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慎重を要する 「率」の利用

ドキュメント内 ares_018 (ページ 97-100)

投資分析 入門の入門

2.  慎重を要する 「率」の利用

要です。

たとえば前回(ARES17号)、IRRの説明 の中で述べたように、貸付型と借入型とが 混在するキャシュフローパターンをもった 投資案件においては、IRRが高くても、額 としての利益は取るに足らない場合があり ました。

■ノンリコース・ローンとリスクの増大 また最近は不動産投資事業において、ノ ンリコース・ローンを利用することで負債 のオフバランス化をはかるとともに投資利 回りの向上を図ることが多くなっています。

そしてその際にレバレッジ効果によるエク イティ利回りの上昇効果に目を奪われて、

多大なリスクを抱え込むことのないように 注意しなければなりません。

たとえば、ある企業が毎年8億円の純収益 を獲得できる収益不動産を100億円で取得し 直接保有している場合には(図表3)、その 投資利回りは8%です。

これに対して図表4のとおり、ノンリコー

合、レバレッジ効果によってエクイティ投 資利回りは14%[5.6億円÷40億円]に上昇 します(図表5(a))。

しかしSPCエクイティはfirst loss position といわれ、その保有者は資産価値が下落し たときに発生する損失の第一次的負担者と なります。もしこの不動産の価値が40%下 落すれば、それだけでSPCエクイティの価値 は100%失われてしまいます。資産価値下落 の影響が2.5倍(100%÷40%)に増幅される わけです(図表5(b))。運用収益(インカム ゲイン)についても同様です。もし不動産か ら得られる純収益が8億円から6億円に低下 し,投資利回りが8%から6%へと▲2%下落 した場合、SPCエクイティへの配当は3.6億 円(6億円−2.4億円)となり,純投資利回りで は14%から9%(3.6億円÷40億円)に減少し ます。投資利回りの下落幅は▲5%(9%−

14%)であり,直接保有していた場合の下落 幅▲2%の2.5倍になります(図表5(c))。

つまりノンリコース・ローンのレバレッ ジ効果によって投資利回りは向上しますが、

不動産  100  利回り8% 

不動産  100  利回り8% 

コーポレート  ローン 

160 

(100+60) 

コーポレート  ローン 

60 本体B/S

その他  資産  100

自己資本  40

SPC

〈SPCエクイティの期待利回り〉 

100億円×8%−60億円×4% 

  40億円 

=14% 

不動産  100  利回り8% 

エクイティ  40 エクイティ 

40

本体B/S

その他  資産 

100

コーポレート  ローン  100(60+40) 

コーポレート  ローン 

60

自己資本  40 ノンリコース 

ローン  60  利率4% 

図表3  コーポレート・ローンによる直接保有 図表4  ノンリコースローンのレバレッジを利かせた SPCエクイティによる投資(間接保有)

その代償として、投資リスクが増大するこ とをよく理解しておかなければなりません。

■WACCと税引後利子率

さらに投資利回りを、ハードルレート

(投資の可否判断基準利回り)としての資本 コストと対比する場合には、両者が同じ土 俵にあるものかどうかをよく吟味すること が必要です。

一般的に資本コストは負債の利子率と株 主資本のコストとの加重平均値(WACC;

weighted average cost of capital)が利用さ れます。頭文字をとった略語によって「ワ ック」と呼ばれています。そして企業財務 の教科書の多くが、WACC計算における負 債の利子率は、税引後利子率を使うのが一 般的であると解説しているため、これに基 づいてWACCは計算されることが多いよう です。

税引後利子率とは、法人税の計算上、支 払利息は損金算入が可能なことから、以下 のとおり、その節税効果を差引いた後の利 子率をいいます。

支払税=(利子前所得−支払利息)×実効税率

=利子前所得×実効税率

−(借入額×利子率×実効税率) 節税効果;利子率×実効税率

税引後利子率=利子率−(利子率×実効税率)

=利子率×(1−実効税率)

さて税引後利子率を基礎にWACCを算出 し、それをハードルレートとする場合には、

投資案件の利回り(IRR)も税引後キャッ シュフローを基礎に算出しなければなりま せん。なぜならWACCにおいて節税効果を 織り込んだ以上、すべてのキャッシュフロ ーを税引後に統一して比べなければ無意味

純投資  純収益  ノンリコース 

ローンの金利  金利控除後利益  純投資利回り 

直接保有  100億円  8億円  −  8億円  8%

間接保有  40億円  8億円  2.4億円  5.6億円  14%

(b)資産価値下落(▲40億円)の影響 

純投資(イ)  キャピタルロス 

(ロ) 

純投資あたりの下落率 

(ロ/イ)  比 

直接保有  100億円  ▲40億円  40% 1

間接保有  40億円  ▲40億円  100% 2.5

(c)純収益下落(8億円→6億円)の影響  下落前純投資利回り 

(イ) 

下落後純投資利回り 

(ロ) 

純投資利回りの下落幅 

(ロ−イ)  比 

直接保有  8% 6% −2% 1

間接保有  14% 9% −5% 2.5

計算しながら、投資案件にかかる利回りは 税引前キャッシュフローをもとに計算して いる例をよく見かけます。しかしこれでは 税引後と税引前という土俵の異なるキャッ シュフローを比較することになり、まった く意味がありません。

もしWACCを税引後で計算するならIRR の基礎となるリターンはEBIATやEBIATに 減価償却費を加え正味運転資本の変化を加 味したもの(税引後キャッシュフロー)を 使わなければなりません。反対に税引前キ ャッシュフローやEBITDAを基礎にIRRを 求めた場合には、WACCにおける負債の利 子率は、税引後ではなく税引前のものを採 用しなければならないのです。

ところで、これまで投資の結果得られる 利益やキャッシュ・インを確定的なものと して考えてきました。

しかし現実には投資の成果は不確実です。

そこで投資を検討する際には、過去に行っ た同様の投資案件に関する実績値(以下

だけでは、将来の参考となる考えをまとめ ることはできません。観測値をまとまりと して分析し、ひとつの数字に代表させるこ とが必要です。観測値のまとまりを「デー タ」といい、ひとつの数字を「代表値」と いいます。平均値(mean)は代表値のもっ とも代

・ 表

・ 的

なものです。しかし代表値は平 均値だけではありません。他にも中央値

(median)や最頻値(mode)などがあります。

■平均値、中央値、最頻値

以下に19個の観測値からなるデータがあ ります。

1,2,4,5,5,5,5,5,5,6,6,6,8,8,9,10,11,12,20

このデータについて平均値、中央値、最 頻値を計算してみると、平均値7、中央値6、

最頻値5、となります。

平均値(算術平均)は、観測値の合計を データの大きさ(個数)で割ったものです。

中央値は、観測値を小さいものから順番 に並べ替えて、ちょうど中央に位置する値 です。この例でいえば10番目が19個ある観

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