データが共有されているので、多くの研究 者が研究できる。これは研究だけではなく、
現実の不動産の投資戦略にも繋がる話です。
90年代の後半に、ハゲタカと呼ばれる外資 が入ってきました。その頃にベルリンで会 った中国系のアメリカの学者が私にこうい いました。「僕のモデルを使って、日本の不 動産を買っている人がいる」と。彼らは、
投機的な考え方で入ってきたのではなく、
定量的に分析して自信を持って判断をして いるのです。リスクをアンバンドリングし て、プライシングして、予測をして、ここ が底で一番リスクが小さく利益が最大の時 点だという判断です。実際、その時点では リスクを取っているのですが、それによっ て大きな利益を得ることになります。その 後に、多くの人が雪崩を打つように入って きて、今の状況があるということです。
冒頭に、皆さんが考えている以上に、テ クノロジーが進歩していることをご紹介し ま す 。 数 週 間 前 か ら 、 い わ ば 不 動 産 版 Googleの実験を始めました。住所を入れる と、地図とその地域の売物件、価格と売っ ている業者の情報が出るものです。「いい住 宅.Org(www.ejuutaku.org)」と言うので すが、開発をしている人達の目的は、日本 から始めて、できれば世界中の不動産の価 格を1箇所で見られるようにしたいというこ とです。さらにここでは、どの物件がどの くらい見られているかも、逐次テロップで ますし、集計機能により、今、日本のウェ ブサイト上に、何兆円の不動産がアップさ れているのかがわかります。これは我々が 開発したのではなく、システムを借りてい
るものですし、ビジネスではなく大学で実 験的にやっているものですが、ビジネスベ ースでも、いくつか開発が進められており、
アメリカでは、zillow(www.zillow.com)と いう有名な不動産のウェブサイトでこれが 実現されています。zillowに行けば、海外か らでもアメリカの住宅の価格がわかるので す。
こうしたシステムが普及すれば、もっと データを利用できます。ARESがデータベ ースを作って公開することで、たとえば、
川藤氏(谷澤総合鑑定所)からご紹介があ ったe-pragaという形でGISとリンクをさせ ていくといった形です。このように、ITと 不動産の距離は急速に縮まっています。た とえば、日本では住宅価格の情報を雑誌で 販売していましたが、北京では最初からイ ンターネットです。清華大学には、政府の ネットワークを通じて全中国の不動産価格 が吸い上げられ、それを元に住宅政策を立 案しています。こうしたことが、おそらく 今年は大きな流れになります。日本がその トップを走れるかというと、そうではなく、
北京と比べてもすでに遅れているかもしれ ません。我々大学の方でも、キャッチアッ プできるように、4月から、民間、国土交通 省、日本不動産鑑定協会等の方々、もちろ んARESとも、密接に連携しながら、様々 な形で進めたいと考えています。「不動産投 資インデックスの現状と将来展望」という ことでは、たとえば、ARESのインデック スを売買する取引市場を作ることを皆さん と検討させていただきたいと真面目に考え ています。法制度上、様々な問題があるか もしれませんが、ARESと相談をしながら、
学会の有志達とともに、実験的にできない かということです。ARESのインデックス の特徴は、ソースデータが公開されている ことです。つまり、ARESの計算が正しい か確認できる訳です。おそらくこうした不 動産投資インデックスは世界にもありませ ん。NCREIFのデータは、メンバーと一部 の人しか使えません。IPDや日本にある他 のインデックスのデータは開示されていま せん。その意味で、ARESのインデックス は非常に貴重で、これは取引できるのでは ないかと考えた訳です。インデックスが取 引されることで、不動産は金融商品と並び、
「投資の新しい地平を開く」ことになると思 います。
また、不動産の流通業界では、今年はオ ークション市場がかなり整備をされると予 測しています。もちろん、不動産の取引は 相対が中心ですから、オークションは一部 に過ぎません。ただし、オークション市場 から出てくるインデックスは、東証の株価 インデックスと変わらないものです。先ほ ど、不動産の流動性リスクについての議論 がありましたが、実際にはあまりないと思 います。アメリカのREITと実物のNAVを 比較すると、その差は数%もありません。
勿論、きれいな投資用物件でない場合、流 動性リスクはありますが、今、不動産を売 りに出せば、すぐに価格が付くはずです。
物件による違いはあるものの、キャピタル マーケットの上に不動産が載っている昨今 では、流動性もかなり変わってきていると 思います。
さて、本日の1つ目の結論は、ARESのイ
ンデックスで見ると、今のところバブルは 発生していないということです。
次に、住宅の場合ヘドニックを用いたイ ンデックスがありますが、投資用の商業不 動産では、持ち家と違って大数の法則が成 り立たないので、ARESのインデックスの ような不動産鑑定評価を用いたビルの価格 指数を使わなければいけないことが多くな ります。2つ目の結論は、その際のアセッ ト・アロケーション・スタディにおいては、
注意が必要だということです。
それから、デリバティブの商品のベース となっているのは、アメリカも香港もリピ ート・セールのインデックスです。3つ目の 結論は、ARESのインデックスの価格の部 分を、鑑定評価額から、マーケットからデ ータを集めて、テクニカルに推定をして算 出するリピート・セールに変えてインデッ クスを開発する必要があるのではないかと いうことです。リピート・セールも疑似価 格ですが、鑑定評価よりはバイアスが少な いと思います。あるいは、鑑定評価額のバ イアスを修正する方法もあります。
そして4つ目は、不動産の価格変動を正規 分布で扱うことの限界とべき乗分布の利用 可能性です。私達は、市場を見ていく際に、
正規分布を使います。最近の世界同時株安 のような異常な下げはファットテールとい い、これは、正規分布の裾野の部分にあた ります。ここでは、フリークエンシーでは なく、値に着目をする必要があり、その場 合にはべき乗分布が便利です。また、この べき乗分布は、研究者にとってだけではな く、ファンドのアドバイスや、年金基金の 不動産投資戦略の立案等においても非常に
重要です。これでパフォーマンスが決まっ てしまうからです。ここには、慣性やタイ ムラグがかなりあるので、この判断を見誤 ると、かつてのような非常に大きなロスを 生むことになります。
まず、1つ目の結論についてです。1980年 代には、我々が指標として使えたのは、公 示地価とMTB-IKOMAのインデックスで す。これを使って、東京都心のオフィスの 価格と賃料指数の推移を比較してみました。
これと同じような比較が、シラー教授の
『根拠なき熱狂』という本にあります。アメ リカの株価と株価のベースとなっているフ ァンダメンタルの収益を比較したものです。
そこでは、収益の変動に対して、価格が何 倍にも増幅されて動いています。これが
『根拠なき熱狂』です。今の不動産市場がバ ブルかどうかは、同じようなグラフを書い てみれば簡単にわかりますが、何倍にも増 幅されたりはしていません。以前はこの比 較しかできなかった訳ですが、今はARES のインデックスがありますから、そこで確 認ができます。ARESのデータを使って、J-REITが保有しているオフィスのキャピタル 収益率と平均賃料単価を比較すると、新聞 やアナリストの説明は一部間違いで、賃料 はそんなに上昇していません(これから上 昇するのですが・・・)。ここだけ見て、あ る経済学の先生は、賃料が上がっていない のに、価格が上がっているのはバブルだと 言います。しかし、ここだけを見ていては いけません。ARESのデータで稼働率を見 ると、大幅に改善しています。つまり、熱 狂には根拠があるということです。オフィ
スについては、日本の企業がリカバリーを して、床を借りはじめていることが明らか にここに示されています。また、一昨日の 学会で、成約賃料も募集賃料に比べて、か なり早い時期から急激に上がっているとい う発表がありました。不動産市場において は、スペースのマーケットで賃料が決まり、
アセットのマーケットで割引率とかキャッ プレートが決まります。キャップレートや 割引率の決定においては、期待に基づくリ スクプレミアムが効いてくるのですが、ス ペースのマーケットにおける賃料は、期待 よりは、リアルのビジネスの予測によって 決まります。ここは混同されがちです。過 去の収益の改善と価格をみると、賃料の上 昇がそれほど効いている訳ではないのです が、賃料の反転と稼働率の急上昇というフ ァンダメンタルズの変化によって、価格が 上昇しています。不動産ブームで、価格が 上がっているのは確かですが、バブルは起 きていないということです。もちろん、今 後(今年後半、来年以降)はわかりません が、そのためには不動産の価格が、今の倍 ぐらいにはならないといけません。ところ が、我々がARESと一緒に調査している不 動産投資短観では、多くの投資家が、6ヶ月 後のキャップレートはほとんどフラットだ と答えています。ですから、マスコミはよ くJ-REITやプライベートファンドが価格を つり上げていると書いていますが、あれは 間違いです。何故なら、彼ら(投資家)は 去年の12月の段階でもうピークで、これ以 上は突っ込めないと見ているからです。J-REITが価格をつり上げているといっている 人には、何を証拠に言っているのかと厳し