第 3 章 人口構造の変化が地域の疾患別需要に与える影響についての分析
3.1 背景
3.1.1 日本の人口動態変化の特徴
日本はこれまで国際的にも高い水準の少子高齢化に直面しながら、医療制度や医療現場 対応によって環境の変化に対応しており、先進国でも優れた医療提供体制を有する[]。しか し、近年では少子高齢化に加えて、人口減少と人口の都市部への移動を伴った変動が発生す ることが予測されており、新たな局面を迎える。
国立人口社会保障・人口問題研究所の人口推計によると、我が国の人口は 2015 年の 127,094,745 人から、2040 年の 110,918,555 人まで減少率 12.7%の水準で減少し、高齢化 率は 35.4%までに到達する(第1章、図 2)[1]。高齢化率の増加によって、必要な医療ニ ーズや医療資源確保に対する社会的要求の増大が見込まれるが、人口減少を伴った場合に、
中⾧期的に医療の需要はどのように変動していくのかについては未知の課題である。
さらに、都道府県内において、高齢化率のばらつきは増す傾向にあることが指摘される [1]。図 20 には 2015 年、図 21 には 2040 年における各都道府県別の市区町村における高 齢化率の Box-plot 図を示す。例として北海道において、2015 年では中央値:38.1%(95%
CI:23.5%-52.2%)であり、2040 年では中央値:46.7% (95%CI:31.2%-65.0%)であ る。このように中央値の上昇だけでなく、信頼区間の大きさが 28.7 から 33.8 へと増加して いるため、市区町村の分布を考えることにより、高齢化水準の上昇に加えて道内格差が拡大 していくと推察される。同様の傾向は、全都道府県において確認され、高齢化水準の上昇と 格差の拡大という課題は全都道府県共通の課題である。
また、人口減少においては、2040 年まで 1822 市区町村中 1710 市区町村で人口減少が発 生し、人口が半数以下になる市区町村が 564(31.0%)にも及ぶと予測されている(表 6)
[2]。人口規模で層別化した場合、規模が小さい集団ほど人口の減少率は大きく、人口急減 地域における医療提供体制のあり方について検討することが求められている。このような 資料は、診療報酬の項目別点数を議論する中央社会保険医療協議会でも、厚生労働省保険局 から共有され、人口減少がもたらす地域医療への影響が医療政策の意思決定プロセスにお いて可視化されている[3]。厚生労働省は地域医療構想の実現など、医療資源の少ない地域 における医療制度のあり方について、今後の議論に様々な問題提起をしているが、各地域に おける具体的な課題を明確化したデータや分析結果は乏しいのが現状である。
都道府県
北海道は中央値:38.1%
(95%CI:23.5%-52.2%)
市区 町村 別高 齢化 率
都道府県
北海道は中央値:46.7%
(95%CI:31.2%-65.0%)
市区 町村 別高 齢化 率
2040年までの
人口増減傾向 100万人以上 50~100万人 20~50万人 10~20万人 3~10万人 1~3万人 1万人未満 総計
人口増加 3 6 17 19 42 21 5 112
10%未満減少 6 8 36 34 63 21 12 180
10- 20%減少 2 10 25 59 98 40 21 255
20-30%減少 12 31 150 87 51 331
30- 40%減少 1 8 117 134 120 380
40- 50%減少 1 27 107 149 284
50- 60%減少 18 99 117 234
60- 70%減少 1 21 22 44
70以上減少 1 1 2
2015年人口規模
表 6:人口規模と人口減少率からみた市区町村数[2]