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日本の医療に関する認知度の向上および受入環境の整備

5-1.日本の医療に関する認知度の向上

本業務は、我が国の医療の認知度向上に向けて有用と思われる、国内医療機関を紹介するカタ ログ、Webサイトの作成を行い、これらの作成に係る課題の整理とカタログ、Webサイトの有用 性を検証することを目的として実施した。

カタログ、Webサイトには国内の32の医療機関、診療科を掲載した。なお、有用性検証の際 にはそのうち8医療機関を掲載したカタログ、Webサイトを用いた。有用性検証は海外の医療機 関、中国人医師、海外の旅行会社を対象として実施し、本取組で作成したカタログ、Webサイト および今後の認知度向上に向けた取組の方向性についての検討を行った。

1)カタログの作成および配布・有用性検証

(1)カタログの作成

①目的

本業務は、以下の目的を達成するために企画・実施された。

・国際的に競争力があると思われる治療技術や診療科を持ち、かつ外国人患者の受入に積極 的な医療機関の情報をまとめる。

・まとめた情報を、英語・中国語・ロシア語の3ヶ国語に翻訳し、カタログとして製本する ことで、諸外国における日本の医療に関する認知度向上のためのツールとして機能させる。

・継続的にツールを更新するための仕組み作りの課題を明らかにする。

②作成方法

カタログは以下の手順に則って作成した。

A.カタログに掲載する項目の決定

掲載内容に統一性を持たせるため、各医療機関を紹介するために必要となる項目を決定した。

B.取材対象となる医療機関の事前調査

掲載項目ごとに、取材対象となる医療機関や治療内容について、インターネットや書籍を用 いて調査を実施した。その調査結果を基に、取材当日に把握すべき項目を書き下した質問シー トを作成した。ただし、一部の医療機関に対しては、留め置き調査を実施し、掲載項目を記載 してもらった。

C.レイアウトイメージの作成

医師等医療機関においてカタログ作成に関わる関係者が、具体的なイメージを持てるように、

事前調査で把握した情報を基に、各医療機関のページレイアウトのイメージを作成した。

D.掲載する情報の収集

レイアウトイメージを医療機関の関係者に配布して、カタログの全体像を説明するとともに、

必要に応じて質問シートに従ってヒアリングを行いながら、必要な情報を収集した。

E.取材対象機関による原稿確認

ヒアリング等を基に作成した日本語原稿を医療機関の関係者に送付し、内容の確認・修正を 行った。

F.翻訳

医療機関の関係者の確認・修正を終えた日本語原稿を英語、中国語、ロシア語へ翻訳した。

G.印刷、発送

印刷されたカタログを、カタログの配布を行う各事業者に送付した。

③構成と掲載項目

カタログは次の5つのパートにより構成される。

・挨拶

・来日から治療までの流れ

・各治療分野別の医療機関紹介(分野は10分野、掲載医療機関は32機関)

・掲載医療機関一覧

・問合せ先

なお、カタログの主要パートとなる各治療分野別の医療機関紹介の構成は、歯科分野を除き 医療機関ごとに見開き2ページとし、掲載内容と目的については次表の通りとした。

図表・ 141 カタログの掲載内容と目的

掲載内容 目的

治療対象 ・診療可能な疾患名 疾患別に素早い検索を可能とすること

治療方法

・治療方法の概要

・当該治療の日本における歴史や医療 機関における治療実績

掲載治療方法の有用性と、日本におけ る治療のメリットを示すこと

診療科・医療機関の 特徴

・掲載医療機関の概要、特徴

・治療実績

掲載医療機関で治療するメリットを示 すこと

診療科や医療機関 からのメッセージ

・医療機関としてのモットーや目標 外国人患者への医療機関の歓迎姿勢を 示すこと

治療スケジュール 概要

・来日から帰国までの各段階とそれら に要する期間

掲載医療機関での治療に対して、具体 的なイメージを持たせること

施設概要・連絡先

・連絡先の電話番号・メールアドレス

(当事業の総合窓口として全医療機 関共通)

・設立年

・診療科

・決裁方法

・所在地、アクセス

・URL

受診のニーズが発生した場合に、掲載 連絡先へ読者を誘導すること

医療機関に関する基礎情報を簡単に把 握させて、治療に対して具体的なイメ ージを持たせること

出所)日本エマージェンシーアシスタンス資料を基に野村総合研究所作成

A.カタログ品質の担保

医療機関の関係者のみによる原稿確認では、各ページの内容をチェックすることによって個 別の医療機関の情報としては完成させることができるが、カタログ全体の整合性や掲載内容の 質の均等化を図ることが困難であった。そのため、掲載する医療分野に精通している医療従事 者、または複数の医療従事者によるグループが全体のバランスや各ページの内容を俯瞰するな ど、監修的な役割を担う主体が必要である。

B.カタログ作成費用の負担システム

本事業では、医療分野を専門とするライターや専門クリエイティブチームを編成する必要が あり、その費用は公的資金により賄った。しかし、今後もカタログの更新を継続していくため には、公的資金がなくても自律的にツールを更新していく仕組みが必要である。そのため、例 えば掲載医療機関からカタログ掲載の対価として作成費を集めるなどの方策を検討していく必 要があるだろう。

(2)カタログの配布・有用性検証

①調査の目的

本業務は、カタログ情報を更新する際、どのような点を追加・修正するべきかを把握するた めに実施した。主な把握項目は以下の4点である。

・日本で治療を受けることの意思決定を促す内容

・魅力を感じる日本の医療分野

・本事業で作成したカタログに対する評価

・日本の医療の理解を促すための掲載内容、掲載方法

前者の2点については、後述する③調査の結果(海外医療機関への配布・ヒアリング調査)

にて、後者の2点については、⑤調査の結果(中国人医師への配布・アンケート調査)にて詳 説する。

②調査の方法(海外医療機関への配布・ヒアリング調査)

海外の医療機関に、8つの医療機関・診療科を掲載した簡易版のカタログを見てもらい、カ タログの記載内容や表現等についてのヒアリング調査を実施した。

・調査期間:2011年2月6日~同2月28日

・調査対象:海外の51の医療機関に所属する外国人医師と病院関係者、海外での医療サービ ス利用をサポートするエージェント会社に所属する1名

・調査内容:日本での治療を受けることの意思決定を促すために有効な掲載項目

海外においてニーズのある医療分野、治療技術

③調査の結果(海外医療機関への配布・ヒアリング調査)

A.回収状況

51の医療機関と1のエージェント会社に所属する、合計57名からの回答を得た。国別の回 答機関数、回答者数を次図に示す。

図表・ 142 回答を得た医療機関数(国別)

国名

回答機関数 回答者数

医療機関数 エージェン

ト会社数 医師数

医療機関 従事者数

(医師以外)

エージェン ト会社 所属者数

中国 7 0 8 1 0

ロシア 11 1 11 0 1

サウジアラビア 8 0 10 0 0

タイ 5 0 0 5 0

シンガポール 5 0 6 0 0

マレーシア 5 0 5 0 0

米国 10 0 9 1 0

出所)日本エマージェンシーアシスタンス作成

B.日本の医療機関への送客に対する意見

カタログに掲載した診療科において、日本に積極的に外国人患者を送客してもよい、と考え る場合の主な条件として挙げられた意見を、回答者属性と共に示す。

・患者からの希望がある場合(中国・医師(5人)、サウジアラビア・医師(6人))

・自国内での治療が不可能な場合(タイ・医師以外の医療機関従事者(2人)、マレーシア・

医師(2人))

・日本までの距離や費用によらず、患者にとって必要な治療が日本で提供される場合(ロシ ア・医師(2人))

一方、日本に積極的に患者を送り出す必要がない、と考える理由として挙げられた意見を回 答者属性と共に示す。

・同様の治療もしくは日本よりも最先端の治療を自国内で受けられるため(中国・医師(1 人)、米国・医師(6人))

・患者を日本に移動させるリスクの方が患者を日本で治療するメリットよりも大きい、事故 が起きた場合の送客側の責任に対するリスクが大きいため(タイ・医師以外の医療機関従 事者(1人)、米国・医師(1人))

C.魅力を感じる日本の医療分野

カタログに掲載した診療科・分野のうち、日本の医療で魅力に感じる分野としては、がん(重 粒子線・陽子線)、がん(放射線治療)、再生医療、循環器の順となった。

図表・ 143 日本の医療で魅力を感じる分野(N=46、複数回答)

31 26

23 20 16 13 8

3 1

5

0 5 10 15 20 25 30 35

がん(重粒子線・陽子線)

がん(放射線治療)

再生医療 循環器 消化器官・内視鏡施術 整形 不妊治療 歯科 小児 全て魅力なし

(人)

出所)日本エマージェンシーアシスタンス作成

これらの回答を国別に集計したところ、次のような傾向が見られた。

・ロシアは他国と比して各分野について高い関心を持つ。

・一方で、ロシアと同じく「日本で医療行為を受けることを目的として渡航する患者が多く 見込まれる国」である中国は相対的に関心度が低い。

・中国と同様に、米国も相対的に関心度が低い。

・「すでに外国人患者の受入に積極的に取り組んでいる国」であるタイ・マレーシアは特定分 野で関心を持っているといえる。

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