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森林内での安全管理

森林資源を活用して地域振興を行う場合、森林体験、林業体験、里山づくり、森林浴、

森林レクリエーションなど様々な野外活動プログラムが行われることがある。こうした森 林内及び森林資源を利用した活動プログラムを主催者が提供しようとしたとき、まず、考 えなければならないことに安全管理(リスクマネージメント)がある。ここでは、山岳事 故の発生状況や森林体験活動中における安全管理の実態及びその対策についてみてみよう。

Ⅰ 山岳遭難における事故発生の状況

(注 1)

1968(昭和 43)年から 2004(平成 16)年までの夏山における山岳遭難発生状況によれ ば、1980 年代の前半をボトムとして年々増加傾向を示し、直近の 2004(平成 16 年)では遭 難件数で 353 件、遭難者数で 426 人に達している。最も遭難件数が少なかった 1980(昭和 55)年に比べて、遭難発生件数で 246.9%、遭難者数で 197.2%とほぼ2倍のペースとなっ ている。この主な原因は、最近の中高年齢者の登山、トレッキングブームが影響している ものと考えられる。

(注 1) 「平成 16 年度夏季における水難・山岳遭難発生状況について」(平成 16 年9月、警察庁

生活安全地域課)を参考に作成した。

図7−1 夏山における山岳遭難の発生件数と遭難者数の推移

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 件・人

死者・行方不明者数(人) 負傷者数(人) 無事救出者数(人) 発生件数(件)

(資料:「平成16年度夏期における水難・山岳遭難発生状況について」の統計書により作成)

次に、平成 16 年度における遭難者を年齢階層別にみると、60 歳〜64 歳の 81 名(遭難者 数に占める割合 19.0%)が抜きん出て高く、次いで 50 歳〜54 歳の 62 名(同 14.6%)、

55 歳〜59 歳の 54 名(同 12.7%)、65 歳〜69 歳の 48 名(同 11.3%)の順となり、50 歳

〜69 歳の年齢層で遭難者全体の 57.5%を占めている。こうした傾向は、更に顕著になるも のと見込まれ、中高年齢者に対する山岳遭難の安全管理の対策が急がれている。

表7−1 平成 16 年度における年齢別遭難者数

(単位:人)

年齢階層 遭難者数

死者 行方不明 重傷 軽傷 無事救出等

15 歳未満 15〜19 歳 20〜24 歳 25〜29 歳 30〜34 歳 35〜39 歳 40〜44 歳 45〜49 歳 50〜54 歳 55〜59 歳 60〜64 歳 65〜69 歳 70〜74 歳 75〜79 歳 80 歳以上

合計

28 11 7 7 24 15 20 21 62 54 81 48 29 13 6 426

0 0 0 0 0 1 1 3 7 11 10 6 4 2 1 46

1 0 0 0 0 1 0 2 0 0 1 0 0 0 0 5

1 1 0 1 5 5 8 4 18 19 23 11 6 2 2 106

7 4 4 3 7 5 4 3 25 13 30 14 10 5 1 135

19 6 3 3 12

3 7 9 12 11 17 17 9 4 2 134

(資料:「平成 16 年度夏期における水難・山岳遭難発生状況について」警察庁生活安全局地域課)

一方、山岳遭難における態様別遭難発生状況をみると、「転落・滑落」の 104 件(遭難 者 105 人)が最も多く、次いで「転倒」の 87 件(同 87 人)、「疲労・病気」の 72 件(同 80 人)、「道迷い」の 46 件(同 70 人)などとなっている。こうした遭難の態様は、特に 中高年齢層に多くみられることから、今後の山岳遭難の対策を講じるに当たって留意すべ きである。

表7−2 平成 16 年度における態様別遭難発生件数と遭難者数

年齢階層

発生件数 (件)

遭難者

数(人) 死者 行方不明 重傷 軽傷 無事救出 転落・滑落

登山道 稜 線 ・ 尾 根

沢・谷 岩場 雪渓 その他 道迷い 疲労・病気 転倒 落石 悪天候

クマ等襲撃 不明 その他

合計

104 48

4 25 18 4 5 46 72 87 11 8 7 2 16 353

105 49

4 26 18 2 6 70 80 87 13 39 8 3 21 426

32 11 2 10

5 0 4 0 9 0 0 1 1 0 3 46

1 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 3 0 5

43 20 1 8 11

1 2 1 3 47

5 0 2 0 5 106

28 17 0 8 2 1 0 2 30 38 8 14

5 0 10 135

1 0 1 0 0 0 0 66 38 2 0 24

0 0 3 134

(資料:「平成 16 年度夏期における水難・山岳遭難発生状況について」警察庁生活安全局地域課)

Ⅱ 森林体験活動中における安全管理の実態

(注1)

環境教育を目的とした自然体験活動では、森林プログラム等で行う森づくり、林業体験、

森遊び、クラフト、山歩きなどの活動が行われている。このような活動の安全管理の実態 についてみてみよう。

(1) 森林体験学習の内容

これらの活動プログラムの内容をみると、「森遊び」の 75%(複数回答。以下同じ)が 最も多く、次いで「森林づくり」の 57%、「クラフト」の 56%、「林業体験」と「山歩き」

の 51%の順となっている。このことから森林体験学習では、「森遊び」を中心として「森 林づくり」、「クラフト」、「林業体験」、「山歩き」などの森林体験プログラムが行われてい る。

(2) 森林体験活動中における安全管理の実態

図7−3は、森林体験活動中の安全管理の実態を示したものである。これによると、参 加者に対する自己責任の意識、指導者の過失をなくすための危険予知や危険回避のための トレーニングに課題が残り、また事故が起こった場合の救命・救助などスタッフの教育、

研修などを徹底することが大切かと思われる。

(注1) 林野庁「森林体験学習等における安全管理手法に関する調査」(平成 17 年3月)を参考に して作成した。

図7−2 森林体験学習の態様(複数回答)

9 9 9

15 19

32 33

36 36

51 51

56 57

75

0 10 20 30 40 50 60 70 80

野外文化・芸術 その他の自然体験 海遊び 昔の農村生活体験 農業体験 夜間体験 川遊び アウトドアクッキング キャンプ 山歩き 林業体験 クラフト 森林づくり 森遊び

(資料:林野庁「森林体験学習等における安全管理手法に関する調査」により作成)

(資料:林野庁「森林体験学習における安全管理に関する調査」より作成)

図7−3 森林体験学習における安全管理の状況

25.0 27.8

30.0 42.1

43.5 52.4

55.1 61.1

65.8 66.4 66.6 69.7

70.8 71.5 71.6 71.7 71.8 77.9 78.0 78.6 79.0 80.6 83.4 83.8 83.9 87.1 87.4 88.2 89.7 89.7 90.0 90.1 90.7 90.8 91.5 91.6 93.1 93.2 93.5 94.6 94.8 95.4 96.0 97.4

98.3 98.6

68.0 63.8 58.5

49.4 46.9

36.8 35.2

24.8 28.4 26.4 25.5 26.3 24.0 18.6 16.5 15.4 21.2

11.8 13.8

16.3 15.4 10.7

14.0 11.9

12.8

健康状態を把握する記入者シートを作成していますか 参加者または親から「参加同意書」を取っていますか 事前説明会には参加者の保護者を出席させていますか 保険の内容、保険料について説明していますか スタッフの安全トレーニングを実施していますか 事故の記録(事故状況など)を作成していますか 緊急時の避難場所を決めていますか 救助・救命措置が行えるスタッフがいますか 活動後のミーティングと記録を取っていますか 参加者・スタッフの健康状態をチェックしていますか スタッフは賠償責任保険に加入していますか 参加者・スタッフの服装などの点検を行っていますか 事前説明の資料を作成していますか 保険会社へ連絡、指示を仰ぐ体制を整えていますか 免責事項(対象とならない事項)を理解していますか 保険会社(代理店)に相談する人がいますか 携帯電話の通信範囲を確認していますか 保険金額(補償金額)を知っていますか 参加者への連絡体制は整っていますか 緊急時の連絡体制を整え、スタッフに周知していますか 安全の行動基準(例えば、中止など)を定めていますか 事故発生時の通知、手続きを知っていますか 募集パンフレットを作成していますか 救急・救護のための備品や装備を整えていますか 危険な動植物の対応について説明していますか 企画書、収支計画書を作成していますか 加入手続きの方法を承知していますか 参加者が注意すべきことを十分に説明していますか 参加者名簿(氏名、親の連絡先)を作成していますか 参加者の対象範囲が明確になっていますか 活動前のミーティングを行っていますか 使用する道具を事前に点検していますか 活動中に参加者の行動を常に把握していますか 参加者に危険な場所を周知していますか スタッフの役割分担ができていますか 交通、スケジュール等の行動情報を伝えていますか 活動中の気象状況を確認していますか 体験活動に必要な技術・技能を持つスタッフがいますか 道具の安全な使い方について説明していますか 地元や関係者の協力は得られていますか プログラムの進行を担当するスタッフがいますか 必要な持ち物、服装等の装備情報を伝えていますか 活動目的にふさわしい場所となっていますか 活動に使用する施設や場所を下見していますか 全体を総括する責任者を決めていますか 活動の目的が明確になっていますか

はい いいえ わからない

Ⅲ 森林内での安全対策の考え方

1.森林内での事故の特性と安全対策

森林内での活動中の事故で最も多いのは、蜂刺されによる事故である。特に、スズメバ チによる事例が多く寄せられている。スズメバチによる事故は、一度に大勢の者が被害に 遭うことが多く、被害者数としては抜きん出て多い。森林内でのスズメバチ被害では、そ れを避けようとしての転落、滑落などの二次的な事故を誘発する危険性がある。また、ア レルギーを持つ場合はショック死する恐れもあり、スズメバチの活動が活発になる夏から秋に かけて注意が必要である。このため、スズメバチの習性を知り、適切な対策を講じることが 大切である。

木工クラフトでの刃物による切り傷も多い。普段使い慣れていない小刀、ノコギリなど による指、手などの切り傷が多く、止むを得ないケースもあるが、刃物の取り扱いや訓練 が必要かと思われる。また、野外炊飯における火傷や薪割りなどのナタの事故もある。特 に、火傷については女の子に多く見られることから、調理器具の取り扱い方の指導が必要 である。

登山、ハイキングでの転倒、転落による骨折や捻挫などの行動に起因する事例が多く見 られる。これは、自己責任に負う部分もあるが、それぞれの体力、経験の度合いに合わせ た行動が求められる。また、高齢者グループの登山やハイキンング中における道迷い事故 が多発していることから、指導者の適切な判断が要求されている。

概して、都会で生活している者を対象に参加者を募る場合、安全で便利な都会での日常 生活が「自然」であり、自然の中で過ごすことが非日常生活であることを、まず主催者側 は認識しておく必要がある。特に、子どもを対象に募る場合は、そのことを十分認識して プログラムを立てる必要がある。

以下、一般的な野外活動における安全対策について見てみよう(注 1)。 (1) 安全管理の視点

指導者を確保する――プログラムの難易度、期間や参加者数に応じた指導者を確保する ことが、基本的な安全対策となる。指導者数は、参加者の年齢や経験などの様々な要素を 勘案して必要な指導者を確保する。

健康チェックを行う――参加者の健康チェックは、登山中の事故防止にとって有効であ る。体調がすぐれないと集中力を欠き事故につながることが多い。特に、腹痛などの有無 と事故との因果関係が過去の事故調査からも明らかになっており、毎日の健康チェックを 行うことで、事故発生の危険な因子を取り除くことができる。

(注 1) 「自然体験活動中の安全対策」(野外安全対策研究会・国立オリンピック記念青少年総合

センター)を参考に作成した。

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