• 検索結果がありません。

森林親和運動としての木育の成果

第 1 節 くまもとものづくりフェア等の成果 1.1 はじめに

「くまもとものづくりフェア」は、熊本ものづくり塾が事務局となり熊本大学や熊本県 技術・家庭科教育研究会、一般ボランティアが共同で開催している。また、本事業の一部 は熊本県農林水産部林業振興課より資金提供を受け実施されるものである。この他、熊本 ものづくり塾は県内3カ所で定期的なものづくり教室を行っている[田口 2010a,2010b]。

本節では、「くまもとものづくりフェア」等のものづくり教室について、木育の目的と 照らし合わせた場合の成果について検討する。具体的には、「くまもとものづくりフェア」

等への参加状況と、木材利用意識および木材利用行動との関係を明らかにすることを目的 に、アンケート調査を行った。なお、本調査は以下の2つの調査からなる。

第1の調査は、2009年6月から7月にPTA活動や地域活動として実施されたものづく り教室に参加した子どもおよびその保護者などに実施したものである。これらの対象者に は、ものづくり教室を実施する前に調査を行い、木育を殆ど体験していない対照群と設定 することができる。第2の調査は、熊本ものづくり塾が毎月実施しているものづくり教室 に参加している子ども、およびその保護者を対象としている。熊本ものづくり塾は、2009 年度より2年間ものづくり教室を県内3カ所において定期的に開催(年間10回・通算20 回程度実施)している。こちらの対象者は、木育を体験している群とする。

これらの調査結果を比較することにより、木育による木材利用に関する意識および行動 変様に対する影響について検証する。

1.2 調査対象者 1.2.1 木育未経験者群

熊本県内でPTA活動や地域活動として開催されたものづくり教室に参加した子どもお よび保護者を調査対象とした。2009年6月から7月にかけて調査対象者に、年齢、性別、

木材の利用に関する意識、木材利用行動などについてアンケートによる調査を行った。地 域ごとに分類すると、県北(山鹿市・和水町)42人、熊本市110人、県南(八代市・水俣 市)80人、合計232人である。年齢ごとの内訳は、6~15歳:94人、16~25歳:25人、

26~35歳:36人、36~45歳:68人、46歳以上:9人であった。性別でみると、男性:78

人、女性:154人であった。

1.2.2 木育(ものづくり教室)経験者群

熊本ものづくり塾が主催するものづくり教室の受講者およびその保護者を調査対 象とした。2011 2 3

6~15歳:46人、26~35歳:4人、36~45歳:25人、46歳以上:8人であった。性別で みると、男性:35人、女性:48人である。

調査対象者に対して、最近の2年間(24ヶ月)に実施されたものづくり教室やものづく りのイベントの参加回数により、1〜4回を「参加回数少」集団、5回以上を「参加回数多」

集団と分類し集計を行った。それぞれの内訳は、子どもでは「参加回数少」が19人、「参 加回数多」が27人、大人では「参加回数少」が17人、「参加回数多」が20人であった。

なお、ものづくり教室に自らの意志または保護者の意向により参加した対象者であるため、

「ものづくりに対する意欲」などについては、当初から高い可能性があることを勘案し考察 することが求められる。

1.3 調査および考察

調査対象者に実施したアンケートの内容を巻末の資料5.1.1に示す。対象者に森林の働 きや木材の利用意識、利用行動、ものづくり教室参加による行動の変様について、選択式 で回答させた。

1.3.1 木や森林の知識およびものづくりへの意欲

木や森林の知識およびものづくりへの意欲に関する調査結果を、表5.1.1に示す。ここ では、子どもと大人について、木育の経験の有無により分類している。本表より、「木を 植えて、切って利用し、また植えることは良いこと」、「木材を利用することは、森林づ くりに繋がる」については、子ども、大人とも、4ポイント中3ポイント以上の高い値を示 した。木育の経験の有無により分析した場合、木育経験のある対象者が、何れも高い値を 示した。また、「木材を使ったものづくりにもっと取り組みたい」についても同様に高く、

意欲においても若干であるが木育経験者が高い値を示した。

以上の結果から、木育の経験は木や森林に関する知識やものづくりへの意欲の向上に効 果があることが明らかとなった。なお、ものづくりへの意欲の分析については、今後詳細 な検討が求められる。

1.3.2 木材利用に関する意識

木材利用に関する子どもと大人の意識についての調査結果を、表5.1.2と表5.1.3に示 す。なお、木育経験のある対象者については、2年間で1〜4回の経験者を「木育経験少」、

5回以上の経験者を「木育経験多」に分類している。

表5.1.2より、子どもが家具を購入する場合、木製品を選ぶ割合が、木育経験が無い者

より、木育経験がある者の方が高いことが分かる。さらに、住宅についても木育経験が多 い子どもが高い値を示した。一方、気に入った木製品がある場合、「高くても購入したい」

という子どもの割合は、木育の経験があると高い値を示すことが分かった。

5.1.3

表 5.1.1 木や森林の知識とものづくり意欲(木育経験の有無による比較) N=232(ポイント)

分 類 質問項目

子ども 大人 平均

木育無 木育有 木育無 木育有 木育無 木育有 木を植え育て、切って利用し、

また植えることは良い 3.31 3.54 3.49 3.76 3.40 3.65 木材を利用することは、森林づ

くりにつながる 3.11 3.33 3.35 3.49 3.23 3.41 木材を使ったものづくりにもっ

と取り組みたい 3.48 3.50 3.46 3.80 3.47 3.65 注)ポイントの最小値:1,最大値:4

表 5.1.2 木材利用に関する意識(子ども) N=94(%)

質問項目 回答選択肢 木育経験無し 木育経験少 木育経験多

①自分用の机やイ スを購入する時

木でできた製品 57.9 57.9 74.1 金属・プラスチック 7.8 10.1 3.7 どちらでもよい 34.3 31.6 22.2

②家を購入すると したら

木造住宅 47.3 42.1 48.1 鉄筋・コンクリート 20.8 15.8 33.3 どちらでもよい 31.9 42.1 18.5

③気に入った木製 品があった時

高ければ購入しない 74.9 42.1 48.1 高くても購入したい 25.1 57.9 51.9

表 5.1.3 木材利用に関する意識(大人) N=138(%)

質問項目 回答選択肢 木育経験無し 木育経験少 木育経験多

①自分用の机やイ スを購入する時

木でできた製品 72.9 94.1 90.0 金属・プラスチック 3.0 0.0 0.0 どちらでもよい 24.1 5.9 10.0

②家を購入すると したら

木造住宅 73.7 70.6 85.0 鉄筋・コンクリート 6.0 5.9 0.0 どちらでもよい 20.3 23.5 15.0

③気に入った木製 品があった時

高ければ購入しない 63.2 47.1 40.0 高くても購入したい 36.8 52.9 60.0

1.3.3 木材利用に関する行動

木材利用に関する子どもと大人の行動についての調査結果を、表5.1.4と表5.1.5に示 す。なお、木育経験のある対象者については、2年間で1〜4回の経験者を「木育経験少」、

5回以上の経験者を「木育経験多」に分類している。

表5.1.4より、「友だちと比べて自分は木製品を使用する」とする割合が、木育経験が

無い者より、木育経験がある者の方が高いことが分かる。木育経験が無い子どもが約2割 に対して、多い子どもは、約6割と顕著な差がみられた。

表5.1.5より、大人についても同様の傾向を示している。木育経験の多い対象者の8割

以上が、他者と比べ木製品を多く使用するとしていることは、木育の効果を顕著に現して いるといえる。

表 5.1.4 木材利用に関する行動(子ども) N=94(%)

質問項目 回答選択肢 木育経験無し 木育経験少 木育経験多

①友だちと比べて 木製品を使ってい る方か

使っている方である 22.8 47.4 59.3 あまりかわらない 62.5 26.3 40.7 使っていない方である 14.8 26.3 0.0

表 5.1.5 木材利用に関する行動(大人) N=138(%)

質問項目 回答選択肢 木育経験無し 木育経験少 木育経験多

①友だちと比べて 木製品を使ってい る方か

使っている方である 30.4 41.2 85.0 あまりかわらない 48.8 52.9 15.0 使っていない方である 20.9 5.9 0.0

1.3.4 ものづくり教室を受講することによる変化

ものづくり教室に参加した子どもと大人について、木やものづくりに対する興味・関心 や知識・技能、木材利用の行動の変化について質問した結果を表5.1.6に示す。なお、本 表は木育経験の多少により、分類している。

子どもにおいて、興味・関心では、「ものづくりが好き」、「木に興味がある」が高い 値を示した。また、これらは経験が多いほど高い値を示している。「地域や熊本への興味」

の高揚については、ものづくり教室においては、影響していないことが分かる。大人につ いても、同様の傾向を示しているが、「イベントへの参加」は、子どもより高く、このよ うなイベントへの参加は、大人主導による可能性が高いことを示している。そのことは、

子どものイベントへの積極的な参加を促すためには、保護者の意識を変えることの重要性

表 5.1.6 木材利用に関する行動の変化 N=232(%)

分 類

質 問 項 目

子 ど も 大 人 木育

経験少

木育 経験多

木育 経験少

木育 経験多 興

味 関 心

地域や熊本に興味がわくようになった 0.0 0.0 0.0 5.0 木に興味をもつようになった 10.5 44.4 17.6 20.0 ものづくりが好きになった 42.1 59.3 35.3 70.0 イベントに参加したいと思うようになった 5.3 11.1 5.9 30.0 知

識 技 能

ものづくりの大切さを感じるようになった 0.0 0.0 0.0 10.0 木の特徴を知ることができた 5.3 3.7 5.9 10.0 ものづくりの仕方を知ることができた 21.1 29.6 17.6 15.0 ものづくりが上手になった 10.5 33.3 5.9 5.0 行

樹木や木製品を見るようになった 0.0 3.7 5.0 15.0 木製品を以前より購入するようになった 0.0 7.4 5.0 30.0

1.4 考察

日本の国土面積に占める森林面積は約66%(森林率約7割)で、先進国の中では有数の 森林大国である。しかし、樹木、木材、林業に対しては興味・関心は低く、これらが抱え ている課題に対しても意識したことがない者が殆どである[山下 2008]。本調査において も木育(木を素材にしたものづくり教育)の未経験者ほど、この傾向が強く表れることが 明らかとなった。

木材需要拡大のためには、まず木や森林、身近な木製品について興味・関心を持たせる こと、これらに関する最低限の知識を伝達することから始めないといけない[田口 2011]。

そのことにより、木の良さが理解され、日本の森林が抱えている課題についても理解が始 まる。本調査においては、木育の経験が多い対象者ほど、興味・関心や理解も深く、木材 需要拡大についての意識も高い値を示すことが明らかとなった。

これらの積み重ねにより、需要拡大に繋がる態度がみられ、最後に需要拡大の行動へと 繋がることが期待される。遠回りのようであるが、地道な木育から始めることがゴールへ の近道なのかもしれない。

関連したドキュメント