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3.2.1.データの収集 (1) 試験圃場

マルチスペクトル画像の撮影及び LAI などの地上計測は,図 3-1に示す日本の宮城県 仙台市の沿岸地域 (東経140 度 58 分 14 秒,北緯38 度 13 分 2 秒) に位置する8つの 水稲圃場において2ヵ年 (2017年,2018年) にわたり実施した.水稲圃場の面積はいずれ

も約0.9 ha であった.LAI を地上計測する試験区を水稲圃場毎に20区,合計で160区設

定した.

各年における栽培履歴に関する情報を表 3-1に示す.2017年及び2018年の両年で栽培 した品種‘ひとめぼれ’は宮城県の主力食用品種であり,2018年に Field 7及び8で栽培 した‘だて正夢’と‘まなむすめ’はいずれも‘ひとめぼれ’を交配親もしくは交配祖先 とした品種である44)

3-1 宮城県仙台市に位置する実験で用いた水稲圃場.左図は国土地理院の電子国土基 本図 (オルソ画像)32) から引用した図.右図は2018719日に UAV を用いて 撮影したマルチスペクトル画像から作成した反射率画像であり,この画像が持つ緑,

赤,近赤外波長帯を BGR に割り当てて表示した (フォルスカラー表示)

3-1 2017年及び2018年における水稲圃場の栽培履歴など

項目 2017 2018

品種 ひとめぼれ Field 1 - 6 : ひとめぼれ Field 7 : だて正夢, Field 8 : まな娘 作付け方法 Filed 1 - 4 : 直播, Field 5 - 8 : 移植

植栽密度 条間: 30 cm, 株間: 20 cm

作付け日 Field 1 - 4 : 5月6~8日 Field 5 - 8 : 5月14~16日

Field 1 - 4 : 5月6~8日 Field 5 - 8 : 5月18~20日 出穂最盛期 8月11日頃 8月10日頃

収穫日 9月20,22日 9月18日

元肥 40 kg / 10a (N - P - K, 12 % - 22 % - 20 %)

追肥 なし Field 1,2 : 5 kg / 10a (N - K, 20 % - 10 %)

Field 4 : 10 kg / 10a (N - K, 20 % - 10 %)

(2) 空撮画像

空撮画像は,UAV を用いて水稲圃場1から4と5から8の2回に分けて撮影した.UAV の 「Solo」 を用い,マルチスペクトルセンサの 「Sequoia」 を搭載して撮影を行った.UAV は水稲圃場上空60 m を飛行しながら水稲圃場全体を網羅するように約400枚の画像を撮 影した.撮影画像1枚あたりの撮影範囲は0.4 ha であった.全ての画像は進行方向及びそ の直角方向に隣り合う画像同士が70 % ~ 85 % オーバーラップするように撮影間隔を設 定した.撮影した画像を,画像処理ソフトウェア 「Pix4D mapper」 を用いて1枚のオル ソ補正済みの反射率画像 (反射率が画素値として格納されている画像) に変換した.オル ソ補正済みの反射率画像への変換のために行った以下に示す各処理は,「Pix4D mapper」 に 予め処理パラメータ (表 2-3) を設定しておくことによって自動実行した.はじめに,各画 像中にほかの画像とマッチングするための特徴点を10000点以上抽出した.抽出した特徴 点に基づいて,自動空中三角測量とバンドル調整を行ってポイントクラウドを生成した.1 画素以下であることが推奨されている34)バンドル調整の平均再投影誤差は0.3画素以下で あった.センサの内部及び外部パラメータのキャリブレーションを行うために,カメラモ デル最適化を実行した.5 % 以下が推奨されている34)内部パラメータと最適化パラメー タとの相対的誤差は1 % 以下であった.ポイントクラウドから生成した DSM はオルソ補 正に用いられ,0.05 m の空間分解能を持つオルソ補正済みの反射率画像を生成した.反射 率への変換のために,地上において撮影開始時と終了時の両方のタイミングで撮影したキ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン タ ー ゲ ッ ト の 画 像 を 入 力 し た (表 23, Radiometric Calibration -Calibration).また,ラジオメトリック補正に関する設定 (表 23, Radiometric Calibration

-Correction Type) を行うことで,Pix4D mapperは太陽放射照度,ISO感度,シャッター速度,

F値などの情報を反射率の補正に使用する.オルソ補正においては,画像の位置あわせの ために GCPs を利用した.GCPs は各圃場の隅に設定し,その座標は日本の国土地理院が 公開する電子国土基本図の1つであるオルソ画像32)を参照して取得した.このオルソ画像 の位置精度35)と LAI の地上における手動計測時の測定位置のばらつきを考慮して,試験 区を中心とした3 m の直径を持つ円内の画素値を平均した値をその試験区の群落反射率 とした.なお,8月14日における圃場1から4については,画像取得時の不備によりオー バーラップが不足した結果,反射率画像をえられなかった.

(3) LAI

UAV による画像撮影の前日から翌日の間に,全試験区においてプラントキャノピーア ナライザー「LAI-2200」 を用いて LAI を地上計測した.LAI は1試験区につき2回計測 してその平均値を求めた.

(4) 日射条件と背景反射率

UAV による画像撮影時における日射条件と背景反射率を表 3-2に示す.入射光に占め る散乱光割合はErbs et al. (1982) の方法36)により算出した.この方法は,実際に観測した データに基づいて,全天日射量に含まれる散乱成分の割合を推定するために開発されたも のであり,全天日射量と大気外全天日射量を変数として用いる.全天日射量は,最寄りの アメダス (観測所名:仙台,試験圃場からの距離:8 km) が記録している全天日射量37)を 用いて,太陽天頂角については,水稲圃場が位置する位置座標 (図 3-1) と画像撮影日時を 用いて算出した45).背景反射率は反射率画像の水面が写っている箇所の画素値を抽出する ことで求めた.なお,8月14日の圃場1から4については,3.2.1 (2) で述べたように画像 が取得できなかったため対象外として記載していない.

3-2 各地上計測日における日射条件と背景条件.上段と下段はそれぞれ,圃場1から 45から8の値を示している.2018814日における上段の値は,マルチスペ クトル画像がえられなかったことから記載していない.

区分 パラメータ 2017年 2018年

6/20 7/6 8/2 6/22 6/28 7/10 7/19 8/14

日射条件

入射光に 対する 散乱光割合

0.17 0.23

0.22 0.34

0.98 0.98

0.17 0.43

0.85 0.66

0.17 0.17

0.40 0.91

-0.43

太陽天頂角 (度)

45.3 54.1

52.2 23.1

58.2 64.0

57.1 64.4

51.6 60.4

24.5 32.3

49.1 56.4

-27.0 植生群落 背景 0.10 0.06 0.10 0.04 0.06 0.11 0.10

-3.2.2.LAI の推定方法

(1) 収集データを用いた回帰手法

a) 植生指数のみを説明変数とする指数関数

オルソ補正済み反射率画像からえた群落反射率を用いて計算した植生指数と地上計測し た LAI を用いて,前者を説明変数,後者を目的変数とする LAI 推定式を回帰分析によっ て導出した.LAI 推定式の導出及び精度評価のいずれに対しても,全ての試験区のデータ

(n = 1200) を用いた.説明変数として用いる植生指数として,赤色波長帯及び近赤外波長

帯の群落反射率を用いて以下の式 3-1で定義される EVI213)を選択した.Hashimoto et al.

(2019) によれば,EVI2 は同じ波長帯の群落反射率を用いる SR11)と比べて日射条件の違

いに対する変動が小さく,NDVI9)と比べて LAI の増加に対して値が飽和しづらいため,

作物圃場における生育変化をモニタリングために適していると考えられる43)

1 4

. 2

) (

5 . 2 2

 

RED NIR

RED

EVI NIR3-1

ここで,NIR と RED はそれぞれ,近赤外波長帯及び赤色波長帯における群落反射率で ある.図 3-2に示すように UAV 画像から求めた EVI2 と地上計測した LAI の間に非線 形関係が見られたことから,式 3-2に示すように LAI 推定式として指数関数 (Exponential

Function : EF) を採用し,非線形回帰分析によって LAI 推定式を導出した.

1 ea2 EVI2

a

LAI  3-2

ここで,a1a2 は回帰式のパラメータである.

3-2 反射率画像からえられた EVI2 と観測した LAI の間の関係.縦軸と横軸はそれ ぞれ,観測した LAIEVI2 の値を示す.EVI2 は式 3-1で定義される植生指数 の1つである.

b) 日射条件及び背景反射率を説明変数に加えた重回帰

オルソ補正済み反射率画像からえた群落反射率を用いて計算した植生指数に加え,撮影 時の日射条件と背景反射率 (表 3-2) も説明変数とし,地上計測した LAI を目的変数とす る LAI 推定式を重回帰分析 (Multiple Regression : MR) によって導出した.LAI 推定式の 導出及び精度評価のいずれに対しても,全ての試験区のデータ (n = 1200) を用いた.LAI 推定式として式 3-3に示すような線形式を採用した.なお,3.2.2 (1) a)で示したとおり LAI と EVI2 の間には非線形関係が見られたことから EVI2 には指数変換を施した.

6 5

4 2 3

1 e 2 b SOIL b SUN b DIF b

b

LAI  bEVI        式 3-3

ここで,SOILSUN 及び DIF はそれぞれ,背景反射率,太陽天頂角及び散乱光割合で ある.また,b1b2b3b4b5b6 は重回帰式のパラメータである.

(2) シミュレーションデータを用いた機械学習手法

UAV の観測自由度は高いことから,さまざまな日射条件の下で画像撮影が行われる可 能性がある.このため,3.2.2 (1) b) で示した収集データを活用する回帰手法では,収集デ ータに含まれない日射条件などに対するロバスト性に課題があると考えられる.そこで,

さまざまな日射条件 (散乱光割合及び太陽天頂角) 及び群落条件 (背景反射率,LAI) にお いてシミュレーションした群落反射率を用いて学習データを作成し,機械学習によって LAI 推定モデルを導出した.学習データは,シミュレーション時に設定した散乱光割合,

太陽天頂角,背景反射率,LAI 及びシミュレーションされた近赤外波長帯における群落反 射率から成り,LAI を目的変数とし,それ以外を説明変数とした.ここで,波長帯として 近赤外波長帯を選択したのは,可視光と比べて個葉の反射率及び透過率 (以下,個葉反射 率などという) が大きく,LAI の増加に対して値が変化しやすいためである43).群落反射 率のシミュレーションには,大気や植生群落の放射伝達過程をモデリングするツールであ

る FLiES22),24)を選択した.FLiES は既往の研究において作物群落の反射率シミュレーシ

ョンに適用された実績がある14),31).FLiES では,日射条件と植生群落の条件をそれぞれ設 定することができる.前者には入射光に対する散乱光割合及び太陽天頂角,後者には群落 内における各植物個体の位置座標や高さ,個葉の反射及び透過率,背景反射率,樹冠内の LAD がある.機械学習に用いる学習データを作成するために,表 3-3に示すパラメータ の全ての組合せに対して FLiES による群落反射率のシミュレーションを行った.FLiES では,LAI ではなく LAD を指定してシミュレーションするため,学習データの目的変数 である LAI は単位面積に含まれる植物個体の体積,個体数及び LAD (表 3-3) を乗算する ことで求めた.FLiES では植物個体の形状を回転楕円体でモデリングしていることから,

個体の体積は株半径 (本研究では株間の2分の1の長さである10 cm と仮定) と草高 (表 3-3) から計算した.個体数は,条間と株間 (表 3-3) から求まる.

機械学習アルゴリズムには,代表的なアルゴリズムの1つであるサポートベクター回帰 (Support Vector Regression : SVR) 46)~49) を 採 用 し た .SVR は サ ポ ー ト ベ ク タ ー マ シ ン

(Support Vector Machine : SVM) を回帰に適用したものである.FLiES で作成した学習デー

タを用いて SVR によって導出した LAI 推定モデル (以下,FLiES-SVR という) に対し,

全ての試験区 (n = 1200) における UAV による画像撮影時の日射条件及び背景反射率 (表 3-2) 及びオルソ補正済み反射率画像からえた群落反射率を入力することで LAI を推 定し,精度を評価した.SVR による LAI 推定モデルの導出と実行には,統計解析フリー

ソフトウェアであるR (Version 3.4.3) を実行環境として,kernlab パッケージの ksvm 関数 を用いた.ksvm 関数には表 3-4に示すパラメータを設定した.

3-3 さまざまな日射条件及び背景条件に対して反射率シミュレーションを行うために

FLiES に設定したパラメータの内容.

区分 パラメータ 設定内容 備考

日射条件

入射光に対する

散乱光割合 0.00,0.25,0.50,0.75,1.00 値域:0から1.

太陽天頂角 (度) 5,25,45,65,85 値域:0から90

植生群落 の条件

個葉の反射率 近赤外 : 0.40321 値域:0から1, 京都大学農学部

圃場において 2009年に測定.

個葉の透過率 近赤外 : 0.54573

背景反射率 NIR:0.01,0.1,0.2,0.3

値域:0から1, 観測した値 (表 3-2) に基づいて,その値 をカバーするように

設定.

LAD (m2m-3) 1,3,5,7,9,11,13,15 -

草高 (m) 0.1,0.3,0.5,0.7

2017年に試験圃場 において観測された 草高に基づいて,そ の値をカバーするよ

うに設定.

群落内での配置 (m) 条間 : 0.3 株間 : 0.2

試験圃場での 実際の植栽密度

3-4 統計解析フリーソフトウェア R において SVR を実行するために,ksvm 関数に 設定したパラメータ.

パラメータ

設定値

引数名 説明

type 解析手法 (分類,回帰など) eps-svr

kernel カーネル関数の種類 rbfdot

epsilon 損失関数のパラメータ 0.01

sigma カーネル関数 rbfdot において用いられるパラメータ 0.01

C 誤判別の許容度を示すパラメータ 5

cross 交差検証 (クロスバリデーション) の分割数 5

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