薬包紙の包装方法を選んだ理由として、黒 豆の薬効成分が挙げられる。黒豆は薬では ないが、薬のように体調を整える効果をもた らすところから、このデザインにした。
◎●
︑o中に黒豆が入っている。正規のもとくらべ て、内容量は1沼に減っている。それでも、
黒豆の一枚紙をそのまま使用しているとこ ろに、この商品の付加価値をつけていきた
い。
現在、黒豆の館で販売されているもの
,
これは、現在黒豆の館にて販売されている黒豆の 袋σビニールで覆われて、中身が見えるようになっ ている。
この案は、現在販売されているビニールの袋に代わるものとしてで はなく、黒豆の紙を使ったということでの付加価値を重視したもので ある。そのため、黒豆の量自体は現在市販されているものの方が多い が、その分お土産等としての利用が期待できる。
次に、黒豆紙による包装紙としての展開である。
匹
包装紙として
包装紙としての利用。商品を包む際の、ラ ッピングとして使用する26。
包装紙を止めるテープでのP R
/
包装紙を止める、テープにrこれは黒豆か ら作られた紙だ』ということをアピールして ある。
テープをこのように作成しておけば、いざ 貼ろうというときに便利。
これは、包装紙としての紙の利用である。包装用なので特に文字情 報は使わず、包装紙を止めるテープ等に『この包装紙は、黒豆の茎か
らできています』等のPR文を印刷してはどうだろうか。
下図は、黒豆食品の取扱説明書などに含める例である。
説明書などの付属品としての利用
今回は『黒大豆うどん』という既製品を基 に、付属の説明書という設定で作成した
裏側の見開き部分。ここに、うどんの作成 方法を、図解で紹介してある。
裏表紙の下部の拡大図。右側のマーク は、黒豆からササイクルしたというマークを 作成してみた。左は成分表。
中に説明書きとして印刷されている紙を、黒豆紙として利用した。
こうして、説明書などにも付加価値をつけることで、食品を食べた後 も、黒豆の印象を強くすることができる上に、安易にこの説明書きを 捨てさせないという効果を期待できる。
このように、様々なデザインで工夫し加工することで、黒豆の商品 としての価値をあげることも出来るだろう。また、黒豆の未利用素材 であった茎を使って漉いた紙で、黒豆のパッケージを作ることで、
100%黒豆から出来た商品であるという宣伝文句もでき、より商品に 付加価値を加えることが出来る。
この付加価値という効果が大事で、黒豆の主役はあくまで『豆』な
のである。それをより引き立てるものとして、廃品利用である『紙』
の価値が同時に高まるものと考えられる。
また先目、黒豆の館にて『黒豆フェア』というものが行われた。こ れは、黒豆を使った新商品の展示や、黒豆の紹介を行うもので、今回 私が試作した黒豆紙も展示させていただくことができた。
当日のフェア会場での模様(2003年12月21目〉
取材当目は、前目までの記録的な雪のためか、客足は少なかった。
だが、ときおり紙のブースを立ち止まって見てくださる方もいて、感 触としては悪くなさそうであった。
また、この日たまたまこのフェアの取材に来ていた、神戸新聞丹波 総局の久保田輝氏から、今回の黒豆紙のことについて取材を受けた。
この論文には間に合わなかったが、後目新聞記事にて紹介させていた だくとのことだった。
今回の展示について、黒豆の館館長の並河氏からは、フェア後もし ばらくは展示していただけるとの承諾を得ているので、論文には間に 合わないのだが、改めてお客の反応などを調査してみたい。
第二節 ヘチマを使った紙漉きによる、教育的利用の提案
ヘチマは小学校4年生の理科で、雄花と雌花にわかれて咲くという 雌雄異花の授業で栽培される。一年草なので、授業での役目を終ると 無残な形をさらしたヘチマの茎が花壇に横たわり放置されるのが現 状ではないだろうか。実際、私が授業を受けた10数年前もそうであ ったし、ヘチマの茎を提供してくださった小学校でも、特に利用はさ れていないようであった。実の部分に関しては、それぞれ児童が持っ て帰って、たわしなどとして使うのかもしれないが、茎の利用に関し
て、何か取り組みがなされているという話は聞いたことがない。
そこで、今回の紙漉き実験での経験を元に、紙漉きという観点から、
利用方法を見出されずに捨てられてしまうヘチマの茎に、教育的な意 義と、その利用の提案をしたい。
■なぜ、紙を漉くのか
背景としては、未利用の素材を利用価値のあるものにしたいという 私の意見もあるが、平成14年度から完全実施の始まった、総合学習 の授業が深くかかわってくる。総合学習の現場で、紙漉きという活動 は非常に多く行われている。ある時は牛乳パックによるリサイクルの 体験として、ある時はケナフを育て環境教育の一環として、紙漉きと いう活動はその目的は様々あれど、教育現場ではよくある活動だとい
える。
では教育活動において、ヘチマによる紙漉きがどのような意義を見 出せるのだろうか。それは、紙漉きと密接に絡んでいるリサイクルの 問題と環境問題を同時に扱ってしまおうというものである。
リサイクルという点で言えば、もともと花壇で捨てられてしまうは ずであったヘチマの茎を使うので、まさにゴミを資源とした立派なリ サイクルといえるだろう。そして、実際に紙漉きを体験することによ り、紙を漉くということの大変さや、1枚の紙に対する思いの変化等 を体験することができるだろう。そうすることにより、紙をより大事 に扱い、無駄遣いをなくすきっかけとすることが出来る。これこそ、
まさにリサイクルという教育の芯になる部分ではないだろうか。リサ イクルできればいいという考えではなく、ゴミを減らす意識の変化こ そ、リサイクルの担う教育的意義であろう。
また、環境教育という視点で言えば、紙漉きという行為自体が環境 を考える非常に良いきっかけを与えてくれる。なぜなら、紙漉きは非 常に環境に悪影響を与える作業だからである。例えば煮熟という作業 は、高アルカリ水による煮出しであるし、繊維の漂白を行う場合、酸 素系の薬品にパルプ漬け込むのである。また、長時間煮出しを行うた め、その際に出される二酸化炭素の量たるや計り知れない。その上、
二酸化炭素を貯蔵する役割を持つ植物を切り取るのだから、環境に良 いはずがない。木材パルプを利用した場合、この点はなおさらだろう。
このような環境に悪い影響を与えながらも、我々にとっては非常に便 利な紙の利用を止めることはできないだろう。だからこそ、環境教育