5.10 消毒設備
5.10.4 注入設備
1. 塩素剤の注入設備は、次の各号による。
1) 容量は、最大から最小注入量まで安定して正確に注入できるもので、かつ予備設備 を設ける。
2) 耐腐食性、耐摩耗性に優れ、補修の容易な構造とする。
3) 保守、点検が容易に行える配置とする。
2. 次亜塩素酸ナトリウムの注入設備は、次の各号による。
1) 注入設備は、できるだけ注入点に近い場所で、屋内に設置する。
2) 注入設備は、注入に必要な圧力等を確保する。
3. 液化塩素による注入設備は、次の各号による。
1) 使用量が 20kg/h以上の施設には、原則として気化器を設ける。
2) 注入設備は、地下室や通風の悪い場所を避け、できるだけ注入点近くで、注入点水 位より高い室内に設置する。
3) 注入設備室は、耐震・耐火性とし、換気口を設け、床はコンクリートとし、寒冷時 でも室内温度を常に 15~20℃に保てるように間接保温装置を設ける。
4) 注入設備室面積は、注入設備の操作に支障のない広さとする。
〔解説〕
1.2)について;
(1) 次亜塩素酸ナトリウムの注入方式
注入方式には、インジェクタ方式、ポンプ方式等がある。各方式とも使用する次亜塩素酸ナト リウムは気泡の発生が少なく、析出が起こりにくい低食塩(塩化ナトリウム4%以下)の次亜塩 素酸ナトリウムを使用する方が安定した注入ができる(8.5.2 薬品注入設備参照)。
また、市販の次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素は一般に 12%であり、有効塩素が高くなるほど 気泡が発生しやすく、注入管内のスケールの付着も多くなるため、必要に応じて脱泡装置を設け たり、定期的な配管等の取替えが必要である。注入量が少ない場合は、次亜塩素酸ナトリウムを 薄めて使用することで、気泡の発生を抑制できる。さらに、浄水場での次亜塩素酸ナトリウムの 注入量をできるだけ少なくして、給水する直前の配水池で補充的に次亜塩素酸ナトリウムを追加 注入することで、塩素濃度を抑制できる。
(2) 生成次亜塩素酸ナトリウムの注入方式
次亜塩素酸ナトリウム生成装置は、食塩水を電気分解して水酸化ナトリウムと塩素を生成させ、
これらを反応させる方法(電解法)を用いている。この方法では電気分解の際に副生成物として 水素ガスが発生する。水素は可燃性ガスで爆発することもあり、製造設備には排気ファンを設け 屋外へ放出する必要がある。生成次亜塩素酸ナトリウム貯蔵槽への移送配管は水素混入の防止装 置を施すものとする。製造設備の容量により、副生成物の水素の発生量が一定量を超える場合、
「高圧ガス保安法」の規制を受けることがある。所轄の関係官庁(労働基準監督署等)に確認す
106 る必要がある。
電解法には、無隔膜法と隔膜法があり、小規模施設では無隔膜法、大規模施設では隔膜法が有 利である。
a. 無隔膜法
電解槽に陽極板と陰極板が設置され、両極間を 仕切る隔膜はない。供給された食塩水は電解され て、陽極で塩素が、陰極では水素が発生し、水酸 化物イオンが生成する。
陰極側では、ナトリウムイオンと水酸化物イオ ンで水酸化ナトリウムが生成し、陽極で生じた塩 素と水酸化ナトリウムが反応して次亜塩素酸ナト リウム(NaClO)が生成する。原理図を図 -5.10.5に示す。
図-5.10.5 無隔膜法の原理 生成した次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素は、1.0%前後と市販品と比べて低い。また、未反応 の食塩が含まれるため、塩化ナトリウムと有効塩素との比は市販の次亜塩素酸ナトリウムより多 い。無隔膜法で生成した次亜塩素酸ナトリウムは、弱アルカリ(pH 値約9)であり市販のものと 比較して気泡の発生・スケールの付着が少なく配管途中での閉塞が少ない。
製造設備及び注入設備フローの例を図-5.10.6及び図-5.10.7に示す。
図-5.10.6 無隔膜法による次亜塩素酸ナトリウム製造設備フローの例
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図-5.10.7 無隔膜法による次亜塩素酸ナトリウム注入設備フローの例 (仙台市水道局福岡浄水場)
108 b. 隔膜法
電解槽の陽極と陰極間にイオン交換膜を設け、陽極側に食塩水、陰極側に水を供給すると、陽 極側では塩素が発生し、ナトリウムイオンが交換膜を透
過して陰極側ヘ移る。陰極側では水素が発生し、水酸化 物イオンが生成する。そして、陽極側から透過してきた ナトリウムイオンと水酸化物イオンとで陰極側に水酸 化ナトリウムが生成される。さらに、陽極側で発生した 塩素と陰極側で生成した水酸化ナトリウムが電解槽の 流出部で反応して次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)
が製造される。原理図を図-5.10.8に示す。
図-5.10.8 隔膜法の原理 生成液の有効塩素は無隔膜法に比べて高く、6%程度である。製造設備の例を図-5.10.9 に示 す。
図-5.10.9 隔膜法による次亜塩素酸ナトリウム製造設備フローの例
(3) 液化塩素の注入方式
塩素注入機は、容器又は気化器から連続的に供給される塩素ガスを、安全かつ正確に計量し注 入する設備である。
注入機の概要は、インジェクタと圧力調整機構により真空圧力を発生し、真空圧力状態で塩素 ガスを計量、制御し、インジェクタ内で圧力水と混合し、塩素水として注入点に送液する設備で ある。インジェクタの給水圧力が低下して機内の真空圧力が正圧になると、自動的に塩素を停止 するなどの機能を有している。代表的な塩素注入機を図-5.10.10に示す。
インジェクタの使用水量は、注入機の容量により異なり、インジェクタの給水圧力は、インジ ェクタ本体の運転に必要な圧力と、インジェクタから注入点までの損失水頭を考慮して決定する。
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図-5.10.10 乾式計算(湿式注入)真空式塩素注入機