第 3 章 表面活性化常温接合を用いた素子加工とワイヤーグリッド偏光子の耐久性向上 31
4.2 格子形状の設計
本節では,高回折効率を得るために,RCWA解析を用いて行った格子形状の設計について述 べる.図 4.2に,透過型回折格子の概略図を示す.超短パルスの持つスペクトル幅は広いため,
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図4.3 透過型回折格子の概略図
中心波長λoを設計対象の波長とする.図のように,入射角φinで入射光は,1次回折角φ+1 で 透過回折する.入射角φinと1次回折角φ+1 が同じとなるような配置にすることで,高い回折 効率を得ることができる.この配置を,リトロー配置という.(1.1)式で示した回折格子の式に 対して,1次透過回折光は,
sinφin+ sinφ+1 = λ0
p , (4.1)
φin=φ+1 を満たす.上式より,入射角φinは,
φin =φ+1 = sin−1 (λ0
2p )
(4.2) である.1次回折光の回折効率を高めるためには,2次以上の高次透過回折光が発生しないよう な周期pにする必要がある.入射角φin = sin−1(λ/2p)における,2次透過回折光の回折格子の
46 第4章 スティッチング露光を用いた大面積素子化と大面積高効率透過型回折格子
式は,
sinφin+ sinφ+2 = 2λ0
p , (4.3)
sinφin= λ0
2p
となり,このとき,sinφ+2が1より大きくなければならない.(4.4)式を変形し代入すると,
sinφ+2 = 3λ0
2p >1, (4.4)
p < 3λ0 2
が得られる.周期pが波長オーダーとなり,回折効率の計算にはスカラー解析は適さないため,
RCWA解析により回折効率を求めた.入射光の偏光は,電場成分が入射面に垂直に振動する TE(s)偏光とし,空気と基板の境界には理想的な無反射(Anti-Reflection: AR)膜が施されてい るとする.
第一の例として,チタンサファイア (Ti:Sapphire) の増幅媒質で効率良く励起する波長 λ0=800 nmにおいて,周期p=575 nmの透過型回折格子を対象とした.図 4.2 に,溝深さと
図4.4 波長λ0=800 nm,周期p=575 nmでの,溝深さとデューティー比に対する回折効率RCWA解析結果
デューティー比に対する回折効率のRCWA解析で求めた結果を示す.この結果より,溝深さ h=1.16 µm,デューティー比f=0.49の格子形状において,回折効率は最大ピークを得られる ことが分かる.このとき,入射角φin = 44.08◦ で回折効率は96.9%である.
第二の例として,同じチタンサファイア媒質での励起波長波長 λ0=800 nmにおいて,周期
p=800 nmの透過型回折格子を対象とした.第一の例と比べて分散性は低くなるが,更なる高
図4.5 波長λ0=800 nm,周期p=800 nmでの,溝深さとデューティー比に対する回折効率RCWA解析結果
で求めた結果を示す.この結果より,溝深さh=1.38 µm,デューティー比f=0.5の格子形状に おいて,回折効率は最大ピークを得られることが分かる.このとき,入射角φin = 30◦で回折効 率は98.1%である.
第三の例として,イットリウム添加光ファイバー(Yb)の増幅媒質で効率良く励起する波長 λ0=1030 nmにおいて,周期p=575 nmの透過型回折格子を対象とした.図 ??に,溝深さと
図4.6 波長λ0=1030 nm,周期p=575 nmでの,溝深さとデューティー比に対する回折効率RCWA解析結果
デューティー比に対する回折効率のRCWA解析で求めた結果を示す.この結果より,溝深さ
48 第4章 スティッチング露光を用いた大面積素子化と大面積高効率透過型回折格子
h=1.22 µm,デューティー比f=0.48の格子形状において,回折効率は最大ピークを得られる ことが分かる.このとき,入射角φin = 63.59◦ で回折効率は92.3%である.
表4.1 透過型回折格子の製作指標
λ p f h φin
Wavelength Period Duty cycle Groove depth Incident angle Diffraction efficiency
800 nm 575 nm 0.49 1.16µm 44.08◦ 96.9%
800 nm 800 nm 0.5 1.38µm 30◦ 98.1%
1030 nm 575 nm 0.48 1.22µm 63.59◦ 92.3%
以上のことから,本節では,表 4.1に示すように,チタンサファイア媒質(λ=800 nm)での周 期p=575 nm,800 nmの透過型回折格子,イットリウム添加光ファイバー媒質(λ=1030 nm)
での周期p=800 nmの透過型回折格子のそれぞれにおいて,RCWA解析によって,回折効率が
最大となる格子形状を導出した.