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歪(ひずみ)センサの開発

ドキュメント内 筋電義手のための超弾性グローブ の開発 (ページ 162-168)

第 4 章 参考文献

5.4 歪(ひずみ)センサの開発

5.4.1 シリコーン製歪センサ

そこで,本研究では,筋電義手グローブのセンサ一体化の試みとして,超弾性高分 子材料(シリコーン)を用いた柔軟な歪センサを開発した. 導電体は,シリコーンゲ ル(TSG-E30,株式会社タナック)にカーボンブラック(EC600JD ,Lion Specialty Chemicals Co. Ltd.,)を配合し,電極にはニッケルコバルト不織布を用いて作製した.

本シリコーン歪センサの特性を,以下のような計測環境を構築して調査した.

5-18 センサの計測環境

サーボモータ(GWS社)にプーリー(φ40mm)を取り付け,ワイヤーを伸ばし,シリ コーンセンサに固定した.サーボモータは 50ms の PWM 信号の幅で回転角が決まる ため信号幅によって同じ変化をさせることができる.

伸び量 0 の時を基準として,4 秒ごとにサーボモータへの指令値を変化させ伸縮さ せる操作を3 回行い計測した.シリコーンセンサには,12MΩの固定抵抗を直列につ なぎ,シリコーンセンサにかかる分圧抵抗の電圧値,及び,サーボモータのポテンショ メ ー タ か ら 信 号 線 を 引 き 出 し た 電 圧 値 を 16bitA/D コ ン バ ー タ(CONTEC

AIO160802AY-USB)で計測した.サンプリングレートは2kHzで行った.

導電性シリコーン

ニッケルコバルト不織布 非導電性シリコーン

図 5-17 開発した曲げ・歪センサの構成

サーボモータに 取り付けたプーリー

歪センサ

5.4 歪(ひずみ)センサの開発

シリコーンセンサから得られたデータは,ノイズ除去のため200点の移動平均処理 を行った後,200Hzにダウンサンプリングした.ポテンショメータから得られたデー タは,200点の移動平均処理,200Hzへのダウンサンプリングを行った.

ポテンショメータには巻き取った角度情報が計測されているため,その値から,歪 センサとして利用する場合の理想値を推定した.

5-19 シリコーン歪センサの特性調査(時間変化・3回平均)

本計測実験から得られたシリコーン歪センサの特性は以下のとおりである(図5-19).

・伸び時は線形的に値が増加するが伸び終わり時にオーバーシュートし,時間経過と ともに抵抗値が下がる.

・縮み始めに抵抗値が一度上がり,降下を始める.

・縮み終わりの抵抗値はゆっくりと降下しており,伸び時のような線形性はない.

・時間経過による抵抗値の低下の収束が遅く,変化幅が大きい.

・変化経路には規則性が存在する

以上のことから,製作したシリコーン歪センサには,ヒステリシスが存在すると考 えられた.

5.4.2 ヒステリシス補正関数の実装と姿勢推定検証実験

ヒステリシスの存在が明らかとなったシリコーン歪センサの特性を緩和する補正関 数を作成した [毛利保寛, 2017].

製作した歪センサを,ロボットハンド左手骨格2か所に実装し,計測時に補正関数 も考慮した(図5-21).ロボットハンドは,母指と他4指にサーボモータが組み込ま れた2自由度ハンドを使用,分圧抵抗は母指側に560kΩ,4指側に470kΩを使用した.

母指と4指が開いている状態を「開き」,母指と示指が触れる状態を「握り」,

開きと握りの中間の角度を「中間姿勢」とし,開き→中間→握り→中間→開きの順番 で動作させ,2つのセンサの抵抗値の変化を計測した.

また,各姿勢への移行速度を3パターン(A:1.5s,B:1.0s,C:0.7s/step)で変化さ せ,補正関数によって導出した補正値が,速度の変化に対応して,推定される真値

(理想値)に追従するか検証を行った.

5-21 ロボットハンドへの実装(左)及び補正値追従実験の様子(右)

5-20 ヒステリシスの補正

5.4 歪(ひずみ)センサの開発

a. 速度A(1.5s /step)の場合

b. 速度B(1.0s /step)の場合

c. 速度C(0.7s /step)の場合

5-22 補正値追従検証実験の結果(母指センサに貼付)

補正値追従検証実験の結果(図5-22),全ての移行速度パターンにおいて,補正 関数によって導出された補正値が,推定された真値(理想値)に追従することを確認 した.

グラフのAの場合,0-5秒は開き姿勢,6-9秒は中間姿勢,10-12が握り姿勢を示し ている.開き姿勢の際には,歪センサは縮み,握り姿勢の際には,歪センサは伸び る.

<開き姿勢→中間姿勢→握り姿勢>

どの実験速度でも推定される理想値への追従を確認した.握り動作のみに識別を限 定する場合は推定段階を増やすことが可能であると考えられる.A とB,C では抵抗 値の最低値が異なるが,3 段階の推定であれば開き状態の推定域を広くとることで最 低値のオフセットに対応できると考えられる.

<握り姿勢→中間姿勢>

どの実験速度でも著しく抵抗値が低下しない現象が確認された.考えられる可能性 としては,回転部において伸び方向に垂直な応力が発生していることである.

搭載しているセンサはひずみセンサなので伸び方向以外からの外力においても抵 抗値が変化する.伸び方向と垂直な応力によって導電経路断面積が狭くなり,中間状 態になっても応力が握り時と異なるために抵抗値が握り時と開き時で大きく異なるの ではないか.センサ値の変動は少ないため,時間経過による抵抗値の低下との識別が 困難になることに関しては,補正関数を用いて閾値の幅を広げることができる.

<中間状態→開き状態>

センサ値には特性試験の縮み終わり時のような抵抗値減少量低下がみられるが,補 正関数の適用によってすべての動作移行速度において最低値への収束が早まっている ことが確認できた.

これらの補正関数出力地の推移から,適正な閾値の設定を行うことで3段階の 推定が可能であるが,3 動作より多くの識別は現段階では困難であることが分かっ た.

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