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死別経験の意味づけについての語りの 分析―質問紙の結果を手がかりとした

ドキュメント内 死別への意味づけとその関連要因について (ページ 32-45)

探索的面接―

1.目的

筆者(23 歳,男性)が実際に面接協力者となり,同大学院大学院生を面接者として面接 を受けることで面接調査の質問項目の選定を行った。この面接は,今後の面接調査に向け て質問項目の選定に加えて,第 2 章の質問紙調査の結果から明らかになった面接協力者の 特徴と死別についての語りのデータとを照らし合わせ,質問紙調査の結果を手がかりにし て死別についての語りの分析を試みた探索的面接である。

面接調査は,①人生線の記入,②人生線をもとにしての語りの生成,③死別経験につい ての語りの生成,④終了の判断,といった構成で行う。①人生線の記入,②人生線をもと にしての語りの生成では,面接協力者に生まれてから将来までの自分自身の人生を一本の 線で描き表してもらい,それをもとに語りをしてもらう。ここでは,面接協力者に影響を 与えていると推測される過去・未来のライフイベントを把握すること,人生のどの時点で 死別を経験したのか・その死別経験がライフイベントに与えている影響を把握することを 目的としている。ニーマイアー(2007)は,ライフヒストリーの検討は,人生早期から順 にその後のライフステージ毎の自分に焦点を当てて,行動,体験,ストレッサー,動機,

価値観や周囲の状況に関する統合されたストーリーを記述することは,セラピスト,クラ イエントが外傷を受ける以前のクライエントについて知る手助けとなり,過去の出来事の 再構成を伴う,と述べている。面接調査においては,人生線を描き表し,視覚的に自分の 今までの人生を把握する過程を経ることで,過去の出来事を統合し,語ることの手がかり とすることをねらっている。③死別経験についての語りの生成では,より詳しく死別経験 についての語りをしてもらう。その際の質問項目は,ニーメヤー(2006)が,“回想により 喪失を人生に同化させることを目的として,グリーフ・カウンセリングを実施した喪失体 験者に対して行ったもの”であり,その中の意味再構成インタビューをもとにしている。

意味再構成インタビューは,意味再構成を目指すグリーフ・カウンセリングの最初に行う 質問であり,導入質問(面接者が,死別経験者の体験的なグリーフの世界に入り込むため の質問),説明質問(事前に聞いた質問を,意味再構成に関連づけてさらに拡大する為の質 問),詳述質問(喪失について広い視野を持つように促すための質問)の 3 つの項目からな り,回答することによる癒しの効果があるとされている(ニーメヤー:2006)。3 つの項目 について以下に記す。

①導入質問

「あなたは,どんな死別体験,喪失体験について一番話したいですか?」

「その出来事の直後,あなたが示した反応で覚えているのはどんなことですか?」

「その出来事についてあなたの気持ちは時間の経過と共にどのように変化しました か?」

「周囲の人たちは当時,この喪失の出来事にどのように反応しましたか?また,その 人達は,あなたの反応にはどんな対応をしましたか?」

「喪失を体験した頃のあなたは,その出来事に照らして考えてみると,どんな性格だ ったでしょう?またそのころの人間的な成長の段階について,主たる関心事につい て書いてください。」

「その喪失体験で,最も辛かったことは何ですか?」

②説明質問

「あなたは死の意味,喪失の意味を当時どのように理解しようとしましたか?」

「現在,その喪失をどのように理解していますか?」

「その喪失に適応するのに,どんな哲学的ないし宗教的な信仰が役に立ちましたか?」

③詳述質問

「この体験によって,あなたの優先順位の判断基準はどのように変わりましたか?」

「この体験が,あなたの自己と世界についての見方をどのように変えましたか?」

「亡くなった人から,又はこの喪失自体から,人を愛することについてどんな学びが ありましたか?」

「あなたの人生は,万一その人が生きていたら,あるいはこの喪失を経験しなかった ら,どのように変わっていたと思いますか?」

「今あなたが出来ることで,自分を助け,癒すことのできることは何ですか?」

人生線についての語りを行った後に死別についての語りを行うという面接の構成を考慮 して,ニーメヤー(2006)の意味再構成インタビューを参考に質問項目を選定した。また 質問項目の選定だけでなく,第 2 章の質問紙調査のデータを各事例の独自性・個別性を探 る基準として用い所属集団の特徴,面接協力者の特徴とをあわせて,死別に関する語りの 分析を行った。

2.方法

【手続き】

1)面接協力者

筆者A(23 歳,男性)が面接協力者となり,同大学院大学院生を面接者として面接調査 を行った。Aは,突然死による死別経験があり,命に関わるような大病・事故の経験はな い。調査時期は2007年7月,面接調査時間は130分であった。

2)面接調査の実施

①人生線の記入:面接協力者に影響を与えていると推測される過去・未来のライフイベン トを把握すること,人生のどの時点で死別を経験したのか・その死別経験がライフイベン トに与えている影響を把握すること,を目的として生まれてから将来までの自分自身の人 生を一本の線で表してもらった。

②人生線をもとにしての語りの生成:人生線をもとにして,面接協力者に自由に語りをし てもらう。時間制限は特に定めない。ラインが上下に変化したところ,変化しなかったと ころについて面接者が適宜,質問を行った。

③死別経験についての語りの生成:より詳しく死別経験についての語りをしてもらう。面 接者が行った質問は以下の通りである。

(a)今までの死別経験について(死別経験の回数,故人との関係・年齢・死因・死別に至 るプロセス,死別を経験した時の反応・周囲の人の反応,周囲の人のあなたへの対応・

関わり,最も辛かったこと,プラスに働いた哲学的・宗教的な信仰,死別を経験しての 自分自身の変化,家族の変化,ものの見方・考え方の変化,優先基準・判断基準の変化,

死別に対する意味づけ)

(b)過去の死別経験をふり返ってみての変化,時間が経過したことによる変化,自分自身 についての変化

(c)死別経験をしていなかったらどうなっているか (d)あなたにとっての死とはどんなものであるか (e)死別経験時にして欲しいサポート

(f)死別経験者に対してあなたが行うサポート

④終了の判断:最後に,語り尽くしたかどうか,他に話したいことはあるのか確認して,

特にないという反応が生じた場合,そこで面接を終了とした。

3.結果と考察

1)質問紙についての分析

質問紙の各尺度についてH大学生183名とAの結果を表8に示す。全体に比べて,Aは 死生観尺度「死が持つ意味」「死の軽視」「身体と精神の死」因子,有益性尺度「命の再認 識」「自己の成長」「人間関係の再認識」因子の得点が高く,家族機能尺度「凝集性」因子,

宗教観尺度「応報観念」因子の得点が低いという点が,Aの特徴であるといえる。

最もAに大きなショックと影響を与えている父との死別において,「そのICUでの 父親を見て・・ショック受けて,で,従兄弟の叔父さんにその,すごい慰められててとい うか。抱きしめられたんですけど,それが本当に強く印象に残ってて・・・・・」「葬式の 前に親戚の人とかがお酒を持って,うちの部屋でお酒を飲んでたのを覚えてて。ん,え,

たぶんうちをはげまそうって思っていろいろ話しにきて(中略)。」「次の日の葬式とか通夜 では(中略)焼香をしにきてくれた友達が何人かきて(中略)それがすんごいうれしくて。

表8.各尺度についての男女の得点とAの得点の比較

Variables

男性 N=84 Mean(SD)

女性 N=99 Mean(SD)

A の得点 t 値

宗教行動因子 現世利益 慰霊 修養

2.86 (1.52) 2.79 (1.34) 0.24 (0.68)

3.07 (1.27) 2.78(1.35) 0.17 (0.43)

2 1 0

-1.03 0.04 0.79 死に対する態度尺度因子

死への恐怖 生を全うする意味 死が持つ意味 死の軽視

死後の生活の存在への信念 身体と精神の死

34.92 (9.56) 31.36 (5.35) 22.94 (4.19) 15.73 (3.17) 11.25 (3.78) 12.69 (2.11)

37.58 (7.07) 30.92 (5.58) 21.88 (3.69) 14.37 (3.02) 12.23 (3.86) 12.67 (2.00)

32 30 26 19 10 14

-2.15*

0.53 1.82†

2.94**

-1.73†

0.07 有益性尺度因子

命の再認識 自己の成長 人間関係の再認識

18.55 (4.71) 12.14 (3.71) 10.77 (2.94)

18.64 (4.09) 11.62 (3.15) 10.39 (2.74)

22 14 14

-0.13 1.03 0.90 家族機能尺度因子

凝集性 適応性

38.81 (6.68) 26.07 (4.22)

38.19 (7.49) 25.1 (5.60)

29 22

0.58 1.30 宗教因子

向宗教性 加護観念 応報観念

26.77 (7.91) 29.81 (6.17) 13.62 (4.34)

27.32 (7.32) 31.73 (4.99) 15.52 (4.23)

24 28 9

-0.48 -2.32*

-2.98**

(中略)本当に仲いい友達が最後までいてくれて。5,6人。(中略)友達が普通に自分に関 わってくれたこととかがすごい嬉しくて。うん,その友達には今でも感謝してますね。」「す ごい悲しかったけど,そこから,その時の,こう,ほんとに友達のかかわりとかっていう のは,今会わなくなった友達もいるんですけど,それでもその友達とかにはすごい感謝し ているし。」といった語りをしている。死生観尺度「死が持つ意味」因子,有益性尺度「命 の再認識」「自己の成長」「人間関係の再認識」因子の得点の高さは,この経験に起因して いると推測される。

質問紙調査の結果から,Aは死別経験を通して命・人間関係の重要性を再認識し,自分 自身の成長の機会となるという意味づけを行っていると推察される。そのため死に対して 多くのポジティブな意味を見出していて,身体の死よりも精神の死を重要視していると考 えられ,身体的な死を軽視する傾向にあると考えられる。宗教観については,死に対して 多くのポジティブな意味を見出していて,身体の死よりも精神の死を重要視していると考 えられ,身体的な死を軽視するといったAの傾向から,死者・霊的存在・人知を越えた存 在への信仰・畏怖の感情が少ないのではないかと推察される。またAは,まとまりがあま りなく家族構成員が各自で行動する,情緒的なかかわりが薄い,といったように家族を捉 えていると考えられる。家族構成員の父の死の以前からそのような特徴を持っていた,あ るいは父の死をきっかけにして家族の中に変化が生じそのような特徴を持つようになった,

といった2つの仮説が考えられる。

死に対する肯定的な意味づけが強く,身体的な死を軽視しており,応報観念といった宗 教性を用いた緩和としての意味づけを行う必要が少ないという点では,第 2 章における男 性の質問紙得点と類似していると言えるだろう。母方祖父母の死という突然死の経験があ り,「命の再認識」「自己の成長」「人間関係の再認識」因子の得点が高いことから,自分自 身の周囲にいる人が突然に死んでしまうという恐怖,自分自身もそのように突然,死んで しまうのではないかという恐怖を緩和するための肯定的意味づけであるという可能性を考 えることは出来る。しかし,死に対する肯定的意味づけは,上述したとおり父との死別に おいて他者とのかかわりを機に,行われていったものではないかと推測される。

2)Aの語りの分析

Aは,①父方祖父の死,②母方祖母の死,③ペット(犬)の死,④友人の父の死,⑤父の 死,の5回の死別を経験している(表 9参照)。その中でも,「父の死」についての語りは 最も詳細に語られ,Aに対して強い影響を与えていると考えられる。死への理解,認知の 発達に連れて死について語られる内容は詳細になっていき,発話量も増加していくと考え られる。以下にそれぞれの語りについて,考察していく。

①父方祖父の死についての語り

まず父方祖父の死についての語りについてみていく。父方祖父は,Aと同居して生活し

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