三菱信託銀行株式会社 投資企画部 次長
野村不動産株式会社 資産運用カンパニー 投資企画部長 兼 投資運用部長 全国情報サービス産業厚生年金基金
年金資産運用管理課 課長補佐
(敬称略)
古谷 芳秀
全国情報サービス産業厚生年金基金 年金資産運用管理課 課長補佐
1987年専修大学商学部卒業。同年全国情報サービス産業厚生年金基金に事務局職員として採用される。適用事務関係、新 規加入事業所開拓等の営業・マーケティングを経て、1997年(平成9年)より運用管理業務に従事。現在、年金資産運用管理課 課長補佐。
2004年(平成16年)2月 厚生年金基金連合会、米コロンビア・ビジネススクール日本経済研究所共同開催『日米年金 代替投 資カンファレンス』にてヘッジ・ファンド投資についてのパネルを担当。
共著に『実務家が答える年金基金資産運用相談室』がある。
代田 秀雄
三菱信託銀行株式会社 投資企画部 次長
1985年三菱信託銀行入社。1996年から年金運用部にて新商品企画および運用制度改革関連等を担当。1998年から2000年 にかけ厚生年金基金連合会の資産運用委員会、時価評価検討委員会等に参加し、「厚生年金基金における年金資産の約定主 義基準について」「年金資産運用に係るディスクローズ資料の統一について」の作成に関与。2002年からJ-REIT投資を開始し、
2003年には企業年金向けの不動産プライベートファンドを組成。2002年度下期、2003年度下期に上智大学経済学部非常勤講 師として「企業年金原論 資産運用」を担当。2004年に現職に異動。
著書に「マーケットニュートラル投資の世界」(翻訳出版)、「αの追求 資産運用の新戦略」(共著:「企業年金における不動産投 資」を執筆)がある。
榎本 英二
野村不動産株式会社 資産運用カンパニー 投資企画部長 兼 投資運用部長
1985年慶應義塾大学経済学部卒業。1985年野村不動産入社、経理部・総合企画室・商品開発に携わる。1997年に事業企 画部に異動、その後資産運用事業部次長に就任。2004年投資企画部長に就任し、2005年からは投資運用部長を兼務、現在 に至る。
1990年に大手米国年金基金との米国不動産投資を開始し、1997年からは日本の不動産投資に着手。2002年には日本の運用 会社による初めてのオポチュニティファンドである日本不動産オポチュニティ・ファンド(JOFI)の組成・運用を手がける。同社の安 定型不動産私募ファンドの組成にも携わり、大手機関投資家および日本の年金基金の不動産ファンドへの導入に尽力した。
宅地建物取引主任者、日本不動産鑑定協会会員、(社)日本証券アナリスト協会検定会員。
山口 今日は不動産の投資について、年金 が取り組む場合の問題点を少しでもクリア にして、年金業界と不動産業界の間の話し 合いの糸口になればと思っています。
■日本における年金の不動産投資
代田 日本における不動産投資の歴史です が 、 不 動 産 投 資 が 年 金 で 始 ま っ た の は 、 1985年前後からで、この頃は直投型の不動 産投資で、直接、年金基金が信託銀行を通 じてビル等を所有するという形態でした。
これが1997年の資産配分規制の撤廃、さら に1998年の時価基準による資産評価への移 行 に よ り 、 簿 価 評 価 で あ っ た 不 動 産 が 、 1998年から時価評価に変わり、このときに
バブルの崩壊による含み損がかなり表面化 しました。このような経緯から、どちらか というと、この直投型不動産投資は最近ま でどうやって処分をしていくかということ が中心の課題でした(図表1)。
図表1 日本における不動産投資の歴史
1990年代
1980年代 2000年以降
1997 1998 時 価 基 準 に よ る 資 産 評 価へ の 移 行 資 産 配 分 規 制︵ 5. 3. 3. 2 規 制
︶の 完 全 撤 廃 直投型
不動産投資
ファンド型 不動産投資
直投型に代わって、昨今、脚光を浴びて きたのが、ファンド型の不動産投資です
(図表2)。ファンド型は匿名組合契約、匿名 組合出資になるので、直接不動産を持つ場 合と異なり、有限責任が確保されており、
出資額以上の損失を被ることがないことと、
不動産ファンドの中で低利でデットの資金 を調達して、レバレッジをかけて配当を高 めるというストラクチャーが可能であると いうことが理由です。表面的な不動産の収 益よりも高い不動産の収益を、レバレッジ をかけることによって実現できる点で、フ
ァンド型が一般化してきたのです。
現在、不動産ファンドは、5年程度の有 期限が一般的ですが、有期限は果たして必 要でしょうか。今、有期限の理由は主に、
不動産の評価の信頼性への疑問から、実際 に処分をして価格を確認するニーズと、売 却のタイミングがなかなかはかれないた め、とりあえず有期限にしているにすぎま せん。
ここで、不動産投資の留意点を幾つか挙 げさせていただきます。一番目はストラク チャー上の倒産隔離の確保です。つまり、
不動産ファンドに投資したときに、不動産 ファンドは物件をどこかから買ってくるわ けですが、前所有者から完全に分離された 権利として不動産がファンドに入っていて、
前所有者が倒産しても、ファンドには何ら 影響がないということがきちんと確保され ているのかどうか、ということです。
二番目として、物件の投資適格性ですが、
不動産のリスクをどこまで取るのかといっ たときに、不動産のマーケットの平均に投 資をするのか。それとも、オポチュニステ ィックに、不動産運用を行っているアセッ トマネージャーのαを作り出す力に投資を するのかを、考えておく必要があると思い ます。つまり年金基金がどこまでの不動産 のスタイルに投資をするのかを、事前に決 定しておくべきです。三番目は売買価格の 妥当性です。不動産ファンドに投資をする 場合、鑑定価格の説明があると思いますが、
鑑定価格はかなりばらつきがありますので、
素直に信じて良いのかどうかは第三者のチ ェックが必要になると思います。四番目は 各種フィーの妥当性です。SPCやファンド を作る設定のコストや、またファンドに不
図表2 年金基金からの不動産ファンド投資
不動産 不動産信託受益権
不動産ファンド 年金基金
投資顧問会社 特定金銭信託
年金信託
(指定金銭信託)
信託銀行 ゲート
キーパー 的役割
匿名組合出資
動産を入れる売買のコスト等、一体どれぐ らい不動産投資をするためにコストを払っ ているのかについても、きちんと見る必要 があります。五番目は、アセットマネージ ャーおよび信託銀行の利益相反の回避です。
アセットマネージャーや信託銀行は具体的 に得ている収益を開示することによって、
きちんと透明性を確保していく必要がある のではないかと思っています。
■年金基金における不動産投資の現状と 不動産投資業界に期待するもの
濱口 厚生年金基金連合会が昨年実施した アンケートのデータで、特に示したかった のは、ヘッジファンドが大変多くなってい ることです。よく、不動産投資がなかなか 進まない理由として、流動性や時価評価の 問題、ベンチマークの欠如、ディスクロー ジャーの不足、透明性の問題、手数料体系 などが言われていますが、ヘッジファンド はもともと不透明で今言ったような問題が 全部あるにも関わらず、こんなに投資され ています。一方、なぜ不動産は今一つ活況 を呈さないのか、という疑問が提示できま す。ここで不動産に、どうして今一つ投資 されないのか、どうして年金は不動産投資 に消極的なのか、ということに対して、私 はプレイヤーの問題ではないかという仮説 を立てました。普通に年金が不動産の投資 をしようとすると、現在、信託銀行を通じ て行うケースが殆どになり、セルサイドの 参加者が信託銀行6行に限られているわけ です。日本の年金全体をカバーするのに、
信託の6社の方だけでは、単純に、人手が 足らないのではないでしょうか。年金基金
がヘッジファンドに投資するにあたって は、内外の証券会社から投資顧問まで参加 者が豊富で、そういう中で、競争原理が働 いて、いろいろな工夫もされて、今言った ような問題も解決されてここまで来たので はないかと思います。そういう意味で、年 金の不動産投資についても、プレーヤーを もっと増やしていく必要があるのではない でしょうか。その結果、市場の規模が拡大 すれば、自然と問題点も解決されていくの ではないかと考えます。特に年金の不動産 投資で信託銀行が何らかの形で関与してい る業務は幅広く、それでなくても流動性が 低い、価格の透明性が低いといわれている 中で、これだけの業務に関与すると、社内 でファイアウォールを立てるということだけ では非常に難しいのではないかという気は します。
私は利益相反自体は特に絶対的な問題と は思っておりません。要は利益相反がある と、それだけ投資家にとってトランザクシ ョンのコストが高まるので、一定のルール を決めれば、ある程度、許容されるべきも のとは思うのですが、信託銀行の場合には、