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木浦 尊之、宮澤 史江

ドキュメント内 untitled (ページ 80-84)

開発事業を取り巻く制度

の売却も「禁止取引」に含まれる。

注3ただし、課税子会社(Taxable REIT Subsidiary:

TRS)を通じて、売却益に対して法人税を支払 いながら、一定量の開発・売却事業を行うこと は可能である。

元来資本市場には「REITに不動産開発事 業は適さない」という議論があり、これは 主にREITに特有の様々な制約に基づいてい る。第一に、課税収益の大半を配当として 投資家に分配しなければならないREITは、

内部に十分な開発資金を留保することがで きず、一定量の開発用地を維持するビーク ルとしては不向きという見方がある。また、

REITの投資家は安定した賃料収益の獲得と その分配(相対的に高い配当金)を目的に 投資しているため、用地の取得から、設計、

許認可、建築工事など、資金回転が遅く、

リスクの高い開発事業を好まないともされ る。さらに、事実上の非課税法人という法 人格は、常に収益を生み出す物件への投資 には有利だが、一時的とはいえ収益を生ま ない資産(土地、建築工事費等)を保有す るビークルとしての有利性は少ないとする 見方もある注4

しかしその一方で、現在多くのREITが開 発事業を行っており、これには以下のよう な理由があると考えられる。

まず、米国不動産市場における需給バラ ンスの好転である。図表1は、米国オフィス ビル市場の需要と供給の推移を示したグラ フである。2000年まで景気拡大に応じて需

失速を受け、米国オフィス市場の需給バラ ンスは急速に悪化した。しかし、近年の緩 やかかつ持続的な景気回復により、ここ数 年オフィス需要が増加しており、賃料が上 昇に転じる都市も増えてきている。こうし た状況は他の不動産タイプに関してもおお むね当てはまる。

また、資本市場要因もREITの開発を促す 要因となっている。不動産への資金流入は 世界的な流れであり、米国における物件取 得環境も厳しい状況が続いている。米国で は年金基金に代表される非課税適格法人が 不動産へのアロケーションを増やしており、

また不動産の純投資収益以外の部分にもモ チベーションを持つ外国人投資家も存在す る。こうした状況で、REITが株価にプラス になるような不動産取得を市場から持続的 に行うことは容易ではなく、外部成長を支 えるための手段が必要となっている。

さらに、開発に関わる上記の議論に対応 し、外部のリソースを活用しながら開発メ リットを享受する仕組み(ジョイントベン チ ャ ー ) が 使 わ れ る よ う に な っ た の も 、 REITの開発を後押しする一因となってい る。たとえば、機関投資家との開発ジョイ ントベンチャーの場合、外部資金の導入で 開発期間中の資金の固定化や収益への影響

(金利、経費負担等)を抑えつつ、物件取得 パイプラインを確保できるというメリット がある。

注4 収益を生まない限り課税も発生しないので、

非課税適格性の有効活用にならないことを背 景にした意見。

REITによる開発の議論と背景

実際のREITによる開発事業への取り組み 度合いは、物件タイプや個別銘柄の特性に よって異なる。図表2は、REITの2006年末 時点の総資産に占める開発中不動産(仕掛 不動産)の割合を物件タイプ別に見たもの である。仕掛不動産の割合が最も高いのは 産業用(物流)施設セクターであり、総資 産の約13%を占めている。次いで割合が高 いのはショッピングセンターで約10%、以 下、オフィスビル(6.4%)、アパートメント

(6.3%)、ショッピングモール(4.7%)と続 く。この割合(および順位)は長期間一定 ではないと思われるが、現時点でこうした 結果になっている要因として以下の点があ げられる。

まず、REITにとっての開発の難易度であ る。これは単純に総投資金額や工期、許認 可取得に関連する難易度だけではなく、リ ースアップリスクの度合いが大きく関係す る。たとえば、REITが日頃から大手のテナ ント候補と接触を保てる(ニーズを把握で きる)状態にあり、それら潜在テナントに 向けて開発できるポジションにある場合、

そのREITは開発に関して競争優位にあると 言える。こうした状況を作りやすいセクタ ーは、産業用施設とショッピングセンター であろう。産業用施設セクターの大手銘柄 の場合、その国際的なネットワークを活用 して、国際物流企業や多国籍に展開するメ ーカーを対象にした施設を開発することが できる。

ショッピングセンター開発の主導権も核 テナントとなる小売業者サイドにあり、彼

っているREITの場合、開発リスクは相対的 に小さなものとなる注6

一方、オフィスやアパートメントのよう に、通常建物ごとに不特定多数からテナン トを募集せざるを得ない物件タイプの場合、

開発自体が投機的なものとなり、リースア ップリスクが相対的に高くなる。この場合、

REITの市場における開発上の競争優位は少 なく、開発割合は自ずと低下する。

さらに、現在の各物件タイプの市況と 個々の銘柄の成長戦略の関係も、開発事業 への取り組みに影響を与えるとみられる。

現在の米国アパートメント市場のように、

賃料が上昇基調にあり、稼動物件に対する 選別投資でより高い成長を見込めるセクタ ーについては、開発事業への取り組み度合 いが少なくなる可能性がある。一方、賃貸 借契約期間が長く、テナント側の条件交渉 力が比較的強い産業用施設の場合、景気回 復時でも内部成長のペースが緩やかなため、

開発を含めた外部成長戦略が重要になって こよう。

以上、米国REITによる不動産開発事業を 取り巻く制度、背景、現状等について説明 した。開発事業は成功すれば、市場から取 得する稼動物件よりも高い収益が得られる 可能性がある。その一方で、開発には常に リスクがつきまとうのも事実で、開発事業 への過度の傾斜が、REITの経営を傾けた事 例もある。各銘柄の属する物件タイプや地 理的市場、テナントとの関係に応じ、どの ような開発戦略をとるのかが重要な経営判 断要因となってきている。

1989年京都大学経済学部卒業、三菱地所株式会社入社。

マサチューセッツ工科大学修士課程修了後、ハイトマン本 社で米国REITの評価分析、不動産投資商品の開発に従事。

帰国後、グループ会社のユーエイエム・ジャパン・インク を経て、2005年1月ハイトマン日本支店設立と同時に現職。

木浦 尊之マネージング・ディレクター

一橋大学商学部を卒業後、クレディスイス投信株式会社に 入社し、投信運用業務に従事。フランク・ラッセル株式会 社を経て、2005年6月よりハイトマン日本支店に入社し、

クライアント・サービス業務を担当。日本証券アナリスト 協会検定会員。

宮澤 史江アシスタント・ヴァイス・プレジデント 注5 候補となる核テナントは、自らの進出条件を

満たす、より優れた立地を選択することから、

条件に満たない中途半端な商業施設プロジェ クトは、通常、計画段階で頓挫することにな る。しかし、いったん核テナントと合意に至 れば、(ショッピングモールとは異なって)物 件の収益性が明確になりやすい。

注6 同じ商業系REITでも、ショッピングモール REITによる開発への取り組みが少ないのは、

施設収益の大半が核テナントではなく、数十 から数百に上る専門店からもたらされること に一部起因していると考えられる。

出所:TortoWheaton Researchのデータをもとに、Heitman International LLC作成  -100000

-75000 -50000 -25000 0 25000 50000 75000 100000

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 新規供給量 

図表2 総資産に占める仕掛不動産の割合(物件タイプ別、2006年12月末時点) 

出所:Citigroup Investment Research、「Hunter(2007年4月13日)」をもとに、Heitman International LLC作成  12.7%

10.0%

6.4% 6.3%

4.7%

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

産業用施設  ショッピングセンター  オフィスビル  アパートメント  ショッピングモール 

これまで本編では、欧州におけるREIT制 度の導入の経緯や制度概要について紹介し てきたが、本稿では若干趣向を変えて、欧 州REITセクターにおけるM&Aの動向につ いて簡単にご紹介したい。かなり日本にも 馴 染 ん で き た 「 M & A 」( 企 業 間 の 合 併

(Merger)および買収(Acquisition)の略 語)という言葉であるが、特に最近では三 角合併の解禁等をキーワードとして、外資 による日系企業の買収の可能性などが様々 な記事で取り上げられている。英国や欧州 不動産セクターを見る限り、M&Aは企業 価値の成長もしくは潜在化の基本的な手法 として幅広く用いられており、その市場規 模たるやM&Aの本場と言われる米国と均衡 するレベルになっている。

グローバルな観点から見ると、2007年第

一四半期の不動産セクターにおけるM&A動 向は、前年同期比で2倍以上(約260%増、

取引額ベース)となっており、その勢いは 今日も増している。読者の記憶に新しいと ころでは、米国におけるプライベート・エ クイティ・ファンド最大手の一社であるブ ラックストーンによるエクイティ・オフィ ス・プロパティーズの買収(取引価格約4兆 円)があるが、欧州でも今年のイースター 明け4月10日にUnibail(フランス)による Rodamco Europe(オランダ)の買収(取引 総額約3兆円)が発表され、大西洋の両側を 挟んでM&Aの規模およびスピード感は以前 より増している。この活発なM&A市場の裏 側には、好調な資本市場を背景にして買収 資金が比較的簡単に調達できること、プラ イベート・エクイティ・ファンドの台頭や 業界内での戦略的M&Aの上昇が理由として 指摘されよう。

今年からスタートしたUK-REITの場合、

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