第 2 章 関連研究
5.2 移動履歴を利用したセンサデータ閲覧手法
5.2.5 実装
プロトタイプシステムの実装
実験に用いたプロトタイプシステムについて述べる.実験システムは,Java言 語を用いて実装した.システムのユーザインタフェースの一部を図5.12 に示す.
地図表示部(map area)は,行政区や鉄道などの地図データ上に,移動履歴(moving
path)やクエリ領域(query region)を重ね合わせて表示するだけでなく,センサデー
タ統合の結果を分布として表示する.センサデータより生成されたテキスト形式の 環境情報は,時刻や位置情報とともに,テキスト情報表示部(text information area) に表示される.センサデータ要求のためのクエリを生成する際には,履歴表示リス ト(log point list)での直接的な始点/終点ノードの選択(query-by-historyに対
図 5.12: 実験システムのGUIイメージ
応),地図上でのマウスドラッグによる領域の選択(query-by-region),時刻指定 部(temporal parameter)での時区間指定(query-by-time)のいずれかを行うこと によって,移動履歴データの一部が選択される.また,履歴選択スライダー(slider
for path selection)により,移動履歴に沿ったセンサデータの要求と統合結果の閲
覧が可能である.
データセット
実験で利用した各種データについて述べる.
• 移動履歴データ
図5.13に示す次の2種類の移動履歴データを実験に利用した.
– (A) 東京近郊での移動履歴データ:GPSを利用して測位 – (B) より広範囲にわたる移動履歴データ:
履歴データの生成にジオコーディングを利用
(A)は,ハンディGPSレシーバー (PCQ-HGR3S,SONY社製)を利用して,移 動中の緯度経度座標を時間情報ととも連続的に記録したものである.移動ログの記
図 5.13: 実験に利用した移動履歴データ
録間隔は,20秒としており,本実験で用いた履歴データは,185個の記録点から構 成されている.
(B)は,鉄道などを利用して移動した時の履歴データを,GPSを用いず,鉄道 の時刻表情報などに基づいて生成したものである.具体的には,時刻表から停車 駅の名前と停車時刻を抽出し,駅の住所情報にCSVアドレスマッチングサービス
[CSIS]を利用して緯度経度情報を付加することで,電車を利用している際の移動履
歴を生成した.このような住所などの位置情報を,地図に直接対応付けられる座標 値に変換することを,一般に,ジオコーディングと呼ぶ.鉄道を利用していない部 分の履歴については,地図ソフトウェアの地図表示部で,マウスポインタを該当箇 所に移動させ,その時に表示される座標値(緯度経度)を利用した.このデータは 実測値ではないが,実際の移動行動を反映しており,滞在地点や通過地点の時刻と 位置が記録されているため,(A)と同様に,移動履歴データとして利用することが 可能である.(A)との大きな違いは,移動履歴の記録時刻の間隔が一定でない点と,
より広い範囲にまたがった履歴データであるという点である.実験で用いたデータ は,24個の記録点を含む.
• センサデータ
移動履歴と対応付けるセンサデータとして,「アメダス観測年報(2000年)」を利 用する.センサデータは2000年の観測値であるが,同月日,同時刻の観測データ を移動履歴と対応付けるものとする.ただし,ユーザの移動時の観測データが入手 できれば,同様の結果が得られると考える.
• 空間データ
地図表示や位置情報抽出に用いる空間データとして,国土数値情報[国土交通省 a]
を利用する.具体的には,国土数値情報に含まれる「行政界・海岸線データ(平成 11年度)」,「鉄道データ(平成7年度)」,「道路データ(平成7年度)」を利用している.