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桁橋とスラブ橋

ドキュメント内 Microsoft Word - CChap00.doc (ページ 86-89)

圧縮側フランジ断面積

10. 桁橋とスラブ橋

10.1 最も数の多い橋梁形式

10.1.1 最も数の多い橋梁形式は桁橋であること

大きな河川に架けられる支間の大きな橋梁や、景観のシンボルマーク的な橋梁は、それなりの計画・

設計・架設・保守管理に配慮がされます。しかし、全国的に見て、道路橋梁総数の内、支間にして 15

~30m 程度で、桁橋形式の中小支間橋梁が圧倒的に多く、くまなく目配りができないのが実情です。材 料別に見れば、国道では鋼橋の比率が全体の約 50%と高いのですが、地方道ではコンクリート系、特に PC橋梁の比率が大きくなってきました。(橋梁技術の変遷、多田宏行編著、鹿島出版会、2000年)。こ れらの形式の橋梁は、架設需要が多いこともあって、設計の標準化が研究されてきました。その構造は、

複数の主桁を並べ、その上に鉄筋コンクリートの床版を載せる形式です。主桁材料の種類で、鋼桁・R C桁・PC桁に分けます。RC床版は、主桁断面に組み込んで設計することが普通になりましたが、そ う計算しない場合と区別するときは、RC鋼合成桁、PC合成桁(PCコンポ橋)などと言います。R C桁の場合にはT桁になるか、または、中空スラブ橋のように、床版が主桁と一体化した構造になりま すので、見かけの厚い床版になります。今までに架設されてきたこれらの中小支間の橋梁は、あまり目 だった事故を起こしていませんので、現状では実用的に充分の耐荷力があることを、間接的・客観的に 証明しています。しかし、維持・管理・補修の社会的要求が大きくなりましたので、もっと積極的に健 全性を確認することが要望されています。

10.1.2 床部分の疲労や劣化が問題になること

橋梁構造物の設計の歴史は、長い支間を渡すための努力と平行して、重量の大きな自動車輪荷重との 対応の歴史です。自動車の重量と通行車両数が年々大きくなって、設計時の荷重予測を上回る事例が多 くなりました。市内電車が走っていた都市の橋梁では、電車荷重が当時としては際立って大きかったこ ともあって、電車路線を廃止した橋梁の主構造は、現在の重交通の環境でも充分の耐荷力を示していま す。そうでない一般的な橋では、床版コンクリートに多くの障害が見られるようになりました。そもそ も、昭和31年(1956)改訂の道路橋示方書から、荷重体系に一等橋・二等橋の区分が導入され、一等橋の 自動車荷重20tfに対して二等橋はその70%の14tfと決めていました。活荷重の規定は、現実にその重量 の車両が通行するとの予測値ではありません。二等橋では交通量が多くないことを見越したものであっ て、14tfを超える重量車を通さないと言う意義ではありません。近年の急速なモータリゼーションと共 に重量トラックの通行量が増え、二等橋で設計した橋は眼に見えて疲労劣化が進みました。重量車の通 行で突然落橋する大きな事故ではなく、部分的な亀裂が目立つようになるのが疲労の進行を示します。

疲労は主構造に見られますが、特に、床部分の損傷が先に目立ちました。場当たり的には「重量車の通 行を制限する、速度制限をする」などの対策が行なわれます。このような実情を反映して、平成5年(1993)

の改訂では一等橋二等橋の区別が無くなり、T荷重も25tfに引き上げられました。

10.1.3 鋼桁ではRC床版の設計に問題が多いこと

一般的に言うと、橋梁設計の技術者は、コンクリートを理想化し過ぎる傾向があります。代表的な思 い込みは、コンクリートの引張強度を無視するモデルを、コンクリートに引張強度がないと、取り違え ることです。また、RCの桁やスラブでは、応力度の計算法にはこだわりますが、タワミや変形の計算 をあまりしません。鋼桁から見るとき、RC床版と舗装は大きな死荷重分を占めますので、なるべく床 版厚を抑えたくなります。計算上、許容応力度を高く設定できれば厚さを減らすことができます。自動 車の輪荷重の分布を考えて活荷重モーメントやタワミを計算するべきですが、条件が複雑になります。

設計示法書では、この面倒さを軽減する親切心を持って、T荷重による設計曲げモーメントの算定式を 示していますが、タワミについての制限規定はありません。それに代わるものとして、スラブの最小厚 を規定しています。床版スラブと床組は輪荷重によって部分的にかなりのタワミが出ますし、繰り返し のタワミ(または歪み)が出ることが疲労の最大要因です。スラブ厚を 10%大きくすると、曲げ剛性が

33%も上がります。スラブ厚さは20cm前後が多いので、スラブ厚の増減がスラブの疲労劣化に大きく影

響することが観察されています。鋼桁では、幅員方向に大きな剛性の横桁または耐傾構を設けないと、

主桁群のタワミ分布が幅員方向で直線にならず、スラブがその方向で部分的な曲げを受けます。主桁支 間の中央に分配横桁を配置するのが一つの対策です。適度な間隔で横桁または耐傾鋼を配置するのが理 想ですが、経済性を追求すると、この構造部分が真っ先に省かれるようです。

10.1.4 古い橋梁でも案外耐荷力があることの理由

現在の時点で昔(昭和30年代1955以前)の橋梁設計を見ると、かなりの過剰設計になっています。

例えば、非合成の鋼桁橋がそうです。鉄筋コンクリート床版は主桁設計に対して死荷重扱いでした。実 際には合成作用が発現していますので、全体の剛度が上がり、応力度に余裕が出る分、実質的な耐荷力 が上がっています。また、丁寧に施工されたコンクリートは、年数の経過で強度が上がって行きますし、

死荷重応力の再配分が起こりますので、自動車荷重が時代と共に大きくなっている交通事情にも、耐荷 力が相対的に対応してきたと想像できます。この平和共存的な時代にも限界があって、材料の劣化や疲 労が最近では比較的多くなってきました。昭和 30 年代以降、橋梁設計をもっと合理的にし、経済的に したいとする研究が活発になりました。これは、理論から推定できる過剰設計分を減らすことですので、

皮肉な見方をすれば、耐荷力の余裕が少ない橋梁を大量に建設しました。橋梁は大きな予算を使い、実 物大の試作品を作って事前に耐荷力の確認をすることが簡単にはできませんので、実際交通に供用して 経過を見ます。供用後一年以内に不具合が顕在化するのは、言わば初期故障ですので、比較的早めに設 計または施工の改善データが得られます。橋梁も、電気機械製品と同じように疲労の影響を受けますが、

その発現は通過交通量に関係しますので、年数がかかります。最近の交通量は幾何級数的に増加してき ましたので、昭和 30 年代以降に建設された橋梁の多くで、疲労亀裂が頻繁に観察されるようになって きました。電気機械装置では、疲労の影響で或る日突然不具合が発現する危険を避けるため、或る程度 の使用期間が経過すれば、まだ機能的に使える状態であっても、そっくり新品に取り替えることも行な われます。材料が疲労しているのは外見からは分からないことも多く、それが顕在化するのは亀裂など が観察できるときであって、材料力学的には破壊と同じです。橋梁では全体の取り替えが簡単ではあり ませんので、部分的な補修で全体の延命を図る対策に悩む時代を迎えています。

10.1.5 構造システムとしての見方が必要

英語のシステム(system)は、漢語では組織や系などと当てます。意味する概念が広いので、利用場面に 応じて種々に解釈した別の用語も使いますが、カタカナ語のままの方が分かり易いようです。工学的に 使うときは、多数の構成部品の集合体が連携して全体として一つの機能を持つものを指します。橋梁は、

主桁・横桁・床版などの名称を持つ幾つかの部材の集合体ですので、構造システムと見ることができま す。鉄筋コンクリート断面は、鉄筋とコンクリートをまとめて一つの柱や桁に構成し、個別の分担、つ まり応力度を計算しますので、考え方としてはシステムを当てることができます。合成桁は、床版と主 桁との協力関係を考えますが、その機能を発揮させるために、ズレ止めをシステム要素として設けます。

何本かの主桁を幅員方向に並列する構造のとき、横桁の荷重分配作用を考えるのが格子桁です。古典的 な考え方では、橋梁主構造の解析は平面構造力学を応用しましたが、格子桁は平面構造力学を考える面 が主桁本数分になります。このことを表すために、立体解析の用語が好んで使われます。システムの考 え方は、電気・機械装置の設計では必須ですが、この中に、どこか一箇所の要素の機能不全で全体機能 が麻痺する危険を避ける考え方を含ませます。橋梁設計では、システム的な考え方は意識されませんが、

例えば、意図的に不静定構造物に構成することは並列システムにすることです。どこかの部材が破壊し ても、すぐには全体の崩壊にならないような安全性を持たせることができます。合理的な設計の研究は、

無駄な要素を減らすことですが、意図的に過剰設計にしておくことも必要になります。

10.1.6 巨大システムとしての連続体を有限システムでモデル化する

鋼構造に較べると、コンクリートは線材や薄板の形状で使うことはなく、幅と厚みを持つ立体的な形 状に構成します。一般的な弾性体の力学は、これを3次元の連続体として微分方程式を応用して解析し ます。全体をシステム的に見れば、微分レベルの非常に多くの構成要素からなる巨大な不静定構造です。

しかし、解析的に明快な解が提案できるのは非常に限られた条件のときだけですので、幾つかの仮定を 考えて、解析に向くような有限個数の部材要素が集合した骨組みモデルを考えます。有限要素法(FEM: finite Element Method)は、この方法を発展させたものです。コンピュータが利用できなかった時代、モデル化の 思想は、不静定次数が大きくならないように個別の構造システムが研究されました。FEM利用の場合も、

モデル化に構造システム的な考え方が必要です。しかし、連続体の解析モデル化は公式的な方法が無い と言ってよく、解析に便利なように恣意的に行ないます。そのため、正確な解析をしたいとなると全体 構造を細かく要素分割したくなります。手計算時代の簡単なモデルは、構造システム全体の挙動をマク ロに理解することができますので、このモデル解析を常識として踏まえておく意義があります。桁橋設 計では、格子桁理論と版理論の二つが研究されてきましたので、これらの理論の解説をこの章で扱いま す。

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