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第 4 章 B2B モデルに関する検討

4.2 専門家介在型の垂直統合モデル

4.2.1

中間者代替機能と垂直統合モデル

これまで述べたように,産地における価格形成能力の低下や市場構造の硬直化といった 現象が見られていることに関して,特に大規模な業務消費者を中心とした中間流通事業者 が一定の影響を与えていると指摘されてきた.そのため,こうした中間流通事業者を排除 することこそが流通構造の改革であり,以上に述べたような諸問題を解決する強力な方法 だとされるような風潮が一部において見られるようになった.そして,そのような中間流 通省略モデルを

EC

,ことに直販サイトやショッピングモールといったインターネット上

B2C

にそのまま適用する例が多く見られた.

しかし,前述したように,流通ステージにおける中間事業者は単なる物流の拠点でも清 算機構でもなく,市場の本質に根ざした重要な役割を担っていると考える.すなわち,流 通過程において中間事業者は単なるモノの集積・再配分・決済機構であるに留まらず,水 産物流通に関わる付帯情報の蓄積・発信基盤でもあるのではないかということである.中 間流通者はその性質上,流通の両終端,すなわち生産者・消費者双方について知悉してお り,市場において「誰が何を欲しがっているか」「誰が何を売りたがっているか」といった 需要供給に関する情報を把握していることが多い.また,対象とする商品・商材に関する 知識も豊富であり,上述の流通の両終端それぞれへ商品と共に専門知識を付帯させ流通さ せることが一般的であると考えられる.

このため,本稿においてすでに検討したように,このような単純な中間省略型の流通モ デルは少なくとも現在の水産物流通事情を前提とした場合にはうまく機能しない.とはい え,

EC

はそもそもその本質として電子情報網を利用して生産者・消費者間の物理的・論 理的距離を最短化するものである.したがって,従来の多段階・複層型の流通構造そのも のを電子情報網上に展開することには意味がない.

以上のことから,本稿では,従来の中間流通事業者が担っていた機能を情報技術を用い て抽象化し,具体的に運用が可能な一定の枠組みの上にマッピングすること,およびその ような構造により,生産者・中間流通者・消費者とそれぞれの段階でヨコの方向にのみ強 い連携を有していた従来の市場構造に変わる枠組み,すなわち中間流通者が生産物の流通 に付加価値を与えつつ生産者・消費者間の「タテのつながり」をより重視する「水産物流 通における垂直統合モデル」を提案する.

4.1:

従来の水産物市場構造(ヨコのつながり)

4.2:

水産物市場構造における垂直統合モデル

4.2.2

代替機能の整理と抽象化

従来の流通の枠組みにおいては,生産者とユーザーの間に仲買人が存在し,流通を仲介 することが普通であった.仲買人の機能は主としてユーザーの市場における代理人(エー ジェント)であり,仲介人は専門的知識や市場における人的ネットワーク等を活用して広 範囲からの商品の調達や保存,調理法の提案に至るまで行う.したがって,従来の流通の 枠組みを超える試みを行うにあたっても,このような仲買人的機能の排除ではなく情報技 術を活用した高度化を目指す必要がある.つまり,仲買人的機能は水産物流通においては 欠くことができない要素であり,本稿が提案するような中間流通者代替機能は,単に商品 をユーザーの目前に直接提示することのみを目指すものではない.

そこで,このような仲買人的機能を抽象化してモデルに投影し,新たな枠組みを作り上 げる必要がある.本モデルでは仲買人的機能をいくつかの抽象的機能に分類し,それぞれ を情報技術の手法を用いて代替することを目標とした.

例えば,仲買人が有する専門的知見による『目利き』機能を実現する必要がある.特に インターネット等を介して遠隔地間でやり取りを行う場合,漁獲地での旬の情報や当該魚 種に関する知識をユーザーが有していない場合が多い.こうした場合に,ユーザーに代 わって,商品の鮮度や程度を判別したり価格の妥当性を検討する機能を提供することで,

ユーザーは安心して購買を行うことができると考えられる.また,複数の市場から商品を 探し出して調達するような機能,さらに商品を一時的にデポジットする機能についても代 替する必要がある.

一方,このようなしくみの下では,生産者がユーザーに直接接することができるため,

生産地の多様かつ豊富な情報をダイレクトに提供することができる.また,昨今のイン

ターネットの隆盛に伴い全国に広帯域のインフラ網が整備されつつあることに着目すると,

文字・数字情報のみならず動画や音声などのリッチコンテンツを併せて積極的に利用すべ きといえる.そこで本研究では,漁獲地・市場等の映像をインターネット上に送出する機 能を実現することも目標の一つとする.

4.2.3

プラクティカルシステム

本システムはインターネットにおいて

Web

アプリケーションとして動作する.本システ ムでは前項に述べたように中間流通者における市場機能の情報技術による代替を試みてい る.その手段として,エージェントシステムの実装と流通・料理専門家等のアドバイザー による人的なナレッジサポートを選択した.

仲買人は生産者とユーザーの間に立ち,それぞれの要望を受けて最適な組み合わせを探 し出して取引を仲介する.すなわち,生産者とユーザーそれぞれにとっての代理人として の機能を有する.このような機能を代替するためには,システムがそれぞれの代理人(エー ジェント)として活動するような仕組みが必要となる.こうした仕組みは「エージェント システム」と称される.エージェントシステムの定義は「利用者の意を受けてその要求を 充足するために自律的に活動するアプリケーション」である.

本システムの利用者は生産者,業務筋消費者(ユーザー),流通・料理専門家であり,そ れぞれを代理するエージェントを実装している.エージェントを介した取引支援の流れは 以下の通りとなる.まず,生産者エージェントは生産者から入力された漁獲物情報を保持 しユーザーエージェントからの接触まで待機する.次にユーザーエージェントはユーザー からの入力による購買条件を保持し,生産者エージェントに接触する.条件に適合した漁 獲物が見つかるまで,複数の生産者エージェントに対して問い合わせを行う.条件に適合 した場合はそれぞれの指示者および流通・料理専門化エージェントに対して条件に適合し たことを通知する.条件に適合しなかった場合は,ユーザーエージェントはユーザーにそ のことを通知する.そして流通・料理専門家エージェントは,商品情報が新規に入力され たという通知を受けるとそのことを専門家に通知する.専門家は自己の知見に基づいて商 品に関するアドバイスを入力する.入力されたアドバイスはユーザーエージェントを介し てユーザーに通知される.ユーザーはそれらのアドバイスおよび生産者からの情報を踏ま えて購買するか否かを決定する.

仲買人の有するもうひとつの重要な機能として,豊富な専門的知見に基づく商品情報

(程度の判定,旬の判断.目利き)や調理法などに関するアドバイスの提供がある.また,

代替産地や商品の提案・検索などを行うこともある.例えば時化の影響などにより不漁の 場合でも,このような機能により安定的な供給を確保することが可能となる.このように,

商品に関する豊富な知識を適切かつ正確に提供し,ユーザーの利便性を高めつつ,購買動 機を極大化することができるような機能の実現が重要である.

この点,昨今のデータマイニング(知識発見)技術の発達により,商品情報を蓄積した ナレッジベース(知識集約・提供技術)との連携により,取引商品の程度や価格の妥当性 を自動的に検討・報告することができるような技術が開発されつつある(エキスパートシ ステム).このような技術を利用すれば,利用者に最適な商品を選択して提示したり,選 択した商品に隣接するような性質を有する別個商品を併せて推薦することで高付加価値流

4.3:

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