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水素 s 軌道電子と母金属 d 電子の相互作用

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 35-39)

第 1 章 研究背景

1.4 水素吸蔵と母金属の電子状態

1.4.1 水素 s 軌道電子と母金属 d 電子の相互作用

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ミ準位からおおよそ6eV 低い位置に新たな状態が生じていることがわかる。また、水素添 加によって高エネルギーのカットオフ(これはフェルミエネルギーに相当する)は、若干で あるが高エネルギー側へシフトしている。図中破線はPure Vのバンド計算の結果であり、

同図中に示している測定で得られたPure Vの結果とよく一致している。このような水素添 加に伴う水素誘起状態は金属Vに限らずNbやPd、ランタノイド、合金の水素化において も同様に形成されることが観測されている。

この水素誘起状態がどのような機構で生じるかを説明するため、Pdで行われたバンド計 算について簡単に紹介する。図1.21は計算結果を示しており、状態密度のピークはイオン 殻(4d)10のエネルギー準位が形成するバンド、その裾にある広がりは5s、5p準位によるバ ンドである[34]。フェルミ準位は、このような状態密度を低エネルギーから積分し、その電 子の総数が10個になるところであり、鋭いピークがあるエネルギーに位置している。

つぎにPdHの状態密度の計算結果(図1.22(a))[34]を、Pdの計算結果(図1.21)と比 較する。4dバンドのピークより深いところ(~2eV)、およびフェルミ面よりずっと高いエネ ルギー(~14eV)に新たな状態が生じていることがわかる。深いエネルギーの状態はPd-4d とH-1s状態の混成によって生じた結合性軌道、反対に高エネルギーの状態は反結合性軌道 により生じたものである。図 1.22(b)は、s 軌道的な対称性を持つ水素原子状態の局所状態 密度を示しているが、新たな状態は主としてs軌道的対称性を持つことがわかる。

これらの状態に収容される電子数を調べると、水素により生じた結合には 2 個入り、フ ェルミ面の鋭いピーク位置までには計10個の電子が入る。これはすなわち、ピーク以下に ある状態数はほとんど変化しておらず、水素が持ち込んだのと等しい数の状態が反結合状

図1.21 Pdの状態密度の計算結果。右側の目盛りは低エネルギ

ー側から積分した電子数を示している。

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態となってフェルミ準位以上に抜け出したことを意味している。こうして、水素原子が持ち 込んだ1個の余分な電子はフェルミ準位を高エネルギー側へシフトさせることになる。

Ce およびYなどの 3重水素化物で生じる電子状態変化も水素原子の1s状態と金属のd バンドが相互作用することに起因している。以下にCeの場合を例に説明する[35]。金属Ce の状態密度においては、伝導電子が5dバンドの裾を占めているが、水素原子がfcc格子の 4面体サイトを満たした CeH2になると、5d バンドよりも深いエネルギー位置に水素誘起 準位が生じる(図1.23(a))。水素化が進行し、水素が8面体サイトも満たしたCeH3になる

と、図1.23(b)に示すように状態密度分布がさらに大きく変化する。このとき、フェルミ準

位はちょうど2つのエネルギーバンドの間に来ることになるため、CeH3では金属から半導 体へと変化する。これは4 面体サイトと8面体サイトを占有した場合それぞれで、水素の 1s状態と5dバンドの相互作用が異なることに起因している。

以上のように、水素化に伴う電子状態変化を議論するには、母金属dバンドと水素の1s 状態の混成効果について考察することが重要である。

図 1.22 PdH の状態密度の計算結果。(a)は全状態密度、(b)は

Hの占有サイトにおいてs対称性を有する成分の局所状態密度 [34]。

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図1.23 Ce水素化物中のCeサイトとHサイト(OサイトおよびTサイト)

における局所状態密度[35]。(a)はCeH2の、(b)はCeH3の計算結果を示してい る。CeH3の結果ではフェルミ準位にエネルギーギャップが位置している。

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