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検索結果の品質に関する考察

ドキュメント内 検索手法とセンサデータベースへの応用 (ページ 143-147)

第 2 章 関連研究

7.2 検索結果の品質に関する考察

7.2.1 応答性を評価する指標としての検索結果の品質

本論文では,検索結果の品質をデータオブジェクトの収集率に基づいて計算して いるため,サーバから検索結果がインクリメンタルに提供されれば,当然のことな がら,品質は単調に増加していく.3 章の式(3.1)の定義では,空間データサーバ

側が検索結果を領域の順序に従って転送するかどうかに関わらず,検索結果の品質 は単調に増加していく.4章の式(4.10)の定義では,複数のサーバからの検索結果 を制約を満たしながら収集できれば検索結果の品質は向上していくことになるが,

制約を満たさなくても品質が低下することはない.

ただし,図7.1に示すような品質変化のグラフを分析することによって,検索/

視覚化システムのユーザに対する応答性を考察することができる.ここで,サーバ が領域分割に基づいて検索結果を提供する場合の品質 q(t) は,図7.1に示すよう に変化すると考えられ,(iii)が分割を行わない場合,(ii)が分割を行った場合,(i) がさらに細かな分割を行った場合に相当する.

q(t)

t 1

0

(i)

(ii)

(iii)

dT dQ

total response time

図 7.1: 評価指標としての検索結果品質の変化

3章,4章,6章で述べてきたように,クライアントが検索結果を逐次的に受信 する度に,検索結果の品質は時間とともに増加し,クエリを送信してから q(t) が 1に到達するまでの時間が総応答時間(total response time)となる.

図7.1の(ii)のグラフにおいて,dT は,ある途中結果を受信してから,次の途中 結果を受信するまでの時間を示しており,この間の品質は変化しない.図7.1の(ii) のグラフより,(i)のグラフの方が dT が短くなるが,dT が長いほど,ユーザに対 して次の統合結果を提示するまでの時間が長くなり,dT が短いほど,提示情報を 頻繁に更新することになる.したがって,ユーザへの検索結果の提示という観点で は,必ずしも,(i)のように,処理品質をなめらかに変化させるよりも,(ii)のよう に,ある程度の時間間隔を持って,表示情報を更新していく方が効果的な情報提供 ができる可能性がある.言い換えれば,領域分割のパラメータ(分割幅)を調整す ることで,ユーザの要求に応じたタイミング(時間間隔) で,空間情報の検索/統 合の結果を制御できる可能性があり,応答性の良いユーザインタフェースシステム 構築のための要素技術として提案手法が有用であると考えられる.

また,図7.1の(ii)のグラフにおいて,dQは,品質の変化の差を示すが,この 差が大きいほど,ユーザに一度に提示される情報が多く,5章,6章のような空間 集約などのコストの大きな統合処理を行う場合には,統合結果を表示するまでの時 間が長くなる.統合処理の時間は,クライアントの処理性能に依存するが,携帯端 末のような資源の制約される環境での空間情報の閲覧を考えた場合には,dQが小 さくなるように分割幅を指定することで,受信結果を効率的に処理できると考えら れる.

以上より,本論文で導入したデータ収集率に基づく品質定義は,単純ではあるが,

実装した視覚化システムの応答性を評価する指標の1つと捉えることができ,本論 文において提案手法の有用性を議論する上で,十分な役割を果たしていると考えら れる.

7.2.2 新たな品質定義の導入

本論文における検索結果品質の定義では,処理品質が単調に増加するというだけ でなく,グラフの勾配もほぼ一定であり,たとえば,図7.2の (b) のような変化を 示している.

(a)

(b) (c)

t q(t)

1

0

図 7.2: 処理品質の増加傾向の違い

4.3.2節の図4.7で示したように,空間制約や時間制約を満たさないデータオブ

ジェクトが収集される場合(broker方式)には,時間とともに制約を満たさないオ ブジェクトが蓄積されていくため,(c)のグラフのように品質が変化する.(c)のグ ラフは,データ収集の前半での品質が低く,後半に急激に品質が上昇する.それに 対して,(a)のグラフは,データ収集の初期の段階での品質が高く,後半の変化は ゆるやかである.Anytime algorithm の観点では,処理途中に割り込まれても何ら

かの結果を返せることが重要であり,ある時点での処理品質が高い(a)の変化を示 すことが望ましい.

3章の実験では,収集したすべての空間データオブジェクトに一様の重みを与え ている.4章の実験では,制約を満たしているセンサデータオブジェクトには一様 の重みを与えているが,制約を満たしていないオブジェクトの個数は品質の計算に 反映されていない.しかし,空間情報の閲覧を考えた場合には,たとえば,ユーザ の指定した地点や領域に近いオブジェクトに対して,距離に応じて重み付けをする ことが考えられる.指定した地点に近い分割領域に含まれるデータオブジェクトに は高い重みを与え,遠い分割領域ほど低い重みを与えることで,分割領域ごとの重 みを反映した検索結果の品質の計算ができる.この場合,空間制約を満たしたデー タオブジェクトが収集されれば,処理品質は(a)のグラフのように変化し,その変 化から,ユーザの要求に応じたデータ提供ができていることが予想できる.複数の サーバからの検索結果を利用して,オーバーレイなどの位置情報に基づく統合処 理を行う場合には,同一領域のデータが収集されているほど望ましい状態である ので,距離に応じた重み付けによって,処理品質が(a) のように変化すると考えら れる.

また,空間制約を満たさないデータオブジェクトについても,クライアント側で の統合処理のための中間結果の計算や何らかの提示情報の生成に利用できる可能性 もある.たとえば,検索範囲全体のおおまかなデータ分布を知りたい場合には,検 索の全範囲にわたるデータ収集をしながら,空間制約を満たすデータオブジェクト を優先的に取得するというアプローチも考えられる.この場合には,空間制約を満 たしていないデータオブジェクトの個数を品質の計算に利用した方が良いと考えら

れる.4章の式(4.10) では,空間制約を満たしているデータオブジェクト数のみか

ら品質の計算を行っているが,空間制約を満たしている領域に高い重みを与えるこ とで,空間制約を満たしていない領域のデータオブジェクト数も品質の計算に利用 できる.

センサデータを対象とした場合には,空間制約や時間制約を満たしているか,と いうことだけでなく,収集されたセンサデータの鮮度や時間的な一貫性も重要であ る.最新のセンサデータを利用するアプリケーションであれば,鮮度の良い,すな わち,更新時刻の新しいセンサデータの収集が要求される.また,ある時刻のス ナップショットを閲覧したい場合には,複数のサーバから収集したセンサデータの 更新時刻が,ほぼ同時刻であることが望ましい.このような場合には,たとえば,

ユーザの指定した地点に近い領域については鮮度の高さを優先する,あるいは,各 分割領域に含まれるデータについては更新時刻が近くなるように収集を行うことな どが考えられる.今後の課題として,これらの要素を反映した品質の定義を行い,

図7.2の(a)のグラフのように処理品質を増加させることのできる手法を考案する ことが考えられる.

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