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未成年者への禁煙治療の実際 4

ドキュメント内 Circulation Journal Vol. 69, Suppl. I (ページ 55-60)

あるということなど,基本的な事柄から説明する必要が ある.子どもへの説明はまず,タバコに関する科学的で 正確な知識・情報をわかりやすく伝えることに主眼を置 く198)

2.子どものための禁煙外来の実際

(表32)

1)問  診

外来には保護者と共に来院する子どもがほとんどであ る.診療を保護者同伴で行うのが良いか,それとも保護 者に席を外してもらって子どもと一対一で行うのが良い かは,症例により判断する.場合によっては,子どもへ の問診の際には保護者に席を外してもらい,その後の喫 煙の害に関する説明や具体的な禁煙方法に関する指導の 際には同伴してもらうという方法もある.

診察室では,子どもの緊張をほぐしながら,喫煙を始 めた動機や現在の喫煙状況などを尋ね,日常生活・学校 生活や交友関係などについても聞く.喫煙している子ど もたちは,一般的に問題解決能力が低く,自己肯定感に 乏しい傾向があり,家庭や学校で何らかの問題を抱えて いることもあるため,子どもを取りまく様々な問題や当 人の悩みを共感的に受け止めながら耳を傾けることが大 切である.本人に禁煙希望の有無を尋ねた際に,はっき りした禁煙の意思表示がなくても,言葉や態度で禁煙を 強制すべきではない.強制しても反発を招くだけで,逆 効果である.

この問診の中でニコチン依存の有無の評価も行ってお く.成人用のニコチン依存度テストを,青少年のニコチ ン依存,タバコ依存の評価にそのまま適用することの是

非が検討されている.タバコ使用を自制できない症状出 現にポイントをおく10項目の質問からなるThe Hooked on Nicotine Checklist(HONC)199),7項目からなる青少年 用FTQ 2000200),また,ニコチンに対する身体的依存だ けでなくタバコに対する青少年特有の社会的強化因子

(喫煙は自分をかっこよく見せていると思うか,など),

情動的強化因子(悲しかったり,落ち込んだりしている 時に喫煙が必要だと思うか,など),感覚的強化因子

(煙を吐く感じが好きだと思うか,など)の4つの因子

(54項目)からタバコ依存(ニコチン依存ではなく)を 判定する The Dimensions of Tobacco-Dependence Scale

(DTDS)201)などが考案され,その有効性が検討されてい る.表33にはHONC を示す.

2)タバコの害についての説明

タバコに関する正確な知識を子どもに提供することを 第一に考え,喫煙・受動喫煙の害202,妊婦の喫煙が胎児 に及ぼす害203)などを,写真や図204),あるいはビデオな どの映像(日本循環器学会禁煙推進委員会企画・医学映 像教育センター製作DVD/VHS「今から始める喫煙防止 教育」(図 9)など)を使って,子どもの視覚に訴えな がらわかりやすく説明することに重点を置く.

32 子どものための禁煙外来の実際 1)問  診

①喫煙のきっかけ,喫煙状況

②家庭・学校生活,友人関係

③ニコチン依存の評価 2)タバコの害についての説明

①喫煙の害

②受動喫煙の害

③妊婦の喫煙・受動喫煙の害(胎児・子どもへの影響)

④タバコ・パッケージの警告表示

⑤ニコチン依存のメカニズム 3)治療法の説明

①ニコチン代替療法

②ニコチン代替療法を使用しない場合の説明

③日常生活習慣の改善(行動療法)

④家族・友人関係

⑤保護者への説明と禁煙指導

4)医療機関でのフォロー(外来・電話)

5)学校との協力体制

33 The Hooked on Nicotine Checklist(HONC)

①これまでにタバコを止めようとして止められなかったこ とがありますか?

②今あなたは,タバコを止めるのが困難なのでタバコを吸 っているのですか?

③タバコに依存しているように感じたことはありますか?

④タバコを吸いたくてたまらないと感じたことがあります か?

⑤自分にはタバコが本当に必要だと感じたことがあります か?

⑥タバコを吸ってはいけない場所,例えば学校などで吸わ ないでいるのがむずかしいと感じたことがありますか?

タバコを止めようとした時に…(または,タバコ吸うのを しばらくの間我慢しなくてはいけなかった場合に)

⑦タバコを吸えないので集中できないと感じたことがあり ますか?

⑧タバコを吸えないのでイライラすると感じたことがあり ますか?

⑨すごく喫煙したいと感じましたか?

⑩タバコを吸えないのでいらだちやすい,落ち着かない,

不安感があると感じましたか?

ニコチン依存症状に関する10項目の質問からなる.

文献199より引用和訳

①喫煙の害

喫煙の害に関する説明では,喫煙者の汚れた肺やバー ジャー病で壊疽を起こした足指の写真などを見せ,喫煙 開始年齢が低いほど肺がんなどで若年死する危険性が高 まること190などを話すが,子どもにとっては遠い将来 の病気や寿命の話よりも,急性影響に関する説明の方が 印象深いと考えられる.

表34 に示すように,「タバコを吸うと,大量の一酸 化炭素が体内に入って,身体が酸素不足になる.そのた めに頭の働きが鈍くなり,運動能力が落ち,身長も伸び にくくなる.」「タバコを吸うと身体が早く老化する.」

といった点を中心に説明する.特に女子の場合は,肌の 老化,歯肉着色などの教材を使うと説得力がある.

②受動喫煙の害

受動喫煙の有害性に関しても,タバコの煙の有害物質 は主流煙よりも副流煙の方に高濃度に含まれているこ と,室内で受動喫煙にさらされた場合に吸い込む有害物 質の量は喫煙者自身が吸い込む量の数分の一に及ぶこと などを話して,受動喫煙の危険性を理解させることが大 切である203).特に子どもでは受動喫煙による健康被害は 深刻で,乳幼児突然死症候群205や,気管支喘息206,中 耳炎207)などの病気にかかりやすくなるだけでなく,成 長や知能の発達にも悪影響がある208,209)ことを教える.

③妊娠中の喫煙の害

男女ともに,妊娠中の喫煙の害について説明しておく ことが大切である.妊婦が喫煙すると,胎児の発育が悪 くなり,早産や死産,低体重出生などの原因になるこ と210211,乳幼児突然死症候群の危険性が高まること212

などを説明し,妊婦の喫煙は胎児をとても苦しめる行為 であることを理解させる.また,妊婦の受動喫煙も胎児 に悪影響を及ぼすことを説明する203)

④タバコ・パッケージの警告表示

タバコのパッケージに記載してある注意書きについ て,日本と海外のタバコを比較して示す.わが国で販売 されているタバコには,「吸いすぎに注意しましょう」

と書かれているが,喫煙の有害性に関しては最近まで全 く記載がなかった(2005年7月から全パッケージによ うやく穏やかな注意文が入れられるようになった).と ころがこの日本製タバコが海外に輸出される際には,喫 煙が心臓病やがんの原因になることや,周囲の人にも害 を及ぼすことなどが,以前から注意書き(警告表示)と して記載されており,中には「SMOKING KILLS」(吸 うと死にます)という文言まである213)ことを説明する.

海外では現在ほとんどの国の政府がタバコの害を積極 的に国民に知らせ,しかもタバコに高額の税金をかけて 価格を上げることによって,国民の喫煙率低下を目指す 政策を実施している.それに対して,わが国ではタバコ の有害性を国民に知らせず,価格も低く抑えてタバコの 売り上げを増やそうとする政策がとられてきた.これは 言うまでもなくタバコによる税収を目的としたものであ り,国民の健康よりも税収を重要視する政策と言わざる を得ない.わが国のこのような姿勢は世界の潮流に反す るもので,タバコ対策の面では,日本は諸外国に比べて 大きく遅れていることを教える.

⑤ニコチン依存のメカニズム

脳の中でニコチン依存が起きるメカニズムについて説 明する.

「タバコは一旦吸い始めると,やめられなくなると言う ね.それはタバコの成分の中のニコチンが脳に作用して,

ニコチンなしでは脳が正常に働けない状態になってしま うので,脳が常にニコチンを欲しがるようになる.タバ コを吸って一旦体内に入ったニコチンも分解されて減っ てゆくから,それを補うために一日に何回もタバコを吸 わないではいられなくなる.君が禁煙できないのは意志 が弱いからではなくて,脳にこういう変化が起こった病 気だ.病気だから治療が必要だし,治療すれば必ず治っ てタバコがやめられるよ.」というような説明で,ほと んどの子どもは理解できる.

34 喫煙の害についての説明

タバコを吸うと身体が早く年をとる(タバコは老化促進剤)

呼吸機能が落ちる:40 代の喫煙者では,70 代の非喫煙 者と同等

血管が老化する:高血圧・心臓病・脳卒中・痴呆の原因 になる

皮膚が老化する:肌が荒れ,しわやシミが増える 骨がもろくなる:骨粗鬆症のため,骨折して寝たきりに

なりやすい 勃起障害を起こしやすい 月経不順・不妊になりやすい 身長が伸びにくくなる 頭の働きがにぶる 運動能力が落ちる 疲れやすくなる

歯や歯茎が病気になり,口臭がひどくなる

ドキュメント内 Circulation Journal Vol. 69, Suppl. I (ページ 55-60)