第 2 章 関連研究
3.4 実験および評価
3.4.3 検索結果の品質の時間変化
qsearch(t) = Nsearch(t)
Nsearch,all (3.12)
Nsearch(t)は,時刻 t までにサーバが収集したデータオブジェクトの個数である.
Nsearch,allは,サーバにおける全探索の結果に含まれるデータオブジェクトの総数
である.各分割領域に対する探索が終了した時刻(t)と,それまでの探索結果に含 まれるデータオブジェクト数の総和を記録することによって,qsearch(t)は計算で きる.
図3.17は,クライアント側での各検索結果受信時の地図描画が終わる時刻に基 づいて,式(3.1)より計算されており,ユーザに対する応答時間の変化を示してい る.この時のサーバ側での探索結果の品質qsearch(t)の時間変化を示す.図3.17は,
3.4.2節で言及した各処理時間が影響するが,図3.18はサーバでの探索時間のみが
影響する.
図 3.18: 空間データサーバにおける探索結果の品質qsearch(t)の時間変化 図 3.18では,分割幅(dx)が小さいほど最初の探索結果が出力される時間は短い が,すべての探索を終了する時間に,ほとんど差は見られない.すなわち,図3.17 と図3.18 より,分割幅が大きいほど,最後の領域の探索を終了してから,その領 域に対する空間データに基づいて描画を終了するまでの時間が長くなっている傾 向が見られる.分割幅が大きいほど,最後に転送されるパケットに含まれるデータ オブジェクト数が大きくなるので,そのデータのXML処理にかかる時間は大きく なる.全応答時間は最後に転送されるデータオブジェクトの数に依存するので,本 実験においては,図3.18に見られるように,探索のオーバヘッドが小さいために,
分割幅が小さいほど全応答時間が短くなる.この探索のオーバヘッドについては,
3.4.5節で述べる.
さらに,領域分割を用いた場合(図3.17)との比較として,次のそれぞれの場合 について調べる.
• 領域分割を行わずに,オブジェクト数(max item)に基づく分割を行う場合
• 領域分割とオブジェクト数による分割を併用する場合
オブジェクト数のみに基づいて分割を行う場合
サーバが領域分割を行わずに探索を行い,指定したオブジェクト数max item(図 中では,max)ごとに,探索結果をバッファから取り出し,取り出した結果をパケッ トとして順番に転送した場合の検索結果品質q(t)の変化を図3.19 に示す.
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図 3.19: クライアントにおける検索結果品質 q(t) の時間変化(領域分割を行わず
に,オブジェクト数のみを変化させた場合)
図3.19より,領域分割を行った場合と同様に,max itemに基づくパケット分割 によって,検索結果品質が時間とともに増加し,max itemが小さいほど,最初の 結果を取得する時刻は早く,パケットの受信間隔は短くなり,検索結果の品質はな めらかに変化する.
領域分割を用いた場合(図3.17)は,各分割領域に対する探索の終了後に,その 探索結果が転送される.ただし,その探索の終了とともに,次の分割領域に対する 探索は開始され,探索結果のタグ付けや転送処理は次の領域に対する探索と並行に 実行される.
それに対して,max itemに基づくパケット分割を用いた場合(図3.19)は,探索 実行中に結果を随時転送できる.その際の全応答時間は転送データのサイズ,すな
わちmax itemの大きさに依存するので,図3.19では,max itemの値が小さいほ
ど,全応答時間が短くなる傾向が見られる.当然のことながら,パケット分割のみ を用いる場合は,領域分割による探索のオーバヘッドを伴わないので,領域分割に 基づく探索を行う場合よりも,全応答時間を短くすることができる.
領域分割とオブジェクト数による分割を併用する場合
領域分割を行う場合でも,max itemを指定することによって,各分割領域に対す る探索結果を更に細かく分割することができる.そこで,サーバにQcircle(radius= 1500)を送信し,dx= {100, 500, 1500}を用いて領域分割を行い,max= {5000,
2000, 500}に基づきパケット分割を行った場合の全応答時間を図3.20に示す.dx=
1500の時は領域分割は行わず,max=30000の時は,パケット分割は行われない.
図 3.20: 領域分割とオブジェクト数による分割を併用した場合の応答時間
図3.20より,領域分割を行った場合(dx={100,500})においても,max itemを 指定することによって全応答時間が減少することがわかる.ただし,分割幅が小さい 場合には,その領域分割の効果により応答時間が小さくなっているため,max item の効果は小さいと考えられる.実際に,各分割領域に対する結果に含まれるデータ オブジェクトの数がmax itemより小さい場合には,max itemに基づく検索結果 の分割は行われない.また,max itemをさらに小さくした場合には,サーバから クライアントに転送されるパケットの個数が非常に多くなり,通信のオーバヘッド が大きくなると考えられる.