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スピン依存電気伝導度

ドキュメント内 慶應義塾大学大学院理工学研究科 (ページ 83-87)

第 4 章 磁場中の量子ドット 79

4.3 スピン依存電気伝導度

磁場中の2準位モデルにおける電気伝導度(4.5)より、リードS からスピン偏極していな い電子が入射されたときのリードD1におけるスピン偏極電流を調べる。

零磁場の場合(b = 0)、2端子系ではgn,(2)± 中のトンネル結合による線幅Γα の項が0とな る。そのため、2乗により電気伝導度のスピン依存性が消え、スピン偏極は得られない。し かし、磁場がある場合(b̸= 0)は2端子系においてもgn,(2)± がスピンに依存する。これは 3 端子系におけるΓD2(eD1×eD2)z(eS×eD2)zと磁場中における(b/2)(eS×eD1)z が同じ役 割を果たし、SO相互作用によるスピンに依存した準位混成が軌道磁性による準位混成との 干渉によってスピン依存性が生き残るためである。従って、軌道磁性についての大きなスピ ン偏極が得られる条件は

4’. SO相互作用と軌道磁性による準位混成の大きさが同程度: ∆SO ∼b

0 0.6 0.1 (a)

(b)

(c)

(d) 0 0 0.1

0.6 (a’)

(b’)

(c’)

(d’) 0.8 0.6

0 0 0

0 0.8

0 0.8

-3 -2 -1 0 1 2

3 3 2 1 0 -1 -2 -3

G

1

,+ − ( e

2

/ h )

4.1 磁場中の量子ドットの2準位モデルにおけるスピン依存電気伝導度G1,± の計算 結果。2準位の平均準位ε¯= (ε1+ε2)/2 をゲート電圧によって掃引した場合に電流ピー クが得られている。hSOの方向をスピン量子化軸として、スピンσ =±1に対して赤実線 G1,+、青破線はG1,−を示している。準位間隔は∆ =ε2−ε1 = 0.2Γ (左図)Γ( )。リードSD1へのトンネル結合は変えず、その線幅はそれぞれΓS= ΓD1 Γで固 定されている(eS,1/eS,2= 1, eD1,1/eD1,2 =2/3)。磁場は(a) b = 0.02Γ(b) 0.1Γ (c) Γ、および(d) 2Γと徐々に強くしていく。SO相互作用の強さはSO = 0.2Γ

となる。このとき、2端子系においてもスピン偏極の生成を「スピンホール効果」として議 論できることが分かる。

リードの本数が2本の場合 (N = 2)の場合を考える。スピン偏極電流の条件について調 べるため、3.3節と同様、典型的なパラメータの値を想定し、スピン依存電気伝導度G1,±を 計算する。図4.1と図4.3は2端子系の量子ドットにおいて、平均準位ε¯= (ε1+ε2)/2 を ゲート電圧によって掃引したときのリードSからD1へ電気伝導度で、それぞれトンネル結 合のパラメータeD1,1eS,1eD1,2eS,2が異なる符号を持つ場合と同符号の場合の結果を示し ている。ここで、トンネル結合による線幅は対称となるようにとっている(ΓS = ΓD1 Γ)。

0 0.3

-3 -2 -1 0 1 2

3 3 2 1 0 -1 -2 -3

(a) (b)

G

1,+

G

1,−

( e

2

/ h )

4.2 磁場中の量子ドットの2準位モデルにおけるスピン偏極電流[(G1,+−G1,)] 平均準位ε¯= (ε1+ε2)/2 をゲート電圧によって掃引した場合の計算結果を示している。

スピン量子化軸の向きはhSO である。準位間隔は(a) ∆ = ε2−ε1 = 0.2Γ(b) Γ リードSD1へのトンネル結合は変えず、その線幅はそれぞれΓS = ΓD1 Γ で固定さ れている(eS,1/eS,2 = 1, eD1,1/eD1,2 =2/3)。磁場はb= 0.1Γ(赤実線)Γ(緑破線) 2Γ(青点線)と徐々に強くしていく。SO相互作用の強さはSO = 0.2Γ

InAs量子ドットの実験において∆SO 0.2meV なので [63, 64, 66, 67, 70]、Γ 1meVよ り、SO相互作用の強さを∆SO = 0.2Γと固定する。3.3節で、リードD2へのトンネル結合 による線幅ΓD2 に対するスピン偏極電流の振る舞いを調べたことに対応して、軌道磁性のパ ラメータbに対するスピン偏極電流の振る舞いを調べる。

図4.1は準位間隔が∆ = 0.2ΓとΓの場合の電気伝導度G1,± を平均準位ε¯の関数として 示している。図4.1(a)において、G1,± は1つのピーク構造を示している。前章で議論した ように、b= 0の場合はG1,+ =G1,となり、スピン偏極は得られない(図には示していな い)。磁場を印加すると、G1,+G1, に差が現れ、ピーク近傍でその差が増大する。磁場 を強くするにつれてピーク近傍におけるG1,+−G1, も増大し、b∼SOのときに最大の スピン偏極電流が得られる[図4.1(c)]。さらに磁場を強くしていくと、Gn,+−Gn,− は減少 する。以上のbに対する振る舞いは条件4’. と一致する。また、この振る舞いは∆ = Γ にお いても定性的に変わらない。

図4.2(a)、(b)にそれぞれ∆ = 0.2Γ とΓの場合のスピン偏極電流[(G1,+−G1,−)] を 示した。この「スピンホール効果」によるスピン偏極電流は準位間隔∆が線幅 Γ小さいと きに大きくなる。しかし、図4.2(a)と(b)を比較すると、∆ = Γにおいても大きなスピン偏 極電流が得られている。磁場をb≫Γにまで強くすると(モデルの適用範囲を超えるが)、軌 道磁性による準位反発によって電気伝導度が2つのピークを示す。電気伝導度が2つのピー クになることを反映して、スピン偏極電流も2つのピークを示すようになる。b= 2Γの場合

[図4.1(d)]、電気伝導度はまだ1つのピークのままだが、スピン偏極電流では2つのピーク

となっている。

-2 0

2 (a)

(b)

(c) 0

1

G

1

,+ − ( e

2

/ h )

0 1

0

1 1 0 -1

G

1,+

G

1,−

0 0.2

-0.2

1 -1

4.3 磁場中の量子ドットの 2準位モデルにおいて、“phase lapse” が起こる場合で のスピン依存電気伝導度G1,± の計算結果。平均準位ε¯= (ε1+ε2)/2 をゲート電圧に よって掃引している。hSO の方向をスピン量子化軸として、スピン σ = ±1に対して 赤実線はG1,+、青破線はG1,− を示している。準位間隔は∆ = ε2−ε1 = 0.5Γ。リー SD1 へのトンネル結合は変えず、その線幅はそれぞれΓS = ΓD1 Γ で固定さ れている(eS,1/eS,2 = 1, eD1,1/eD1,2 = 2/3)。磁場は(a) b = 0.1Γ(b) 0.5Γ(c) Γ と徐々に強くしていく。SO相互作用の強さはSO = 0.2ΓInset: スピン依存電気伝 導度の差(G1,+−G1,)。単位はe2/h。横軸は平均準位ε−εF)/Γである。それぞれ ΓD2 = 0.1Γ(赤実線)0.5Γ(緑破線)Γ(青点線) の場合の結果。

図4.3は零磁場において“phase lapse” が起きる場合の電気伝導度G1,±とその差G1,+ G1, である。ε¯をゲート電圧によって変えていくと、G1,± のピーク構造の中で、phase

lapseに起因した鋭いディップがε¯≈εF に得られる。このディップ近傍でスピン偏極電流が

増大している(図4.3のinset)。図4.3(a)では(b = 0.1Γ)、ディップにおいてG1,が強く 抑制されるために、スピン偏極P = (G1,+−G1,)/(G1,+ +G1,)が100% に近い値まで 増大している。

L QPC L QD

W

L QPC

S D

x y

4.4 2端子系量子ドットの模式図。量子細線に2つの量子ポイントコンタクトを導入 し、そのポテンシャル障壁によって量子ドット(グレーの領域)が形成されている。点線 で囲まれた領域をコンダクターと考える。

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