5. 1 緒 言
第3章と4章では防護性能の評価を、2段式軽ガス銃による試験とハイドロコード・
シミュレーションを用いて進め、 スタッフィング入りWhippleシールドについてデブ リ速度6km/sec まではその性能を検証した。 残る課題は、 7
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km/ s e cの速度範囲に おける防護シールドの性能評価である。 そこで、 ハイドロコード・シミュレーション に加えて、飛朔体を11 km/secまで加速できる成形爆薬を加速装置として用いた試験を 実施した(5-1)。 その結果、 いずれの場合もChristiansen らが与えたアルミ固体球に対 する経験的貫通限界曲線(5-2)に比べて、防護シールド性能が低いという結果が得られた。この速度領域のハイドロコード・シミュレーションでは、 使用したTillotsonの状態 方程式に対して、 2 段目パンパーのスタッフイング材として用いたNextel とKevlar の材料特性が取得されていないので、 第4章ではアルミニウム材料の特性を代わりに 用いた。 このため、 シミュレーション結果に確信が得られていない。
一方、 成形爆薬の加速で飛行するジェットの形状はガス銃で用いるアルミニウム製 模擬デブリのような中実球ではなく、 中空円筒に近い矢じり状であり、 また衝突角度 を垂直に制御することも困難である。 さらに、材料も高温で固体と気体の混相であり、
飛行距離によって形状と質量が変化する。 従って、 これらがバンパーに衝突した場合 に与える損傷の度合も固体球とは異なることから、 成形爆薬による試験結果の解釈に おいて、 ジェットの形状や密度、 並びに材料の相変化を考慮することが重要であるこ とが示唆された。
既に述べたように、 国際宇宙ステーション計画では、設計基準とするデブリ形状を、
密度 2.8g/ cm3のアルミニウム中実球として、 これが衝突しでも与圧壁を貫通しない確 率、PNP値を与えてこれを満足する防護バンパーを設計し、 検証することを要求して いる。 しかしながら現実の宇宙デブリは、 人工衛星やロケットの爆発・衝突で生じた 破片であることから、 様々な形状や密度を持っていることは、 その生成過程や観測あ るいは捕捉されたデータから明らかでる。 従って、 デブリ形状がバンパーの防護性能 にどう影響するかを評価することは、 単に成形爆薬試験結果の解釈以上に重要な課題 となる。
Christiansenら(5-3)は衝突するデブリの形状効果を研究し、同じ質量の球形と非球形 (円筒形及び平板)を比べると、 非球形デブリの方が、1.2---2倍貫通能力が高いとい う結果を報告している。 また、 種々の形状や衝突角度を持ったデブリが一枚板に衝突 したときに発生するデブリクラウドの性質を実験的に調べた結果、 中実球が鉛直に衝 突する場合、 クラウドが最も良好に微細化され、 これにより破壊力が最も緩和される であろうとの実験的研究も報告されている(5-4)。
そこで、 成形爆薬試験データを注意深く解析し、 成形爆薬により生じるジェットの 特徴を明らかにすると共に、 スタッフィング入りWhippleシールドの防護性能に及ぼ
司《unHU
すデブリ形状の影響を評価した。
研究方法としては、 衝突現象の詳細な解釈に適したハイドロコード・シミュレーシ ョンにより、 成形爆薬試験で生成されるジェットの形状を模擬した飛朔体 (模擬ジ、エ ット ) を防護パンパーに衝突させてそのときの現象を解析した。 また、 単純な中空円 筒形や中実球形についてもシミュレーションを行い、 現象把握のための比較・対照デ ータとした。 さらにシミュレーションと成形爆薬試験結果の一致を確認することで、
シミュレーションの精度を保証することを試みた。
尚、 ジェットは高温で、 固体・気体の混相であるが、 その温度はアルミニウム材の 融点以下であるという成形爆薬分野の知識に基づき(5-5)、 この内部エネルギーによる貫 通性能への影響については今回の検討対象とはしていない。
5. 2 成形爆薬試験とその結果の考察
5. 2. 1 成形爆薬試験
成形爆薬は、 19世紀後半のC.E. Munroeの提案に起源があるとされているが、 その 後von Foers ter、 M. Neumannらによって特許申請などがなされ、 第2次世界大戦の聞 に急速に実用化が進められた。 この原理は爆薬が解放した化学エネルギーを円錐状の ライナーの運動エネルギーに変換し、 円錐中空部分に集中させ、 中心軸上でぶつかり 合う( co
11
apse) ことによって軸方向の大きな運動エネルギーに変換する。 成形爆薬 の原理の詳細については参考文献(5-6)に詳しい記述があるので参照されたい。本研究では、 ライナーの質量のかなりの割合を占める、 速度が遅く先端ジェットに は直接寄与しない“スラッグ( s
1
ug) "を取り除くためのインヒビター( i nh ib
i t 0 r)付き の成形爆薬を使用した。 用いた火薬はOctolを、 またライナーの材料として、 通常、銅、 モリブデン、 ニッケル等が用いられるが、 ここではより高速なジェットを得るた めにアルミニウムを用いたロ
試験に使用したインヒビター付き円錐形・成形爆薬(Conical S haped Charge : CSC) の形状を図5-1に示す。 この形状寸法は航空宇宙技術研究所(NAL)の戸田ら(5-7)による 研究をもとにして決められたもので、 質量1.3gの飛行体を速度約11km/secで飛ばす ことを目標に、 円錐角は30度、 ライナー板厚は 2.1mmとした。JEMで採用を検討し、
評価の対象とした防護シールドの構造を図5-2に示す。 供試体は4. 2節で評価した案 4から与圧壁側のK aptonを除いた構造で、厚さ1. 27mmのアルミ板製前面バンパー(400
x
400mm)と、 厚さ 4.8mmの与圧壁(400x
400mm)の中間に、 防護能力強化の目的で、 2 段目バンパーとして、 アルミメッシュ、 3層のセラミック繊維(Nexte1) と4層のア ラミド繊維( Kevl ar) からなるスタッフィング(300x
300mm)と、 与圧モジュールの熱 設計の観点から設置する断熱材MLIから構成される。 図5-2にはシミュレーションに 使用したこれら構成材料の厚さと密度が合わせて示しである。 スタッフィングは布状 のため、 中心部分をナイロン糸で 120X120mmの範囲で縫製して構成品の密着を保つ- 94
-ている。 最初はこれを鉄板枠で両面から固定していたが、 デブリ衝突によりスタッフ ィングが抜けることがわかり、改修して鉄板、 スタッフィング共に周囲12箇所をボル
トで締めた(ボルト中心間寸法は 280mm)。 これを前面パンパーと与圧壁の中央部分に 設定して四隅をボルト固定 (ボルト中心問寸法は350mm)し、 さらに この組み立てを、
30mm直径の通過孔を持った前方の爆風防止板と、後方の固定用軟鋼板の間に設置して いる。 図5-3は成 形 爆薬試験形態を示す。 目標速度11 km/secを出すように設計され た成形爆薬から発射されたジェットは、 9.4
x
l03Paまで真空引きされたチャンパーの 中の供試体に衝突する。 ジ、エットの形状は2箇所(A, B点)で フラッシュX線により計 測し、 この時間差から速度を求める。 ジェットの質量は、 X 線写真に同時に写し込ん だ模状のアルミ片の写真から画像解析により推定した。147
円錐形・成形爆薬形状 図5-1
MLI and stuffing rnaterial' s thickness and density used for sirnulation
MLI and Thickness Density stuffing (rnrn) (g/cm3)
MLI 1. 23 0.465
AI Mesh 0.58 0.747
Nextel AF62 3.07 1. 017 Kevlar 710 1. 75 O. 832
SNN-〈EE∞ . 寸
A1 mesh 3 Nexte1
l.27mmAl伝活1スタッフィング入りWhippleシールドの試験片及びシミ ュレーションモデル
Shap剖ch町明
物物
成形爆薬試験形態 図5-3
図5-2
phu n同.u
5. 2. 2
試験結果とその考察実施した成形爆薬試験の結果を総括すると表5-1のようになる。計測された速度 デ ータのみについて比較すると、 平均10.9km/secでほぼ一定 に近い。 また、 表から 明 らかなように、 飛行距離と共にジェットの質量 が減少し、 長さと直径の比L/D も小さ くなっていることがわかる。 これは片山らの実施したハイドロコード・シミュレー シ ョン(5-8)で も明らかにされているように、 先端ジェットと後 方ジェット との速度勾配 により生じるものと考えら れている。 飛行距離 (A, B点)に対して、 ジェットの質量 をプロット すると図5- 4のようである。 Test 4は、 飛行距離が長いためジ、ヱツトの形 状が質点の集まりとなってこわ れている。 また、 Test 6と 7は大気中で 実施された試
験のため、 他のデータ と比べて質量 が小さいD そこで 、 Test 4、 6及び 7のデータ を 除いて、 最小ニ乗法により直線近似 した飛行距離と質量の関係式を図中 に示す。 参考 としてcscから前 面バンパーまでの距離Cが表5-1に示してある。 一例として成形爆 薬試験 後の供試体側面図(Test 5)を図5-5 に示す。 スタッフイングの損傷 が著しいこ とがわかる。
次に、 ジェットの形状が比較的明確に区別で きる代表例として、 Test 3、 4、 及び5 についてジェットの形状と防護シールドの損傷を図5-6に比較する。 飛行距離によっ てジェットの形状が大きく変化したり、 姿勢が傾くことがわかる。 ジェットの質量は 同じで も防護バンパー に与える損傷は異なり、 ジェットの形状に大きく影響を受ける。
Tes t 3のジェットは、 後端スカート 部分が大きく広がり、 従ってその衝突断面積は大 きいが、 ジェットの中心核部分のL/Dはそれ程大きくない。 Test 4のジェットは核と なる中空円筒部分が存在しなくて全体の形 が定まっていない。 これに類似のジェット はTest 6と?で 、 これらの場合もジ、エット が複数の固りに分離している。 Test 5の
ジ、エットは大きなL/Dの中心核が存在し、 スカートの形状もそれ程大きくはない。 従 って衝突断面積は小さく、 全体 形状としては中空円筒に最も近い。 この場合、 衝突直 前の姿勢(B点)で約200 傾いている。 これに類似のものはTest 1と2 である。 以下 では、 これらの代表的なジェット 形状に対する防護シールド各構成品の損傷状況を比 較・検討し、 防護能力を考察する。
a. 前面バンパー Tes t 3 ではジェットの幅が大きい( 47mm)ため、 破損も大き く、 裏側に大きくめくれている(pet a
11 i
ng)。また、 Test 4の損傷はそれ程大きくはな いがめくれが生じている。 一方、 Tesげでは、 ジェットは直径 が小さな中空円筒形で あるため、 前面パンパーの破損は最も小さい。b. スタッフィング 全て、 大きく破損しているが、 Test 3, 4、 5 の順に損傷 孔は大きい。
C. 与圧壁 Test 3では、 7X3mmのL型き裂と、 直径4.5mm 程度の小さな貫通 孔に留まっているのに対し、 Test 4 では2個の貫通孔が生じている。 また、 Test 5 では直径 27mmの貫通孔から 5本のき裂 ( 最大で114mm)が発生して、 さら に与圧壁の