第 6 章 結論 111
B.3 状態密度
動関数uµ′ は実関数である。従って、
gpR(pi, pj)−gRp∗(pj, pi) =∑
µ′
−uµ′(pi)
[exp(ikµ′a)−exp(−ikµ′a) t
]
uµ′(pj)
=∑
µ′
−uµ′(pi)2isin(ikµ′a)
t uµ′(pj)
=∑
µ′
−uµ′(pi)i~vµ′
at2 uµ′(pj) とすることができる。ここで、(2.52)群速度
v= 1
~
∂E
∂k = 2ta
~ sin(ka) を用いた。これより、
ΣRp(i, j)−ΣRp†(i, j) = [
τp†gRpτp
]
ij−[
τp†gRp∗τp
]
ij
=−i∑
µ′
τp(pi, i)∗uµ′(pi)~vµ′
a uµ′(pj)τp(pj, j),
⇒ Γp = i 2
[
ΣRp −ΣRp† ]
(B.9) と(2.85)式を求めることができる。
を満たす。(B.10)式の右辺第2項は
∑
i>j
(tijc†icj+ h. c. ) =∑
i>j
(tijc†icj+t∗ijc†jci)
=∑
i>j
tijc†icj+∑
i<j
t∗jic†icj
=∑
i̸=j
(tij +t∗ji)c†icj
≡∑
i̸=j
t′ijc†icj
とできる。従って、ハミルトニアンは H =∑
i
εic†ici+∑
i̸=j
t′ijc†icj (B.12)
となる。
2.4節とは異なるが、遅延グリーン関数GRij(t)を次式で導入する、
GRij(t)≡ 1
i~⟨{ci(t), c†j(0)}⟩ϑ(t). (B.13)
ここで、⟨· · · ⟩は基底状態での期待値、ϑ(t)は階段関数を表している。c†i(t), ci(t)はそれぞ れHeisenberg表示でのサイトiの生成、消滅演算子である、
c†i(t) =eiHt/~c†ie−iHt/~. (B.14)
この遅延グリーン関数のFourier変換は GRij(ω) =
∫ ∞
−∞
dtGRij(t)eiωt =
∫ ∞
0
dtGRij(t)ei(ω+iδ)t, (B.15)
GRij(t) = 1 2π
∫ ∞
−∞
dtGRij(ω)e−iωt (B.16)
で与えられる。ここで、δ(>0)は収束因子である。
この遅延グリーン関数の運動方程式を求める。(B.13)式の両辺を時間微分すると i~∂
∂tGRij(t) =⟨{ci(t), c†j}⟩ ∂
∂tϑ(t) +⟨{∂
∂tci(t), c†j}⟩ϑ(t) (B.17) となる。∂ϑ(t)/∂t=δ(t)と反交換関係(B.11)より、右辺第1項は
• ⟨{ci(t), c†j}⟩ ∂
∂tϑ(t) =⟨{ci(t), c†j}⟩δ(t) =δijδ(t) となる。また、Heisenbergの運動方程式
i~∂
∂tA(t) = [A, H](t) (B.18)
より、右辺第2項は
⟨{∂
∂tci(t), c†j}⟩ϑ(t) = 1
i~⟨{[ci, H](t), c†j}⟩ϑ(t) となる。ここで、(B.12)式より
[ci, H] =∑
kεk[ci, c†kck]
| {z }
(A)
+∑
k̸=lt′kl[ci, c†kcl]
| {z }
(B)
,
(A) =∑
k
εk[ci, c†kck] =∑
k
εk
({ci, c†k}ck−c†k{ci, ck})
=∑
k
εkδikck =εici, (B) =∑
k̸=l
t′klδikcl = ∑
l(̸=i)
t′ilcl とできる。ここで、∑
l(̸=i) は l = i 以外の l で和をとることを意味している。以下では t′ii = 0として、和を制限なしに拡張する。結局右辺第2項は
• ⟨{∂
∂tci(t), c†j}⟩ϑ(t) = 1
i~⟨{εici(t), c†j}+{∑
k
t′ikck(t), c†j}⟩ϑ(t)
となる。以上をまとめると、(B.17)式は i~∂
∂tGRij(t) =δijδ(t) + 1
i~⟨{εici(t), c†j}+{∑
k
t′ikck(t), c†j}⟩ϑ(t)
となる。ここで、遅延グリーン関数の定義(B.13)を用いると i~∂
∂tGRij(t) =δijδ(t) +εiGRij(t) +∑
k
t′ikGRkj(t) (B.19)
と書ける。さらに、(B.19)式の両辺をFourier変換して整理すると
~ωGRij(ω) =δij+εiGRij(ω) +∑
k
t′ikGRkj(ω),
⇒ 運動方程式: (ε−εi)GRij(ω)−∑
k
t′ikGRkj(ω) =δij (B.20) を得ることができる。ここで、ε =~ωとした。
一方で、グリーン演算子Gˆを導入する、
(ε+−H) ˆG= 1. (B.21)
ここで、ε+ =ε+iδである。両辺を⟨i| · · · |j⟩ではさみ、完全性∑
k|k⟩⟨k|= 1を用いると
∑
k
⟨i|ε+−H|k⟩⟨k|Gˆ|j⟩=δij (B.22)
となる。これは(2.56)式と等価である。ハミルトニアンは(B.12)式なので、(B.22)式の左 辺の各項は
• ∑
k
⟨i|ε+|k⟩⟨k|Gˆ|j⟩=ε+⟨i|Gˆ|j⟩,
• ∑
k
⟨i|∑
l
εlc†lcl|k⟩⟨k|Gˆ|j⟩=∑
k
∑
l
εl⟨i|c†lcl|k⟩⟨k|Gˆ|j⟩
=∑
l
εl⟨i|l⟩⟨l|Gˆ|j⟩
=εi⟨i|Gˆ|j⟩,
• ∑
k
⟨i|∑
l̸=m
t′lmc†lcm|k⟩⟨k|Gˆ|j⟩=∑
k
∑
l̸=m
t′lm⟨i|c†lcm|k⟩⟨k|Gˆ|j⟩
= ∑
l̸=m
t′lm⟨i|l⟩⟨m|Gˆ|j⟩
=∑
m
t′im⟨m|Gˆ|j⟩
となる。以上より、
運動方程式: (ε+−εi)⟨i|Gˆ|j⟩ −∑
k
t′ik⟨k|Gˆ|j⟩=δij (B.23)
を得る。2つの運動方程式(B.20)式、(B.23)式より、GRij(t) =⟨i|Gˆ|j⟩なので、遅延グリー ン関数GRij(t)はグリーン演算子Gˆ から求めることができる。
ハミルトニアンを対角化して H =∑
µ
ϵµa†µaµ (B.24)
とできるとする。このとき、
a†µ =∑
iuµic†i
で、i-表示(空間表示)からµ-表示(スペクトル表示)へのユニタリ変換となっている。a†µ, aµ の交換関係は
{aµ, a†ν}=∑
ij{uµi∗ci, uνjc†j}=∑
ijuµi∗uνjδij
=∑
iuµi∗uνi =δµν, (B.25)
{aµ, aν}= 0, {a†µ, a†ν}= 0 (B.26)
となっている。このとき、遅延グリーン関数は GRµν(t) = 1
i~⟨{aµ(t), a†ν}⟩ϑ(t) = 1 i~
∑
ij
uµi∗uνj⟨{ci(t), c†j}⟩ϑ(t)
=∑
ij
uµi∗uνjGRij(t) (B.27)
となる。ここで、
⟨{aµ(t), a†ν}⟩=⟨eiHt/~aµe−iHt/~a†ν⟩+⟨a†νeiHt/~aµe−iHt/~⟩
=⟨aµa†ν⟩e−iϵνt/~+⟨a†νaµ⟩e−iϵµt/~
=δµνe−iϵµt/~− ⟨a†νaµ⟩e−iϵνt/~+⟨a†νaµ⟩e−iϵµt/~
=δµνe−iϵµt/~ (B.28)
となるので、遅延グリーン関数のFourier変換は GRµν(ω) =
∫ ∞
−∞
dtGRµν(t)eiωt = δµν
i~
∫ ∞
0
dte−iϵµt/~ei(ω+iδ)t
= δµν
ε−ϵµ+iδ (B.29)
となる。ここで、階段関数ϑ(t)に対して、
ϑ(t) = {
0 (t < 0)
limδ→0+e−δt (t > 0) (B.30)
であることを用いた。
状態密度は ρ(ε) =∑
µ
δ(ε−ϵµ) (B.31)
と定義される。従って、超関数の関係式 1
ε−ϵµ+iδ =P 1
ε−ϵµ −iπδ(ε−ϵµ) より、(B.29)式を用いると、
ρ(ε) =−1 π
∑
µ
ImGRµµ(ε) =−1 πIm[
TrGR(ε)]
(B.32) として遅延グリーン関数の虚部から状態密度を求めることができる。
ここで、状態密度を慣例に従いρ(ε)としたが、2.5節では、ナノ構造の接合部Cの状態密 度としてD(E)の記号を用いる。
補遺 C
2 準位を持つ量子ドットの計算
本補遺では、グリーン関数を導入して2準位を持つ量子ドットにおける電気伝導度や状態 密度、自由エネルギーを導出する。
2準位を持つ量子ドットに伝導チャンネルを1 つずつ持つリード N 本がトンネル結合 Vα,j (j = 1,2) によって接続されている系を考える。ハミルトニアンは
H =Hdot+Hlead+HT, (C.1)
Hdot =∑
j,σ
εjd†jσdjσ, (C.2)
Hlead=∑
α
∑
kσ
εka†α,kσaα,kσ, (C.3)
HT =∑
α
∑
kσ
(Vα,jd†α,jaα,kσ+ h.c.) (C.4)
で与えられる。ここで、d†α,j, dα,j はそれぞれ状態|j⟩、スピンσ の生成、消滅演算子で、
a†α,kσ, aα,kσ はリードα 中の状態k、スピンσ =±にある伝導電子の生成、消滅演算子であ る。HT はドットとリードのトンネル結合を表すトンネルハミルトニアンでVα,j は量子ドッ ト中の状態 |j⟩ とリード α のトンネル結合である。3.2 節に従い、⟨r|j⟩ が実関数として、
Vα,j も実に取る。また、ハミルトニアンはスピンσに対角的なので、一旦スピンの添え字を 落とす。また、電子間相互作用は無視できるとする。以下では、H0 =Hdot+Hleadとする。
C.1 グリーン関数
系の遅延グリーン関数[(3.7)式] と非摂動グリーン関数はそれぞれ
(ε−H+iδ) ˆG= 1, (C.5)
(ε−H0+iδ) ˆG0 = 1 (C.6)
と定義される。ここで、δ は正の微小量である。ε+ =ε+iδとする。(C.5)式を
(ε+−H0) ˆG= 1 +HTGˆ (C.7)
と式変形して、両辺の左側からGˆ0を掛けると
Gˆ0(ε+−H0) ˆG= ˆG= ˆG0+ ˆG0HTGˆ (C.8) とできる。ここで、(C.7)式の両辺を⟨i|と|j⟩で挟む。⟨i|A|j⟩=Ai,j と表記すると、
ε+Gˆi,j −∑
l⟨i|H0|l⟩Gˆl,j =δij +∑
αk⟨i|HT|αk⟩Gˆαk,j (C.9) となる。また、⟨αk|と|j⟩で挟むと
(ε+−εk) ˆGαk,j =∑
i⟨αk|HT|i⟩Gˆi,j. (C.10)
ここで、⟨i|HT|αk⟩=Vα,i なので、(C.9)式、(C.10)式より、
∑
l
(ε+δil− ⟨i|H0|l⟩)Gˆl,j =δij +∑
αk
∑
lVα,i
Vα,l
ε+−εk
Gˆl,j
=δij +∑
l
Σˆi,lGˆl,j (C.11)
とできる。ここで、Σˆi,l ≡ ∑
αkVα,iVα,l/(ε+−εk) は自己エネルギー行列の行列成分であ る。自己エネルギーはトンネル結合による線幅とΣˆj,l = −iΓˆj,l という関係がある。線幅行 列の行列成分Γˆj,lは
Γˆj,l ≡i∑
αk
Vα,jVα,l ε+−εk
=i∑
α
∫
dε′να(ε′)Vα,jVα,l ε+−ε′
=i∑
αVα,jVα,l
∫
dε′να(ε′) [
P 1
ε−ε′ −iπδ(ε−ε′) ]
≃π∑
ανα(ε)Vα,jVα,l (C.12)
と計算される。ここで、να はリードα中の状態密度である。式中のP は主値積分を意味す る。ただし、この項はハミルトニアンH0 のエネルギー原点をシフトするだけなので無視し た。線幅行列Γˆ を用いて(C.11)式を行列表示すると、
(
ε+ˆ1−Hˆ0+iΓˆ
)Gˆdot= ˆ1 (C.13)
として量子ドットのグリーン関数(の行列)が求まる。
次に、リードのグリーン関数を求める。(C.7)式を⟨αk|と|βk′⟩で挟む。省略のために リードの添え字α, βをkに含ませると、
(ε+−εk) ˆGk,k′ =δk,k′ +∑
jVk,jGˆj,k′. (C.14)
また、⟨j|と|k′⟩で挟むと、
∑
l
(ε+δjl− ⟨j|H0|l⟩)Gˆl,k′ =∑
kVk,jGˆk,k′ (C.15)
=∑
kVk,j
( δk,k′
ε+−εk
+∑
l
Vk,l ε+−εk
Gˆl,k′
)
(C.16) とできる。(C.16)式を行列表示し、整理すると
(
ε+ˆ1−Hˆ0+ ˆΓ
)Gˆk′ = Vk′
ε+−εk′
(C.17) となる。ただし、このGˆk′ とVk′ は量子ドットの準位j に対するベクトル、または(N ×1) の行列である。(C.17)式の左辺の行列は量子ドットのグリーン関数Gˆdot の逆行列である。
従って、(C.17)式を(C.14)式に適用すると、
(ε+−εk) ˆGk,k′ =δk,k′ +VkT (Gˆdot
) Vk′
ε+−εk′,
⇒ Gˆk,k′ = δk,k′
ε+−εk
+ VkT ε+−εk
(Gˆdot
) Vk′
ε+−εk′
(C.18) これがリードのグリーン関数である。これは自由エネルギーの計算に用いる。