朝日・読売二紙の中国に関する連載記事にみられる「認識の枠組み」

In document 国際ニュース報道における海外特派員の「認識の枠組み」に関する研究 : 日本の新聞の中国報道を中心に (Page 67-102)

本章は第 2 章で述べた方法で抽出した朝日と読売の連載記事をもとに“1987 年~1998 年”“1999年~2009年”“2010年~2018年”の各時期の集合体をそれぞれ独立したデータ とし、集計やコーディングなどの分析作業を進める49

第1節 朝日・読売二紙の連載記事の概観 1、連載記事数

まず、連載記事数は朝日が746本(第一期286、第二期213、第三期は247)、読売が820 本(第一期379、第二期278、第三期163)と、読売の方が若干多かった。ただし、朝日は 長めの記事が多く、読売は比較的短めの記事を掲載する傾向がみられる。

図 6 は年次ごとに朝日・読売二紙の中国関連連載記事の累積本数をプロットしたもので ある。全体的にみると、二紙とも顕著な傾向が見受けられない。ただし、競争関係にある二 紙は、前後して大型連載を企画する現象が目立つ。例えば朝日は95年から97年にかけて、

長期連載「奔流中国」を企画し、読売は1998年と1999年にそれぞれ、「苦悩する大地」と

「50歳の中国」を企画した。そして朝日は2012年から2013年にかけて連載「紅の党」を 掲載し、読売は2014年に連載「獅子の計略」を掲載した。

さらに、天安門事件(1989)や香港返還(1997)、共産党大会(2002、2007、2012)や 北京五輪(2008)など重大な事件やイベントに当たった年には記事が比較的に多いことも 図6から分かる。

6:朝日・読売二紙の年次別連載記事数

49 二紙の連載では、中国と関係が深い周辺国や地域を紹介するものも複数含まれている。本章では、これ らの記事を連載の一部としてデータを集めたが、これらの地域のみ取り上げる記事を分析対象外とする。

例えば、読売が1999年に企画した連載「50歳の中国」の第4部では、中国本土外の華人社会の潮流に 焦点を当てたため、分析対象外とする。

2、頻出語の比較

では、朝日・読売が連載記事で中国の政治、経済、社会などを表現する際に、どのような 言葉を多用しているのか、明確な差異は見つかるのか。また、同じ新聞であっても、時期に よって何らかの相違点が識別できるのか。

本章はMAXQDAのMAXDictioという検索機能を使い、二紙の記事の頻出語(頻度:朝

日24002 語あたりの回数、読売24700語あたりの回数、見出しの区別なく合計したもの)

の上位100語(動詞、形容詞、副詞、付属語を除く)をリストアップした。表1-1-1と

表1-1-2はその結果を示している。

表1-1-1と1-1-2に示されているように、二紙の連載記事の上位10位の頻出語(黄

マーカー)の中で、二紙とも出現した単語は8つある。しかも 6位までの順位も同じであ ることが分かった。「朝日」における“北京”(4位)と“日本”(5位)は、「読売」におい ては順位が逆転しただけである。そして1位の“中国”を除き、“経済”(2位)と“企業”

( 3位)が上位を占めているのは、二紙とも経済関連の連載記事が多かったことで分かる。

そして、“北京”や“上海”が多かったのは、二つの都市が取材拠点であり、ニュース発信 地として登場する機会が多かったこととも関連している。

そして、頻出語上位25位(藍マーカー)、50位(緑マーカー)、75位(オレンジマーカ ー)、100 位(赤マーカー)における二紙の相同語の割合は、それぞれ68%、82%、86.7、

88%となる。連載記事の頻出語からみると、朝日・読売二紙が中国に対する関心分野がほぼ 一致している。

本章はさらに、上位25 の頻出語の中から、二紙とも言及した17語をピックアップし、

二紙の連載記事の頻出語はそれぞれ三つの時期にどのような変化があるのかを考察する。

図7-1と図7-2は、頻出語ごとにデータ内での使用頻度を新聞別・時期別で比較したもので ある。

全体的にみると、三つの時期に含まれる年数及び記事数が異なることとも関連している が、ほとんどの頻出語が時期によって減少している傾向が見受けられる。二紙の連載記事の 頻出語の全体的な特徴からみると、「経済」「企業」の割合が高いが、時期によって減少して いる。そして、注目すべきは、記事数という要素を考慮に入れても、頻出語の中で大幅な減 少がみられるのは“改革”であることが明らかである。

一方で、全体と異なる傾向が見られるのは“日本”、“政府”、“関係”が挙げられる。この 結果から、まず朝日・読売二紙は各時期で、日中関係や政府関連の外交などのテーマに一定

の関心を維持していることが推察できる。特に第三期には年数と記事数が少ない割に、頻出 語の明白な減少傾向がみられないのは、外交への注目度が高いことを証明している。以上の 結果から、近年、朝日・読売の中国への関心の重心が経済分野から政治や外交に転換するこ とが推察できる。

1-1-1:朝日(左)・読売(右)二紙の連載記事の頻出語(上位100語―“1~50”

単語 頻度 % ランク 文書 文書 %朝日10-18朝日99-09朝日87-98 単語 頻度 % ランク 文書 文書 % 読売10-18 読売99-09読売87-98

1 中国 5318 1.69 1 31 100.00 1509 1862 1947 1 中国 7471 2.01 1 32 100.00 1802 2967 2702

2 経済 1521 0.48 10 31 100.00 272 440 809 2 経済 2387 0.64 8 32 100.00 396 742 1249

3 企業 1501 0.48 11 30 96.77 294 539 668 3 企業 1984 0.53 10 32 100.00 312 740 932

4 北京 1445 0.46 12 31 100.00 473 456 516 4 日本 1802 0.49 11 31 96.88 539 622 641

5 日本 1317 0.42 13 30 96.77 397 465 455 5 北京 1608 0.43 12 32 100.00 229 731 648

6 政府 1221 0.39 16 31 100.00 386 491 344 6 政府 1268 0.34 17 31 96.88 297 525 446

7 関係 919 0.29 23 30 96.77 466 222 231 7 上海 1206 0.33 19 32 100.00 173 326 707

8 政治 899 0.28 24 30 96.77 361 212 326 8 関係 1182 0.32 21 32 100.00 365 337 480

9 書記 890 0.28 25 27 87.10 572 113 205 9 改革 1154 0.31 24 32 100.00 233 243 678

10 上海 880 0.28 26 31 100.00 176 267 437 10 社会 941 0.25 28 31 96.88 157 376 408

11 指導 874 0.28 27 29 93.55 491 151 232 11 香港 934 0.25 29 28 87.50 77 450 407

12 幹部 836 0.26 29 28 90.32 492 108 236 12 台湾 906 0.24 31 28 87.50 91 424 391

13 改革 810 0.26 31 31 100.00 152 212 446 13 問題 897 0.24 32 31 96.88 131 259 507

14 社会 797 0.25 33 31 100.00 149 214 434 14 昨年 825 0.22 34 32 100.00 206 291 328

15 中央 713 0.23 39 30 96.77 268 162 283 15 政治 820 0.22 36 31 96.88 228 192 400

16 香港 711 0.23 40 28 90.32 82 95 534 16 市場 807 0.22 38 29 90.63 100 331 376

17 委員 709 0.22 41 28 90.32 303 160 246 17 米国 713 0.19 41 29 90.63 259 247 207

18 問題 649 0.21 42 30 96.77 164 219 266 18 世界 710 0.19 42 31 96.88 209 307 194

19 国家 634 0.20 44 29 93.55 264 175 195 19 開発 678 0.18 44 31 96.88 117 277 284

20 工場 633 0.20 45 30 96.77 51 171 411 20 開放 674 0.18 45 29 90.63 123 166 385

21 昨年 592 0.19 47 31 100.00 172 196 224 21 環境 665 0.18 46 30 93.75 49 158 458

22 市場 569 0.18 49 31 100.00 66 202 301 22 国際 663 0.18 47 31 96.88 147 222 294

23 台湾 567 0.18 50 26 83.87 50 258 259 23 発展 663 0.18 47 31 96.88 86 250 327

24 主義 559 0.18 51 29 93.55 81 84 394 24 主義 658 0.18 49 29 90.63 91 251 316

25 生産 509 0.16 53 28 90.32 48 193 268 25 トウ 633 0.17 51 29 90.63 36 83 514

26 世界 508 0.16 54 31 100.00 116 241 151 26 建設 631 0.17 52 31 96.88 102 202 327

27 大学 495 0.16 56 29 93.55 172 180 143 27 国家 630 0.17 53 32 100.00 199 187 244

28 主席 490 0.16 57 28 90.32 233 117 140 28 指導 597 0.16 56 31 96.88 161 159 277

29 始め 487 0.15 58 31 100.00 147 165 175 29 工場 596 0.16 57 30 93.75 54 164 378

30 事件 481 0.15 60 30 96.77 163 112 206 30 研究 590 0.16 58 29 90.63 168 226 196

31 共産党 480 0.15 61 30 96.77 161 164 155 31 今年 579 0.16 59 32 100.00 131 219 229

32 政策 480 0.15 61 30 96.77 160 106 214 32 以上 560 0.15 60 31 96.88 108 249 203

33 米国 476 0.15 63 27 87.10 153 134 189 33 投資 559 0.15 61 29 90.63 92 189 278

34 トウ 457 0.14 65 26 83.87 77 41 339 34 委員 556 0.15 63 31 96.88 127 163 266

35 首相 454 0.14 66 28 90.32 181 132 141 35 生産 555 0.15 64 31 96.88 58 198 299

36 会社 436 0.14 69 28 90.32 117 170 149 36 事件 547 0.15 66 28 87.50 68 183 296

37 今年 431 0.14 71 31 100.00 77 164 190 37 書記 541 0.15 67 31 96.88 150 119 272

38 発展 428 0.14 72 29 93.55 85 147 196 38 政策 539 0.15 68 31 96.88 130 132 277

39 大会 422 0.13 73 28 90.32 172 128 122 39 大学 533 0.14 69 26 81.25 79 279 175

40 人民 412 0.13 75 29 93.55 93 105 214 40 当局 525 0.14 70 31 96.88 89 266 170

41 代表 406 0.13 76 30 96.77 92 138 176 41 民主 517 0.14 71 28 87.50 62 151 304

42 農村 397 0.13 77 29 93.55 87 151 159 42 首相 506 0.14 73 30 93.75 150 128 228

43 時代 395 0.13 78 29 93.55 146 88 161 43 技術 503 0.14 74 30 93.75 101 173 229

44 投資 394 0.12 79 29 93.55 84 134 176 44 大会 499 0.13 76 30 93.75 101 149 249

45 当局 394 0.12 79 28 90.32 160 121 113 45 中央 499 0.13 76 32 100.00 132 122 245

46 国際 393 0.12 81 31 100.00 97 134 162 46 都市 479 0.13 79 29 90.63 87 190 202

47 開放 387 0.12 82 31 100.00 45 90 252 47 主席 458 0.12 82 29 90.63 152 126 180

48 全国 382 0.12 83 31 100.00 76 133 173 48 五輪 443 0.12 84 17 53.13 8 384 51

49 学生 375 0.12 84 27 87.10 107 81 187 49 国有 437 0.12 85 26 81.25 111 144 182

50 以上 369 0.12 85 29 93.55 98 137 134 50 幹部 432 0.12 86 31 96.88 142 139 151

1-1-2:朝日(左)・読売(右)二紙の連載記事の頻出語(上位100語―“51~100”

51 開発 359 0.11 86 29 93.55 97 125 137 51 時代 432 0.12 86 29 90.63 92 168 172

52 経営 358 0.11 87 28 90.32 52 163 143 52 全国 431 0.12 88 31 96.88 60 152 219

53 国有 355 0.11 89 24 77.42 74 163 118 53 共産党 429 0.12 89 30 93.75 117 193 119

54 地方 354 0.11 90 30 96.77 117 111 126 54 成長 428 0.12 90 30 93.75 94 196 138

55 記者 352 0.11 91 28 90.32 122 94 136 55 政権 427 0.12 91 27 84.38 193 166 68

56 都市 351 0.11 92 28 90.32 75 118 158 56 貿易 424 0.11 92 30 93.75 57 141 226

57 民主 347 0.11 93 27 87.10 73 90 184 57 始め 421 0.11 94 31 96.88 73 166 182

58 技術 346 0.11 94 29 93.55 86 114 146 58 計画 417 0.11 95 29 90.63 84 136 197

59 労働 346 0.11 94 27 87.10 35 112 199 59 外交 416 0.11 96 29 90.63 129 99 188

60 研究 332 0.11 98 31 100.00 115 132 85 60 労働 412 0.11 98 28 87.50 38 161 213

61 農民 320 0.10 100 25 80.65 67 124 129 61 経営 409 0.11 99 27 84.38 47 128 234

62 会議 319 0.10 101 27 87.10 157 74 88 62 体制 407 0.11 100 29 90.63 75 80 252

63 機関 307 0.10 103 30 96.77 101 97 109 63 現在 389 0.10 102 29 90.63 47 137 205

64 批判 307 0.10 103 29 93.55 86 131 90 64 外国 386 0.10 103 30 93.75 48 127 211

65 教育 305 0.10 105 27 87.10 41 135 129 65 人口 381 0.10 104 29 90.63 46 143 192

66 計画 300 0.10 108 29 93.55 84 102 114 66 アジア 374 0.10 107 28 87.50 105 104 165

67 体制 300 0.10 108 27 87.10 102 62 136 67 機関 365 0.10 111 31 96.88 102 134 129

68 地元 300 0.10 108 28 90.32 149 103 48 68 中国人 363 0.10 112 29 90.63 109 169 85

69 中国人 297 0.09 111 25 80.65 78 141 78 69 小平 361 0.10 113 29 90.63 28 62 271

70 建設 292 0.09 114 28 90.32 62 103 127 70 代表 358 0.10 114 31 96.88 52 148 158

71 年代 291 0.09 116 29 93.55 83 119 89 71 年代 358 0.10 114 28 87.50 50 147 161

72 成長 285 0.09 117 29 93.55 65 146 74 72 教育 355 0.10 117 30 93.75 50 206 99

73 組織 282 0.09 121 28 90.32 99 70 113 73 天安門 354 0.10 118 26 81.25 30 85 239

74 活動 281 0.09 122 29 93.55 79 94 108 74 地域 353 0.10 119 29 90.63 70 97 186

75 中心 274 0.09 126 29 93.55 79 71 124 75 会社 350 0.09 120 28 87.50 63 151 136

76 当時 274 0.09 126 29 93.55 143 56 75 76 習氏 350 0.09 120 7 21.88 350 0 0

77 天安門 272 0.09 129 27 87.10 63 61 148 77 生活 350 0.09 120 28 87.50 35 142 173

78 中国共産党 269 0.09 131 27 87.10 137 45 87 78 中心 348 0.09 123 31 96.88 54 163 131

79 外国 266 0.08 134 30 96.77 44 80 142 79 学生 342 0.09 124 23 71.88 33 111 198

80 銀行 266 0.08 134 23 74.19 87 99 80 80 ドル 341 0.09 125 28 87.50 71 136 134

81 人口 263 0.08 138 28 90.32 62 79 122 81 情報 337 0.09 126 30 93.75 79 163 95

82 政権 262 0.08 139 28 90.32 113 101 48 82 人民 330 0.09 128 31 96.88 53 123 154

83 五輪 259 0.08 140 18 58.06 11 241 7 83 農村 321 0.09 131 30 93.75 44 145 132

84 資金 258 0.08 141 28 90.32 59 96 103 84 活動 317 0.09 137 31 96.88 62 131 124

85 情報 255 0.08 144 26 83.87 88 58 109 85 運動 309 0.08 142 29 90.63 29 88 192

86 党員 255 0.08 144 20 64.52 42 57 156 86 国内 304 0.08 144 30 93.75 64 129 111

87 軍事 252 0.08 147 23 74.19 88 54 110 87 指摘 304 0.08 144 30 93.75 71 95 138

88 管理 251 0.08 148 31 100.00 48 92 111 88 資金 304 0.08 144 27 84.38 42 101 161

89 自由 251 0.08 148 29 93.55 50 87 114 89 文化 303 0.08 147 26 81.25 75 122 106

90 革命 247 0.08 152 27 87.10 71 86 90 90 広東 299 0.08 148 28 87.50 88 99 112

91 国内 247 0.08 152 29 93.55 65 113 69 91 戦略 299 0.08 148 29 90.63 78 111 110

92 女性 247 0.08 152 26 83.87 110 46 91 92 批判 299 0.08 148 32 100.00 90 86 123

93 市民 246 0.08 156 28 90.32 59 57 130 93 民族 296 0.08 153 29 90.63 67 128 101

94 地域 236 0.07 160 28 90.32 37 70 129 94 産業 292 0.08 158 28 87.50 49 94 149

95 小平 234 0.07 161 26 83.87 45 33 156 95 当時 291 0.08 159 29 90.63 63 105 123

96 重慶 230 0.07 166 18 58.06 169 32 29 96 農民 285 0.08 161 26 81.25 23 145 117

97 運動 227 0.07 169 24 77.42 55 61 111 97 会議 284 0.08 162 28 87.50 133 52 99

98 広東 225 0.07 170 27 87.10 54 69 102 98 協力 283 0.08 164 30 93.75 74 68 141

99 生活 225 0.07 170 26 83.87 44 65 116 99 自由 283 0.08 164 29 90.63 54 130 99

100 チベット 219 0.07 175 14 45.16 8 162 49 100 革命 282 0.08 167 28 87.50 63 82 137

7-1 時期別頻出語の変化(朝日)

7-2 時期別頻出語の変化(読売)

そして時期による相違点が目立つのは“政治”である。二紙とも第一期と第三期に多く言 及されているが、第二期では減少している。ちなみに、表1-1-1と1-1-2の“中国共 産党”(朝日78位オレンジマーカー)、“共産党”(朝日31位、読売53位 オレンジマーカ ー)、“政権”(朝日82位、読売55位 赤マーカー)の変化を見ると、第三期に「政治」関 連のテーマへの関心が高まることが分かる。特に朝日新聞にはこのような傾向が鮮明であ る。

このような傾向は表1-2が示している二紙の時期別の頻出語(上位10語)の比較によ って一層明白に現れる。まず、表1-2から、第二期に朝日・読売二紙の連載記事の頻出語 が共通しているものが多かったことが分かる。この時期に、「北京五輪」が一つのキーワー ドであることは明らかであるが、台湾問題にも注目されることが一つの特徴になる。中国は 1997年に「一国二制度」によって香港の平和的返還を実現し、台湾問題が統一に残る最後 の念願となる。2000年5月、独立色の濃い民進党の陳水扁政権が発足し、2008年までの間 で、台湾問題がずっと中国政治にとって不安定な要素であるからだと推察できる。二紙とも この時期に台湾問題に注目する記事が増えていた。

1-2朝日・読売の時期別連載記事の頻出語(上位10語)

そして、読売の場合、三つの時期の頻出語に共通しているものが多いことが分かる。それ に対し朝日の場合、第三期の頻出語の上位は前二期とかなり異なる傾向が現れている。第三 期に“書記”“幹部”“指導”“政治”“委員”などの言葉が頻出し、これは朝日がこの時期の 中国の政治に特別に注目していることを示している。朝日は2012年6月23日から 2013 年7月12日にかけての「紅の党」と、2016年12月20日から2017年10月29日にかけ ての「核心の中国」それぞれ長期連載を企画し、しかも中国共産党内部の権力闘争に焦点を 当てることから、上記の単語が多用されることと関連している。

一方、読売は第三期で“習氏”と“米国”が上位に浮上したのも特徴である。同紙の第一 期の連載記事で、トウ(鄧小平)が上位を占めたことを合わせて考えると、指導者の名前で、

中国の政権または政治を表現する傾向があることと、第三期の連載記事には、中国の外交へ の注目度が高いのではないかと推測できる。

指導者の名前といえば、二紙に言及される中国指導者の位置の違いも興味深い。時期によ って指導者への言及頻度が違うが、朝日・読売二紙とも一位は鄧小平(トウ、小平などの表 記を合わせたもの)であり、頻度はそれぞれ0.21と0.27となる。「改革・開放の総設計師」

とも呼ばれる鄧小平が多く言及されるのは、彼自身がカリスマ指導者であるという理由以 外に、第一期に「改革」への言及が最も多いこととも関連しているといえる。

鄧小平に次ぐ第二位は、習近平であり(習氏、近平、シージンピンなどの表記を合わせた

もの)、朝日は0.17、読売は0.14と、高い頻度を示している。ちなみに、毛沢東への言及頻

度は、読売が109位の0.08であり、朝日が257位の0.04である。

鄧小平と習近平への言及が多いのは、二紙とも両指導者が中国に対する影響力が大きい との認識を共有していると言えるが、それぞれどのようなディスコースと関連づけて言及 されているかは、後でディスコース群の考察で明らかにする。

単語 % 単語 % 単語 % 単語 % 単語 % 単語 %

1 中国 1.57 中国 1.92 中国 1.60 1 中国 1.65 中国 2.22 中国 2.45

2 経済 0.65 企業 0.56 書記 0.61 2 経済 0.76 経済 0.55 日本 0.73

3 企業 0.54 政府 0.51 幹部 0.52 3 企業 0.57 企業 0.55 経済 0.54

4 香港 0.43 日本 0.48 指導 0.52 4 上海 0.43 北京 0.55 関係 0.50

5 北京 0.42 北京 0.47 北京 0.50 5 改革 0.41 日本 0.46 習氏 0.48

6 日本 0.37 経済 0.45 関係 0.49 6 北京 0.40 政府 0.39 企業 0.42

7 改革 0.36 上海 0.28 日本 0.42 7 日本 0.39 香港 0.34 政府 0.40

8 上海 0.35 台湾 0.27 政府 0.41 8 トウ 0.31 台湾 0.32 米国 0.35

9 社会 0.35 五輪 0.25 政治 0.38 9 問題 0.31 五輪 0.29 改革 0.32

10 工場 0.33 世界 0.25 委員 0.32 10 関係 0.29 社会 0.28 北京 0.31

朝日

1987~1998 1999~2009 2010~2018 1987~1998 1999~2009 2010~2018

読売

In document 国際ニュース報道における海外特派員の「認識の枠組み」に関する研究 : 日本の新聞の中国報道を中心に (Page 67-102)