第 4 章 磁場中の量子ドット 79
4.4 ポテンシャル構造のある量子ドット
L QPC L QD
W
L QPC
S D
x y
図4.4 2端子系量子ドットの模式図。量子細線に2つの量子ポイントコンタクトを導入 し、そのポテンシャル障壁によって量子ドット(グレーの領域)が形成されている。点線 で囲まれた領域をコンダクターと考える。
G
1,+ − ( e
2/ h )
(a)
(b)
(c)
(d)
0.4 0.3 0.2
0 1 0 1 0 1 0 1
0.5
図4.5 2端子ナノ構造中に形成された量子ドットに対するスピン依存電気伝導度の数値 計算結果。量子ドットは量子細線に導入した2つの量子ポイントコンタクトによって形 成されている(図4.4)。図に示した結果はリードD1へのスピンσz =±1の電気伝導度 G1,+(赤実線)とG1,−(青破線)で、ゲート電圧Vgの関数として多数のピークを示してい る。ポテンシャル障壁の厚さと閉じ込め幅はそれぞれLQPC = λF、WQPC = λF であ る。高さはU0 = 0.85EF で固定する。一方、磁場の強さは(a)~ωc/EF = 2×10−4 か ら(b)10×10−4、(c)50×10−4、(d)100×10−4まで印加する。SO相互作用の強さは λ˜SO= 0.2。
に対応している [13]。Fermi 波長とリード中のFermi エネルギーはそれぞれ λF = W/3、 EF/t = 2−2 cos(2πa/λF) ≃ 0.382とする。このとき、リード内の伝導チャンネルの数は Nch = 6である(量子ドットの各準位に対して有効的に結合するチャンネル数はポテンシャ ル障壁のために、それぞれ1である)。ポイントコンタクトによるポテンシャルについて、その 厚さおよび閉じ込めの幅はそれぞれLQPC =λF、WQPC=λFとする。高さはU0 = 0.85EF
に固定する。磁場はxy平面に対して垂直方向に印加される。磁場は~ωc/EF ∼10×10−4
-1 0 1
0.36 0.34 0.3
G
1,+ − G
1,− ( e
2/ h )
0.32
図4.6 2端子ナノ構造中に形成された量子ドットに対するスピン偏極電流[∝ (G1,+− G1,−)]の数値計算結果。量子ドットは量子細線に導入した2つの量子ポイントコンタク トによって形成されている(図4.4)。ゲート電圧Vgを下げていき、共鳴トンネルによる 電流ピーク近傍でのリードD1 へのスピン偏極電流を示している。ポテンシャル障壁の 厚さと閉じ込め幅はそれぞれLQPC =λF、WQPC = λF である。高さはU0 = 0.85EF で固定する。一方、磁場の強さは~ωc/EF = 2×10−4(赤実線) から10×10−4(緑破 線)、50×10−4(青点線)、100×10−4(紫点破線)まで印加する。SO相互作用の強さは λ˜SO= 0.2。
程度の強さを考える*2。このとき、B ∼45mTである。InAsのg-因子を|g0| ≃10、有効質量 をm∗ ≃0.024me とすると、ZeemanエネルギーはEZ/EF = (g0µBB/2)/EF ≃0.6×10−4 となる。ここで、µB =|e|~/(2me)はBohr磁子、meは真空中の電子質量である。計算結果 より線幅をΓ ∼0.01EF と見積もると、Zeemanエネルギーは線幅に比べて十分小さく、無 視できる。また、接合部内のサイトにランダムポテンシャルwj,lを−0.1EF ≤wj,l≤0.1EF の範囲で導入している。以上のモデルで、図3.6中の点線で囲まれた領域をコンダクターと して電気伝導度を求める。
4.4.2 計算結果
図4.5 は磁場を印加していったときの 2 端子ナノ構造中に形成された量子ドットにお けるスピン σz = ±1 の電気伝導度 G1,± である。ゲート電圧 Vg 掃引すると、電気伝導 度は多数のピーク構造を示す。これは量子ドット内に形成された多数の離散準位を介し た共鳴トンネルを反映している。ただし、電子間相互作用を無視しているので、準位間隔 は小さく見積もられている。零磁場の場合、スピン偏極は得られない (G1,+ = G1,−; 図 には示していない)。図 4.5(a) においてもG1,+ とG1,− はほとんど重なっている。ここ
*22.4節で導入したPeierls位相とは2πB˜= [1−cos(kFa)](~ωc/EF)の関係が成り立っている。
で、複数の離散準位による電気伝導度のピークが重なり、干渉効果によって G1,± が複雑 な振る舞いをしている0.4 > eVg/EF > 0.3 の範囲に着目する。磁場を印加していくと、
0.4 > Vg/EF >0.3 においてG1,+ とG1,− の差が増大していく。一方、他の電気伝導度の ピークではG1,+ とG1,− がほとんど重なっており、その差は小さい。電気伝導度の振る舞 いから、線幅の大きさをおおよそΓ∼0.01EFと読み取ると、磁場によるサイクロトロンエ ネルギーが~ωc/EF = 50×10−4 程度においてG1,+−G1,− が0.5e2/h程度の大きな値と なる。図4.6は磁場を印加していったときの 0.37 > eVg/EF > 0.3の範囲におけるスピン 偏極電流[∝ (G1,+−G1,−)]を示している。スピン偏極電流は磁場にともなって増大する。
eVg/EF ≈ 0.35付近では、~ωc/EF = 50×10−4 程度の磁場に対してG1,+−G1,−が最大 となり、その後、減少していく振る舞いとなっている。これは2準位モデルでの議論と定性 的に一致する。