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最適マネジメント化に向けた試み

ドキュメント内 電気通信大学 (ページ 51-64)

6-1 マネジメントの役割

一般に,変換プロセス(Conversion Process)の効率により同じ投入資源(Resources)

から得られる結果(Results)が異なるため,変換プロセスに関与するマネージャー

(Manager) のマネジメント力は重要である。(図 15)[28]

技術移転・事業化の分野においては,シーズの付加価値を向上させ企業ニーズとマッチ ングさせて事業化を図る,あるいは企業ニーズ,社会ニーズを商品・サービスのコンセプ トに具現化し必要なシーズや要素技術と結びつけるという側面において,コーディネータ がマネージャーに相当する。

従って,コーディネータには技術移転・事業化のためのマネジメント力が必要である。

Resources Conversion

Process Results

Manager

Action

Feed back

図 15 変換プロセスにおけるマネジメントの重要性

また,生産管理において,販売センター(Sales center)は売上(収益)の最大化を目 指し,生産センター(Production center)は生産コストの最小化を目指して行動するため,

目標(Goal)は 2 者間の調整により正味利得を最大化することであるとしている。

別の表現によれば,収益(売上高)-費用=利益ではなく,“利益=収益-費用”であり,

利益最大化のためには両者の協働,協調のためのマネジメントが必要であるとしている。

数式的には,収益をER,生産コストをEC,正味利得をENとすると,EN=ER-ECであり,

E Nの最大化を目指すことがマネジメントとして重要であるとしている。[29]

これは,得られた収益とコストの差で付加価値を測ることができ,その差が大きいほど 価値の高いマネジメントであると言うことができるため,シーズ或いはニーズに付加価値 をつけるコーディネータのマネジメントの重要性を示すものでもある。

従って,コーディネータのマネジメントを数式的に表現すると下記のようになる。

技術移転・事業化のリスク(努力,費用)をEC,事業化に成功した場合の収益をERとす ると,正味利得 EN は(ER-EC)と表すことができる(EN=ER-EC)。

ここで,正味利得は付加価値の大きさで測ることができ,付加価値はコーディネータの マネジメント力に大きく影響されるため,マネジメントとリスクと収益の関係を図示する と図 16のとおりであり,マネジメントの巧拙により技術移転・事業化の成功率が異なるこ とを端的に示すことができる。

リスク

(努力・費用)

EC

収益 ER

マネジメント力 により正味利得は異なる

正味利得 EN=ER-EC マネジメント

図 16 マネジメント力の三角モデル

6-2 マネジメント化へのアプローチ

効果的な技術移転・事業化のマネジメントを行うためには,何らかの測定手段が必要で ある。そこで,①数値化できる可能性の高い項目を選ぶ ②実際に使用して達成度が把握 できるようにする ③新たなシーズに適用して検証,修正を繰り返し,精度を高めていく と言う 3 つの観点から測定手段を検討する。

また,これまで検討してきた成功要因(X)は機能面から見るとコーディネート機能であ るが,これらの機能は個別シーズごとに重みは異なるものの,技術移転・事業化プロセス の要素であるため,一つの機能のみで成功に導くことは難しい。

技術移転・事業化の成功率を上げるためには,機能の複合的な組み合わせが必要である ため,個別シーズあるいはニーズに対応した効果的なマネジメント手法が必要である。

そこで,研究開発の分野で評価が定まっているT-プラン[30],生産管理分野で検討が進 んでいる楕円形理論(ペア戦略マップ)[31],経営面でその有効性が定まっているバランス スコアカード(BSC)の手法[32]を活用して,測定指標の作成とその定量化を行い,技術移 転・事業化への最適マネジメント化を試みた。

6-3 T-プランと成功要因(X)との関係

T-プランは,ケンブリッジ大学において開発された研究開発ロードマッピング手法で あり,技術の関門,製品・サービスの関門,市場の関門とそれらの繋がりを端的に俯瞰す ることができる。

T-プランと成功要因(X)との関係は次のように説明することができる。

R&D(研究開発):X1(シーズ育成機能・・・シーズのデータ補完を行う)

Technology(技術):X2(知財価値強化機能・・・技術の優位性を確保する)

Product(製品・顧客価値) : X3(技術マーケティング機能・・・顧客価値を探す)

X5(ネットワーク機能・・・同上)

X8(信頼性・・・顧客の信頼を得る)

Market(市場・事業):X4(資金調達機能・・・市場化に必要な資金を調達する)

X6(インキュベーション機能・・・事業に育て上げる)

X7(プロデュース機能・・・市場化,事業化を設計する)

以上,T-プランと成功要因(X)とは極めてよく符号するため,T-プランは技術移転・

事業化の最適マネジメント化の検討に役立てることができる。

6-4 楕円形理論と成功要因(X)との関係

次に,効果的な生産管理のための楕円形理論が,研究開発分野である本研究においても 適用可能かどうかについて検討した。

楕円形理論は,電気通信大学の松井正之教授により創案された生産管理技術であり,製 販コラボレーション問題解決のためのツールとして開発された。楕円形理論に基づくペア 戦略マップでは,需要スピードと生産スピードを2軸とするマップ上に,収益とコストの 関係を示し,「利益」が最大化するポイントは正の楕円と負の楕円の交差する領域にあるこ とをペア行列による計算で証明している。また,正の楕円を経済性軸,負の楕円を信頼性 軸として考察しており,利益最大化のためには両軸のバランスが重要であるとしている。

なお,楕円形理論を適用するにあたり,「需要スピード」を「市場形成スピード」,「生産 スピード」を「研究開発スピード」に置き換えて考察した。(図 17)

極①の解釈

<生産管理>:生産スピードを上げ製品を大量に製造しても,需要(売上)が伸びない と在庫が増大する。

<研究開発>:研究開発を急ぎ投資をしても,その技術の市場が形成されなければ成功 は難しい。

極②の解釈

<生産管理>:生産コストが安くても,需要(売上)が増加しなければ利益は得られな い。

<研究開発>:研究開発の効率を上げ研究開発コストを節約しても,競合技術との優位 性を確保し市場形成を順調に進めることが出来なければ,売上は望めず利益につな がらない。

極③の解釈

<生産管理>:慎重を期して製品を小出しにするとボリューム不足から市場の信頼を失 い,チャンスロスを蒙る。

<研究開発>:研究開発に慎重すぎ様子見を続けていると,市場投入のタイミングを逸 し,成功にはつながらない。

極④の解釈

<生産管理>:売上を増加させても,生産コストが高いと利益は得られない。

<研究開発>:市場が形成されており市場規模や成長率に魅力があっても,研究開発コ ストが高いと利益は期待できない。

以上の解釈により,楕円形理論は研究開発分野である技術移転・事業化においても適用 可能である。

従って,ペア戦略マップと成功要因(X)との関係は次のように位置づけられる。

極① リードタイムが最小化するポイント:

X1(シーズ育成機能;新しい市場の形成を目指し,早くシーズを育成する)

極② コストが最小化するポイント:

X2(知財価値強化機能;知財を効率的に取得して技術の優位性を確保するこ とにより,尐ない費用で市場競争に対応する)

極③ リードタイムが最大化するポイント:

X3(技術マーケティング機能;技術の顧客価値を見極め,時間をかけて研究開 発能力のある企業を探す)

X5(ネットワーク機能;同上)

X8(信頼性;顧客の信頼を獲得する)

極④ 売上げが最大化するポイント:

X4(資金調達機能;市場化,事業化のための資金を出来るだけ多く調達する)

X6(インキュベーション機能;市場規模に合わせて事業を育て上げる)

X7(プロデュース機能;市場規模に合わせて事業化を設計する)

生産スピード/研究開発

/

売上が最大化するポイント

「財務」の視点 ポジショニングアプローチ

市場戦略・財務戦略

リードタイムが最大化するポイント

「顧客」の視点 ゲーム理論的アプローチ

商品戦略・顧客戦略

速い 遅い

遅い

リードタイムが最小化するポイント

「学習と革新」の視点 学習のアプローチ システム・革新の戦略

コストが最小化するポイント

「社内プロセス」の視点 資源配分的アプローチ 技術・プロセス戦略

④ ③

① ②

利益が最大化するポイント

X4 X6 X7

X1

X3 X5 X8

X2

経済性 信頼性

図 17 ペア戦略マップへの X の配置

以上,楕円形理論と成功要因(X)とは極めてよく符号するため,楕円形理論は技術移 転・事業化の最適マネジメント化の検討に役立てることができる

6-5 バランススコアカード(BSC)と成功要因(X)との関係

次に,バランススコアカードと成功要因(X)との共通性を検討する。

大学のシーズを産学官連携により技術移転・事業化する場合,シーズ育成機能(X1)は シーズの不足データ,例えば技術の安定性,継続性,市場データを補完し,事業ドメイン を見直す最初の段階であるため,「学習と革新の視点(システム・革新の戦略)」に位置づ けられる。

次に知財価値強化機能(X2)はシーズに関する知財価値を強化するもので,技術の優位 性を確保し外部との競合に対応するものであるため,「社内プロセスの視点(「技術・プロ セス戦略」」に位置づけられる。

技術マーケティング機能(X3),ネットワーク機能(X5),及びコミュニケーション・信頼性(X8)

は,技術移転先顧客である企業との関係を示しているため「顧客の視点(商品・顧客戦略)」 に位置づけられる。

研究開発資金調達機能(X4),インキュベーション機能(X6),及びプロデュース機能(X7)

は,開発費,市場,事業化を見据えたものであるため「財務の視点(市場・財務戦略)」に

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