19 98年からいよいよ国際宇宙ステーションの建設が始まった。 この恒久的有人滞在 宇宙ステーションは組立完了後、10'"'-'15年の運用が計画されている。 これはまさに人 類の宇宙旅行時代の幕明けと言ってよい。 有人宇宙飛行にとって安全は要である。JEM は我が国が開発する初めての有人宇宙システムであり、有人安全設計思想をどう設計 として実現するかは、我が固としてチャレンジであった。 幸いにも国際宇宙ステーシ ョンは国際協力ということで計画が進められ、 有人宇宙先進国である米欧から多くの 刺激を受けながら開発を進めてきた。
特にJEM開発の中で蹟石・デブリ防護設計の確立は大きな課題の一つである。 従っ て、 開発を支援するために本研究にあるようないくつかのトピックスの解決が必要で
あった。
まず、超高速衝突現象を地上で再現するために飛朔体を約7km/secまで加速できる 2段式軽ガス銃を開発・製作した。 次にこれを用いて基本的なWhippleパンパ一、及 び防護能力を強化したスタッフィング入りWhippleシールドに対して超高速衝突試験 を行い、防護シールド設計に必要な各種パラメータの感度に係る知見を得た。 また、
試験を補うために、 計算機シミュレーションにより、バンパー衝突・貫通時の超高速 衝突現象の解明を行なうと共に、試験との比較・照合によりシミュレーション・モデ ルの精度について確信を得た。 次に、軽ガス銃では達成できない8'"'-' 1
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km/ s e cの超高 速度領域や、直径が 50及び 100mmの大きなデブリの衝突に対する防護シールドの性能 について研究を行った。さらに、成形爆薬により速度約11km/ s ec の衝突試験を行い、防護シールドの性能 を評価した。 この結果、成形爆薬では軽ガス銃で使用した中実アルミニウム球飛朔体 とは大きく異なる形状のジェットが生成されたので、飛朔体の形状が防護シールドの 性能に及ぼす影響について研究を行った。
最後にデブリ衝突により与圧壁に大きな貫通孔が生じたとして、そこからき裂が進 展して不安定構造破壊に至る限界き裂長を、弾塑性破壊力学により評価した。 これら 一連の研究により得た結果を次にまとめる。
第3章では、まず与圧部防護構造にWhippleバンパーを用いた場合の基本防護特性 を明らかにすると共に、デブリ 直径と速度をパラメータとした貫通限界データを取得 した。 また、与圧壁貫通に及ぼす飛朔体投射角の影響を、O。 と300 について研究し、
300 の方が貫通孔径が小さくなることを確認した。 次に、 軌道上で与圧壁に加わる応 力と同じ大きさの応力を与えた状態で衝突・貫通させても、与圧壁損傷に対して初期 応力の影響はほとんどないことを明らかにした。 しかしながら、付加応力を高くする と、飛淘体の衝突・貫通と共にき裂が瞬時に進展して供試体は破断することも明らか となった。さらに与圧壁剛性を高くするために設けるIso-Grid構造リフについて貫通 孔からのき裂の進展抑止効果を見極めた。 また、バンパーと与圧壁の間に断熱目的の
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MLI を設置すると、 与圧壁を貫通した場合のき裂が大きくなること、 このき裂を小さ くするためにはMLIはできるだけ与圧壁より離して設置する方がよいことを明らかに した。 これにはデブリクラウドの膨張効果が大きく寄与するという知見を得た。
スタッフィング入りWhippleシールドに対する超高速衝突試験では、 経験式として 与えられた貫通限界曲線と試験結果が6km/secまでの速度領域ではよく一致すること を確認した。また、前面バンパーと与圧壁の聞のスタッフィング設置位置については、
中央から与圧壁寄りが最も防護性能を確保できるという知見を得た。 これは前面バン パー衝突後に発生するデブリクラウドが十分に膨張するに必要な距離が確保できるた めであるという知見に基づくものである白 このことは、 断熱材MLIを前面バンパーの すぐ後に設置すると、 クラウドが膨張せず、 防護シールドの性能を大きく低下させる ことからも裏付けられた。
第4章では計算コードを用いてハイドロコード・ シミュレーションを行い、 まず、
貫通限界について第3章の試験データと6km/secまでの速度領域において、 比較・照 合した結果、 良く一致することを確認した。 これによりシミュレーションに用いたス タッフィング のモデル化に つ い て 確 信を得た。 次に軽ガス銃で は発生できない 8km/sec以上の速度領域について、 貫通限界を、 速度8、 10、 12、 及び14km/secの点 でシミュレーションにより求めた。これを経験式で与えられた貫通限界曲線と比較・
照合した結果、シミュレーションの方が経験的貫通限界曲線よりも防護性能が低いこ とが明らかとなった。 この速度領域のシミュレーションでは、 高速衝突に伴う気化現 象をモデル化 して取り込んだTillotsonの状態方程式を用いた。 この材料定数には NextelやKevlarの代わりにアルミニウムの値を用いていることから、 シミュレーシ ョンの精度に確信が得られなかった。 このため、 超高速衝突試験の追加実施が必要と 認識された。
一方、 大きなデブリが衝突した場合に受ける与圧壁の損傷を評価するために、 直径 が 50mmと100mmの固体球が速度14km/secで衝突した場合のシミュレーションを行っ た。 その結果、 この条件では与圧壁にデフリ直径50mmでは105mm、100mmでは170mm の貫通孔が発生し、 最大でもデブリ直径の約2倍程度になることを明らかにした。
第5章では第4章で課題として残った速度8km/sec以上の防護シールドの性能検証 を行うために、 速度約llkm/secの飛朔体を発生できる円錐形・成形爆薬(CSC)試験を 実施した。 その結果、 7回の試験全てが与圧壁を貫通する結果となった。 そこで、 こ れらのデータの詳細な解析を行い、 成形爆薬で生成されるジェットの形状が防護シー ルドの性能に大きな影響を及ぼすことを明らかにした。 この影響をより定量的に把握 する目的で、成形爆薬で発生するジ、エツトを模擬したcscモデルジェット、中空円筒、
及び中実球について、 これらが防護シールドに衝突、 貫通する時の現象をシミュレー ションして、 飛朔体の防護シールド構造貫通過程を詳細に解析した。この結果、 飛均 体の形状、 特に長さと直径(あるいは幅) の比L/Dと、 形状に依存して発生するデブ
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-リクラウドの形により、 防護シールドの性能が大きく異なることが明らかになった。
即ち、L/D の大きな細長飛朔体は前面バンパ一貫通後も固体デブリ片が残ったり、 あ るいはクラウドがあまり膨張しないで、 高いエネルギー密度で伝播してスタッフィン グ、 及び与圧壁まで貫通する。 一方、 中実固体球では、 前面バンパ一貫通後にデブリ クラウドが大きく膨張し、 これがスタッフィングを貫通する問に減速され、 与圧壁貫 通時には飛朔体のエネルギー密度は大きく低減することが明らかになった。この結果、
球対称形の中実球が最も防護が容易であるという知見が得られた。
今回のシミュレーションから、 スタッフィング入りWhippleシールドの貫通限界の エネルギー密度として、11J/mm2が得られた。 これから、 成形爆薬試験で発生したジェ ット(L/Dは約2.8から3.9)の場合、 速度llkm/secでは質量比で中実球の1/5�1/3 で与圧壁を貫通するものと推定された。
尚、 成形爆薬試験とシミュレーションの一致については、 前面パンパーとスタッフ ィングの損傷形状には大きな違いが見られた。 一方、 与圧壁の損傷については、 成形 爆薬試験の精度と飛期するジェット形状の不規則性を考えると、 両者の一致は良いと 判断された。 このことから、 第4章の8km/sec以上の速度領域におけるハイドロコー ド・シミュレーションの結果が保証できた。 さらに、 csc試験の飛淘体形状が不規則 であることが、 パンパー損傷に対して高い感度を持つという知見も得られた。
最後に第6章では、 大きなデブリ衝突により与圧壁に生じた貫通孔から、 き裂が急 速に進展して不安定構造破壊に至る限界のき裂長さを評価した。 この予備的評価とし て、 第3章で圧力容器のフープ応力を模擬したi軸応力下での動的破壊強度確認試験 によって、 データ取得を行った。 ここでは、 実機与圧部と同一材料の破壊靭性データ 取得を行うと共に、 有限要素モデルによる弾塑性破壊力学によりき裂先端のJ積分値 を計算し、 これから応力拡大係数Kを求め、 破壊靭性値との比較により、 限界き裂長 を得た。 円筒部の材料であるA12219-T87板材の破壊靭性値ではlOOMPaぷと、 上限に 近い大きめの値が得られた。 一方、 エンドコーン部の材料であるA12219-T851 の厚肉 試験片では小さめの平面ひずみ破壊靭性値KJC=34MPa rmが得られた。 これらのデータ を用いて限界半き裂長を評価すると、 エンドコーン部が最も短く、118�12 5mm となる ことが明らかになった。
本研究により、 宇宙ステーションJEM与圧部のデブリ防護シールドに対する高速衝 突現象とその防護設計に係る多くの知見が得られた。 さらに、 成形爆薬試験結果の解 析とそのハイドロコード・シミュレーションの実施により、 デブリ形状の影響による 防護性能に関して中実球が最も安全側であるという知見を得た。 これは、 設計要求が アルミニウム中実球であることから、 当初は想定していなかった問題であった。 さら に、 宇宙有人与圧構造の破壊力学的安全性評価手法を確立できた口