圧縮側フランジ断面積
8.3 合成桁の鋼桁部のフランジ断面提案法
8.3.1 コンクリートの扱いはマクロに考える
合成構造物は、合成桁に限らず、種々の場面で現われますが、代表的にはコンクリート床版を持つ鋼 プレートガーダーの発展した形式です。したがって、その設計は鋼構造物の方の専門家が当たることが 多くなります。その専門家は、コンクリートの扱いにやや経験不足のことがあり、またコンクリートの 専門家も鋼構造の扱いに慣れていない、などの問題をはらみます。よく陥る間違いは、材料の性質を理 論的に理想化し過ぎることです。コンクリートは、ややミクロに見れば砂利・砂の混合物ですので、均 質な弾性体とは程遠い材料です。鉄筋は、コンクリートの亀裂が進行しないようにする配筋上の注意は 必要ですが、一種の粗骨材と見て、その全体をマクロに見て均質なコンクリートとして扱うのが妥当で す。力学モデルを考えるときに、鉄筋をあたかも構造系を構成する部材並に、コンクリート本体と分離 する扱いをするべきではありません。
8.3.2 合成前と後の二種の曲げモーメントを扱う
前節の鋼プレートガーダーは、上下フランジの圧縮・引張許容応力度の差が大きくなりませんので、
小支間の橋梁では、製鉄会社が供給する桁高の高い対称なH形鋼をそのまま使うこともあります。板厚 の板幅寸法比などは、挫屈変形に対して合理的に決めた形状でカタログ化されています。しかし、合成 桁として設計する鋼桁は、極端に上下非対称なフランジ断面に設計します。鋼桁の設計に使う曲げモー メントは、合成前と合成後との二場面を考えます。通常、鋼桁自身と、コンクリート床版を含む大部分 の死荷重モーメント
M
dは、鋼桁だけで受け持つとして計算し、コンクリート床版が硬化した後、活荷 重の総てと、後から施工する部分的な死荷重分を合成後モーメントM
vとして合成断面で持たせます。細かいことを言えば、コンクリートを打ち込む際の形枠工は合成前の死荷重に含ませますが、形枠を外 すときは合成断面に対して負の死荷重を作用させる、と計算します。合成断面は、コンクリート断面を 1/nに換算して鋼断面に繰り込みます。この場合、どの幅員範囲のコンクリート床版を鋼断面と一体化 するか、また、nの値を幾らにするか、で多くの問題があるのですが、これは後の節で解説します。
図 8.2: 合成桁鋼断面提案に使うモデル
8.3.3 断面提案は実用的な近似式を使うこと
合成桁は、鋼桁の断面決定が一つの大きな問題です。実践的には試行錯誤の繰り返ししかありません。
解析的には、図 8.2 のように簡略化したモデルを考え、合成後の鋼桁上下フランジ応力度を未知数x、
yと置きます。これが分かれば、先の式(1)(2)の問題と同じです。x、yを求める式を正直に誘導する と、x、yの4次式を解かなければなりませんので、一意の解析解の提案ができません。このような難 問を解決するには、コンピュータに試行錯誤のループ、例えばニュートン法、でプログラミングをする のが賢い方法です。しかし、プログラミング経験が未熟であった頃は、とにかく、一意に解が得られる 実践式を工夫し、その式を使って手計算をするか、その式でプログラミングすることを考えました。合 成桁の断面提案問題を研究して実践的な断面決定法にまで昇華させたのは、高島春生、佐藤悟「活荷重 合成桁の鋼桁断面決定法」工学研究 12 巻 19 号、S38 年5月、pp.270-276 であって、極めて評価の高 い方法です。ここでは、その提案式を紹介します。数値計算は、Pbasic でプログラミングしましたので、
リストと計算結果を例示します。
入力条件(通常は、総て正の数値で表す約束です。単位系は実務の習慣で変わります)
M
d 合成前に鋼桁に作用する曲げモーメント(kgf-cm)M
v 合成後に構成断面に作用する曲げモーメント(kgf-cm) σta 下フランジ引張許容応力度(kgf/cm2)σca 上フランジ圧縮許容応力度(kgf/cm2)(圧縮と断って正の数値を使います)
h
腹板の桁高(cm)d
上フランジとコンクリート床版の重心位置間の距離(cm)A
w 腹板の断面積=ht
(cm2)A
c あらかじめ、コンクリート床版の断面積をnで割った値で使用(cm2) 計算途中パラメータの計算(島田静雄、高木録郎「新版合成桁の理論と設計」山海堂S63、p92)(6) 6 1
1
1 6
(5) ) 1 (
(4) 6
(3) 6
2 2 2
2
L L
L L
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝ ⎛ +
⎟ +
⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛ −
+
⎥ ⎦
⎢ ⎤
⎣
⎡ ⎟ −
⎠
⎜ ⎞
⎝ ⎛ +
−
= +
=
⎥ ⎥
⎦
⎤
⎢ ⎢
⎣
⎡ ⎟
⎠
⎜ ⎞
⎝ + ⎛ + +
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
=
⎥ ⎥
⎦
⎤
⎢ ⎢
⎣
⎡ ⎟
⎠
⎜ ⎞
⎝ + ⎛ + +
=
h A d y A
h M
A y h d h A d h M x
KL K
y
h A d A
h M M
h A d L
h A d A
h M M
h M K
c w ta
d ca
w c
v
ta c
ca w v d
c
ta c
ca w v d
ta v
σ σ
σ σ
σ σ
σ
求める数値(パラメータの表し方が少し違いますが、式(1),(2)と同じです)
⎪ ⎪
⎩
⎪ ⎪
⎨
⎧
⎟⎟ ⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
−
− −
− −
=
⎟⎟ ⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
−
− −
− −
=
(8) 6 2
) ) (
(cm
(7) 6 2
) ) (
(cm
2 2
L L
y x A
y h
A M
x y A
x h
A M
ta ca w
ta d L
ca ta w
ca d u
σ σ σ
σ σ σ
引張側フランジ断面積
圧縮側フランジ断面積
ここで得られた所要フランジ断面積を元に、具体的にフランジの板幅と板厚を決定します。その断面 積は、提案数値と若干異なるのが普通です。決定断面を使って応力度の計算をして、それが許容応力度 以内であることを確認するのが断面計算法です。計算結果と許容応力度の差が大きければ、決定断面の 寸法を少し変えて試行し、最初の提案計算法のところまでは戻らないのが普通です。ただし、曲げモー メントや許容応力度を変えると、どの程度断面積が変化するかの傾向を調べる目的には使うことができ ます。
表2:式(3)~(8)を使った Pbasic のプログラムと実行例 list
10 rem 合成桁断面提案"Composite.txt"
20 rem 計算条件 30 defdbl M
40 Md=26820000 :rem 死荷重モーメント(kgf-cm) 50 Mv=24900000 :rem 合成後モーメント(kgf-cm) 60 Sca=1900 : rem 圧縮許容応力度(kgf/cm^2) 70 Sta=2100 : rem 引張許容応力度(kgf/cm^2) 80 h=160 : rem 腹板高さ(cm)
90 d=13.5 : rem 床版重心高さ(cm) 100 Aw=h*0.9
110 Ac=300*22/7 : rem n=7 120 rem パラメータ計算
130 P1=(Md+Mv)/h+Aw*Scs/6+Ac*Sta*d*d/(h*h) 140 PK=Mv*Sta/(h*P1)
150 PL=Ac*d*d/(h*h*P1) 160 y=PK*(1+PK*PL)
170 P2=((Md/h+Aw*(Sta-y)/6)/Sca)+Ac*(1+d/h)(1+d/h) 180 x=(Mv/h-(Ac*(1+d/h)*d/h-Aw/6)*y)/P2
190 rem 上下フランジ断面を決定する 200 Sc=Sca-x : St=Sta-y
210 Ac=Md/(h*Sc)-Aw*(Sc+Sc-St)/(6*Sc) 220 At=Md/(h*St)-Aw*(St+St-Sc)/(6*St) 230 print "圧縮フランジ断面積= ";Ac 240 print "引張フランジ断面積= ";At 250 end
run
圧縮フランジ断面積= 58.9903638340975 引張フランジ断面積= 141.848642391701
Pbasicプログラム文の解説
このリストは、BASICインタプリタ形式で動作するPbasicの プログラム文です。行番号ラベルが付いた部分がそうです。
これはテキストファイルとして作成してあって、loadコマ ンドでディスクから読み出します。listコマンドでコンソ ール画面にリストを書き出し、次いでrunコマンドで実行さ せます。計算結果は、続けてリストされています。これら のプログラムは、例題として作成しましたので、計算条件 などは、ステートメントに組み込んであります。別の条件 で計算したければ、条件部分をテキストエディタで書き換 えます。元のディスクのテキストファイルを使ってもよく、
またPbasicのテキスト編集機能を使っても変更できて、す ぐに実行できます。