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第 3 章 B2C モデルに関する検討

3.4 検証

あることが伺える.なお,沿岸域住民のブランド性評価が高いのは,地場産品に関する自 身の表れとみるべきであると考えている.

3.25:

南かやべ地域産の昆布に関する評価

次に価格について見てみると,ブランド性ほどでないにしても,やはり一般消費者の評 価が低調であることが目を引く.とはいえ,ブランド性を最良と評価した層が一般消費者 はオーナーに対して

4

分の

1

未満の比率に過ぎないのに対して,価格においては

3

分の

1

となっており,当地産昆布はブランド性に依存することなく価格の優位性を持っている現 状が伺える.ただ,逆に表現すれば,オーナーとなって価値評価を向上させた場合にも価 格に関して割安感は生じていないということにもなる.

品質・素材・サイズ等の商品の性状についてはブランド性と類似した傾向を示している.

品質等は商品の価値を構成するものであり,かつ主観的な要素を多く含む.したがって,

特別な価値であるブランド性に関する評価と類似することは当然ということができる.

以上のように,当地産昆布全体については,オーナーとしての長期継続的な情報提供 サービスを受けた場合に価値評価が向上することは明らかだが,そのことが価格の割安感 にまでつながっているとは言えないと結論できる.

3.26

はオーナー制昆布そのものについての評価である.評価項目は「他の製品よりも この製品を好むか」「購買したいか」「オーナー制を他人に紹介したいか」という点である.

本アンケートについてはいずれの評価項目についても類似の結果となっており.一般消費 者の各項目への正回答はいずれも

30%

前後である.つまり,一般消費者から見たオーナー 制昆布は他の製品とあまり変わらない商品であり,かつ購買したいとも他人に紹介したい とも思われていない.言い換えれば,特段の誘引力を生じていないということになる.

しかし,いったんオーナーになった後はその評価が大きく変化している.他製品との比 較においては,実に

94%

の購入者が本オーナー制昆布の方を選択するとしているのであ

3.26:

南かやべオーナー制昆布に関する評価

る.もちろん,当該商品の品質・性状について,実際に商品に触れて口に入れてみて初め てわかるということもあり得るから,本項目目の際立った差異はそのために生じたと考え ることもできる.しかし,献上昆布等と呼び習わされたことから知れる通り,本オーナー 制で扱う昆布の品質はある程度外形的に把握し得るものであり,しかもプラクティカルシ ステムとしてのポータルサイトには,昆布の品質について誰でも閲覧できるように詳細に 記述しているのである.こうしたことから,もし消費者の価値評価の形成が当該商品の物 理的な性状・品質にのみ起因するのであれば,本項目目の回答についてこれほど大きな差 異は生じなかったであろうと考えられるのである.

そうであれば,オーナーが評価した商品価値とは,本稿で提示したような手法による情 報発信のあり方そのものではないかと推察されるのである.つまり,本稿で提示した仮定 である「価値評価の主観性とそのことに関する情報発信の重要性」について一定の結論が 得られるように思われるのである.

次に,オーナー制という流通の枠組みそのものに関する消費者の印象に関する調査につ いてみてみる.図

3.27

6

項目について各利用者層にアンケートを行った結果である.こ こまでのアンケートとの相違は,昆布という特定の商品に関する問いではないということ である.本アンケート実施にあたってプラクティカルシステムとしてのポータルサイトを 閲覧・利用し,その後でオーナー制という制度そのものにどのような価値評価を形成した かということが表象されている.評価項目はそれぞれオーナー制の印象について「信頼で きる」「交流がもてる」「情報量がある」「安価である」「生産者の顔が見える」「所有実感 がある」か,というものである.

最初のアンケート項目と異なり,価格面について一般消費者とオーナーとで評価が大き く分かれている.具体的な商品であるオーナー昆布については割安感を感じなかったもの の,オーナー制において一般に提供される価値について一定の評価を行っているというこ とである.判断の難しいところではあるが,おそらく,昆布については用途が少ない等の

3.27:

オーナー制そのものに関する印象

理由により商品そのものの性状における価値が限定されているため割安感も生じにくいが,

農水産物一般のオーナー制ということを考えた場合,本研究と同等のサービスの提供を受 けられるのであれば割安であると考えられたものと思われる.

また,信頼性の項目についてもオーナーと一般消費者では大きく異なる傾向を示してい る.一般消費者における信頼性の低さは,ちょうどアンケート実施時期に話題となってい た「オーナー」を冠する商品での詐欺事件等が影響しているものと思われる.しかし,その ような状況でも実際にオーナーとなって情報提供を受けた後は高い信頼を示すようになっ ている.このことからも,本稿における仮定への結論が導かれるように思われる.

3.4.2

直接的効果

前項の通り,本稿で提案するような手法に基づくプラクティカルシステムの構築と運用 により,オーナーとなった消費者における当産地産昆布の価値評価は大きく変化すること がわかった.しかし,いまだオーナーとなっていない一般消費者における価値評価がどれ ほど変動するのかは前項の検証からは読み取ることができない.

この点,一般消費者における価値評価は,オーナー数の推移と関連付けて捉えることが できると考えられる.そして本研究は平成

18

年春頃より着手されたものであるが,それ 以前のオーナー数も明らかになっている.そこで,プラクティカルシステムの構築・運用 以前と以後についてオーナー数の変動を見ることにより,その直接的効果を推し量ること とする.

3.28

は平成

15

年度から平成

19

年度までのオーナー数と売上額の推移である.ここ でいう年度は昆布の育成期間に対応するものであるが,図

3.28

における「年」は当該年度 のオーナー申込期間の開始時点を指すものである.オーナー申込期間は毎年

11

月頃から 翌年

2

月頃であるから,例えば,図

3.28

における「

H15

」というのは,平成

15

11

月か ら平成

16

2

月頃に申込をした平成

16

年度のオーナーおよび売上額を示している.

3.28:

売り上げとオーナー数の推移

3.28

を見ると,オーナー数・売上額ともに平成

19

年度(平成

18

年申込)から急激に 増加していることがわかる.上記の通り,本研究における取り組みは平成

18

年春頃から 開始されたものであり,初年度はプラクティカルシステムの検討と試験的なポータルサイ トの運用に留まったのだが,それでも一定の成果が出ていることが分かる.

また,平成

20

年度(平成

19

年申込)と平成

19

年度(平成

18

年申込)を比較すると,

平成

20

年度では売り上げの増加に比してオーナー数の増加が急激であり,図上逆転して いるようにみえる.これは,同年度より商品体系を変更し,それまで

8kg

入り

28350

円で 販売していた商品に加えて

1000g

入り

5000

円という小型の商品を開発したことによるも のと思われる.

3.5 まとめ

本章では北海道函館市南かやべ地域産オーナー制昆布を主題とした

B2C

プラクティカ ルシステムの構築について報告した.オーナー制とは対象物がまだ商品・製品として成熟 していない段階からその所有権を希望者に販売て育成を行い,成長後に製品として引き渡 す販売方法である.同地域の昆布はその品質の高さについても極めて高い評価を得てきた が,消費者と直接触れる機会の確保や産地間競争におけるアドバンテージの確保などを意 図して養殖昆布のオーナー制が試みられるようになったという経緯がある.しかし,近時 は広報手段が限定されている等の理由により新規オーナー獲得が頭打ちの状態にあり,本 稿の著者らの研究グループへの技術支援にいたった.

著者らは,本オーナー昆布はまさに本稿における主題のひとつである固有の課題と関連 して検討されるべき「産地における生産物の付加価値創造と,価値に関する消費者への情 報発信能力」の問題に直面しており,オーナー制における価値の特殊性に関する検討を通 じて産地の価値創造とその伝播手法について検討することは非常に有意義ではないかと判 断した.